内容としては非常に簡素で、陸軍二等兵・東堂太郎が博覧強記をもって上官の不備をつきやり込めてゆく、という筋が主となっています。ポイントとなるのは、不備をつかせるだけの整然とした規則という論理を、守る存在があったということでしょう。現実に軍内部でそう理路整然とし正しかったとしても上が絶対だ問答無用とねじ伏せられたろうと思われますが。成り立たせたのは鬼軍曹の大前田で、彼が退場することによって本作に幕が降りるのは、必然であったでしょうね。
日本固有の、それもだいぶ古色蒼然としてきたイメージでありますが、文学と言えば小説であり純文学だというもの。そしてそのイメージにある純文学である小説とは、むつかしい漢字、言いまわしがガチガチに詰まった深刻な内容であるもの。それはある部分生きていて、例えば芥川賞受賞作品などに見られる純文学は、文章からみればへなへなすかすかしたものが多数派を占めるようになりましたが、深刻というのか胸がわるくなるようなもの、常軌を逸したものほど好まれる、高く評価される傾向が見受けられますね。その良否、好悪はおくとして、本作ほど古色蒼然とした純文学の小説の特徴をあらゆる意味で完備したものはない、ように思われます。古今東西の文学作品からの引用、執拗なまでの緻密な描写、言葉の正確さへの執念。それでいて、あまりにも突き詰めていったために、古色蒼然としたイメージを突き破ってしまっている、と感じるのは私だけでしょうか。それは文章のみならず、表現だとか取り扱いについても。主人公とおなじく徹底的に正攻法、理路整然とゆき、あまりにゆきすぎるため、そこらの軽々しい目を引くためだけにやっている奇を衒ったものをはるかに越えた威容が現れるかんじ。発表登場からだろうと思われますが、いまの(とりあえず)純文学といわれる小説のなかにおいたとき、あまりに異質すぎて戸惑いを覚える人がほぼほぼなのではと推察します。私自身、混乱しますし。軽いもの、ただ奇を衒っただけのもの、それが悪いとは思いませんが、それだけではあまりに貧しいですね。不満や疑問を感じている方、ときには失望や絶望をもたれる方もいるのではと思われます。これだから日本の小説など読んでいられないのだ、という歎きを見聞したことが実際にありますし。そんな方々に、ぜひ手にとっていただきたいものですね。
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神聖喜劇: 長編小説 (第1巻) (光文社文庫 お 9-5) 文庫 – 2002/7/1
大西 巨人
(著)
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- ISBN-104334733433
- ISBN-13978-4334733438
- 出版社光文社
- 発売日2002/7/1
- 言語日本語
- 本の長さ578ページ
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2002/7/1)
- 発売日 : 2002/7/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 578ページ
- ISBN-10 : 4334733433
- ISBN-13 : 978-4334733438
- Amazon 売れ筋ランキング: - 171,851位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2013年6月10日に日本でレビュー済み
登場人物のほとんどにリアリティを感じない不思議な小説。
名作・佳作というよりもしかしたら奇作かも知れない。
主人公・東堂太郎の異常な記憶力 にリアリティがないのは良いとして、
一兵卒が軍隊内で延々と「正論」を述べることなど可能だったのか?
でもそんな詮索を乗り越えてやはり面白 い。
確かに大作だが、司馬遼太郎の長編をたくさん読むなら、
一度でいいからこっちも覗いて損はない。
名作・佳作というよりもしかしたら奇作かも知れない。
主人公・東堂太郎の異常な記憶力 にリアリティがないのは良いとして、
一兵卒が軍隊内で延々と「正論」を述べることなど可能だったのか?
でもそんな詮索を乗り越えてやはり面白 い。
確かに大作だが、司馬遼太郎の長編をたくさん読むなら、
一度でいいからこっちも覗いて損はない。
2020年4月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
全5巻を読み終えての感想だが、これは凄い小説だ。日本にこんな小説があり得たとは!
