本作は19世紀フランスで活躍した政治思想家バンジャマン・コンスタンによる唯一の小説作品。
主人公アドルフは、学業でも暮らしでも全てにおいて如才なく、要領のよい優秀なタイプの青年だが、恋については未知であり、言わば恋に恋する思春期の青年だった。
そんな彼が必死に口説き落としたエレノール婦人はしかし、愛し愛されることを生きがいとする女性。
恋に恋する思春期の未熟な青年アドルフとエレノールの温度差。
過度の束縛を嫌い自由を渇望するようになるアドフルだが、他方エレノールとの関係を解消するという選択がエレノールを傷つけてしまうのではと恐れる気持ちもあり、優柔不断を続ける。
しかしそんなすれ違いからエレノールはやがて精神を病んでいき、いよいよ決定的に打ちのめされるにまで至る。
アドルフの振る舞いには、エレノールを傷つけてしまうような自分を受け入れることができないという「自分可愛さ」が伺える。
本作はエレノールがアドルフに宛てながら渡さずにおいた手紙によって締めくくられるが、そこに描かれたエレノールの気持ちは、アドルフのような自己愛性恋愛気質の若輩者の性質を鋭く穿つもののように思える。
「わたしが苦しむのではないかという想像はあなたを苛むのに、実際に苦しむさまは、あなたを制することができないのです!」
恋や愛に純粋はあるのか。
エゴから解放されえない人間にそれは可能なのか。
それらは恋愛文学における永遠のテーマの1つなのかもしれない。
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アドルフ (光文社古典新訳文庫 Aコ 7-1) 文庫 – 2014/3/12
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- 本の長さ211ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2014/3/12
- ISBN-10433475287X
- ISBN-13978-4334752873
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2014/3/12)
- 発売日 : 2014/3/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 211ページ
- ISBN-10 : 433475287X
- ISBN-13 : 978-4334752873
- Amazon 売れ筋ランキング: - 161,788位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 367位光文社古典新訳文庫
- カスタマーレビュー:
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5 星
一言で言っちゃえば、愛が冷めて別れようとする男と、別れたくない女の物語だぜ
『アドルフ』(バンジャマン・コンスタン著、中村佳子訳、光文社古典新訳文庫)てえのは、何とも、締まらねえ話だぜ。大臣の息子のアドルフちゅうぼんぼんが、10歳年上の、P伯爵の滅茶いかす愛人エレノールに近づき、何のかんのと甘いことを言いまくって関係を持っちゃうんだ。二人の関係をP伯爵に感づかれたエレノールは、伯爵との間の子供たちも何もかも捨てて、アドルフと生きていくという茨の道を選ぶんだ。ところがどっこい、熱に浮かされた日々は長くは続かず、愛が冷めちまったアドルフは、エレノールと何とかして別れようと、あくせくするんだ。これに気づいた、今やアドルフなしでは夜も日も明けぬエレノールは、そうはさせじと頑張っちゃうわけだ。アドルフというのが呆れるほど優柔不断な奴で、なかなかズバッと別れ話を切り出せず、ぐずぐず状態がズルズルズルと3年間も続いちまうという物語さ。その挙げ句、何が起こったかは、おっと、喋っちゃまずいな。1816年に出版された『アドルフ』が、今でも読まれてるっていうのは、時代、環境、状況は違っても、同じようなことが起こっているってことじゃないかな。それにしても、男と女の間ちゅうのは、難しいもんでんな。ま、俺も大きな口は叩けないけどな。
