本書は2004年に発刊された本で、経済物理学をわかりやすく解説した本になります。経済物理学は伝統的な経済学の「当たり前」の多くを覆してきたわけですが、その中でも最大のポイントは、「市場は需要と供給の交点で安定しない」という発見でしょう。むしろ交点の状態は、綱渡り状態でいつ左右どちらに大きく振れてもおかしくない、というのが真実なわけです。ただこのあたりの論理は宇沢弘文や岩井克人などの経済学者が、不均衡動学モデルという形で表現しているところではあります。
また経済学がよく用いる正規分布の仮定もそうではないときが多々ある。たとえば為替市場の振れ幅を見ると、むしろ「べき分布」しています。正規分布よりも「べき分布」の方がすそ野が広い(つまりブレ幅が大きい)のですが、株式のオプション価格を算出するブラック・ショールズ方程式は、正規分布を前提にオプション価格を出しますので、オプション価格を割安に出す傾向があることになります。余談ですが、マイケル・ルイスの小説『世紀の空売り』には、世界金融危機の際にオプションで大儲けした人の実話が出てきますが、彼もまさにブラック・ショールズ方程式のもつバイアスを指摘しています。このほかにも経済の様々な局面にあらわれる「べき分布」の特徴について事例をもとに説明されていて面白かったです。一気に読めました。
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経済物理学の発見 (光文社新書) 新書 – 2004/9/18
高安 秀樹
(著)
最新物理学が経済学の常識を、根本から覆す!
経済物理学はカオスやフラクタルといった物理学の手法と概念を利用して、データーに基づいて実証的に現実の経済現象に立ち向かう、まったく新しい科学の分野である。まだ誕生して10年にも満たないほどの若い研究分野だがこれまでの経済学の常識を覆す発見や、斬新なアイディアが次から次へと報告されている。複雑で不安定なお金の世界にも、ものの世界と同じような自然法則が成立している。エコノフィジックスという手法に基づきこれから進むべき未来のお金の世界を探求する。
著者は1958年千葉県生まれ。85年名古屋大学大学院理学研究科修了。理学博士。神戸大学理学部地球科学科助手・助教授を経て、1993年東北大学大学院情報科学研究科教授に就任。1997年より㈱ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー。専門は、フラクタル理論、統計物理学、エコノフィジックス。著書に『フラクタル』(朝倉書店)、『経済・情報・生命の臨界ゆらぎ』(共著、ダイヤモンド社)、『エコノフィジックス-市場に潜む物理法則』(共著、日本経済新聞社)などがある。
- 本の長さ278ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2004/9/18
- ISBN-104334032672
- ISBN-13978-4334032678
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2004/9/18)
- 発売日 : 2004/9/18
- 言語 : 日本語
- 新書 : 278ページ
- ISBN-10 : 4334032672
- ISBN-13 : 978-4334032678
- Amazon 売れ筋ランキング: - 93,524位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2021年4月30日に日本でレビュー済み
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2018年3月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
株価暴落は大地震予測と類似した非線形の数理モデル、カオスやべき乗則(両対数プロットで直線)の特徴で解釈可能? FXレートの変動の理由、所得分布グラフに見る社会階層など、面白い。
2012年3月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
刊行直後に購入したのだが、当時、この学問の背景がわからず
本棚に置いたままだったが、ふとしたきっかけで読み始めた。
1.経済学が物理学の方法を採用する根拠。
2.経済学のどの分野に応用できるのか。
3.経済物理学の基本的な考え方は。
などを知りたかったのだが、コンパクトな書物ながら、基本的
な概要が解説されていて、面白いし役立つと思われる。
次のようなことのようである。
1.物理学は江戸時代は究理学と呼ばれたように、物質を対象と
する学問であるとともに、また物事の本質を「実証的・論理的に研
究する学問」であるので、後者の意味では物理学は経済の研究にも
応用できる方法を持っている。ということ。
2.本書は、金融工学の登場期に書かれたもので、為替や通貨の
例が主として取り上げられている。もちろん、価格と所得も扱わ
れている。
これは、いくぶん刊行時期の問題であり、現在では、マクロ経済
学への応用が重要課題であるように思われる。もちろん、本書の
例でも十分なのだが。
3.基本的な考え方の第1は本書に書いてあるミクロの価格変化と
マクロの物価の関係を、統計力学の関係を応用して研究することだと
思われる。一般にマクロ事象は、ミクロ事象の「関数」なのだという
