書名・装丁からしたらとてもそうは思えないが、著者自らが「ゆるミス」とよんだ「舞田ひとみ」シリーズの第3弾。ちなみにこれまでは
1) 「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」(2007/11)
2) 「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」(2010/10)
の2作がカッパ・ノベルスとして刊行されている。いずれも連作短編集。
最初、店頭で見かけたとき、本書「コモリと子守」が「舞田ひとみ」シリーズの第3弾だとは気づかなかった。今回は、分量的に前2作の倍近くあるし、れっきとした長編なので、百歩譲って装丁が変わるのは仕方ないにしても、できれば(既刊の2作の読者のために)タイトルだけは
「舞田ひとみ17歳、○○○ときどき探偵」
として欲しかった。
ま、前2作も体裁は整っているし、基本線は「ゆるミス」ではあるのだがテイストは全然異なっていた。
第1作の主人公は、実質的にひとみの叔父で刑事の舞田歳三であり、おしゃまで無邪気なひとみの何気ない一言や振る舞いが事件の解決の鍵を与える(最後の短篇で、ひとみが単なる無邪気な少女ではなかったことが明らかになるのだが)という体裁で話が進んでいった。
第2作は、思春期のとば口に立った少女たち4人の物語であった。語り手は、小学校時代の同級生(ちゃんと第1作にも登場している)で、それぞれが複雑な内面を抱えつつ、社会の矛盾や家族の問題に直面していった。彼女たちの会話が主で、会話自体は「ゆるミス」の線で進むのだが、もはや無邪気ではいられないことへの哀切感を感じさせる作品になっていた。
で、本作「コモリと子守」である。
本作の語り手は、第1作で登場した(実は第2作でも(名前は出ないが)会話の中でちらりと登場している)ひとみの小学校時代の同級生(ただし男子)である。現在は「コモリ」=「引きこもり」である。「コモリ」になってしまった原因は第1作で扱われた事件で、家庭が崩壊してしまったためである。
他方、我らが主人公舞田ひとみ17歳はなんと子育て真っ最中である。だから「子守」。
そして、結構長い本作(繰り返すが今回は長編で扱われる事件は1つだけ)の骨格は誘拐ミステリーである。歌野晶午の誘拐ものといえば、約20年前(記憶が曖昧(^_^;))に「ガラス張りの誘拐」や「さらわれたい女」で取り組んだテーマで、「へ〜、今回はこうきたか」と思いながら読み進めていった。
しかし、事件は事件で、本作の最大のテーマは(第1作からそうだったのかもしれないが)やはり「家族」だったなあ、というのが最大の読後感。
第4作はあるのかなあ。今度は、成人した舞田ひとみの物語を読んでみたい。
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コモリと子守り 単行本(ソフトカバー) – 2012/12/15
歌野 晶午
(著)
巧緻きわまりない本格ミステリーにして、誘拐ミステリーの傑作!!
引きこもりの友人の窮地を救うため、17歳の舞田ひとみは幼児誘拐事件の謎を追うのだが……。
ひとつの事件の解決は、あらたな事件の始まりだった!
勉強に育児に忙しいひとみが、前代未聞の難事件に挑む!!
引きこもりの友人の窮地を救うため、17歳の舞田ひとみは幼児誘拐事件の謎を追うのだが……。
ひとつの事件の解決は、あらたな事件の始まりだった!
勉強に育児に忙しいひとみが、前代未聞の難事件に挑む!!
- 本の長さ532ページ
- 言語日本語
- 出版社光文社
- 発売日2012/12/15
- ISBN-104334928617
- ISBN-13978-4334928612
登録情報
- 出版社 : 光文社 (2012/12/15)
- 発売日 : 2012/12/15
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 532ページ
- ISBN-10 : 4334928617
- ISBN-13 : 978-4334928612
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