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遠乃物語 単行本 – 2012/7/19
台湾帰りの人類学者・伊能嘉矩が、佐々木喜善とともに迷い込んだ、もう一つの「とおの」。
ここには昔語りも言い伝えもなく、怪異は現となって郷を襲っていた──。
抜群の筆力で、「物語ること」の根源に迫る傑作。
- 本の長さ414ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2012/7/19
- ISBN-104334928366
- ISBN-13978-4334928360
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登録情報
- 出版社 : 光文社 (2012/7/19)
- 発売日 : 2012/7/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 414ページ
- ISBN-10 : 4334928366
- ISBN-13 : 978-4334928360
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,311,936位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
1962年、東京都生まれ。埼玉県在住。米メリーランド大学海洋・河口部環境科学専攻修士課程修了。科学雑誌の編集者や記者、映像ソフトのプロデューサー などをするかたわら小説を書き、1999年に『クリスタルサイレンス』(朝日ソノラマ)でデビュー。早川書房「ベストSF1999」国内篇1位となる。現 在はフリーランスの立場で小説のほか科学関係の記事やノンフィクションなどを執筆している。家族は妻と息子およびリクガメ1匹。
スキュー バダイビングを始めたことがきっかけで海にのめりこみ、会社を休職して3年間もアメリカの大学院に留学。東海岸のチェサピーク湾で大学の研究船や漁船に乗 り、網やドレッジで魚や蟹、貝などを獲る日々を送った。それらの獲物はもちろん研究材料だったが、貧乏な留学生の貴重な食糧源にもなった。修論はブルーク ラブという蟹(ガザミの一種)の生態に関する研究である。ブルークラブは「ソフトシェルクラブ」として、日本でも食べられるところは多い。
結 局、研究者の道へは進まずに復職し、真面目な勤め人生活を10年近く続けた後で脱サラした。金はなくなったが時間はできたので、機会をとらえては海洋研究 開発機構の様々な研究船に乗せていただいた。このうち海洋地球研究船「みらい」では1カ月近くも南極海を航海し、また有人潜水調査船「しんかい6500」 では水深1,500mの海底カルデラに潜航した。また広島大学の練習・調査船「豊潮丸」にも何度か同乗させていただいた。これらの体験は『深海のパイロッ ト』『ハイドゥナン』『鯨の王』『深海大戦』『辺境生物探訪記』といった作品に生かされている。今後も海を舞台にしたSFや冒険小説、歴史小説、ノンフィ クションなどを書いていきたいと考えている。
海以外では宇宙や生命科学、脳科学、民俗学などに強い興味を持っている。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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異なっていて、「螢女」とも若干趣を異にする作品です。舞台は明治時代の岩手・遠野の町。現実と隣り合
わせの世界との境界に存在する世界に迷い込んだ二人、主人公伊能嘉矩と青年佐々木君の幻想的な民話の世
界の物語です。
遠野ではない「遠乃」の町並みや風の音など自然の描写が濃密に描かれています。と同時に主人公は意識
が飛んでいるのか周囲が変化しているのか現実感のない記憶に不安感と違和感を覚えます。また、この町を
何度か脱出しようと試みるが、その度元に戻ってしまう事たびたび。
神隠しやモンスケ婆、デンデラ野、河童、オシラサマなど理屈の通らない摩訶不思議な雰囲気を醸し出す
作品で、文学性にも優れている(★5)とは思いますが、好みか否かで評価して★2.5としました。
科学的根拠の乏しかった頃の古人たちは天変地異や人間の生死の不思議について「神」という絶対的な存
在を創造し、「神のなせる業」と無理無理納得していたのでしょう。民話の中には世の中の不条理や諦観、
残酷さ或いは歓喜などがたくさん散りばめられています。
しかし、科学的根拠及びその延長線上にある理論に基づいたSF作品を好む私にとって、納得しにくい分野
ではあります。それに物語の展開がもう少しアップテンポの方が好みです(明治時代の時の進み方を考慮さ
れているのは分かりますが・・・)。
そこでは、「語られないこと」が人々をまどろみに閉じ込めるとされます。
それは同時に「語り継ぐことで世の中に対して目を覚ます」ことの放棄でもあると。
書き下ろしである本書の出版は、あの3.11から1年と4か月後であり、舞台はまさに東北。
そう考えると、本書の後半で描かれる「語られないこと」と「目を覚ますこと」との意味が、大災害の記憶の風化に対する警鐘であるようにも読めます。
つまり、古い時代の伝承や怪異譚を題材にとりつつも、そこから、昔話が現代においても意味を持つことを示した物語なのかも。
そんなふうにも感じられる、けっこう奥の深いエンターテインメントです。
読みごたえもずっしり。
もちろん、田舎と妖怪が好きな方にもおすすめ。
著者のことだから、民話の不思議な現象を科学的に解明するのか?と思い読み始めたが、淡々と民話の世界に入って行ったのは意外ではあったが、読後は科学を突き詰めた著者ならではのメッセージと妙に納得させられた。
SF作家藤崎信吾が、満を持して新た境地に挑戦した意欲作である。これからの著者の活動に大いに期待が高まる。