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2022年11月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年5月6日に日本でレビュー済み
18世紀末から19世紀初頭のフランスの作家コンスタン(1767-1830)の唯一の小説、執筆は1806年、初版は1816年。
本作品はフランス心理小説の先駆けと云われ、人間心理の動きをどこまでも細密かつ合理的に記述しようとしている(逆に、本作中には心理描写以外の情景描写などは殆どない)。その巧みさは見事なもので、自分自身が言語化できずにいた己の内面の運動を表現してくれているように読めて、ああ自分があのとき感じていたこと考えていたことというのはこういうことだったのか、と気づかせてくれる描写が数多くある。幸福の有頂天にあるときの表現もなるほど確かにそういうものだと思わせるが、それ以上に痛切に身につまされるものは弱さや醜さなど自分では直視したくない自分の内なる感情が剔抉させられている場合だろう。そうした醜い心の動きというものは、当人が意識する際には、既に自己欺瞞という歪んだフィルターを通過することで変造され矮小化されてしまっていることが殆どであり、ひどい場合には無かったこととして無意識下に隠匿されてしまうこともある。このように普段からずっと自分の内に潜んでいながら遣り過ごしてきた自分自身の内面が、人間心理に通じた作家の作品によって、あたかも外化されているのを目の当たりにすること。そこには、自らの裸体が晒されるにも似たどこか被虐的な快楽が伴っているように思う。ここの一節には自分だけの秘密にしてきた"あの事"が書かれてしまっているのだ、と。そしてこの物語には、いつの時代にもありふれた男女の悲劇が描かれている。
□
男は、或る女を手に入れようと一見情熱を燃やしていたかに見えたが、いったんその女を手に入れてしまえば、次第にその女の存在が疎ましく感じられてくる。しかもそれでいながら、優柔不断ゆえに自らその女へ別れを切り出す決断もできず、ずるずるとどこまでも遅延されていく終局。これは、男女の普遍的な物語であると思う。
アドルフは、生来の内気な性質からか、女に対して独りであること(孤立)の確保を求めた。一方エレノールは、金持ちの愛人という世間から卑しい女として蔑まされる身分から来る欠落感からか、男と一体であること(合一)の確証を求めた。アドルフの生活全体を(その愛情も身体も時間も)支配しようとした。そしてアドルフは、その支配から逃れようとしながらも、自分の弱さからエレノールときちんと向き合って関係を清算することもできず、寧ろ彼女との宙吊り状態に依存していく。
いづれにせよ、双方とも「他者」ではなく「エゴ」を、相手の他者性とともに「二者」たることではなくその相手の他者性を無視して「一者」たることを、求めたのではないか。他者の他者性を尊重した関係を築くことに、二人は失敗している。そこに必要だったのは、「適切な距離の感覚」ではなかったかと思う。アドルフとエレノールは、互いに互いへの「距離感」が両極端だった。アドルフはその「距離」が遠過ぎたし、エレノールは余りにも近かった。
ここに描かれているのは、両者のエゴイズムが惹き起こした地獄なのだと思う。
本作品はフランス心理小説の先駆けと云われ、人間心理の動きをどこまでも細密かつ合理的に記述しようとしている(逆に、本作中には心理描写以外の情景描写などは殆どない)。その巧みさは見事なもので、自分自身が言語化できずにいた己の内面の運動を表現してくれているように読めて、ああ自分があのとき感じていたこと考えていたことというのはこういうことだったのか、と気づかせてくれる描写が数多くある。幸福の有頂天にあるときの表現もなるほど確かにそういうものだと思わせるが、それ以上に痛切に身につまされるものは弱さや醜さなど自分では直視したくない自分の内なる感情が剔抉させられている場合だろう。そうした醜い心の動きというものは、当人が意識する際には、既に自己欺瞞という歪んだフィルターを通過することで変造され矮小化されてしまっていることが殆どであり、ひどい場合には無かったこととして無意識下に隠匿されてしまうこともある。このように普段からずっと自分の内に潜んでいながら遣り過ごしてきた自分自身の内面が、人間心理に通じた作家の作品によって、あたかも外化されているのを目の当たりにすること。そこには、自らの裸体が晒されるにも似たどこか被虐的な快楽が伴っているように思う。ここの一節には自分だけの秘密にしてきた"あの事"が書かれてしまっているのだ、と。そしてこの物語には、いつの時代にもありふれた男女の悲劇が描かれている。
