家族のいる平凡な男が"C"という人物からの手紙を受けて、殺人を犯します。被害者は大物政治家、あどけない少女、臨月の妊婦、新婚の若妻などです。各章の初めに、絶滅動物の記事が挿入され、また小説のところどころで殺人の意図がほのめかされます。殺人の動機は、人類が多くの動植物を絶滅し、今もなお絶滅させながら、のうのうと生きているからというものです。故に、誰もが被害者になりうる可能性があります。そうはいっても、これらの殺人は理不尽極まりなく、特に少女や臨月の妊婦や若妻の殺人を容認できる理由は見当たりません。しかし、主人公は実行します。それは、彼の家族が人質に取られているからです。殺らなければ、家族が殺されるという事態に直面して彼が取った行動は、"C"の命令に従うというものでした。
大石作品にしては珍しく超自然的存在の介入があります。それまでの作品の主人公が、異常性欲や何らかの人間的欠陥、特異な嗜好ゆえに犯罪に手を染めていたのとは対照的に、本作の主人公にはそういう要素はありません。"C"の命令がなければ、そして家族が人質に取られていなければ、殺人に手を染めないような人物です。
本作が推理小説であれば、明智小五郎のような名探偵が現れ、論理によって明解に不可解な事象をわかりやすい枠組みに整理・解明するのでしょう。しかし、本作は推理小説ではありません。ひたすら理不尽が続き、読者はかなり不愉快な思いをさせられるでしょう。殺人の理由は、全く容認できない理由ばかりです。
本作は、昨今、癒しやハッピーエンドを約束する物語の多い中で、ひたすらに理不尽を描き出した点で稀有な作品でしょう。甘ったるい物語を好む人にとっては投げ出したくなる作品ですが、徹底的に理不尽を描いている点で本作は優れた暗黒小説と言えるでしょう。言うまでもなく、快不快と作品の評価は別物です。
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人を殺す、という仕事 (光文社文庫 お 39-3) 文庫 – 2007/9/6
大石 圭
(著)
- 本の長さ425ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2007/9/6
- ISBN-104334743048
- ISBN-13978-4334743048
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2007/9/6)
- 発売日 : 2007/9/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 425ページ
- ISBN-10 : 4334743048
- ISBN-13 : 978-4334743048
- Amazon 売れ筋ランキング: - 685,871位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年7月5日に日本でレビュー済み
ラストまではどうオチをつけるか、興味深かったのですか゛誤魔化しましたね。統合失調症かと思われる犯人が
なぜあそこまで都合よく犯行を遂行でき警察の追及を逃れづけたのか、全く理解できる説明がないまま終わりました。連続殺人自体妄想としても、主人公の小学生の長女を殺したのに、完全犯罪したかのような描写といい、すべては妄想世界の出来事と誤魔化すつもりかもしれませんがラストをうやむやにしすぎで全く真相が誤魔化されてます。ラストだけ最低な小説ですね。
なぜあそこまで都合よく犯行を遂行でき警察の追及を逃れづけたのか、全く理解できる説明がないまま終わりました。連続殺人自体妄想としても、主人公の小学生の長女を殺したのに、完全犯罪したかのような描写といい、すべては妄想世界の出来事と誤魔化すつもりかもしれませんがラストをうやむやにしすぎで全く真相が誤魔化されてます。ラストだけ最低な小説ですね。
2007年9月15日に日本でレビュー済み
