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イメージ付きのレビュー
料理屋としての経済観念がしっかりしている
これまで料理をテーマにした数作品を読んだ。主なものは『料理人季蔵捕物控』、『みをつくし料理帖』、『浅草料理捕物帖』、『居酒屋お夏』、『まんぷく旅籠 朝日屋』、『南蛮おたね夢料理』。確かに女料理人が多い。身内を地震、洪水などで亡くした悲劇のヒーローが料理を通じて成功していく作品が多く見られる。こうした料理をテーマにした作品の多くが料理屋としての経済性にほとんど触れていないことだ。いい材料を仕入れ客に安く提供する。しかも賄にまで贅を尽くした立派な料理も出す。行ってみれば全く経済性を無視した作品が多い。その証拠に料理の値段がいくらか、いくら利益が出るのか、見世の経済性はどうかなど全く関知していない。ただ料理さえよければあとは知らない的なものばかり。特に『みをつくし料理帖』、『南蛮おたね夢料理』はお涙頂戴の素晴らしい作品ではあったが、本作品と比べると料理本としての完成度はやや落ちるか。そんな中、この作品は料理本でありながらしっかりした経済観念が生きている。いくらで仕入れていくらで売っていくら儲かるかが明確だ。だから面白い。長編連作をダラダラ発行する作品が多い中、貴重な一冊である。一般文学通算2726作品目の感想。通算3430冊目の作品。2023/03/18 17:40