□
男は、或る女を手に入れようと一見情熱を燃やしていたかに見えたが、いったんその女を手に入れてしまえば、次第にその女の存在が疎ましく感じられてくる。しかもそれでいながら、優柔不断ゆえに自らその女へ別れを切り出す決断もできず、ずるずるとどこまでも遅延されていく終局。これは、男女の普遍的な物語であると思う。
アドルフは、生来の内気な性質からか、女に対して独りであること(孤立)の確保を求めた。一方エレノールは、金持ちの愛人という世間から卑しい女として蔑まされる身分から来る欠落感からか、男と一体であること(合一)の確証を求めた。アドルフの生活全体を(その愛情も身体も時間も)支配しようとした。そしてアドルフは、その支配から逃れようとしながらも、自分の弱さからエレノールときちんと向き合って関係を清算することもできず、寧ろ彼女との宙吊り状態に依存していく。
いづれにせよ、双方とも「他者」ではなく「エゴ」を、相手の他者性とともに「二者」たることではなくその相手の他者性を無視して「一者」たることを、求めたのではないか。他者の他者性を尊重した関係を築くことに、二人は失敗している。そこに必要だったのは、「適切な距離の感覚」ではなかったかと思う。アドルフとエレノールは、互いに互いへの「距離感」が両極端だった。アドルフはその「距離」が遠過ぎたし、エレノールは余りにも近かった。
ここに描かれているのは、両者のエゴイズムが惹き起こした地獄なのだと思う。
2021年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分を小説の主人公と重ね合わせるほど自惚れてはいないつもりでしたが、ここまで正確に男女の恋愛模様を描かれてしまうと、至る所で共感を禁じ得ません。
あまり人に本を勧めることはしない私ですが、この本だけは自信を持って「読め」と言えるのではないかと思います。
これからもたくさん恋愛をして、たくさん同じ失敗をするのでしょうが、辛い時はまたこの本を手に取って読み返したいです。若いうちにこの本に出会えて本当に幸せでした。
まさに「恋愛の教科書」です。
あまり人に本を勧めることはしない私ですが、この本だけは自信を持って「読め」と言えるのではないかと思います。
これからもたくさん恋愛をして、たくさん同じ失敗をするのでしょうが、辛い時はまたこの本を手に取って読み返したいです。若いうちにこの本に出会えて本当に幸せでした。
まさに「恋愛の教科書」です。
2022年2月8日に日本でレビュー済み
『アドルフ』(バンジャマン・コンスタン著、中村佳子訳、光文社古典新訳文庫)てえのは、何とも、締まらねえ話だぜ。
大臣の息子のアドルフちゅうぼんぼんが、10歳年上の、P伯爵の滅茶いかす愛人エレノールに近づき、何のかんのと甘いことを言いまくって関係を持っちゃうんだ。二人の関係をP伯爵に感づかれたエレノールは、伯爵との間の子供たちも何もかも捨てて、アドルフと生きていくという茨の道を選ぶんだ。
ところがどっこい、熱に浮かされた日々は長くは続かず、愛が冷めちまったアドルフは、エレノールと何とかして別れようと、あくせくするんだ。これに気づいた、今やアドルフなしでは夜も日も明けぬエレノールは、そうはさせじと頑張っちゃうわけだ。アドルフというのが呆れるほど優柔不断な奴で、なかなかズバッと別れ話を切り出せず、ぐずぐず状態がズルズルズルと3年間も続いちまうという物語さ。その挙げ句、何が起こったかは、おっと、喋っちゃまずいな。
1816年に出版された『アドルフ』が、今でも読まれてるっていうのは、時代、環境、状況は違っても、同じようなことが起こっているってことじゃないかな。それにしても、男と女の間ちゅうのは、難しいもんでんな。ま、俺も大きな口は叩けないけどな。
大臣の息子のアドルフちゅうぼんぼんが、10歳年上の、P伯爵の滅茶いかす愛人エレノールに近づき、何のかんのと甘いことを言いまくって関係を持っちゃうんだ。二人の関係をP伯爵に感づかれたエレノールは、伯爵との間の子供たちも何もかも捨てて、アドルフと生きていくという茨の道を選ぶんだ。
