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天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books) 単行本 – 2010/2/26
- 本の長さ868ページ
- 言語日本語
- 出版社廣済堂出版
- 発売日2010/2/26
- ISBN-104331514439
- ISBN-13978-4331514436
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商品の説明
著者からのコメント
メディアを通して他人を知ることが、直接だれかに会うより多くなってしまった僕らは、「特別な人間が、特別な人生を送っている」と思いこみがちだ。こんなすごい生涯だから、テレビに出るんだろう、みたいな。でも、それはちがう。そこらにいる、そこらの人が、聞き出してみれば波瀾万丈の大河ドラマのヒーローやヒロインだったりする。
常連さんばっかりだから、スナックは入りにくい、とよく言われる。そのとおりだが、それだけスナックという空間はライブなコミュニティの、情報交換の場として機能しているということだ。夜の井戸端会議場。だから事件記者は、なにか事件が起こると、まず地元のスナックに情報を集めに行く。
呑んで歌って、それだけのことなら、人はスナックなんて行かない。そこにはバーにもクラブにもカラオケボックスにもない、濃密ななにかがあるのだが、「スナックなんて行ったことない」知的な人々にそれを説明するのはすごく空しい。この本を手に取ってくれたあなたが、いつも通り過ぎるだけだった地元のスナックの扉を押してみようという気になってくれたら、なによりうれしいのだが。
著者について
登録情報
- 出版社 : 廣済堂出版 (2010/2/26)
- 発売日 : 2010/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 868ページ
- ISBN-10 : 4331514439
- ISBN-13 : 978-4331514436
- Amazon 売れ筋ランキング: - 734,470位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 192,601位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
1956年、東京生まれ。76年から86年までポパイ、ブルータス誌で現代美術、建築、デザイン、都市生活などの記事をおもに担当する。89年から92年にかけて、1980年代の世界の現代美術の動向を包括的に網羅した全102巻の現代美術全集『アート・ランダム』を刊行。以来現代美術、建築、写真、デザインなどの分野での執筆活動、書籍編集を続けている。1993年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。1996年発売の『ROADSIDE JAPAN』で第23回・木村伊兵衛賞受賞。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中である。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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わたしは都築さんのひそかなファンである。著書すべてを追っかけているわけではないが、その名前を見ると、書籍であれ写真集であれ雑誌であれ、ひとまず手に取りたくなる。なにか面白いことをまたしてくれているだろうという、期待がある。
本書においても、その期待が外れることはなかった。穏やかで、静かな哀歓を、存分に堪能することができた。
語弊があるかもしれないが、本書には都築氏の「優しい嘲笑」が溢れていた。わたしは、氏を意地悪なひとだと思っている。ただ、それは優しい意地悪で、わたしは氏のそうした性質にこそ惹かれているのだ。
多くの人にすすめはしない。そもそも必ず読まなければならないという類いの本でもない。
ただ、評価をつけるなら☆5以外はありえない。だって比較対象がないんだもの。
殴ったら凶器になりそう。
50軒のスナックが紹介されているわけだが、正直途中で飽きてくるかも。
誰とも知らない、生涯会うこともなかろう無名のママさんの半生を読んでいると、
その毒にも薬にもならない無為さ加減に、
思わず「何やってんだ、自分?」的な不思議な思いを抱く。
相変わらず都築響一の目の付け所は鋭く、こんな本の企画は中々思いつかないし、
例え出来ても、商業ベースで流通させるのは難しいだろう。
そういう意味では二重丸の好企画といえる。
多くのスナックでママさんたちが口々に語るのは、
バブルの頃は凄かった(儲かった)、今はどん底、会社のみんなで飲みにくる客がめっきり減った、
ということ。
更に、意外にも元々お酒が飲めない人が、ママさんやってるうちに飲めるようになった、
という点が結構共通していることに驚く。
個人的には、永ちゃんの店やってるマスターの話が一番面白くて、笑いながら読んだ。
ネットやガイド本には殆ど登場しない本書掲載店のようなスナック。
木製の(開けたらカランカラン鐘がなって、「いらっしゃーい」と声が掛かるような)ドアの向こうに、