人間に対する深い洞察、緻密なストーリー展開、スリル、ユーモア、個性的で魅力的な登場人物達(主人公東堂は勿論、大前田軍曹、安芸の彼女、村崎古兵、冬木、曾根田、橋本、吉原 等々)どれを取っても、これだけのものはなかなかない。私の文学体験(極めて浅薄なものだが)からすれば、これに比肩し得るのは「カラマーゾフ」くらいしか思い浮かばない。第二巻目で解説者が書いていたが、「迷わず全巻買い揃えるべきだ」という意見には全く同感である。昨今のラノベのような軽い作品に馴れている人達にも、たまにはこういう骨太で重厚なものを読んでみることを強く薦める。
人間に対する深い洞察、緻密なストーリー展開、スリル、ユーモア、個性的で魅力的な登場人物達(主人公東堂は勿論、大前田軍曹、安芸の彼女、村崎古兵、冬木、曾根田、橋本、吉原 等々)どれを取っても、これだけのものはなかなかない。私の文学体験(極めて浅薄なものだが)からすれば、これに比肩し得るのは「カラマーゾフ」くらいしか思い浮かばない。第二巻目で解説者が書いていたが、「迷わず全巻買い揃えるべきだ」という意見には全く同感である。昨今のラノベのような軽い作品に馴れている人達にも、たまにはこういう骨太で重厚なものを読んでみることを強く薦める。
2023年4月19日に日本でレビュー済み
すごいとは聞いてはいましたが、ここまですごいと思いませんでした。
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のレベルだと思います。
つまり、日本文学の不滅の長編の一つに入ると思います。
もっと早く読んでいればよかったと思いました。
この本がすごいのは、戦争小説というジャンルを軽く飛び越えた普遍性にあります。
日本人をここまで徹底的に描いた作品を私は知りません。
旧日本軍の不条理といじめが徹底して描かれています。
日本軍がアメリカによる攻撃にかかわらず、遅かれ早かれ自壊するのは時間の問題だったことがわかります。
そしてこの、組織の不条理といじめの体質は、日本の会社や学校などに根強く残っているのです。
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のレベルだと思います。
つまり、日本文学の不滅の長編の一つに入ると思います。
もっと早く読んでいればよかったと思いました。
この本がすごいのは、戦争小説というジャンルを軽く飛び越えた普遍性にあります。
日本人をここまで徹底的に描いた作品を私は知りません。
旧日本軍の不条理といじめが徹底して描かれています。
日本軍がアメリカによる攻撃にかかわらず、遅かれ早かれ自壊するのは時間の問題だったことがわかります。
そしてこの、組織の不条理といじめの体質は、日本の会社や学校などに根強く残っているのです。
2012年6月23日に日本でレビュー済み
数年前、某フリーターが発表した『丸山眞男をひっぱたきたい』というエッセイが評判になったことがある。
戦時下や軍隊内においてこそ、格差・階級・差別が、転倒もしくはリセットされるという趣旨の、きわめて
単純で幼稚な戦争待望論であった。
上記某フリーターはじめ、上記エッセイに賛同した人々に、ぜひ本書を読んでもらいたい。
例えば、被差別部落出身かつ犯罪者の一兵隊 冬木の発する以下の一節をどう考えるか。
― 「いやになる。」 (中略) 「営門をくぐって軍服を着れば、裸の人間同士の暮らしかと思うとったら、
ここにも世の中の何やかんやがひっついて来とる。ちっとも変わりはありゃせん」
漢文調の文体、知的な言説、鋭く冷徹な洞察力など、表面上は男性的でハードな作品なのだが、