考え。
もう一つは、経済事象の経験的分布について、従来ケトレー以来の
正規分布で理解してきたのが、コンピュータ時代にデータの規模が
大きくなったため、パレートのベキ分布が重要な分布として再確認
されたことが、豊富な例で、わかりやすく解説されている。
以上の2点に加えて、最後の章には、貨幣や財政について、これはまた
面白い記述があり、シニアにも楽しめる。
本棚に置いたままだったが、ふとしたきっかけで読み始めた。
1.経済学が物理学の方法を採用する根拠。
2.経済学のどの分野に応用できるのか。
3.経済物理学の基本的な考え方は。
などを知りたかったのだが、コンパクトな書物ながら、基本的
な概要が解説されていて、面白いし役立つと思われる。
次のようなことのようである。
1.物理学は江戸時代は究理学と呼ばれたように、物質を対象と
する学問であるとともに、また物事の本質を「実証的・論理的に研
究する学問」であるので、後者の意味では物理学は経済の研究にも
応用できる方法を持っている。ということ。
2.本書は、金融工学の登場期に書かれたもので、為替や通貨の
例が主として取り上げられている。もちろん、価格と所得も扱わ
れている。
これは、いくぶん刊行時期の問題であり、現在では、マクロ経済
学への応用が重要課題であるように思われる。もちろん、本書の
例でも十分なのだが。
3.基本的な考え方の第1は本書に書いてあるミクロの価格変化と
マクロの物価の関係を、統計力学の関係を応用して研究することだと
思われる。一般にマクロ事象は、ミクロ事象の「関数」なのだという
考え。
もう一つは、経済事象の経験的分布について、従来ケトレー以来の
正規分布で理解してきたのが、コンピュータ時代にデータの規模が
大きくなったため、パレートのベキ分布が重要な分布として再確認
されたことが、豊富な例で、わかりやすく解説されている。
以上の2点に加えて、最後の章には、貨幣や財政について、これはまた
面白い記述があり、シニアにも楽しめる。
2019年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本語で書かれた経済物理学の本としては貴重な本書。
しかし、残念ながら、著者が地球物理学という畑違い出身のためか、実際に金融市場で取引経験のある者から見ると、違和感のある記述が散見され、内容的にしっくり来ない。
また、本書の内容は、ファイナンス理論の紹介と被っているが、説明が中途半端で、ある程度ファイナンスの知識がある者にしか、理解できないだろう。(逆に、知識がある者は本書を読む必要がない。)
分野としては面白いだけに、中途半端で残念な内容だ。
経済物理のファイナンス的な背景を知りたいのであれば、本書よりも「ファイナンス理論全史」(田渕直也 著: ダイヤモンド社)を読んだ方が良い。
しかし、残念ながら、著者が地球物理学という畑違い出身のためか、実際に金融市場で取引経験のある者から見ると、違和感のある記述が散見され、内容的にしっくり来ない。
また、本書の内容は、ファイナンス理論の紹介と被っているが、説明が中途半端で、ある程度ファイナンスの知識がある者にしか、理解できないだろう。(逆に、知識がある者は本書を読む必要がない。)
分野としては面白いだけに、中途半端で残念な内容だ。
経済物理のファイナンス的な背景を知りたいのであれば、本書よりも「ファイナンス理論全史」(田渕直也 著: ダイヤモンド社)を読んだ方が良い。
2016年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
市場という経済現象を物理の視点でとらえる「経済物理学」の提唱。
日本での第一人者による本で、ていねいに分かりやすく書いてある。
株式市場に現れるカオスな振る舞いや、所得分布の巾乗則など、それまでの伝統的経済学にはなかった視点を物理のセンスで定式化し、エッセンスを理解することに成功した流れが見てとれる。
ハイライトのひとつは、ミクロなモデルから出発して経済学で使われるマクロな方程式が導かれるところだが、ここのところは微分方程式の知識があった方が、より深く味わえる。
「あの現象とは関係があるのだろうか」「こういう捉え方はできないのか」など、発想を刺激される良書。
日本での第一人者による本で、ていねいに分かりやすく書いてある。
株式市場に現れるカオスな振る舞いや、所得分布の巾乗則など、それまでの伝統的経済学にはなかった視点を物理のセンスで定式化し、エッセンスを理解することに成功した流れが見てとれる。
ハイライトのひとつは、ミクロなモデルから出発して経済学で使われるマクロな方程式が導かれるところだが、ここのところは微分方程式の知識があった方が、より深く味わえる。
「あの現象とは関係があるのだろうか」「こういう捉え方はできないのか」など、発想を刺激される良書。
2016年2月27日に日本でレビュー済み
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所得格差を示すパレート指数を本書は近似値2としているようです。
その根拠となるプログラム・数式は新書版故か示されていません。
パレート指数が2に近似するなら、所得格差はあまりないのでは?
パレート学説の理解の仕方が、現在では昔と異なっているのではないでしょうか?
Mathematica 10.3は計算方法をいくつか呈示しています。 第1の計算法を用いれば、1.5あたりでは?