未知の異空の社交場と人生の酸いも甘いも知り尽くした魅惑のママが待っていると考えて読むか、
場末の酔っ払い相手の与太話として読むかで本書の意味も変わるだろう。
都築氏は写真家でもあるので、モノクロでもいいので、写真をもっと取り込んでほしかった。
なんでこんなふうに相手を持ち上げるんだろう、と。
しかし読み進めていくうちに、ああ、この本の場合はこうしないと形にならなかったのかもしれないなぁと思うようになりました。
この本に登場するスナック経営者たちの多くはインタビューを受けた時点で多かれ少なかれ厳しい状況に置かれています。
一番多いのは「バブルの頃は良かった、それに引き替え今はねぇ…」というものですが、ほかにもそれぞれの事情があります。
そんな、下手をすればひたすら落ち込んでしまいそうな「今の自分はこれで良いのだろうか…」的な人たちからうまく話を引き出すには、このヨイショスタイルが必須だったのかもしれません。
それでも50軒のママ・マスターのインタビューの中には非常に興味深いものもあれば淡々と流れてしまっているなぁと感じるものの両方がありますが、スナックという日本独特のカルチャーを知る上でも、また、バブルという時代がいかに特殊な時代であったかの記録としても貴重な労作だと感じました。
そんなお店選びの参考になりますし、スナック通いの参考にもなります。
しょっぱなから都築さんの味のある文章に引き込まれます。
そして、インタビューする都築さんの、ヨイショの嵐にくらくらします。
(そんなお年に見えない! みたいな。写真を拝見する限り、実年齢相当にみえる皆さんです)
スナックとは、都築さんの目の付け所はいつも鋭いですね。
ですが、いかんせん、長すぎる…。
もうちょっと切ってもいいんじゃない?と思いました。
半分でもいいと思いました。
分厚すぎて、読みづらいってのもあります。
よーかんちゃん、最高ですね。
中野の超老舗スナック「ぱじゃんか」のママを配した迫力満点の表紙、
人生を蒸留して瓶詰めしたような魅力的なタイトル。
都築さんの著作はどれも傑作だと思っていますが、
この作品も魂が千鳥足になるような金字塔といってよいでしょう。
スナックのママさんやマスターへの濃厚なインタビューを50件あまり。
著者自身も客としてグラスを傾けつつという。
お恥ずかしい話ですが、
私ももう社会人としての生活に慣れてきた年齢でありながら、
今まで普通にぼんやり生きてきた結果、
この本に出てくるようなスナックにはいまだ行ったことがありません。
先輩だとかに誘われたら別に拒否したりしなかっただろうに、
そういうこともまるでなく、行く機会がなかった。
なのに、飲み屋街には必ずこうしたスナックが星ほどある。
この本にはその数は「27万とも10万とも」などと書かれていますが。
入りにくいドアの奥にある世界。身近なのに遠い世界。
いや、ほんとうに不思議だったんですけどね。
なぜあんなにたくさんのスナックがやっていけているのか。
自分も行ったことないし、
周りの同世代の人からもそういうところの話は聞かないし、
まあおじさん方がある程度いっているとしても、
あれだけの数が維持できるのかなあと。
とはいえ通読してみると、
店の方々はだいたい「バブルのころがいちばんよかった」
みたいなことを言ってまして、景気は悪いようですけどね。
地元の方々に愛され、通ってもらうことで、
細々とでも楽しく維持しているという感じが多い印象でした。
しかし、普通の人の普通の人生が面白いわけですよね。本当に面白い。
普通といってもスナック経営というのは、
少しだけ普通ど真ん中からは外れているのかもしれませんし、
酒を提供する商売ですから、
人間ドラマが日々展開されるという「強み」がありましょう。
それでもね、自分だってなってなれないことはない職業です。
そういう人たちの「御一代記」に漂う含蓄、深み、薫り。
天国などというとなんだか遠くにあるような響きになりますが、
よく考えてみると水割りの酔いの中にあるような、
そういう身近なものなのではないかという示唆は、
私は五臓六腑に染み渡るような言葉として受け取りました。
よく考えれば日本で最も多い社交場なのに、ちゃんとしたガイドも研究もない。
ごく一部の都会の人が、ごく一部のステキな場所でワインを飲んでいるあいだ、日本人の9割以上はスナックで水割りを飲んで、歌っているのだ。
「ヤンキー」であり「相田みつを」であり、「ワンルームマンション」でもある、日本中に偏在していて日本人が大好きなのに、メディアが決して取り上げることはないもの。
それらを宮本常一のように黙々と記録してきた著者のテーマがスナックに向かったのは、ごく自然なことなのだろう。
日本の「コミュニティ」について議論・研究するなら、スナックとそのママの役割を抜きには語れないはずだ。
スナックを黙殺するメディアやアカデミズムへの怒りに、それをやるのが自分しかいないという使命感をのせて、著者は今日もスナックで一曲こぶしをきかせているだろう。
それにしても、ママたちの愛らしい魅力は、本書を読んでもらうしかないのだが、あらゆるスナックにステキなママがいて、ママには歴史がある。
日本中に山ほどスナックがあるし、出している酒や料理が特別なものではないのに、通ってしまう理由はただ一つ、ママの魅力と笑顔なのだ。
著者の現代民俗学の最新の成果であり、日本で減りつつある愛すべきママたちへのレクイエムでもある。