メタフィクショナルな探偵を何人も創り出している作家麻耶雄嵩の連作短編集。
麻耶雄嵩作品はアンチミステリと言われるものだったが、もはやその枠を越えミステリの可能性を押し広げている前衛的と言って良いような作品が多いが、そんな中にあって貴重な正統派(より)の名探偵であり、デビュー作「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」にも登場した木更津悠也が主人公となっている。変化球のアイデアに目がいきがちだが麻耶雄嵩は明らかにパズラーのロジックも得意としており、だから変化球でメタな探偵でも、どっちらけになるような(それもそれでありだが)オチにならず、理路整然としたパズラーの本格ミステリとして成立している。そこで木更津悠也のこの作品は、飛び道具は抑えめで純粋な推理小説を前面に押し出した形になっている。「名探偵 木更津悠也」というど直球なタイトルにもそれが表れているように思える。
とはいえ、世界観や登場人物のやり取りの面白さはいつも通りで、一癖ある手掛かりだが何となれば読者でも解けそうに思えるのが推理小説の名を冠するに相応しいものとなっている。真相にも一捻り加わって好みがでるかもしれないが、自分の中では再読に耐えるほど面白かった。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
名探偵 木更津悠也 (カッパ・ノベルス) 新書 – 2004/5/20
麻耶 雄嵩
(著)
京都某所の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された…。
柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは? 一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)
京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。
本格推理の極北4編。名探偵・木更津悠也の活躍を、とくにご堪能あれ。
柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ。四角く切り取られた犯行現場のカーテンが意味するものは? 一同を集めて事件の真相を看破しようとする木更津だが…。(「白幽霊」)
京都の街に出没する白い幽霊に導かれるように事件は起こる。
本格推理の極北4編。名探偵・木更津悠也の活躍を、とくにご堪能あれ。
- 本の長さ260ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2004/5/20
- ISBN-104334075649
- ISBN-13978-4334075644
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
京都の古めかしい洋館・戸梶邸で、資産家が刺殺された。柵もあってしぶしぶ依頼を引き受けた名探偵・木更津悠也を待ち受けていたのは、ひと癖もふた癖もある関係者たちの鉄壁のアリバイ…。「白幽霊」ほか本格推理全4編収録。
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2004/5/20)
- 発売日 : 2004/5/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 260ページ
- ISBN-10 : 4334075649
- ISBN-13 : 978-4334075644
- Amazon 売れ筋ランキング: - 515,618位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年4月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
翼ある闇にて登場した"名探偵"木更津悠也が活躍する短編集。読んでいて楽しめたが個人的に短編の質は「メルカトルかく語りき」や「メルカトルと美袋のための殺人」より劣る。
2024年1月2日に日本でレビュー済み
本作は麻耶雄嵩的には一見「まとも」な作品群と言えます。
逆に言えば本作が書かれた2004年までの麻耶雄嵩作品が異常なのですが、奇抜さや独創性が前面に出ており、地に足がついていなかったようにも見えます。もちろんこの時期の作品は、若い頃にしか書けない作品で、大好きですが、本作は少し毛色が違います。
個人的に一番のお気に入りは一作目の「白幽霊」。図式がとにかく美しい。脳天に突き抜けるような美しさ。
何も考えずに本作を読むと確かに「地味な凡作の極み」なのですが、本作が犯人当てだった場合に真実に辿り着ける読者は何%いるでしょうか?
ここまで精緻で、ロジックが美しい本格ミステリは滅多に出逢えませんし、自分が好きな短編本格ミステリベスト10には入るように思います。
逆に本作を「凡作」と感じてしまうようだと、なかなか厳しいかもしれません。
1990-2000年代の麻耶雄嵩の評価は、「デビュー作が人気だが、それ以外は一部のファンにカルト的な人気があるだけの無冠のマイナー作家」という認識でした。
「鴉」が本格ミステリベスト10で1位に輝いたりもしましたが、綾辻行人崩れのような作風で、今から読み返すとあまり「麻耶雄嵩的」ではなく、迷走していたようにも見えます。
それが一気にメジャーになったのが、2010-2015年の「貴族探偵」「隻眼の少女」「メルカトルかく語りき」「さよなら神様」などの麻耶雄嵩の全盛期であり、本格ミステリの権化のような精緻なロジックと、本格ミステリに対する麻耶雄嵩独特の問題意識・新規性が結びついた傑作群で、数々の賞を総なめにしました。
そういう歴史から見ると、2000年代はまさに麻耶雄嵩が羽化するための過渡期でした。
この「名探偵木更津悠也」は麻耶雄嵩が本格ミステリ的なロジック、作り込みに正面から取り組みだして、作品のクオリティを1段階引き上げた、基礎体力をつけることに一役買った作品のように思っています。
この作品なくしては後の作品群は産まれなかったと思います。
確かに全体的に「地味」ではありますが、麻耶雄嵩のターニングポイントとして非常に重要な作品であり、派手さはないものの、個人的には大好きな短編がぎっちり詰まった宝箱のような作品です。
逆に言えば本作が書かれた2004年までの麻耶雄嵩作品が異常なのですが、奇抜さや独創性が前面に出ており、地に足がついていなかったようにも見えます。もちろんこの時期の作品は、若い頃にしか書けない作品で、大好きですが、本作は少し毛色が違います。
個人的に一番のお気に入りは一作目の「白幽霊」。図式がとにかく美しい。脳天に突き抜けるような美しさ。
何も考えずに本作を読むと確かに「地味な凡作の極み」なのですが、本作が犯人当てだった場合に真実に辿り着ける読者は何%いるでしょうか?