ところがどっこい、熱に浮かされた日々は長くは続かず、愛が冷めちまったアドルフは、エレノールと何とかして別れようと、あくせくするんだ。これに気づいた、今やアドルフなしでは夜も日も明けぬエレノールは、そうはさせじと頑張っちゃうわけだ。アドルフというのが呆れるほど優柔不断な奴で、なかなかズバッと別れ話を切り出せず、ぐずぐず状態がズルズルズルと3年間も続いちまうという物語さ。その挙げ句、何が起こったかは、おっと、喋っちゃまずいな。
1816年に出版された『アドルフ』が、今でも読まれてるっていうのは、時代、環境、状況は違っても、同じようなことが起こっているってことじゃないかな。それにしても、男と女の間ちゅうのは、難しいもんでんな。ま、俺も大きな口は叩けないけどな。

『アドルフ』(バンジャマン・コンスタン著、中村佳子訳、光文社古典新訳文庫)てえのは、何とも、締まらねえ話だぜ。
大臣の息子のアドルフちゅうぼんぼんが、10歳年上の、P伯爵の滅茶いかす愛人エレノールに近づき、何のかんのと甘いことを言いまくって関係を持っちゃうんだ。二人の関係をP伯爵に感づかれたエレノールは、伯爵との間の子供たちも何もかも捨てて、アドルフと生きていくという茨の道を選ぶんだ。
ところがどっこい、熱に浮かされた日々は長くは続かず、愛が冷めちまったアドルフは、エレノールと何とかして別れようと、あくせくするんだ。これに気づいた、今やアドルフなしでは夜も日も明けぬエレノールは、そうはさせじと頑張っちゃうわけだ。アドルフというのが呆れるほど優柔不断な奴で、なかなかズバッと別れ話を切り出せず、ぐずぐず状態がズルズルズルと3年間も続いちまうという物語さ。その挙げ句、何が起こったかは、おっと、喋っちゃまずいな。
1816年に出版された『アドルフ』が、今でも読まれてるっていうのは、時代、環境、状況は違っても、同じようなことが起こっているってことじゃないかな。それにしても、男と女の間ちゅうのは、難しいもんでんな。ま、俺も大きな口は叩けないけどな。
大臣の息子のアドルフちゅうぼんぼんが、10歳年上の、P伯爵の滅茶いかす愛人エレノールに近づき、何のかんのと甘いことを言いまくって関係を持っちゃうんだ。二人の関係をP伯爵に感づかれたエレノールは、伯爵との間の子供たちも何もかも捨てて、アドルフと生きていくという茨の道を選ぶんだ。
ところがどっこい、熱に浮かされた日々は長くは続かず、愛が冷めちまったアドルフは、エレノールと何とかして別れようと、あくせくするんだ。これに気づいた、今やアドルフなしでは夜も日も明けぬエレノールは、そうはさせじと頑張っちゃうわけだ。アドルフというのが呆れるほど優柔不断な奴で、なかなかズバッと別れ話を切り出せず、ぐずぐず状態がズルズルズルと3年間も続いちまうという物語さ。その挙げ句、何が起こったかは、おっと、喋っちゃまずいな。
1816年に出版された『アドルフ』が、今でも読まれてるっていうのは、時代、環境、状況は違っても、同じようなことが起こっているってことじゃないかな。それにしても、男と女の間ちゅうのは、難しいもんでんな。ま、俺も大きな口は叩けないけどな。
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2020年7月14日に日本でレビュー済み
"愛し合う二つの心のあいだに一つでも秘密が介在するようになったら、またひとりがたとい一つでも考えを相手に隠す気になったら、もうそれっきり魅力は破れ、幸福はこぼたれてしまう"1816年発刊の本書は、自伝的恋愛小説にして、男性の利己主義を冷たく鋭く分析した近代心理小説の先駆作。
個人的にはラディゲの『肉体の悪魔』とよく比較される本書。積読のままになってしまっていたことから、今回ようやく手にとりました。
さて、そんな約150ページほどの本書は、青年アドルフの手記という形式をとって、伯爵の愛人である年上の女性エレノールに恋をし、それほどの障害なく早々に愛を勝ち取るものの(前半約40ページ)その後はずっと、成就してしまった途端に【自分を愛しすぎる彼女に重苦しさを覚えて】倦怠と惰性へと心境が身勝手に変化していくのを徹底的に描いているわけですが。
