カドフェルシリーズはけっこう読んでいますが、この訳者さんが一番雰囲気に合っているように思えます。読みやすいし、何より感慨が深い。
この巻ではイングランドの内乱とはひとまず距離を置いて、舞台はカドフェルの故郷ウェールズ地方へ。
英国物を見てると、ウェールズ地方をちょっと差別的な視点で見たものはよく出てくるんですが、「なんでそういう風に思われているのか?」ということが今ひとつ納得いくものに出会えなくて(歴史的に独立国だったからとか、その程度は知っていたんですけどね)?のままだったんですが…。この物語はなんとなく、それを解消してくれました。
別にウェールズの歴史について詳細に解説されているわけではないんですが、多分ウェールズ人気質が肯定的に描かれているところが自分のツボにヒットしたのではないかと。
あと、作中に登場するデーン人たちの姿に、サトクリフ作品を思い出しました。(正確にいえば、思い出したり、間違って解釈していたところに気が付いたり)
この時代、ウェールズのすぐ隣のアイルランド島には、デーン人が建設したダブリン王国が威をふるっているのです。ダブリンがデーン人建設の都市というのも初めて知りました…やれやれ。まだまだ不勉強です。でも、いくらでも新しい発見があるから歴史っておもしろい。(←いや、負け惜しみではなく)
なので、英国史好きな方にはおすすめです。殺人も申し訳程度に出てきますが、シリーズもこの辺の巻になると作者もそれほど重きを置いていないですね…。この方の書く殺人は、動機に無理がなく(12世紀人として)好きですが。
ただ、どちらかといえばこのシリーズはミステリとして読むより、英国時代小説として読むほうが正解な気がします。
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デーン人の夏―修道士カドフェルシリーズ〈18〉 (光文社文庫) 文庫 – 2005/11/10
- 本の長さ385ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2005/11/10
- ISBN-104334761615
- ISBN-13978-4334761615
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2005/11/10)
- 発売日 : 2005/11/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 385ページ
- ISBN-10 : 4334761615
- ISBN-13 : 978-4334761615
- Amazon 売れ筋ランキング: - 314,862位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2002年2月27日に日本でレビュー済み
修道士カドフェルのシリーズ18作目。
今回は修道院のあるシュルーズベリを遠く離れた地(ウェールズ地方)で事件が起きる。かの地で生まれ、言葉も話せるカドフェルは、司教の使いのお供としてついていくことになるのだが、なぜ使いを送るようになったのかがイマイチよくわからない。司教区・領主・教会の組織と仕組み・ウェールズ人とノルマン人など、いろいろと説明はしてあるのだが、キリスト教とは縁遠い生活をしているせいか、何度読み返してみてもなんとなくしか納得できない。事件とは直接関係がないので、サラッと読み流しても問題はないのですが、やっぱりちょっと悔しいかな。
ウェールズ地方の領主一族の争いに絡んで、船団を率いてやってきたアイルランドに住むデーン人、ウェールズ軍とにらみ合い一触即発の状態。カドフェルは行方をくらました娘を探したり、デーン軍に捕らえられて捕虜になったりと、シリーズの中でも緊迫感あふれる作品です。
生まれ故郷に戻ってきたせいか、カドフェルがいつにもまして元気よく、美しきウェールズ地方に住む人々や自然もくわしく念入りに書かれていて、中世イギリスが舞台のトラベルミステリ、といった雰囲気です。
今回は修道院のあるシュルーズベリを遠く離れた地(ウェールズ地方)で事件が起きる。かの地で生まれ、言葉も話せるカドフェルは、司教の使いのお供としてついていくことになるのだが、なぜ使いを送るようになったのかがイマイチよくわからない。司教区・領主・教会の組織と仕組み・ウェールズ人とノルマン人など、いろいろと説明はしてあるのだが、キリスト教とは縁遠い生活をしているせいか、何度読み返してみてもなんとなくしか納得できない。事件とは直接関係がないので、サラッと読み流しても問題はないのですが、やっぱりちょっと悔しいかな。
ウェールズ地方の領主一族の争いに絡んで、船団を率いてやってきたアイルランドに住むデーン人、ウェールズ軍とにらみ合い一触即発の状態。カドフェルは行方をくらました娘を探したり、デーン軍に捕らえられて捕虜になったりと、シリーズの中でも緊迫感あふれる作品です。
生まれ故郷に戻ってきたせいか、カドフェルがいつにもまして元気よく、美しきウェールズ地方に住む人々や自然もくわしく念入りに書かれていて、中世イギリスが舞台のトラベルミステリ、といった雰囲気です。
2007年7月16日に日本でレビュー済み
題名のデーン人とはヴァイキングのこと。
カドフェルの時代に彼らがイングランドと深い関わりを持っていたことがよくわかります。
自由奔放な海の民であるデーン人の活躍によって、本書はシリーズ中で異彩を放つ闊達さを見せますが、何よりも印象的なのは年若い2人の登場人物。
一人はカドフェルの元教え子にして、他の教区の助祭になっているマーク。極貧の生まれで修道院に捨てられ、それでも聖職に身を捧げる決意を固め、修行に励んでいます。
もう一人はウェールズの聖職者の娘ヘレズ。教会の規律に従おうとする父親に疎まれ、意に染まない結婚を強いられて、本来の自分を押し隠して暮らしています。
生まれ育ちは違っても、世間の慣習や偏見にがんじがらめにされているという点では同じ苦境にあるこの2人が、その中でもなんとか希望を見つけ出し、それに向かって力を尽くし、成長していく様子には、2人を見守るカドフェルの眼差しを通して作者がこのシリーズに託した願いが込められているように思えます。
大胆不敵でハンサムなヴァイキング、後味のいい余韻を残すハッピーエンド、と珍しくロマンス要素の濃い一作なので、このシリーズを「おっさん修道士の話か〜」と敬遠されている人がいたら、ぜひお勧めしたい。
食わず嫌いは良くないですよ〜。騙されたと思って読んでみてください。
カドフェルの時代に彼らがイングランドと深い関わりを持っていたことがよくわかります。
自由奔放な海の民であるデーン人の活躍によって、本書はシリーズ中で異彩を放つ闊達さを見せますが、何よりも印象的なのは年若い2人の登場人物。
一人はカドフェルの元教え子にして、他の教区の助祭になっているマーク。極貧の生まれで修道院に捨てられ、それでも聖職に身を捧げる決意を固め、修行に励んでいます。
もう一人はウェールズの聖職者の娘ヘレズ。教会の規律に従おうとする父親に疎まれ、意に染まない結婚を強いられて、本来の自分を押し隠して暮らしています。
生まれ育ちは違っても、世間の慣習や偏見にがんじがらめにされているという点では同じ苦境にあるこの2人が、その中でもなんとか希望を見つけ出し、それに向かって力を尽くし、成長していく様子には、2人を見守るカドフェルの眼差しを通して作者がこのシリーズに託した願いが込められているように思えます。
大胆不敵でハンサムなヴァイキング、後味のいい余韻を残すハッピーエンド、と珍しくロマンス要素の濃い一作なので、このシリーズを「おっさん修道士の話か〜」と敬遠されている人がいたら、ぜひお勧めしたい。
食わず嫌いは良くないですよ〜。騙されたと思って読んでみてください。