刊行順とは逆に『戦前思想』を先に読んでから本書を読んでみた。主な関心は日本にあるのだが独と比較されることによってより鮮明になる。日本はどうしてこうなのか? ということ、例えば“右”とか”左”とか天皇制を含む“中途半端”とか。一歩引いてどちらも醒めた目で見るようで政治思想というものが全人格的に引き受けられているのではなくポジショントークにも思えてしまった。評者に構造的に物事を見る(見たい)という傾向があるのかもしれない(ただここではポストモダンも含めた全般構造)
そうした中で、残りの人生における「政治思想との付き合い方」=どの程度ハマるかハマらないか、や天皇制を含めた「この国の形」に関する自己の考えがより固まってきたのは具体的な歴史的知識以上に本書の効用であった。それは著者の意図とは異なるかもしれないが。
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日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書) 新書 – 2005/7/15
仲正 昌樹
(著)
なぜ謝るのか? なぜ謝らないのか?
根本から解き明かす
本書は、「過去の清算」を軸にしてドイツと日本の六十年間の「戦後思想」を比較しよう
とするものである。
一応はドイツ思想史研究者である私が、学生時代からずっと感じてきた課題や疑問を、な
るべく多くの読者に理解してもらえる形で呈示したいと思っている。
ドイツと日本の戦後思想は似ているように見えて、微妙なところで無視し得ない「違い」
を示しているが、その違いを可能な限り、歴史的・政治的な事情に即して分析することを
試みるつもりである。また、そうしたドイツとの対比を通して、日本が「自らの過去」に
対して曖昧な姿勢をとり続けているというのは、そもそもどういうことであるのか、でき
る限り具体的に描き出してみたい、と少々欲張りなことを考えている。(「はじめに」よ
り)
◆素朴な疑問から考えてみる――誰も書いていなかった日独戦後比較思想史
○「戦争責任」は誰にあったのか
○なぜ日本は「人道に対する罪」に問われなかったのか
○「普通の国民」も加害者なのか
○ドイツはどうやって「反省」したのか
○なぜ日本の左翼は護憲主義になったのか
○なぜ日本は「何でもマルクス主義」になったのか
○日本で「過去の清算」議論が進まないのはなぜか
根本から解き明かす
本書は、「過去の清算」を軸にしてドイツと日本の六十年間の「戦後思想」を比較しよう
とするものである。
一応はドイツ思想史研究者である私が、学生時代からずっと感じてきた課題や疑問を、な
るべく多くの読者に理解してもらえる形で呈示したいと思っている。
ドイツと日本の戦後思想は似ているように見えて、微妙なところで無視し得ない「違い」
を示しているが、その違いを可能な限り、歴史的・政治的な事情に即して分析することを
試みるつもりである。また、そうしたドイツとの対比を通して、日本が「自らの過去」に
対して曖昧な姿勢をとり続けているというのは、そもそもどういうことであるのか、でき
る限り具体的に描き出してみたい、と少々欲張りなことを考えている。(「はじめに」よ
り)
◆素朴な疑問から考えてみる――誰も書いていなかった日独戦後比較思想史
○「戦争責任」は誰にあったのか
○なぜ日本は「人道に対する罪」に問われなかったのか
○「普通の国民」も加害者なのか
○ドイツはどうやって「反省」したのか
○なぜ日本の左翼は護憲主義になったのか
○なぜ日本は「何でもマルクス主義」になったのか
○日本で「過去の清算」議論が進まないのはなぜか
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2005/7/15
- ISBN-10433403313X
- ISBN-13978-4334033132
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2005/7/15)
- 発売日 : 2005/7/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 244ページ
- ISBN-10 : 433403313X
- ISBN-13 : 978-4334033132
- Amazon 売れ筋ランキング: - 213,825位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2015年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても勉強になりました。
なぜ日中関係や日韓関係が良くないのか、少し分かりました。
なぜ日中関係や日韓関係が良くないのか、少し分かりました。
2016年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルや要約からすると戦後補償についての考察かと思って購入してたものの、実際は前半だけにそのことについて触れているのが残念だった。中盤からはマルクス主義について十分な知識がある人でないと、著者の文章を理解することは難解であろうと思われる。
また全体として分かりずらい文章と感じるのは、それは著者の文章の書き方が、読み手の知識をあまり考慮していなく、著者と同等の知識をもつ読者に対してということが前提になっていることに起因しているからだと思う。使用する単語に対しての説明不足、それから読み手にとって必要と感じれない著者の感情を織り交ぜた文章なども点在しており、人に物事を伝えるという視点で評価するなら、この著書は改善点がかなりあるように思います。
著書前半にはなるほどと頷けることも多かったですが、上述の理由によりレビュー評価を2つ星とします。
また全体として分かりずらい文章と感じるのは、それは著者の文章の書き方が、読み手の知識をあまり考慮していなく、著者と同等の知識をもつ読者に対してということが前提になっていることに起因しているからだと思う。使用する単語に対しての説明不足、それから読み手にとって必要と感じれない著者の感情を織り交ぜた文章なども点在しており、人に物事を伝えるという視点で評価するなら、この著書は改善点がかなりあるように思います。
著書前半にはなるほどと頷けることも多かったですが、上述の理由によりレビュー評価を2つ星とします。
2006年11月18日に日本でレビュー済み
内容に関しては解り易いが、それを今度は己れの口でもって説明せよと言われりゃあどうするよ?
