著者の怪奇小説は、私の知っている限りでは、最近復刊された「怪奇小説という〜」以外は、すべて短編である。
「雪崩蓮太郎」もののようなシリーズものもあるが、多くは単発ものだ。
それは、怪奇小説に対する著者のポリシーであろう。
たしか著者はアンソロジー「異形の白昼」のなかで、怪奇小説は短編にかぎる、ということを述べていたと思う。
「異形〜」は、なかなかにレベルの高い怪奇小説アンソロジーであった。
さて、本書は著者の怪奇小説集成である。
本書一冊を読めば、著者の怪奇小説に対する考え方が良く分かる。
エッセイ「死体を無事に消すまで」の中でも言及されていたが、著者は不気味な存在が、具体的にその姿を見せるのが好きではない。
正体の分からない恐怖が、じわじわとせまってくる、というのに著者は魅力を感じていた。
だから、一時期流行した「13日の金曜日」シリーズのようなスラッシャーホラーは、著者は気に入らなかっただろう。
キューブリック「シャイニング」とか、キングなら他に「it」なんかは好きそうだが。
文章で読むのには、確かに著者の言うとおり、具体的な姿を見せない怪異のほうが、ずっと恐ろしい。
本書を読むと、著者が「四谷怪談」よりも、「生きている小平次」や「牡丹灯籠」の怪異を愛した理由が良く分かる。
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血のスープ <怪談篇> (光文社文庫) 文庫 – 2003/4/10
都筑 道夫
(著)
- 本の長さ546ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2003/4/10
- ISBN-104334734758
- ISBN-13978-4334734756
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2003/4/10)
- 発売日 : 2003/4/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 546ページ
- ISBN-10 : 4334734758
- ISBN-13 : 978-4334734756
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,147,587位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2015年9月8日に日本でレビュー済み
私は、原則として、文庫本で本を集める主義なので、都筑道夫先生の「血のスープ」の単行本(祥伝社。1988年)を本屋で発見した時も、「都筑センセイの本だったら、どうせ、すぐ文庫本になるさ」と思って、放っといたのですが、これが意外にも、なかなか文庫化されず、ヤキモキされてしまいました。 ようやく「血のスープ」が文庫に収録されたのが、この都筑道夫コレクション(2003年)という形によってですので、本当に長く待たされたものでした。
都筑道夫氏の作品の特徴としては、その変わった小説の書き方があげられます。二人称の「やぶにらみの時計」や終盤白紙の「猫の舌に釘をうて」にはじまり、「誘拐作戦」「三重露出」「怪奇小説という題名の怪奇小説」など、氏が残してきた不思議な書き方の小説の題名をあげ始めますとキリがありません。
「血のスープ」は、都筑氏が書いた最後の長編じゃないかと思うのですが、この作品でも、先生はきちんと変な小説ファン?への期待を裏切りませんでした。先生が最後に放ったトリックは「読む文章」ではなく「見る文章」でした。50歳を超えた年齢になられても、なお、こんな新鮮な書き方ができるなんて、本当にすごい作家だったと思います。
本書が発売された同年に亡くなられた氏のご冥福をお祈りいたします。でも、本当はもっと長生きされて、不思議な小説をもっと沢山読ませていただきたかったです。
都筑道夫氏の作品の特徴としては、その変わった小説の書き方があげられます。二人称の「やぶにらみの時計」や終盤白紙の「猫の舌に釘をうて」にはじまり、「誘拐作戦」「三重露出」「怪奇小説という題名の怪奇小説」など、氏が残してきた不思議な書き方の小説の題名をあげ始めますとキリがありません。
「血のスープ」は、都筑氏が書いた最後の長編じゃないかと思うのですが、この作品でも、先生はきちんと変な小説ファン?への期待を裏切りませんでした。先生が最後に放ったトリックは「読む文章」ではなく「見る文章」でした。50歳を超えた年齢になられても、なお、こんな新鮮な書き方ができるなんて、本当にすごい作家だったと思います。
本書が発売された同年に亡くなられた氏のご冥福をお祈りいたします。でも、本当はもっと長生きされて、不思議な小説をもっと沢山読ませていただきたかったです。