ここまで精緻で、ロジックが美しい本格ミステリは滅多に出逢えませんし、自分が好きな短編本格ミステリベスト10には入るように思います。
逆に本作を「凡作」と感じてしまうようだと、なかなか厳しいかもしれません。
1990-2000年代の麻耶雄嵩の評価は、「デビュー作が人気だが、それ以外は一部のファンにカルト的な人気があるだけの無冠のマイナー作家」という認識でした。
「鴉」が本格ミステリベスト10で1位に輝いたりもしましたが、綾辻行人崩れのような作風で、今から読み返すとあまり「麻耶雄嵩的」ではなく、迷走していたようにも見えます。
それが一気にメジャーになったのが、2010-2015年の「貴族探偵」「隻眼の少女」「メルカトルかく語りき」「さよなら神様」などの麻耶雄嵩の全盛期であり、本格ミステリの権化のような精緻なロジックと、本格ミステリに対する麻耶雄嵩独特の問題意識・新規性が結びついた傑作群で、数々の賞を総なめにしました。
そういう歴史から見ると、2000年代はまさに麻耶雄嵩が羽化するための過渡期でした。
この「名探偵木更津悠也」は麻耶雄嵩が本格ミステリ的なロジック、作り込みに正面から取り組みだして、作品のクオリティを1段階引き上げた、基礎体力をつけることに一役買った作品のように思っています。
この作品なくしては後の作品群は産まれなかったと思います。
確かに全体的に「地味」ではありますが、麻耶雄嵩のターニングポイントとして非常に重要な作品であり、派手さはないものの、個人的には大好きな短編がぎっちり詰まった宝箱のような作品です。
2015年12月27日に日本でレビュー済み
翼ある闇を読んだとき探偵ではなく助手役が事件の真相を暴くという新鮮さに感動しました
本書はそれに近く助手役が探偵役をそれとなく誘導し事件を解決させるという作風です
しかし助手は探偵役を見下しているというわけではなく探偵として尊敬し助手役として甘んじる絶妙な関係
短編4作品すべて犯人の心理や行動によって事件が不可解なものになっているのでとても出来のいい作品ではないかと思います
本書はそれに近く助手役が探偵役をそれとなく誘導し事件を解決させるという作風です
しかし助手は探偵役を見下しているというわけではなく探偵として尊敬し助手役として甘んじる絶妙な関係
短編4作品すべて犯人の心理や行動によって事件が不可解なものになっているのでとても出来のいい作品ではないかと思います
2007年6月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「夏と冬の奏鳴曲」、「鴉」などの衝撃作で読者を驚かせる作者が、ある構想を持って読者に送る連作短編集。探偵役を務めるのは木更津、ワトソン役は香月。各作品は"白幽霊"という共通のモチーフを持つものの、内容的には独立している。
「白幽霊」は平凡なお屋敷もの。「禁区」は高校生の情痴殺人もの。「交換殺人」は無茶な交換殺人計画。「時間外返却」はこれまた情痴殺人もの。いずれの作品も目新しい趣向やトリックはなく、凡庸の極み。
だが、全編を通じて作者はある試みをしているのだ。読んで行くと自然に分かるのだが、作者はミステリのある可能性を拡げようと苦心しているのである。だが、ミステリは読んで詰まらなければそれまでで、本作ではその試みは完全に失敗していると思う。作者の手前勝手な試みではなく、読者を楽しませる作品の提供を第一に考えて欲しい。
「白幽霊」は平凡なお屋敷もの。「禁区」は高校生の情痴殺人もの。「交換殺人」は無茶な交換殺人計画。「時間外返却」はこれまた情痴殺人もの。いずれの作品も目新しい趣向やトリックはなく、凡庸の極み。
だが、全編を通じて作者はある試みをしているのだ。読んで行くと自然に分かるのだが、作者はミステリのある可能性を拡げようと苦心しているのである。だが、ミステリは読んで詰まらなければそれまでで、本作ではその試みは完全に失敗していると思う。作者の手前勝手な試みではなく、読者を楽しませる作品の提供を第一に考えて欲しい。