出来ないよ。
そもそも明治以来の「思想」なんてものは全て外からの借り物であって、我が国思想なんざそうした西洋の真似や鸚鵡返しに過ぎないのだし、我が国で思想を語るものならば、直ぐ様空虚となってしまう。
そう、この本では我が国のニセモノ思想の無惨さを著した良書とも言えます。
しかし最近は新書と銘打ってもこのような難しい内容で綴られた物(本書は至って平易だが)もあれば、己れのエッセイをさも論文めいた偏見まみれみたいな本もあり、出版業界も学者さんも幾ら大壮なこと言っても「腹が減っては戦は出来ぬ」のですなあ。
思想が現実(世間に媚ること)に屈服するから、我が国では思想なんぞ流行らない。
出来ないよ。
そもそも明治以来の「思想」なんてものは全て外からの借り物であって、我が国思想なんざそうした西洋の真似や鸚鵡返しに過ぎないのだし、我が国で思想を語るものならば、直ぐ様空虚となってしまう。
そう、この本では我が国のニセモノ思想の無惨さを著した良書とも言えます。
しかし最近は新書と銘打ってもこのような難しい内容で綴られた物(本書は至って平易だが)もあれば、己れのエッセイをさも論文めいた偏見まみれみたいな本もあり、出版業界も学者さんも幾ら大壮なこと言っても「腹が減っては戦は出来ぬ」のですなあ。
思想が現実(世間に媚ること)に屈服するから、我が国では思想なんぞ流行らない。
2006年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昨今の国連の常任理事国拡大の議論において、日本、独、ブラジルおよび印度の常任理事国への加入が話題になっているが、同じ敗戦国である日本と独に対して、国際社会の観方が異なっているように感じていた(注)のが、本書を読み始めたきっかけである(両国の戦後の戦争責任の取り方等について比較して理解することが目的)。しかしながら、これについて書かれていたのは第一章のみで、第二章以降は第二次世界大戦が両国の思想史に落とす影響を踏まえての思想史の概観である。その内容は(自分を含む)思想史に興味のない人にはちょっと詳細すぎるが、その変遷を辿ることで、日本人がアバウトでドイツ人が世界で特異なほど理屈っぽいという国民性に、先の大戦の結果が(地政学的、戦争責任論など)が影響していることが推察される。
独に関するキーワードとしては、国民国家(単一民族国家)、ドイツ人としてのアイデンティティー(とホロコースト)、地政学的な脅威による緊張感とマルクス主義、また、日本については、与えられた西欧化、戦後の国体の維持(皇国日本)、一億総懺悔、リアリティーの無い学問としてのマルクス主義、であると思う。
日本と独の戦争責任論を比較すると、戦争の責任を軍部に押し付けて、原爆の被害者となったことで被侵略国に対する人道上の罪を忘れてしまったかのような日本人と(単純な反戦平和論)、国家が謝罪し解決すべき罪だけでなく、(なぜ、ユダヤ人迫害→ホロコーストを許してしまったのかという)個人の内省を促すような罪(キリスト教の原罪に繋がるような)も問題にしてきた独、という違いが存在している。
アジアの隣国との関係を考えていく上で、本書の第一章はぜひ読んでみる価値があると思う。
注:常任理事国拡大問題は、単純に「(利害関係のある)上記四カ国の隣国が反対」という構図である。
独に関するキーワードとしては、国民国家(単一民族国家)、ドイツ人としてのアイデンティティー(とホロコースト)、地政学的な脅威による緊張感とマルクス主義、また、日本については、与えられた西欧化、戦後の国体の維持(皇国日本)、一億総懺悔、リアリティーの無い学問としてのマルクス主義、であると思う。
日本と独の戦争責任論を比較すると、戦争の責任を軍部に押し付けて、原爆の被害者となったことで被侵略国に対する人道上の罪を忘れてしまったかのような日本人と(単純な反戦平和論)、国家が謝罪し解決すべき罪だけでなく、(なぜ、ユダヤ人迫害→ホロコーストを許してしまったのかという)個人の内省を促すような罪(キリスト教の原罪に繋がるような)も問題にしてきた独、という違いが存在している。
アジアの隣国との関係を考えていく上で、本書の第一章はぜひ読んでみる価値があると思う。
注:常任理事国拡大問題は、単純に「(利害関係のある)上記四カ国の隣国が反対」という構図である。
2006年3月12日に日本でレビュー済み