それでも、本書は良書です。一読をおすすめします。
その根拠となるプログラム・数式は新書版故か示されていません。
パレート指数が2に近似するなら、所得格差はあまりないのでは?
パレート学説の理解の仕方が、現在では昔と異なっているのではないでしょうか?
Mathematica 10.3は計算方法をいくつか呈示しています。 第1の計算法を用いれば、1.5あたりでは?
それでも、本書は良書です。一読をおすすめします。
2015年6月28日に日本でレビュー済み
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企業所得の章で、二つの点で印象に残ったものがある。
一つは、これまでの日本の経済成長についてだ。
日経平均株価からすれば1990年(戦後45年目)が日本の経済成長のピークだとこれまで自分は思っていた。しかし、高安氏のデータから、1970年くらいがピークであり、その後は高止まりしている。このことは世間一般ではそれほど認知されていないことではないかと思った。
もう一つは、これからの日本の経済成長についてだ。
過去のデータを用いて企業所得をシミュレーションし、その時間発展が示されている。これによれば、米国や英国は約150年先(西暦2150年)まで経済は成長し続けるが、日本は成長が止まったままとなっている。先進国といわれる米国でも、さらに巨大な企業がこれから出てくることは、2015年の今考えると薄々と感づいているものがある。これには何らかの理由があるのか、興味深いところだ。
出版年は2004年であり、表示されているデータは更新されている可能性はあるが、現実のデータから経済現象をとらえようとする点は素晴らしいと思った。
一つは、これまでの日本の経済成長についてだ。
日経平均株価からすれば1990年(戦後45年目)が日本の経済成長のピークだとこれまで自分は思っていた。しかし、高安氏のデータから、1970年くらいがピークであり、その後は高止まりしている。このことは世間一般ではそれほど認知されていないことではないかと思った。
もう一つは、これからの日本の経済成長についてだ。
過去のデータを用いて企業所得をシミュレーションし、その時間発展が示されている。これによれば、米国や英国は約150年先(西暦2150年)まで経済は成長し続けるが、日本は成長が止まったままとなっている。先進国といわれる米国でも、さらに巨大な企業がこれから出てくることは、2015年の今考えると薄々と感づいているものがある。これには何らかの理由があるのか、興味深いところだ。
出版年は2004年であり、表示されているデータは更新されている可能性はあるが、現実のデータから経済現象をとらえようとする点は素晴らしいと思った。
2018年3月19日に日本でレビュー済み
本書は、タイトルの通り、まさに発見されつつある経済物理学について、紹介するものである。
一般に物理学と言えば物質の究極的な性質について扱う学問だと考えられているが、物理学の英訳語physicsとは、狭義の物質を扱う物理学だけではなく、科学そのもの意味する言葉でもある。
そして今や、物質だけに囚われることなく様々な現象が、物理学の研究対象になっているのだという。
そのような潮流にあって、経済を分析しようとする物理学が、経済物理学である。
これまでの経済学では、需要と供給のバランスによって価格が決定されるという均衡理論が信じられてきた。
つまり、供給に対して需要が多ければ価格は上がり、少なければ下がる、というものだ。
中学校の社会科の授業で教えられ、日々のニュースでも、この考え方に沿って、株や為替の値動きが説明されている。
ところが、著者は、あらゆる価格変動のデータを探してみてもその理論に当てはまる実例を見つけられなかったという。
一方、著者が提起する経済物理学の最も大きな特徴は、価格変動を、商品の取引の潜在的な性質が否応なく生み出す自律的な運動だと考える。
コンピューター上で、ある規則によって売買をするディーラーで構成される人工的な市場を設定し、シミュレートした結果として、次のような考えを導き出す。
「人工市場のシミュレ ーションでわかってきたのは 、市場参加者は 、過去の価格変動に大きく影響を受けており 、特に 、トレンドともよばれている直近の価格変動の傾向がこれからも続くと考えて行動する傾向がある 、ということです 。価格が少し下がり出した時 、しばらくの間は価格が下がり続けると思うディ ーラ ーがある程度おり 、彼らが市場を支配してしまう形になると 、市場価格はどんどん下落してしまいます 。人工市場の中では 、過去の価格変動の影響をいっさい受けないようなディ ーラ ーだけを寄せ集めたような仮想的な市場を構成する実験ができます 。そのような状況ではどうなるかというと 、やはりカオスが起こって価格はミクロには安定せず 、確率的に見えるような変動を起こすのですが 、暴落や暴騰と言えるような大きな変動は生み出さないことが確かめられます 。市場価格の直近の変化に比例して先読みをするような効果を組み込んだディ ーラ ーをその人工市場に入れてやると 、途端に市場は不安定になって暴騰したり暴落したりするようになります 。このような性質は 、直感的には 、価格が引き続いて下がり出した時に 、次にも 、同じように価格が下落するのではないかと予想することであり 、誰しも思いあたるふしがあることだと思います 。誰もが少しずつでもそのような性質を持つことによって 、市場全体としては 、暴落 ・暴騰がある頻度で必ず起こってしまうことになるのです 。」
