主に不評のようですが、傑作と断じます。
ただし、商業的にも間口の広さにおいても、
「失敗作」であることは否定できないかもしれない。
が、それは「作品として」ではありません。
個人的には大傑作ですが、読む人を選びます。
しかし、それは大部分の諸星作品に対し、言えること。
諸星作品の中でもハードルが高いものであることは
確かですが。
なぜハードルが高いのか?
ひとつにはキャラの地味さ。
ひとつにはキャラの名の覚えにくさが
挙げられるでしょう。
コマ割りも細かく、密度が異常に濃いです。
忍耐力を必要とする作品です。
しかし、日本が世界に誇るべき
天才漫画家が創作力のピーク時に描いた作品が、
そんなに悪いものであるはずがありません。
絵的にも、ストーリーの構成的にも、
傑作「西遊妖猿伝」に引けを取らない出来映えです。
未完であることは残念ですが、
現状の、この作品評価では、
いくら作者が望んでも、この続編を
商業的に制作していくことは不可能でしょう。
が、では、これがそこまで尻切れとんぼに
終わった作品であるか? 否!!!
第一部という意味では、非常に見事な
クライマックスとともに、
綺麗に完結しています。
話や伏線が宙ぶらりんのまま放置されたような
打ち切り漫画と一緒くたにしては作者にも
作品にも失礼でしょう。
本作のラストは、「西遊妖猿伝」でいうなら、
河西回廊篇ラストまで読んだ程度には
充分納得できる・・・というのは言い過ぎかも
しれませんが、そこまで不満を感じる
ラストでは、断じてありません。
それまでのキャラたちがクライマックスに向かい、
一気に収束していく様は見事な作劇と
言うほかありません。実に唸らされます。
ドメスティックなトライバルさの
カッコ良さを描いている、という点では
トライバルさのカッコ良さを遥か昔に
先取りしていた「マッドメン」を
彷彿とさせます。が、あれは
パプア・ニューギニアの話。
「海神記」は、この日本の話なわけです。
トライバル柄のタトゥーを
日本人が彫るようになるなど、
考えもできない頃に全身刺青の少年が
主人公の漫画を描いていた作者の先取りっぷりは
凄まじいですが、「マッドメン」の
カッコ良さは、それでも今では
だいぶ認知されている模様。
対して「海神記」の、この不当な
評価の低さは、未だ世間が天才・
諸星大二郎の先取性に追いついていないことの
証左なのではないでしょうか。
なお、値段についても不評のようですが、
正直、オリジナル単行本のレアさを考えれば
復刻本としては充分、許せる範囲でしょう。
そうそう売れ行きを期待できるタイトルと
いうわけでもないのでしょうし。
ただし、このシリーズ全体に言えることですが、
紙質がよ過ぎるため、印刷はいいのですが
本がやたらと重厚になってしまい、
読む際に肉体的に疲労を感じやすいです。
ただでさえ内容が重厚で疲れるのに、
ダブルパンチはつらい。
漫画のメリットは手軽に読めること。
そこには物理的・重量的な意味も
もちろん含みます。
もっと軽い紙で作って欲しいな、とは
思います。そうすれば、紙代程度には
売値も安くすることが可能はとは思います。
ま、それでもこういった、非・商業主義的な
出版物は、出すこと自体が最大の
リスクゆえ、そうそう安価には
出版しづらい、ということは
あるのでしょうが。
しかし志には大きく共感します。
不評なレビューに負けず、
頑張っていただきたい。
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海神記 (上) (光文社コミック叢書“シグナル” 6) コミック – 2007/7/30
諸星 大二郎
(著)
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- 本の長さ400ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2007/7/30
- 寸法14.8 x 3.2 x 21 cm
- ISBN-104334901409
- ISBN-13978-4334901400
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2007/7/30)
- 発売日 : 2007/7/30
- 言語 : 日本語
- コミック : 400ページ
- ISBN-10 : 4334901409
- ISBN-13 : 978-4334901400
- 寸法 : 14.8 x 3.2 x 21 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,638位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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1949年長野・軽井沢に生まれ、東京で育つ。1970年「COM」にて「ジュン子・恐喝」でデビュー。1974年「生物都市」で第七回手塚賞に入選し本 格的な作家活動に入る。同年「少年ジャンプ」で「妖怪ハンター」を連載(後に「稗田礼二郎のフィールド・ノートより」と改題)、以後「暗黒神話」、「孔子 暗黒伝」と同誌に連載、その後他誌にて「マッドメン」、「海神記」、「西遊妖猿伝」と代表作となる作品群を発表。異形、寓意、そして或る時は“クトゥ ルー”をモチーフに古代から現在に至る物語世界を紡いでいる(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『MUD MEN 最終版』(ISBN-10:4334901670)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年11月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2011年4月29日に日本でレビュー済み
諸星大二郎は星野宣之と並び称される「民俗」もののマンガの大家です。特に古代を扱うときにはこの方以外には絶対に真似の出来ない表現・話作りをしてきます。「海神記」はその中でも代表作といえる作品で、存分に諸星大二郎を味わうことが出来ます。
ストーリーは、古代九州に居住する海人族が天変地異に追い立てられるように、まず九州北部へ、そしてそこからさらに東へと民族移動を行う姿が描写されます。九州から旅立つあたりで終わりになりますので、これから日本神話の神武東遷に相当するストーリーを期待した人からすると尻切れトンボ感を感じる人もいると思います。しかし、私はむしろここで終わりでいいのではないかという気がします。
ストーリーは、古代九州に居住する海人族が天変地異に追い立てられるように、まず九州北部へ、そしてそこからさらに東へと民族移動を行う姿が描写されます。九州から旅立つあたりで終わりになりますので、これから日本神話の神武東遷に相当するストーリーを期待した人からすると尻切れトンボ感を感じる人もいると思います。しかし、私はむしろここで終わりでいいのではないかという気がします。
2007年10月21日に日本でレビュー済み
諸星 大二郎はかなり昔から読んでいて、大抵の物は持っています。そのため最近よく出版され始めた、タイトルや組み合わせを変えて再出版されている文庫タイプも違う本だと間違えてダブッて購入してしまうことも多く、泣きをみていました。この海神記も同じ。昔3巻で販売されていたものが完結したのかと思い購入しましたが中身は全く同じで、『これからどうなるのか?』という所で終り、相変わらず未完…。2000円ずつの上下巻4000円でこの終わり方は無いでしょう。『西遊妖猿伝』といい、ライフワークと言うなら最低限、完結してほしいですね。欲求不満だけが残ります。
2007年12月16日に日本でレビュー済み
全3巻のコミックが入手できなくなってから久しく、友人にオススメしたくてもオススメできなかったのが、また手に入るようになったのでオススメできるようになりました。他の諸星作品とはやや趣きを異にする、奇抜なキャラや奇想天外な展開の少ない地味なイメージの漫画ですが、その分、読み応えがあり、深く深く作品世界にいざなってくれます。私は別に出版社の回し者ではないのですが、今の版が売り切れるとまた入手困難になる可能性が高いので、ぜひこの機会にご購入をおすすめします。