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本書のタイトルから、敗戦と言う結果が思想に与えた影響や、戦争責任に対する論じ方、戦後処理に対する思想的裏付け、と言ったものに関する日独両国の違いが書かれているのかと思ったが、戦争と思想を絡めた話が占める割合は全体の半分くらいである。特にポストモダンの章になると、戦争絡みの話は出てこないので、同じ第二次大戦の敗戦国である日独のみを比較することの意味が、あまり感じられない
現時点での第二次大戦の意味づけや戦争責任、戦後補償などに対する日独の思想の違い知りたかった私にとっては不満の残る著作である。
現時点での第二次大戦の意味づけや戦争責任、戦後補償などに対する日独の思想の違い知りたかった私にとっては不満の残る著作である。
2005年9月25日に日本でレビュー済み
以前からきちんと知りたいと思っていた、日本とドイツの戦後処理に関して、簡潔にまとめられた好著である。
特に本書は、著者自ら「自分もそこに属する」と明言する、左翼系知識人に対する警鐘となる内容を含んでおり、リベラル系に分類されながら、単純に「ナショナリズムよくない、歴史教科書よくない」だけを連呼する最近の貧弱な知識人と一線を画する、「対話」を重視する著者の政治的姿勢をよく表していると思われる。
結論を端的に述べてしまえば、「ドイツと日本の戦後処理は、それぞれの国情や歴史、地政学の違いに相当するもので、単純に『ドイツは反省しているからよい。日本は反省していないからよくない』と言ってしまえるものではない」というものだ。この結論は妥当なものであると思うし、「見習うべきものは見習うべき」だという著者の意見も至極まっとうなものであろう。丸山真男に代表される戦後知識人なるものは、西欧近代主義・西欧崇拝主義から脱することができずに、ただドイツを神格化してしまった節がある。もういい加減そういう神格化からは脱する時期のはずだ。
本著者の著作は、いずれもタイムリーかつ、従来の戦後民主主義サヨクの本からは一線を画した、バランスの取れたものである。本書に興味を惹かれた方は、別の著作にも触れることをお勧めしたい。
特に本書は、著者自ら「自分もそこに属する」と明言する、左翼系知識人に対する警鐘となる内容を含んでおり、リベラル系に分類されながら、単純に「ナショナリズムよくない、歴史教科書よくない」だけを連呼する最近の貧弱な知識人と一線を画する、「対話」を重視する著者の政治的姿勢をよく表していると思われる。
結論を端的に述べてしまえば、「ドイツと日本の戦後処理は、それぞれの国情や歴史、地政学の違いに相当するもので、単純に『ドイツは反省しているからよい。日本は反省していないからよくない』と言ってしまえるものではない」というものだ。この結論は妥当なものであると思うし、「見習うべきものは見習うべき」だという著者の意見も至極まっとうなものであろう。丸山真男に代表される戦後知識人なるものは、西欧近代主義・西欧崇拝主義から脱することができずに、ただドイツを神格化してしまった節がある。もういい加減そういう神格化からは脱する時期のはずだ。
本著者の著作は、いずれもタイムリーかつ、従来の戦後民主主義サヨクの本からは一線を画した、バランスの取れたものである。本書に興味を惹かれた方は、別の著作にも触れることをお勧めしたい。
2006年5月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本に書かれている内容の多くが、著者が論点としているはずの「過去の清算」と関係が薄い内容であり、しかも戦後の日本の左翼思想をポートピア的なものと皮肉っているように見受けられる。よって、右派的な立場から読んでも、左派思想に哀れみを感じさせるところが少なくない。
ただ、思想史上の流れや出来事などが淡々と書かれていることもあり、背景をあまり知らない人がその内容を追うのは疲れる。もう少し、思想史の概要を入れてもらったりや、専門用語を簡易な言葉に置き換えて欲しかった。また、このようなタイトルにし、かつ戦争責任を言及しているはずなのに、単なる思想史を述べたもののように感じられるのは、大衆的な思想、つまり世論を、学問的にではなく感情も交えた生々しいものとして取り扱うという点が抜けているせいであろう。
ただ、思想史上の流れや出来事などが淡々と書かれていることもあり、背景をあまり知らない人がその内容を追うのは疲れる。もう少し、思想史の概要を入れてもらったりや、専門用語を簡易な言葉に置き換えて欲しかった。また、このようなタイトルにし、かつ戦争責任を言及しているはずなのに、単なる思想史を述べたもののように感じられるのは、大衆的な思想、つまり世論を、学問的にではなく感情も交えた生々しいものとして取り扱うという点が抜けているせいであろう。