まず最初に思ったのは、語り手たる主人公のアドルフに共感できるかどうかで好き嫌いがきっぱり分かれるのでは?と思いました。本書では風景描写などは最低限に、とにかくアドルフの自由になりたい!束縛されたくない!と、問題を【一貫して先送りにし続ける現実逃避的な姿】がくどくどと描写されていくのですが。心情自体は確かに現在でも通じるリアリティ、普遍的な魅力があるとは言え、共感できないとなかなかにキツイと思われるのです。(私はちょっと共感できませんでした。。)
それでも。また物語自体もベタで、また男性に都合よくヒロインが死を迎えて終わるとはいえ。本書の憂鬱かつ【徹底した心理描写の精密さ】には確かに唸らされる部分があり、読み進めながら、何故かアンナ・カレーニナのアンナを思い出し、本書のような物語を下敷きにして、都合よく死ぬヒロインから、自らの意思で死を選ぶヒロイン。といった時代と共に変化が生まれていったのかな。とか想像したりしました。
心理描写の優れた小説を探す人、また成就した後の恋愛ね倦怠や身勝手さに興味ある人にも?オススメ。
個人的にはラディゲの『肉体の悪魔』とよく比較される本書。積読のままになってしまっていたことから、今回ようやく手にとりました。
さて、そんな約150ページほどの本書は、青年アドルフの手記という形式をとって、伯爵の愛人である年上の女性エレノールに恋をし、それほどの障害なく早々に愛を勝ち取るものの(前半約40ページ)その後はずっと、成就してしまった途端に【自分を愛しすぎる彼女に重苦しさを覚えて】倦怠と惰性へと心境が身勝手に変化していくのを徹底的に描いているわけですが。
まず最初に思ったのは、語り手たる主人公のアドルフに共感できるかどうかで好き嫌いがきっぱり分かれるのでは?と思いました。本書では風景描写などは最低限に、とにかくアドルフの自由になりたい!束縛されたくない!と、問題を【一貫して先送りにし続ける現実逃避的な姿】がくどくどと描写されていくのですが。心情自体は確かに現在でも通じるリアリティ、普遍的な魅力があるとは言え、共感できないとなかなかにキツイと思われるのです。(私はちょっと共感できませんでした。。)
それでも。また物語自体もベタで、また男性に都合よくヒロインが死を迎えて終わるとはいえ。本書の憂鬱かつ【徹底した心理描写の精密さ】には確かに唸らされる部分があり、読み進めながら、何故かアンナ・カレーニナのアンナを思い出し、本書のような物語を下敷きにして、都合よく死ぬヒロインから、自らの意思で死を選ぶヒロイン。といった時代と共に変化が生まれていったのかな。とか想像したりしました。
心理描写の優れた小説を探す人、また成就した後の恋愛ね倦怠や身勝手さに興味ある人にも?オススメ。
2015年4月13日に日本でレビュー済み
三角関係かと思えば、アドルフとエタノールの男女の葛藤を描く。
しかも情景描写などはあまりなく、徹底して心理描写中心である。
男女の葛藤が緻密に描かれる。
フランス恋愛小説の最高峰といわれ、
かつて岩波文庫で読んだが、
新訳は別の意味で身につまされる。
恋愛が軽くなっているいま、この短編をじっくり味わうのも
いいかもしれない。
しかも情景描写などはあまりなく、徹底して心理描写中心である。
男女の葛藤が緻密に描かれる。
フランス恋愛小説の最高峰といわれ、
かつて岩波文庫で読んだが、
新訳は別の意味で身につまされる。
恋愛が軽くなっているいま、この短編をじっくり味わうのも
いいかもしれない。
2019年10月14日に日本でレビュー済み
人の心をつまびらかに分析して、それにぴったりの表現や言葉を与える能力が凄かった。人間ここまで心の動きを覚えていられるものなのか? でもこの小説に描かれた心情には嘘がない。リアルすぎて舌をまく。こんな精密さで人の心って書けるものなのだな。
2021年5月16日に日本でレビュー済み
今まで読んでいなかったのでキンドルで読みました。おばあさんの観察としては、どうも男性は20代のはじめと50代に大きな恋をするように思う。20代は誰でもだが、50代は特に功成り遂げた人が落ちるようだ。日本でいうと江戸時代の終わり頃にこのような心理小説を書ける余裕に感心した。これを読んで恋はその人の生い立ちや価値観やを総動員するものなのだと改めて思った。そういう点では「舞姫」や荷風の「ふらんす物語」は全く書ききれていないのかも。でもこれも書きすぎの感はありますが