「芸術」とはどのようなものであるか。最初に「創造的想像力」という総論の章があり、その後は「ダンスと装飾」「詩と雄弁」「音楽」「演劇」などの各論の章が続く。
最初の章「創造的想像力」で、アランは「想像に形を与えること」の大事さをまず強調する。これが「美」と「芸術」についてのアランの基本的考え方であろう。情念、情動を制御してこそ、好ましい姿「美」「芸術」が出現する、というところだろうか。このことをアランは各論の中でもくり返し書いている。
各論がまず「ダンスと装飾」という章ではじまり、、その最初が「軍隊とダンス」となっていることは、従軍中に戦場で書かれたという背景を考えれば仕方のないことかもしれない。しかし軍隊の行進を芸術としてあつかえるのかどうか、と疑問を感じてしまうのは時代のなせる仕業だろう。「雄弁」が取り上げられているのも、「雄弁も芸術?」と少し虚をつかれる感があるのは日本人だからだろうか。
そのほかの各論も、アラン独特の考えが散りばめられ、「うーん、こういう考え方もあるのか」というところも多かった。
「美しい!」とか「つらい!」とかの情動、情念という個人的なエネルギーを他人に伝えられる形にしたものが芸術、とするなら、アランの説く「理性での制御」ということもうなづける。しかし、アランは少しばかり「理性の優位」「情動を従わせる」と強調しすぎたように受けとれた。あふれる情念のエネルギーの流れを妨げるのではなく、流れを活かすように理性で調えて行く、というようなかたちが望ましいのでは、というのが「芸術素人」のたどりついた個人的な考えである。「七十而従心所欲、不踰矩(七十にして心の欲する所に従い、矩を超えず」という論語のように。
アランの文章は好きなのだが、芸術について書かれた幾つかの文章はいまひとつ難解であった。光文社の新訳として出たので、「今度は読めるかも」と期待して手に取った。こちらの年齢もすすんだせいもあるだろうが、今回の翻訳は理解しやすく、最後まで読み通すことができた。「難しくて理解不能」から「文章は理解できそうだが納得は未定」ぐらいのところまでは進めたようだ。私と同様、以前途中で断念したかたももう一度トライしてみて欲しい。かなり特殊な芸術論かもしれないが、「美」「芸術」を考えたことのある方々に感想を聞きたいものである。
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芸術の体系 (光文社古典新訳文庫) 文庫 – 2008/1/10
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- ISBN-104334751474
- ISBN-13978-4334751470
- 出版社光文社
- 発売日2008/1/10
- 言語日本語
- 本の長さ544ページ
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2008/1/10)
- 発売日 : 2008/1/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 544ページ
- ISBN-10 : 4334751474
- ISBN-13 : 978-4334751470
- Amazon 売れ筋ランキング: - 301,140位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年2月9日に日本でレビュー済み
2023年1月19日に日本でレビュー済み
本書は、アランの『芸術の体系』の新訳で、桑原武夫の旧訳(『諸芸術の体系』岩波
書店)と比べて、かなり読みやすく、理解しやすくなっている。この訳者の力量と気
遣いを知ってもらいたいので、以下に旧訳と新訳を比べて引用しておく。
まず「第10巻 散文について 第5章 歴史について」から。
〔旧訳〕
意図から行為へ、またよりしばしば情念から身振りへと赴きつつ、歴史家が何よりも
まず連絡し、説明しようと心を労する姿が眼に見える。だから人が再生するのは魂に
よってであり、事物の再生は人による。(425頁)
〔新訳〕
歴史家がものごとを関連づけ説明しようとして、意図から行為へ、いや、もっとも頻
繁に情念から身ぶりへと赴くさまが見てとれる。要するに、人びとが再び生きるのは、
そして、人びとを通して物が再び生きるのは、魂によってなのだ。(本書457頁)
次に「第3巻 詩と雄弁について 第8章 寓話について」からも例をあげよう。
〔旧訳〕
人間は、野獣に語らせるという極めて自然な、人間とともに古い、あの力強い仮構の
助けをかりずには、自分のもう一つの〔動物的な〕本性を告白することはできないの
である。(125頁)
〔新訳〕
人間が自分の動物的本性を認めるためには、寓話の力を借りるほかないのだ。獣たち
に語らせるという、この力強い仮構は、人類の初めから存在するきわめて自然な語り
の形だ。(本書139頁)
以上のように、かなり読みやすくなったことを知っていただけたと思う。内容はアラ
ンが第一次世界大戦に従軍していた際に書き上げた芸術論で、一般的なものとは若干
異なるが故に学べることが多い。個人的には「儀式」の見方について学んだ。
儀式の作法の目的が、情念や情動につきものの、無秩序な即興を抑制するところにあ
ること、さらにいえば、どんなに教養のある人びとをも錯乱へと導く、孤立した想像
力の戯れに、対象と規律を提供しようとするところにあることだ。(本書61頁)
昨年実施された元首相の国葬儀は、法的手続きの問題点が指摘されたり、国論を二分
し社会をさらに分断したりしたが、本書の視点からは、ネトウヨや安倍信者たちの情
念や情動に、国葬儀という対象と規律を提供し、国内が無秩序になることを回避した
とも考えられるだろう。オススメの1冊である。
書店)と比べて、かなり読みやすく、理解しやすくなっている。この訳者の力量と気
遣いを知ってもらいたいので、以下に旧訳と新訳を比べて引用しておく。
まず「第10巻 散文について 第5章 歴史について」から。
〔旧訳〕
意図から行為へ、またよりしばしば情念から身振りへと赴きつつ、歴史家が何よりも
まず連絡し、説明しようと心を労する姿が眼に見える。だから人が再生するのは魂に
よってであり、事物の再生は人による。(425頁)
〔新訳〕
歴史家がものごとを関連づけ説明しようとして、意図から行為へ、いや、もっとも頻
繁に情念から身ぶりへと赴くさまが見てとれる。要するに、人びとが再び生きるのは、
そして、人びとを通して物が再び生きるのは、魂によってなのだ。(本書457頁)
次に「第3巻 詩と雄弁について 第8章 寓話について」からも例をあげよう。
〔旧訳〕
人間は、野獣に語らせるという極めて自然な、人間とともに古い、あの力強い仮構の
助けをかりずには、自分のもう一つの〔動物的な〕本性を告白することはできないの
である。(125頁)
〔新訳〕
人間が自分の動物的本性を認めるためには、寓話の力を借りるほかないのだ。獣たち
に語らせるという、この力強い仮構は、人類の初めから存在するきわめて自然な語り
の形だ。(本書139頁)
以上のように、かなり読みやすくなったことを知っていただけたと思う。内容はアラ
ンが第一次世界大戦に従軍していた際に書き上げた芸術論で、一般的なものとは若干
異なるが故に学べることが多い。個人的には「儀式」の見方について学んだ。
儀式の作法の目的が、情念や情動につきものの、無秩序な即興を抑制するところにあ
ること、さらにいえば、どんなに教養のある人びとをも錯乱へと導く、孤立した想像
力の戯れに、対象と規律を提供しようとするところにあることだ。(本書61頁)
昨年実施された元首相の国葬儀は、法的手続きの問題点が指摘されたり、国論を二分
し社会をさらに分断したりしたが、本書の視点からは、ネトウヨや安倍信者たちの情
念や情動に、国葬儀という対象と規律を提供し、国内が無秩序になることを回避した
とも考えられるだろう。オススメの1冊である。