そのじつ、他者への「優しさ」「共感」に満ち溢れた、愛すべき傑作である。
以下余談だが―
映画 『戦場のメリークリスマス』 (あるいはヴァン・デル・ポストの『影の獄にて』) が好きな人は
きっとこの作品も気に入ると思う。
Amazonで購入
数年前、某フリーターが発表した『丸山眞男をひっぱたきたい』というエッセイが評判になったことがある。
戦時下や軍隊内においてこそ、格差・階級・差別が、転倒もしくはリセットされるという趣旨の、きわめて
単純で幼稚な戦争待望論であった。
上記某フリーターはじめ、上記エッセイに賛同した人々に、ぜひ本書を読んでもらいたい。
例えば、被差別部落出身かつ犯罪者の一兵隊 冬木の発する以下の一節をどう考えるか。
― 「いやになる。」 (中略) 「営門をくぐって軍服を着れば、裸の人間同士の暮らしかと思うとったら、
ここにも世の中の何やかんやがひっついて来とる。ちっとも変わりはありゃせん」
漢文調の文体、知的な言説、鋭く冷徹な洞察力など、表面上は男性的でハードな作品なのだが、
そのじつ、他者への「優しさ」「共感」に満ち溢れた、愛すべき傑作である。
以下余談だが―
映画 『戦場のメリークリスマス』 (あるいはヴァン・デル・ポストの『影の獄にて』) が好きな人は
きっとこの作品も気に入ると思う。
2011年8月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中学生時代から本書の存在を承知していたが、読まないと決めていた。
その後、個人的趣味の赴くままに、大量の戦史と戦記を読み、軍隊という場所の想像が容易につくようになってから、読み始めたい、そう考えはじめてさらに数十年、今日に至る。
いわば数十年がかりの準備を、この本を読むために行っていたようなものだ。
読み始めて88ページになった。
その感想は、「中学生時代に読まずに正解だった。時間をかけて、今読む。その楽しみに値する本だ」である。
軍隊の経験者なら、誰もが懐かしく思い出される所属軍隊の「聯隊歌」。歌詞全文を紹介したあと。筆者は、「この稚拙な歌詞は、対馬要塞重砲兵聯隊歌である」と、いきなり「稚拙」と切り捨ててから始まる!
そうだ。軍歌の歌詞はたいていが稚拙な漢語調だ。しかし、軍隊に所属した元軍人が、そうではないかと思っていた本心を発言することはない。本心だとしても、懐かしさのあまり、自分たちが歌い、歌わされた歌を、「稚拙」と切り捨てることは、なかなかできるものではない。
主人公の視点で描かれた、軍隊生活における兵士個人の感情の推移。体験からもたらされた感情の記録を、読み物として、ここまでまとめあげた力には感服するしかない。いや、感服などではない。これほど類似のものが存在しない、不思議な戦記(記録)が、今まであっただろうか。
主人公の軍隊生活とともに、これから数か月あるいは1年がかりで、この本を楽しみたいと思う。
その後、個人的趣味の赴くままに、大量の戦史と戦記を読み、軍隊という場所の想像が容易につくようになってから、読み始めたい、そう考えはじめてさらに数十年、今日に至る。
いわば数十年がかりの準備を、この本を読むために行っていたようなものだ。
読み始めて88ページになった。
その感想は、「中学生時代に読まずに正解だった。時間をかけて、今読む。その楽しみに値する本だ」である。
軍隊の経験者なら、誰もが懐かしく思い出される所属軍隊の「聯隊歌」。歌詞全文を紹介したあと。筆者は、「この稚拙な歌詞は、対馬要塞重砲兵聯隊歌である」と、いきなり「稚拙」と切り捨ててから始まる!
