『イワン・イリイチの死』
控訴院の判事という仕事を、無難にこなしていく主人公イワン・イリイチ。
表面上は立派に振る舞いつつも、実際には責任を取らずに済むように事務的な事のみ行い、後は要領よく誤魔化す、そんなスタンスの凡庸な人物です。
ですが、イワン・イリイチが深刻な病気になってから、今までの自己満足が徐々に崩れてゆきます。
病院で医師の診断を受けますが、対応はうわべだけのもので、誠意や親身さがまるで欠けていました。
皮肉なことに、イワン・イリイチ自身が仕事で取り続けてきたやり方と全く同じだったのです。
医師にとって、目の前のイワン・イリイチの苦痛や死など、どうでも良いことで、診察の体裁を上手く取り繕うことのみ懸命に務めます。
そして、イワン・イリイチの周囲の人間もまた、彼の病気について当たり障りのない建て前しか口にしません。
彼の心を占める苦痛や死について、まともに向き合うことを避けるのです。
その周りの態度がどれ程、彼を精神的に追い詰めたでしょう。
唯一の例外として、若い使用人のゲラーシムだけは、イワン・イリイチの運命に対して誠実に向き合い、奉仕しました。
イワン・イリイチは、長い闘病の苦しみの末ようやく、自身のこれまでの生涯が、誤りであったことを受け入れます。
そして、臨終の時を迎えるのです。
この死の描写に、トルストイの死生感がよく反映されていて、極めて特色のあるシーンとなっています。
イワン・イリイチの身に、断末魔の苦痛の呻きと、内面の歓喜や平安が、同時に起こっているのです。
彼が、偽りの生涯に対する自己正当化を放棄したとき、死の代わりにひとつの光を見出だした、といった内面の出来事が描かれています。
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イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ (光文社古典新訳文庫) 文庫 – 2006/10/12
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■いま読みたい人間の「死」の秘密、トルストイの後期代表作、待望の新訳
トルストイの文体が持っている「音とリズム」を日本語に移しかえることを意図した新訳。近代小説への懐疑をくぐり抜けた後の、新しい作風を端正な文体で再現する。
トルストイの文体が持っている「音とリズム」を日本語に移しかえることを意図した新訳。近代小説への懐疑をくぐり抜けた後の、新しい作風を端正な文体で再現する。
- ISBN-104334751091
- ISBN-13978-4334751098
- 出版社光文社
- 発売日2006/10/12
- 言語日本語
- 本の長さ364ページ
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商品の説明
出版社からのコメント
■死、嫉妬、愛…生をめぐる葛藤
19世紀ロシアの一裁判官が、「死」と向かい合う過程で味わう心理的葛藤を鋭く描いた「イワン・イリイチの死」。社会的地位のある地主貴族の主人公が、嫉妬がもとで妻を刺し殺す――。作者の性と愛をめぐる長い葛藤が反映された「クロイツェル・ソナタ」。トルストイの後期中編2作品。
19世紀ロシアの一裁判官が、「死」と向かい合う過程で味わう心理的葛藤を鋭く描いた「イワン・イリイチの死」。社会的地位のある地主貴族の主人公が、嫉妬がもとで妻を刺し殺す――。作者の性と愛をめぐる長い葛藤が反映された「クロイツェル・ソナタ」。トルストイの後期中編2作品。
著者について
レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ [1828-1910]
ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会波紋の措置は、今に至るまで取り消されていない。主著に『アンナ・カレーニナ』、
『戦争と平和』、『復活』など。
[訳者]望月哲男
1951年生まれ。北海道大学教授。ロシア文化・文学専攻。著書に『ドストエフスキー・カフェ―現代ロシアの文学風景』、訳書に『ロマンI、II』(ソローキン)、『ドストエフスキーの詩学』(バフチン)、『自殺の文学史』(チハルチシヴィリ)など。
ロシアの小説家。19世紀を代表する作家の一人。無政府主義的な社会活動家の側面をもち、徹底した反権力的な思索と行動、反ヨーロッパ的な非暴力主義は、インドのガンジー、日本の白樺派などにも影響を及ぼしている。活動は文学・政治を超えた宗教の世界にも及び、1901年に受けたロシア正教会波紋の措置は、今に至るまで取り消されていない。主著に『アンナ・カレーニナ』、
