著者は東京大学で英文ライティングを教授する人物。日本人に教える途上で感じた、英語に関する事柄を綴ったエッセイ集です。
日本人だからやってしまいがちだが、しでかした事の重大さに気づけずにいる、そんな英語の過ちについて記した箇所は大変勉強になりました。
話し相手に何かを依頼する際の英語は、相手が断りやすい表現を用いるべし、というのは示唆的です。
日本の学校の英語授業では
Will you send me a preprint of your paper?
とか、
Please send me a preprint of your paper.
といった表現が丁寧な依頼法だと教えています。しかしこれらはまだまだ命令的に響きます。
なかなか
I was wondering if you could send me a preprint of your paper.
という著者ご推奨の表現までは教わらないでしょう。
しかし、著者はさらに一歩進んで、この3番目の表現は確かに丁寧ではあるけれども、そもそも相手が応じられない場合に I can’t.(できない)という言葉を引き出させることになるので、ベストの表現ではないと指摘します。
相手が「できない」と言わずに断れる余地を残して依頼するには、
I was wondering if preprints of your paper are available.
とすべきだと言います。これならば手に入るか入らないかの責任の所在が明確でなく、かりに相手が断る場合も
I am sorry, but no preprints are available.と断りやすいというのです。
同様に
I was wondering if I could visit your laboratory.
とするよりは
I was wondering if your laboratory is open to visitors.
とするほうが良いとのこと。
こうした点には全く配慮しないまま相手に依頼をしていたことに気づき、赤面しました。
また中国人をthe Chineseといいながらアメリカ人をAmericansと定冠詞抜きで使う場合のアメリカ人ネイティブスピーカーの心理状況について見つめたコラム「ザ中国人」も大変面白く読みました。定冠詞がつくと「その国の人全員」という意味になり、つかないと「その国の人の一部には」というニュアンスになるのだとか。ですからアメリカ人が自分たちを定冠詞なしの複数で指す場合は、「アメリカ人の中にはそういう人もいる」と感じているが、その一方でよその国の人は定冠詞をつけて十把一絡げに「かの国の人は大人も子どもも全員」と結構乱暴な一般化をしているというのです。
この点も自分に引きよせて反省し、今後英語を使う時に気をつけようと思った次第です。
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英語のあや 単行本(ソフトカバー) – 2010/10/22
トム・ガリー
(著)
【目次】
Ⅰ 日本語の味、英語の味――文体、文法、そして作文指導
Ⅱ 科学英語から考える
(コミュニケーションの基本として、相手が何を知っているかを考慮する/the は相手が知っていることを表す/冠詞と関係節/「相手が知っているかどうか」で変わる情報の流れ/科学英語の書き言葉と話し言葉/英語での口頭発表の準備/同じに見えても同じではない英語と日本語/英語らしい英語を書くコツ/相手を配慮した英語表現)
Ⅲ 言語の狭間で考える
(1) 言葉の蹉跌(失敗へのこだわり/辞書の失敗/意味の流れ/言葉の海に溺れて)
(2) 言葉の価値(馬鹿の言葉/言葉のコスト/言葉不況/ 怒りの言葉/上機嫌な起源)
(3) 言葉の綾(飾り気のない言葉/歩道の上にも)
など
“日本人の英語”から見えてくる言葉の真実
日本人が書く英語に固有の味とは?
外国語能力のリアルな経済価値は?
最近の外国語教育論争の争点は、実は二百年も昔からのもの?
ネイティブ・スピーカーの限界とは?
日本人が犯しやすい英語の間違いとは?
言語は失敗でこそ学べる?
日本語に堪能で、翻訳や辞書編集に長年携わり、“日本人の英語”を見つめてきた米国人が、二つの言語の狭間でこそ知り得た、外国語学習の機微。
Ⅰ 日本語の味、英語の味――文体、文法、そして作文指導
Ⅱ 科学英語から考える
(コミュニケーションの基本として、相手が何を知っているかを考慮する/the は相手が知っていることを表す/冠詞と関係節/「相手が知っているかどうか」で変わる情報の流れ/科学英語の書き言葉と話し言葉/英語での口頭発表の準備/同じに見えても同じではない英語と日本語/英語らしい英語を書くコツ/相手を配慮した英語表現)
Ⅲ 言語の狭間で考える
(1) 言葉の蹉跌(失敗へのこだわり/辞書の失敗/意味の流れ/言葉の海に溺れて)
(2) 言葉の価値(馬鹿の言葉/言葉のコスト/言葉不況/ 怒りの言葉/上機嫌な起源)
(3) 言葉の綾(飾り気のない言葉/歩道の上にも)
など
“日本人の英語”から見えてくる言葉の真実
日本人が書く英語に固有の味とは?
外国語能力のリアルな経済価値は?