加えて、事件やニュースがなどの外的な要因が、為替に及ぼす影響について、日銀の為替介入や9.11のような大事件が起こった後の為替を分析して、次にように結論づける。
「事件やニュ ースが為替に及ぼす影響は一般には非常に小さいということができます 。つまり 、ニュ ースで市場が動く事例はあるのですが 、自発的な市場のゆらぎのほうが通常ずっと大きく重要だということです 。先に述べたように 、 1兆円を投入する介入といえどもせいぜい 1時間程度価格を一方向に押し動かす程度の効果なのですから 、やはり 、外国為替の市場を支配しているのは 、自発的な市場のゆらぎであると言うことができます 。」
均衡理論が信じられてきたこれまでの経済学では、経済物理学のように、価格変動を、商品の売買が潜在的に持っている性質が生み出す自律的な運動だと考える視点を持たなかった。
経済物理学は生み出されて間もない研究分野ではあるが、これまでの経済学を根本的に転倒させてしまう潜在力を秘めているのではないだろうか。
一般に物理学と言えば物質の究極的な性質について扱う学問だと考えられているが、物理学の英訳語physicsとは、狭義の物質を扱う物理学だけではなく、科学そのもの意味する言葉でもある。
そして今や、物質だけに囚われることなく様々な現象が、物理学の研究対象になっているのだという。
そのような潮流にあって、経済を分析しようとする物理学が、経済物理学である。
これまでの経済学では、需要と供給のバランスによって価格が決定されるという均衡理論が信じられてきた。
つまり、供給に対して需要が多ければ価格は上がり、少なければ下がる、というものだ。
中学校の社会科の授業で教えられ、日々のニュースでも、この考え方に沿って、株や為替の値動きが説明されている。
ところが、著者は、あらゆる価格変動のデータを探してみてもその理論に当てはまる実例を見つけられなかったという。
一方、著者が提起する経済物理学の最も大きな特徴は、価格変動を、商品の取引の潜在的な性質が否応なく生み出す自律的な運動だと考える。
コンピューター上で、ある規則によって売買をするディーラーで構成される人工的な市場を設定し、シミュレートした結果として、次のような考えを導き出す。
「人工市場のシミュレ ーションでわかってきたのは 、市場参加者は 、過去の価格変動に大きく影響を受けており 、特に 、トレンドともよばれている直近の価格変動の傾向がこれからも続くと考えて行動する傾向がある 、ということです 。価格が少し下がり出した時 、しばらくの間は価格が下がり続けると思うディ ーラ ーがある程度おり 、彼らが市場を支配してしまう形になると 、市場価格はどんどん下落してしまいます 。人工市場の中では 、過去の価格変動の影響をいっさい受けないようなディ ーラ ーだけを寄せ集めたような仮想的な市場を構成する実験ができます 。そのような状況ではどうなるかというと 、やはりカオスが起こって価格はミクロには安定せず 、確率的に見えるような変動を起こすのですが 、暴落や暴騰と言えるような大きな変動は生み出さないことが確かめられます 。市場価格の直近の変化に比例して先読みをするような効果を組み込んだディ ーラ ーをその人工市場に入れてやると 、途端に市場は不安定になって暴騰したり暴落したりするようになります 。このような性質は 、直感的には 、価格が引き続いて下がり出した時に 、次にも 、同じように価格が下落するのではないかと予想することであり 、誰しも思いあたるふしがあることだと思います 。誰もが少しずつでもそのような性質を持つことによって 、市場全体としては 、暴落 ・暴騰がある頻度で必ず起こってしまうことになるのです 。」
加えて、事件やニュースがなどの外的な要因が、為替に及ぼす影響について、日銀の為替介入や9.11のような大事件が起こった後の為替を分析して、次にように結論づける。
「事件やニュ ースが為替に及ぼす影響は一般には非常に小さいということができます 。つまり 、ニュ ースで市場が動く事例はあるのですが 、自発的な市場のゆらぎのほうが通常ずっと大きく重要だということです 。先に述べたように 、 1兆円を投入する介入といえどもせいぜい 1時間程度価格を一方向に押し動かす程度の効果なのですから 、やはり 、外国為替の市場を支配しているのは 、自発的な市場のゆらぎであると言うことができます 。」
均衡理論が信じられてきたこれまでの経済学では、経済物理学のように、価格変動を、商品の売買が潜在的に持っている性質が生み出す自律的な運動だと考える視点を持たなかった。
経済物理学は生み出されて間もない研究分野ではあるが、これまでの経済学を根本的に転倒させてしまう潜在力を秘めているのではないだろうか。