『戦争と平和』、『復活』など。
[訳者]望月哲男
1951年生まれ。北海道大学教授。ロシア文化・文学専攻。著書に『ドストエフスキー・カフェ―現代ロシアの文学風景』、訳書に『ロマンI、II』(ソローキン)、『ドストエフスキーの詩学』(バフチン)、『自殺の文学史』(チハルチシヴィリ)など。
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2006/10/12)
- 発売日 : 2006/10/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 364ページ
- ISBN-10 : 4334751091
- ISBN-13 : 978-4334751098
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- - 112位ロシア・ソビエト文学 (本)
- - 326位光文社古典新訳文庫
- - 349位ロシア・東欧文学研究
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トップレビュー
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2023年12月17日に日本でレビュー済み
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2022年2月7日に日本でレビュー済み
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訳文がこなれていて、読みやすい。
2019年4月9日に日本でレビュー済み
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哲学書を読むくらいなら、これを読んだ方が考えが深まる 古さはまるで感じない 訳も文字サイズも読みやすくていい ロシア文学を読んでみるかと思うならドストエフスキーよりこっちの方が良いかも知れない ただ影響力的な指向性があるので盲信しないように注意かも
2019年11月16日に日本でレビュー済み
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夫婦間の仲の悪さ、病気についての緻密な考察、死との複雑な葛藤、最後の安堵、どれをとっても圧倒された。トルストイの、文豪というイメージにそぐわない、生身の人間らしさに心から感動した。ところがである。これを読む少し前に、ハーマン・メルヴィル『書写人バートルビー――ウォール街の物語』に出合ってしまっていたのだ。私の心の中で、イリイチとバートルビーの比較が少しずつ始まった。主人公の二人が、死にどう向き合ったか。態度が全く違う。イリイチは、あわてふためきわめき散らす見苦しい男だ。一方バートルビーは、死と闘わず、死を受け入れて、人知れず死ぬ。外部の世界に全く興味を示さない、無意志の男。彼の口ぐせは、「そうしない方が好ましいです」(=「しない方がありがたいのです」「私はしない方がいいと思います」「せずにすめばありがたいのですが」)。『イリイチ』は1856年、トルストイ58歳の作。『バートルビー』は、1853年、メルヴィル34歳の作。私は、トルストイにもメルヴィルにもまったく詳しくない者だが、両者と両方の作品に恐れ入りました、とただ言うのみ。敢えて言えば、『ハートルビー』の方がずっと現代的であろう。私は『ハートルビー』をとる。
2021年12月14日に日本でレビュー済み
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これはもう、必読だと思う。
2023年9月15日に日本でレビュー済み
訳が本当に分かりやすくて
時代背景を厳密に捉えずとも気軽に読めるようにしてくれてるのは本当にありがたい。
解説もバッチリ。
但しトルストイの作品としての評価は正直、微妙。
レビューの中に哲学書を読むくらいならコレ読んだ方が良い、というのもあるけど
まんま既存哲学の思想を反芻してるだけの内容。
<<問題を論る技術は素晴らしいが
トルストイ自身なりの回答を用意できていない点が作品として弱過ぎる>>
「戦争と平和」の後の著作ということで
先に大傑作を出してしまった苦しみ、みたいなものを感じますね。
もちろん後期への作品の繋がり、過渡期としての価値はあるのですが…
単体としての評価はやはり微妙。
二作品の回答例(決して正しくも間違ってもいない)が知りたいなら
例えば運命論ならギリシャローマの神話(オイディプス王)や
プラトン、セネカ辺りを読むと良いと思います。