最近の外国語教育論争の争点は、実は二百年も昔からのもの?
ネイティブ・スピーカーの限界とは?
日本人が犯しやすい英語の間違いとは?
言語は失敗でこそ学べる?
日本語に堪能で、翻訳や辞書編集に長年携わり、“日本人の英語”を見つめてきた米国人が、二つの言語の狭間でこそ知り得た、外国語学習の機微。
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社研究社
- 発売日2010/10/22
- 寸法13 x 1.1 x 18.9 cm
- ISBN-104327490210
- ISBN-13978-4327490218
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商品の説明
著者について
トム・ガリー(Tom Gally)
東京大学准教授。カリフォルニア州立大学サンタ・バーバラ校卒業(言語学専攻)、シカゴ大学大学院修士課程修了(言語学および数学)の後、1983年に来日。日英翻訳、辞書編集などに携わり、2002年より東京大学で教鞭を執る。2003年、研究社『新和英大辞典』第5版にて執筆者・編集委員。引き続き KOD (Kenkyusha Online Dictionary) の執筆・編集に携わる。著書にEnglish for Scientists(研究社)、共著に『東大英単』(東大出版会)、監修に『英語の数量表現辞典』『辞書のすきま、すきまの言葉』(いずれも研究社)など。
東京大学准教授。カリフォルニア州立大学サンタ・バーバラ校卒業(言語学専攻)、シカゴ大学大学院修士課程修了(言語学および数学)の後、1983年に来日。日英翻訳、辞書編集などに携わり、2002年より東京大学で教鞭を執る。2003年、研究社『新和英大辞典』第5版にて執筆者・編集委員。引き続き KOD (Kenkyusha Online Dictionary) の執筆・編集に携わる。著書にEnglish for Scientists(研究社)、共著に『東大英単』(東大出版会)、監修に『英語の数量表現辞典』『辞書のすきま、すきまの言葉』(いずれも研究社)など。
登録情報
- 出版社 : 研究社 (2010/10/22)
- 発売日 : 2010/10/22
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 176ページ
- ISBN-10 : 4327490210
- ISBN-13 : 978-4327490218
- 寸法 : 13 x 1.1 x 18.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 647,725位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年2月21日に日本でレビュー済み
2021年7月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「英語のあや」というから、英語の表現に潜む日本人には窺い知れないニュアンスのことでも書いてあるのかと思ったら、単なる翻訳家・辞書編集者の苦労話・独り言だった。暇つぶしに読むのにはいいが、大して役に立つことは書いてない。所詮「東大」と言う名前で売っている本みたいだ。
2015年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本の存在はインターネットで知ったのであるが、そうでなければとても目につかない本だ。内容は地味だが、各所に英語の面白さが窺える。「無冠詞単数名詞は不可算名詞」なんていう発見もある。日本人の英語の落とし穴をよく知っている。
2013年12月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ページ数を抑えるためか、余白があまりとられていないレイアウトであるのが読みにくいです。
内容は、「ただ情報を伝えるのではなく意図を伝えられる表現を」というメッセージで書かれているように感じました。英語のネイティブで、且つ日本語も堪能な著者ならではの分かりやすい説明で、勉強になります。ただ、もともとエッセイをまとめたもので文章も端的ではないため、効率的に英語を学習する参考書ではありません。
個人的には全般に「内容はいいのだが読みにくいなあ、もっとコンパクトに効率的に学びたいなあ」という感想でした。「英語」じたいを楽しむという姿勢で読めばとてもよい本だと思います。
学校の先生や塾講師の方の教え方の参考になると思います。大学時代に塾講師や家庭教師をしていましたが、こういう本があればもっと自分も英語表現の理解が深まり、きちんと教えられたなあと思いました。
キンドル版があれば少なくともレイアウトの問題は解消するように思いますが、残念ながら今現在では出ていません。
内容は、「ただ情報を伝えるのではなく意図を伝えられる表現を」というメッセージで書かれているように感じました。英語のネイティブで、且つ日本語も堪能な著者ならではの分かりやすい説明で、勉強になります。ただ、もともとエッセイをまとめたもので文章も端的ではないため、効率的に英語を学習する参考書ではありません。
個人的には全般に「内容はいいのだが読みにくいなあ、もっとコンパクトに効率的に学びたいなあ」という感想でした。「英語」じたいを楽しむという姿勢で読めばとてもよい本だと思います。
学校の先生や塾講師の方の教え方の参考になると思います。大学時代に塾講師や家庭教師をしていましたが、こういう本があればもっと自分も英語表現の理解が深まり、きちんと教えられたなあと思いました。
キンドル版があれば少なくともレイアウトの問題は解消するように思いますが、残念ながら今現在では出ていません。