2008年4月5日に日本でレビュー済み
2004年にカッパ・ノベルスとして出たものの文庫化。
京都の住宅街に出没する白い幽霊を軸に、4つの事件が語られている。
4篇の出来はそれなり。面白かったのは「交換殺人」。いろいろバリエーションのあるテーマだが、ひとひねりあるプロットで楽しめた。
「白幽霊」もまあまあ。犯行の構図が巧みにズラしてあり、それに気が付くと一挙に事件が解決して爽快。
しかしながら、本書を特徴づけているのは、物語全体に巧妙な仕掛けがある点。やな感じのトリックだが、これはこれで面白い。私は気に入った。メタ・ミステリとしては、成功している部類ではないか。
通読して、全体のトリックに気付いて、再読する。二度楽しめる本であった。
京都の住宅街に出没する白い幽霊を軸に、4つの事件が語られている。
4篇の出来はそれなり。面白かったのは「交換殺人」。いろいろバリエーションのあるテーマだが、ひとひねりあるプロットで楽しめた。
「白幽霊」もまあまあ。犯行の構図が巧みにズラしてあり、それに気が付くと一挙に事件が解決して爽快。
しかしながら、本書を特徴づけているのは、物語全体に巧妙な仕掛けがある点。やな感じのトリックだが、これはこれで面白い。私は気に入った。メタ・ミステリとしては、成功している部類ではないか。
通読して、全体のトリックに気付いて、再読する。二度楽しめる本であった。
2006年3月5日に日本でレビュー済み
麻耶雄嵩が普通の推理小説家に見える、何かの間違いか、と思った。
しかし、よくよく考えると、香月と木更津の関係性が、一般的なホームズとワトソンではない。ワトソンが、努力した結果ワトソンでいられている。
何やら、東野圭吾の「名探偵の掟」にも似た、本格推理の境界をさまよっている作品だと思う。
結局、アンチ本格推理なのか?
麻耶雄嵩の作品の中で、一番一般受けしそうな連作だと思った。
しかし、よくよく考えると、香月と木更津の関係性が、一般的なホームズとワトソンではない。ワトソンが、努力した結果ワトソンでいられている。
何やら、東野圭吾の「名探偵の掟」にも似た、本格推理の境界をさまよっている作品だと思う。
結局、アンチ本格推理なのか?
麻耶雄嵩の作品の中で、一番一般受けしそうな連作だと思った。
2007年1月17日に日本でレビュー済み
白幽霊というのがキーワードとなった短編4編の連作ミステリ。
出張時のサラリーマンが、新幹線の中で気軽に読めるような正統派で軽い内容のミステリだ。
麻耶氏特有の通常のミステリの枠にとらわれない(或いは破壊するような)「驚愕のエンディング」「破綻スレスレ」「もうダメ………」というカタルシスを味わいたい方には、やや物足りなく、肩すかしだと思う。
名探偵木更津とワトソン役の香月の関係は、氏のデビュー作を読めば判ることだが、凄いのは香月である。一般的なミステリでは、ワトソン役というのは、ボケ役に徹し、読者への解説者・仲介者という役割であるが、本書の香月は、探偵をさりげなく操っている、という趣向が面白い。
ファンデーションに対する第二ファンデーションのようなものだ。
出張時のサラリーマンが、新幹線の中で気軽に読めるような正統派で軽い内容のミステリだ。
麻耶氏特有の通常のミステリの枠にとらわれない(或いは破壊するような)「驚愕のエンディング」「破綻スレスレ」「もうダメ………」というカタルシスを味わいたい方には、やや物足りなく、肩すかしだと思う。
名探偵木更津とワトソン役の香月の関係は、氏のデビュー作を読めば判ることだが、凄いのは香月である。一般的なミステリでは、ワトソン役というのは、ボケ役に徹し、読者への解説者・仲介者という役割であるが、本書の香月は、探偵をさりげなく操っている、という趣向が面白い。
ファンデーションに対する第二ファンデーションのようなものだ。