時代背景を厳密に捉えずとも気軽に読めるようにしてくれてるのは本当にありがたい。
解説もバッチリ。
但しトルストイの作品としての評価は正直、微妙。
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<<問題を論る技術は素晴らしいが
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「戦争と平和」の後の著作ということで
先に大傑作を出してしまった苦しみ、みたいなものを感じますね。
もちろん後期への作品の繋がり、過渡期としての価値はあるのですが…
単体としての評価はやはり微妙。
二作品の回答例(決して正しくも間違ってもいない)が知りたいなら
例えば運命論ならギリシャローマの神話(オイディプス王)や
プラトン、セネカ辺りを読むと良いと思います。
2019年11月30日に日本でレビュー済み
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クロイツェルソナタは、色々と改めて妻への愛を考えさせられた。妻は信じるに限る。
2016年4月24日に日本でレビュー済み
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ありふれた男のありふれた死を描く、数時間で読めるであろう短編。
ひとりの判事イワン・イリイチが40代の若さで病に倒れて死んだ後の葬儀の場面から小説は始まる。かつての同僚たちは彼の死に伴う異動や昇進に思いを巡らし、妻は国からいかに多く遺族手当を得るかを思案する。誰も彼を感情的に悼みはしない。
「もはや過去のものとなったイワン・イリイチの生涯の物語は、きわめて単純かつ平凡で、しかもきわめて恐ろしいものだった。」
イワン・イリイチは「生活というものはこうあるべきだ」と信じる道を生きてきた。勉強して判事になり、仕事上のポストをつかみ、念願の我が家を手に入れたが、偶然による病が彼を襲う。
妻や娘や友人は「きっとよくなる」と彼に語る。まるで病気自体をなかったことにしたいような態度で。彼はここに嘘を感じる。けれど、その嘘は彼自身が自分の人生についてきた嘘でもあった。
「しかるべき公務の流れを損なう恐れのあるような、生の、実人生にかかわる要素は、全部排除しなくてはならなかった」
「この場合の『作法』意識は、彼が生涯大事にしてきた作法とまったく同じであった。」
「自分の周囲と自分の内側にあるこの嘘こそが、イワン・イリイチの人生最後の日々をだいなしにしてしまったのである。」
社会の中でマジメに役割を果たしてきたつもりだったのに、実は周囲との感情的な交歓をおろそかにしてしまっていた。そしてその事実に気付いた時にはもう人生が手遅れになっている。本書が扱うのはそんな恐怖だ。アレクサンダー・ペイン監督の映画「ファミリー・ツリー」なんかにも共通するテーマだと思う。
若い人が読んでもよくわからないかもしれない。一定の年齢以上で、キャリアと人生のバランスに悩んでいるような方は是非一読いただきたい。イワン・イリイチは救いなく死を迎えたけれど、読者である我々は本書をヒントとしていつだって人生をやり直せるはずなのだから。
ひとりの判事イワン・イリイチが40代の若さで病に倒れて死んだ後の葬儀の場面から小説は始まる。かつての同僚たちは彼の死に伴う異動や昇進に思いを巡らし、妻は国からいかに多く遺族手当を得るかを思案する。誰も彼を感情的に悼みはしない。
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妻や娘や友人は「きっとよくなる」と彼に語る。まるで病気自体をなかったことにしたいような態度で。彼はここに嘘を感じる。けれど、その嘘は彼自身が自分の人生についてきた嘘でもあった。
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「この場合の『作法』意識は、彼が生涯大事にしてきた作法とまったく同じであった。」
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社会の中でマジメに役割を果たしてきたつもりだったのに、実は周囲との感情的な交歓をおろそかにしてしまっていた。そしてその事実に気付いた時にはもう人生が手遅れになっている。本書が扱うのはそんな恐怖だ。アレクサンダー・ペイン監督の映画「ファミリー・ツリー」なんかにも共通するテーマだと思う。
若い人が読んでもよくわからないかもしれない。一定の年齢以上で、キャリアと人生のバランスに悩んでいるような方は是非一読いただきたい。イワン・イリイチは救いなく死を迎えたけれど、読者である我々は本書をヒントとしていつだって人生をやり直せるはずなのだから。