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文章の構成は久々に各章毎にまず蘊蓄、そして本文という大石ファン(大石の文章は形式が非常にマンネリ化しており、そこが人気がある)には嬉しい内容。しかし、内容は主人公で大石作品には珍しくマトモな人間で、繊細で孤独な主人公と娼婦の性格を持つ孤独で美しいヒロインがでてくることが殆どの大石作品の愛読者は面食らうこととなろう。また、主人公を殺人へ誘う本当の動機が、非常に自己勝手(内容バレしないように伏せるが)であり、「処刑列車」以来の読後の不快感を感じた。
そういう訳で、本書は決してできはよくない。むしろ大石愛読者なら一層そう感じるだろうが、本書の巻末には大石作品に珍しく解説がついている。中々面白く、それのみおすすめである。
そういう訳で、本書は決してできはよくない。むしろ大石愛読者なら一層そう感じるだろうが、本書の巻末には大石作品に珍しく解説がついている。中々面白く、それのみおすすめである。
2007年10月3日に日本でレビュー済み
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相変わらず、一気に読ませます。
殺人指令の主〈C〉が誰なのか、というのが読み進める上での最大の関心ですが、結論が、少々曖昧なような気がします。「私の解釈でいいのかしら」という不安が残ります。
章ごとの薀蓄は、話の腰を折る感じがして、正直言って、不要ではないかと思います。今回の絶滅ネタは、ストーリーと無関係とはいえませんが、しつこく繰り返すほどではありません。
殺人指令の主〈C〉が誰なのか、というのが読み進める上での最大の関心ですが、結論が、少々曖昧なような気がします。「私の解釈でいいのかしら」という不安が残ります。
章ごとの薀蓄は、話の腰を折る感じがして、正直言って、不要ではないかと思います。今回の絶滅ネタは、ストーリーと無関係とはいえませんが、しつこく繰り返すほどではありません。
2007年12月8日に日本でレビュー済み
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読後の感想、
大石さんらしい小説でした。
人殺しのシーンでは下腹あたりがムズムズするような感覚がしました。
少し前の作品までは、WWFに寄附する動物にだけ優しいキチガイをよく描かれてましたが、
今回は、そういった方向に逃げない精神破綻者をよく描けていると思います。
各章の冒頭に、人為的絶滅した動物のことが書いてあったのですが、
今泉さんの絶滅動物データファイルほぼそのままの文章を参考にされたような書き方でした。
結構好きな作家だがそろそろ飽きてきた。
邪な考えにもマンネリってあるんですね。大石さん、
大石さんらしい小説でした。
人殺しのシーンでは下腹あたりがムズムズするような感覚がしました。
少し前の作品までは、WWFに寄附する動物にだけ優しいキチガイをよく描かれてましたが、
今回は、そういった方向に逃げない精神破綻者をよく描けていると思います。
各章の冒頭に、人為的絶滅した動物のことが書いてあったのですが、
今泉さんの絶滅動物データファイルほぼそのままの文章を参考にされたような書き方でした。
結構好きな作家だがそろそろ飽きてきた。
邪な考えにもマンネリってあるんですね。大石さん、
2012年7月27日に日本でレビュー済み
荒唐無稽とはこのことだろう。<<C>>の正体をどのような形で解き明かすのかを期待して最後まで読んだが、単なる「おめん売りの屋台の老人」というだけ。<<C>>からの手紙の説明がまったくなされていないし、なぜ<<C>>がこの男を選んだのかも全く分からない。こんな荒唐無稽な小説だったら、いくらでも量産できるだろう。久々にみる駄作である。
2014年1月31日に日本でレビュー済み
本作の文章を書いてあるままに捉え、主人公はCからの指示に単に従って殺人を犯していただけのある種の被害者であると考えると、殺された人にとっても主人公にとっても理不尽極まりない「だけ」の駄作です。正直読むだけ無駄で暇つぶしにも勿体ないレベル。
しかしCは実在せず、主人公の精神分裂症が生み出した架空の人物として捉えた場合、作品に対する評価がガラッと変わります。(私は著者の作品を読むのは本作が初めてなので、捉え違いをしているだけの可能性もありますが…実際、本文中にもそれを示唆するようなシーンは幾つもあるので、まったく荒唐無稽な捉え方ではないと思われます。)
