最近、大河内傳次郎や大友柳太朗が演じる左膳映画を数作、面白く視聴したのですが、皆、ストーリーが似ているような似ていないような・・・？？？、一体、原作はどうなっているのだろうと思い、本書を購入しました。
巻末の縄田一男氏の解説によれば、丹下左膳が活躍する物語は、夜泣きの刀の異名を持つ乾雲坤竜（けんうん・こんりゅう）二刀の争奪戦（本書）と柳生家のこけ猿の壺の争奪戦の二つの作品があり、前者は、『新版大岡政談・鈴川源十郎の巻』として、林不忘の手によって昭和２年10月15日から翌３年5月31日まで「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」夕刊に連載され、後に題名が『丹下左膳・乾雲坤竜の巻』とされたとのことです。
文庫本ながら730ページ、新聞小説とは言え、読了するのに時間がかかりました。左膳はもとより、映画に登場する蒲生泰軒や櫛巻お藤の素性が分かったのが収穫で、随所にある剣の対決場面は迫力満点。ただ、左膳も含め登場する剣士達の行動の動機がほとんど女性を求めてなのが、少し寂しい（笑）。中盤、話の展開にマンネリも感じだしたところで、大岡忠相登場、神出鬼没・乞食風体の蒲生泰軒の活躍・・・と、語りも講談調になり、面白かった。本書には明確な主人公と言える人物が居ないような印象で、敢えていうなら、諏訪栄三郎か？。もともと、左膳が主人公の物語として書き始められたのではなく、連載中に左膳人気が沸騰したようなので、そのような内容になってしまったのかもしれません。
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