三菱自動車リコール隠し事件をモデルとした経済小説。10年以上前の作品だが、昨今の大企業による相次ぐ不祥事を理解するヒントになるのではと思い、手に取ってみた。
社内で問題の解決にあたろうとする法務部主管の峯岸と、この問題を取材する新聞記者の深堀の二人の視点を中心に物語は展開する。
日本最大の財閥グループの一角をなす五代自動車は、苑田会長とその懐刀の桑山の恐怖政治ともいえる強引・傲慢な手法で長年にわたりリコール問題を隠ぺいし続けてきた。五代の社内ではこの問題に法的・倫理的に正しく対処しようとするものはことごとく左遷されてきたため、自浄作用が働かない。そうしたなか峯岸は、保身ばかりを考えている取締役らに失望しつつ、悩み苦しみながらも五代の再生を願いひとり立ち向かう。いっぽう新聞記者の深堀は、五代自動車が起こした事故を取材するうちにこの会社がひた隠しにする暗部にじわりじわりと近づいてゆく。
私自身も経験があるが、企業組織のなかにいると大きな圧力に抗えず意にそぐわないことをしなければならないことがある。そうしたことが度々繰り返されるうちに自分を見失ってゆく。「一体、何のために働いているのか」と。だから、主人公の一人である峯岸にはとても共感した。また、それ故に、読み終わった後は「彼のように生きることができたなら・・・」と少しばかり嫉妬もした。
ストーリーは登場人物たちの会話で進む場面が多いのだが、入り込んだ話しも説明調にならず、うまく表現されていて違和感はない。経済小説でありながら堅苦しさはなく、少しばかりサスペンス仕立てになっていて、先へ先へと読み進めたくなり一気に読み切った。楽しみながら社会勉強できてしまう秀作だ。
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偽装報告 (光文社文庫 た 34-2) 文庫 – 2008/4/20
高任和夫
(著)
- 本の長さ399ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2008/4/20
- ISBN-104334744044
- ISBN-13978-4334744045
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2008/4/20)
- 発売日 : 2008/4/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 399ページ
- ISBN-10 : 4334744044
- ISBN-13 : 978-4334744045
- Amazon 売れ筋ランキング: - 581,223位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 317位経済・社会小説 (本)
- - 3,496位光文社文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年1月3日に日本でレビュー済み
2016年2月15日に日本でレビュー済み
三菱自工・三菱ふそうのリコール隠し事件をモデルにした作品である。
同じ題材で有名な池井戸潤著「空飛ぶタイヤ」と比較してもそん色ない作品になっている。
この作品に読みどころは隠ぺい隠し疑惑を新聞報道された後の記者会見だ。
広報、品質部門がしどろもどろで対応する場面。記者の鋭い質問内容が生きいきとしており迫力満点。
さらには二回目の記者会見以降、元総会屋がほめ殺しで会社を非難する場面は圧巻んだ。
池井戸作品と合わせて推薦したい。
一般文学通算1593作品目の感想。2016/02/15 09:20
同じ題材で有名な池井戸潤著「空飛ぶタイヤ」と比較してもそん色ない作品になっている。
この作品に読みどころは隠ぺい隠し疑惑を新聞報道された後の記者会見だ。
広報、品質部門がしどろもどろで対応する場面。記者の鋭い質問内容が生きいきとしており迫力満点。
さらには二回目の記者会見以降、元総会屋がほめ殺しで会社を非難する場面は圧巻んだ。
池井戸作品と合わせて推薦したい。
一般文学通算1593作品目の感想。2016/02/15 09:20
2006年10月28日に日本でレビュー済み
企業モラルが前提の本ですが、最近問題の「学校モラル」とシンクロさせて読みました。
トップへの情報が偽装されていたら、トップの判断は間違う。
でもその部下を指名したのはトップだったりする。
「組織」というものは、基本的に守りになるものだ、という教えです!
文中にある《人間は知能が発達してくればくるほど、とんでもないこと、わるいことを考えるようになる》。
企業も学校も、まさに同じ状況ですね。
どうも同年代が起こす問題は、民間も公務員も自然発生してくるようです。
トップへの情報が偽装されていたら、トップの判断は間違う。
でもその部下を指名したのはトップだったりする。
「組織」というものは、基本的に守りになるものだ、という教えです!
文中にある《人間は知能が発達してくればくるほど、とんでもないこと、わるいことを考えるようになる》。
企業も学校も、まさに同じ状況ですね。
どうも同年代が起こす問題は、民間も公務員も自然発生してくるようです。
2006年8月21日に日本でレビュー済み
東北自動車道で起きた死亡事故をきっかけに、五代自動車のリコール隠しが浮上。かつて同社の総会屋事件を手がけた大手新聞記者・深堀らが真相を暴こうと奔走する。その五代自動車は権力者である会長や常務らの機嫌をとり、保身に走る社員があふれていた…。
物語は、三菱自動車のリコール隠しをモデルにした作品で、企業の組織ぐるみの犯罪を描いています。これまでの著者の作品同様に、しっかりした背景の経済小説として描かれており、読みごたえある作品に仕上がっています。企業体質の悪の部分の現実をよく取り上げた作品だとも思います。
物語は、三菱自動車のリコール隠しをモデルにした作品で、企業の組織ぐるみの犯罪を描いています。これまでの著者の作品同様に、しっかりした背景の経済小説として描かれており、読みごたえある作品に仕上がっています。企業体質の悪の部分の現実をよく取り上げた作品だとも思います。