そうだ。軍歌の歌詞はたいていが稚拙な漢語調だ。しかし、軍隊に所属した元軍人が、そうではないかと思っていた本心を発言することはない。本心だとしても、懐かしさのあまり、自分たちが歌い、歌わされた歌を、「稚拙」と切り捨てることは、なかなかできるものではない。
主人公の視点で描かれた、軍隊生活における兵士個人の感情の推移。体験からもたらされた感情の記録を、読み物として、ここまでまとめあげた力には感服するしかない。いや、感服などではない。これほど類似のものが存在しない、不思議な戦記(記録)が、今まであっただろうか。
主人公の軍隊生活とともに、これから数か月あるいは1年がかりで、この本を楽しみたいと思う。
2016年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これほど骨太の男性的な文学作品が日本文学にあろうとは本当に驚きです。この作品は今こそ日本人にもっと読まれるべき傑作だと思います。それにしても、文庫で小さな文字を追うのはいささかつらいものがあります。是非、単行本での再刊を出版社にお願いしたい。
2017年6月28日に日本でレビュー済み
ある青年が軍隊に入り・・・というお話。
と上記しましたが、それだけでは何の要約にもなっていない大長編。一応戦争中の軍隊内のお話しなので、戦記文学の系譜に連なる作品かと思いますが、なにしろ文庫五分冊でそれぞれ500ページあり、合計2500ページに上る大長編という言葉でも包括出来ない長さの巨編であります。書き始めから終わりまで、25年掛かったのも納得の一大巨編。
主人公が軍隊内で様々なキャラクターと出会い、そのキャラクターそれぞれにいわくや過去があり、それが日本の歴史を総浚えする挿話になっていて、日本史を小説で再現したかの如き作品。その挿話が日本の共産主義、部落差別、軍事史、男尊女卑の歴史、貧富の格差等、あまり他の国に知られたくない日本史の恥部を描いていて、故に世界で日本の歴史を知る為に読んでもらいたい内容になっていて、これだけの情報量、情緒量を一作の纏めた著者の筆力に感銘を受けました。これはもう、日本の文学史どころか、世界の文学史に残る偉業だと思いました。
書名の「神聖喜劇」とはダンテの「神曲」の正確なタイトルだそうで、「神曲」が地獄巡りの小説だったと記憶しますが、この小説はさしずめ日本の地獄巡りの小説と言えそうな作品だと思います。正に神聖なる喜劇というか。
特に、部落の問題は日本で一番デリケートな問題で、ほんの少し語弊を招く、或いは誤解を招く表現があると圧力団体から凄いクレームが来るという、あまり触れたくない、或いは相当に神経を使う問題の為に、多くの人が避けて通る問題なので、ここまで突っ込んだ内容の小説のネタにした著者の勇気に恐れ入りました。実際に色々な方面からクレームや批判もあったかと思いますが、そういう事も覚悟の上でここまで踏み込んだ見識と尽力に脱帽です。
トマス・ピンチョン氏の超大作「重力の虹」に比肩する小説はあまり無いと思いますが、この作品はその数少ない作品だと思います。
広く世界に読まれたい、世界文学史に残る偉業。必読。
と上記しましたが、それだけでは何の要約にもなっていない大長編。一応戦争中の軍隊内のお話しなので、戦記文学の系譜に連なる作品かと思いますが、なにしろ文庫五分冊でそれぞれ500ページあり、合計2500ページに上る大長編という言葉でも包括出来ない長さの巨編であります。書き始めから終わりまで、25年掛かったのも納得の一大巨編。
主人公が軍隊内で様々なキャラクターと出会い、そのキャラクターそれぞれにいわくや過去があり、それが日本の歴史を総浚えする挿話になっていて、日本史を小説で再現したかの如き作品。その挿話が日本の共産主義、部落差別、軍事史、男尊女卑の歴史、貧富の格差等、あまり他の国に知られたくない日本史の恥部を描いていて、故に世界で日本の歴史を知る為に読んでもらいたい内容になっていて、これだけの情報量、情緒量を一作の纏めた著者の筆力に感銘を受けました。これはもう、日本の文学史どころか、世界の文学史に残る偉業だと思いました。
書名の「神聖喜劇」とはダンテの「神曲」の正確なタイトルだそうで、「神曲」が地獄巡りの小説だったと記憶しますが、この小説はさしずめ日本の地獄巡りの小説と言えそうな作品だと思います。正に神聖なる喜劇というか。
特に、部落の問題は日本で一番デリケートな問題で、ほんの少し語弊を招く、或いは誤解を招く表現があると圧力団体から凄いクレームが来るという、あまり触れたくない、或いは相当に神経を使う問題の為に、多くの人が避けて通る問題なので、ここまで突っ込んだ内容の小説のネタにした著者の勇気に恐れ入りました。実際に色々な方面からクレームや批判もあったかと思いますが、そういう事も覚悟の上でここまで踏み込んだ見識と尽力に脱帽です。
トマス・ピンチョン氏の超大作「重力の虹」に比肩する小説はあまり無いと思いますが、この作品はその数少ない作品だと思います。
広く世界に読まれたい、世界文学史に残る偉業。必読。