阿川が、岡崎の胸を借りて、対論を進めるという展開で、主論の相当部分は岡崎の見解だが、阿川も結構アメリカ論を開陳していて、可成りユニークな対談本となっていて、カレント・トピックスもあって面白い。
私にとって岡崎の最初の本は、『繁栄と衰退と』であつたが、丁度、かの地に居たので、密度の高いオランダの衰退の物語に痛く感激して、それ以降、岡崎の書物やＴＶでの文明論に注目してきた。
遂に、自衛艦隊がインド洋に向かったーーーと言う岡崎の深い感慨からこの本がスタートする。集団自衛権の行使に対する確固たる日本の対応が、同盟国アメリカとの友好外交、そして、日本外交に必須だと説く。国家政策には幾多の誤りを犯してはいるが、アメリカの善意には今まで歴史上に存在した他の覇権国にはない信頼感がある、と言う。
日英同盟が崩れなかったら、アジアの秩序は維持されていた。
憲法で、占領軍の置き土産は、第９条と総理が閣僚任命権を持つ点だけであって、婦人参政権など後の民主的条項は、総て、明治憲法の時に通した。
日米関係で残念なのは、日英同盟を切ったこと、真珠湾を攻撃したことである、しかし、それを、一番立派な日本人がアメリカを知らなかったためにやった。
等々面白い話が続く。
最後に、外交官は、人間を磨き上げ、相手にインプレス出きる能力、魅力、迫力を持つ知的エリートでなければならないと云う下りは、どこかの外務省の役人に聞かせたい。岡崎や阿川の見解に対しては、賛否両論あろうが、全編、易しい対話展開で、すんなりと読めるので、含蓄の深いこれらの問題提起を真剣に考えてみるのも貴重な体験であろうと思った。
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