例えば一見すると物語と直接的には関係無さそうな、いちいち挟み込まれる絶滅動物についての逸話も、主人公が幸せを感じる現実の裏で、Cたる意識がこれら絶滅種についての思いを馳せ、より一層に人間も絶滅すべきという思いを強めている、同時並行のモノローグとしても捉える事が出来ます。
こうなってくると、世に溢れる、登場人物の中の人格が分かりやすく変わり、複数の人格が状況や原因を説明してくれる凡百の小説とは一線を画し、主人公や登場人物はもとより読者までもが、Cの存在に確信を持てないままに、まさに精神分裂症的な状況に陥るという、かなり野心的な作品と捉える事が出来ます。しかも敢えて最終回答を示さず物語は終わってしまうため、不安感が心に広がって不快な読後感が残るので、本当に良作なのかどうかの判断までつかなくなる始末で、評価に困ってしまいますw
少なくとも私は上記のように捉えた上で、その巧みさをもって評価4としています。
しかしCは実在せず、主人公の精神分裂症が生み出した架空の人物として捉えた場合、作品に対する評価がガラッと変わります。(私は著者の作品を読むのは本作が初めてなので、捉え違いをしているだけの可能性もありますが…実際、本文中にもそれを示唆するようなシーンは幾つもあるので、まったく荒唐無稽な捉え方ではないと思われます。)
例えば一見すると物語と直接的には関係無さそうな、いちいち挟み込まれる絶滅動物についての逸話も、主人公が幸せを感じる現実の裏で、Cたる意識がこれら絶滅種についての思いを馳せ、より一層に人間も絶滅すべきという思いを強めている、同時並行のモノローグとしても捉える事が出来ます。
こうなってくると、世に溢れる、登場人物の中の人格が分かりやすく変わり、複数の人格が状況や原因を説明してくれる凡百の小説とは一線を画し、主人公や登場人物はもとより読者までもが、Cの存在に確信を持てないままに、まさに精神分裂症的な状況に陥るという、かなり野心的な作品と捉える事が出来ます。しかも敢えて最終回答を示さず物語は終わってしまうため、不安感が心に広がって不快な読後感が残るので、本当に良作なのかどうかの判断までつかなくなる始末で、評価に困ってしまいますw
少なくとも私は上記のように捉えた上で、その巧みさをもって評価4としています。
2009年12月13日に日本でレビュー済み
先ず最初に、これはホラーではないと思う。ホラーとは読んでいて怖い事が絶対条件だ。それから、タイトルに仕事とあるが、これは間違い。主人公は殺人を生業とする暗殺者ではない。これもちょっとはずした感じだ。
物語は、子どもの頃に届いた"C"からの手紙のお陰で命拾いした男が、その手紙の送り主のせいで殺人鬼になってしまった日常だ。お話自体は良く出来ているが、大石君の作品としては珍しくエンターテイメントに振っていない。読者には殺人鬼となった主人公の男に同化して欲しいのかと思いきや、絶滅した動物達の逸話を挟んで、彼を操る超越的な存在の"C"の目線で彼を追えばいいのか判らなくなる。
結果的に、醒めた状態の一読者として物語を追うことになってしまい、物語を終えた後には、訳合って連続殺人鬼となってしまった男の日常の日記を読んだと言う印象だ。
殺人鬼となる理由がこうだったら?と言う着目点は面白いのだが、如何せん怖くない。大石ファンは押さえておきたい作品では有るが、他の人にはお勧めはしない。
物語は、子どもの頃に届いた"C"からの手紙のお陰で命拾いした男が、その手紙の送り主のせいで殺人鬼になってしまった日常だ。お話自体は良く出来ているが、大石君の作品としては珍しくエンターテイメントに振っていない。読者には殺人鬼となった主人公の男に同化して欲しいのかと思いきや、絶滅した動物達の逸話を挟んで、彼を操る超越的な存在の"C"の目線で彼を追えばいいのか判らなくなる。
結果的に、醒めた状態の一読者として物語を追うことになってしまい、物語を終えた後には、訳合って連続殺人鬼となってしまった男の日常の日記を読んだと言う印象だ。
殺人鬼となる理由がこうだったら?と言う着目点は面白いのだが、如何せん怖くない。大石ファンは押さえておきたい作品では有るが、他の人にはお勧めはしない。