2013年8月13日に日本でレビュー済み
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私は数十年前、大学院博士課程に在籍していたころ英語で論文を書く、英語で学術誌に投稿する、国際学会で英語で発表し外人との質疑応答に答える。という苦痛と拷問の日々を送りました。そして今日に至るまで、日本の学術誌に投稿する場合でも、英文抄録の提出は義務づけられており、いまだに英作文地獄の苦痛にあえいでいます。はっきり言って英語は超苦手です。ですから、自分でフレーズを捻出して作文せず、英著論文の気にいった文章をそのままパクッテ、つぎはぎ、張り合わせで、作文することがほとんどです。本著は、そういった科学系の英語論文を書く、英語で学会発表し討論する。という現役の学生、大学院生を対象に、東大で教鞭ととっておられるトム・ガリー先生の指導指針、英語教育概念のようなエッセイが主体です。エッセイというか・・トム・ガリー先生の個性と信念がギラギラ投影された著述で、その語学にかける情熱に惹かれて一気に最後まで読みきりました。日本人が書く英文は、日本人が英作文したにせよ、仮に日本語をネイテイヴに頼んで英訳してもらったにせよ、どこかに「日本語の味」がする。つまり翻訳を読んでも、そのルーツに日本人らしい思考回路を推測できる。という序段から、それを翻訳の味付け妙味で、日本風味が完全に消えるように徹底指導すべきか?・・あるいは小手先の英作指導で目の前の課題を解決するのでなく、10年先、20年先の生徒の発展を導けるように、指導すべきか?という煩悶から、語学指導とは何か?・・・トム・ガリー先生の人生哲学のようなエッセイが続きます。東大生のように優秀な学生、しかも大学院生を相手に指導している立場での著作ですから、語学教育論も、かなり理想論ですが、着眼の鋭さに感動します。後半は、楽しい(?)内容です。語学をものにするのに、いくらゼニがかかるか?コストエフェクテヴネスを計算せよ。英語を習得するに際したコストと生涯価値(費用対効果)の換算。投入したゼニで、果たしてもとがとれるか?ミクロ経済は先生個人の体験から(計算外の要素も感じておられるかもしれない??が)、マクロ経済効果はたしかにある・・英語圏での貿易量増加などなど。一般教養書籍の範疇に入るであろう、こういった著述のなかに、ここまで赤裸々に個人の感情?感性?日々念じる所感を綴っておられる点に好感がもてます。彼のオタクっぽい拘りと情熱。ところで・・人生の半分以上を日本で過ごしているアメリカ人、トム・ガリー先生の日本語の文章に、まったく「アメリカ風味」がない。見事なまでに、完璧な日本人風味。本著の文章を読んだだけでも、努力なのか?天才なのか?とにかく費用対効果を無視してでも執念で語学に食らいつけば、完全にネイテイヴの文章が書ける。日本人以上に日本語風味。ということを、彼自身が証明している。凡人には真似はできませんが・・・外人が日本語を勉強する際の、日本語の辞書の不親切さ、おそまつさに関する記述は、とくに感動した。なるほどな・・と思う。逆に日本人が英語を学ぶ段において辞書をどのように扱うか?考えさせられた。こういう着眼は、多くの英語学習書に取り上げられない視点で、鋭いな!と感じる。
2013年9月29日に日本でレビュー済み
日本人英語学習者には、英語表現についてネイティブに確かめてみたいことがあると思います。私は以下の3点が確かめられました。
1)I was wondering if のあとに法助動詞couldが入らない方が丁寧になる。
2)With regard to interstellar matter, there are many unknown aspects. より、Interstellar matter has unknown aspects.の方が英語らしい。
3)Molecular weight is an important property of monomers.と主語に不定冠詞がつかないのは「性質」自体を問題にしているから。
1についてはほかのreviewer も紹介されていましたが、私はこれまで知らなかったというか考えたことがありませんでした。2と3は個人的に確認していなかったので確認できてよかったです。
1)I was wondering if のあとに法助動詞couldが入らない方が丁寧になる。
2)With regard to interstellar matter, there are many unknown aspects. より、Interstellar matter has unknown aspects.の方が英語らしい。
3)Molecular weight is an important property of monomers.と主語に不定冠詞がつかないのは「性質」自体を問題にしているから。
1についてはほかのreviewer も紹介されていましたが、私はこれまで知らなかったというか考えたことがありませんでした。2と3は個人的に確認していなかったので確認できてよかったです。
2014年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マークピーターセン氏の著作のように日本人の英語の特徴などが書かれている前半部分は星5つです。参考になりました。
ただ後半のエッセイは正直つまらないです。後半を星1つにしてトータルで星3つにしようかと思いましたが、エッセイの割合が多いため1つマイナスで星2つ。
ただ後半のエッセイは正直つまらないです。後半を星1つにしてトータルで星3つにしようかと思いましたが、エッセイの割合が多いため1つマイナスで星2つ。