アルゼンチン・モデルニスモの中心であったルゴーネスの傑作、「イスール」を巻頭においた幻想短編集。
掲載順に簡単に感想を加えてご紹介します。
「イスール」(レオポルド・ルゴーネス)
若干差別的な内容ともとられかねないのだが、差別される側の悲しみが、死んでいくイスールの姿に凝縮されていく。
「烏賊はおのれの墨を選ぶ」(アドルフォ・ビオイ=カサーレス)
世界の命運は一匹のナマズが握っていたのだった。シンプルすぎるプロットの中で、脆弱で空虚な権力と、それを取り巻く騒々しいだけの大衆に対する強烈な皮肉が描かれる。
「運命の神様はどじなお方」(アルトゥーロ・カンセーラ/ピラール・デ・ルサレータ)
19世紀末から20世紀初めにかけての貧しい時代のブエノスアイレスの面影が色濃く描かれる。悲惨な人生を生き続けていくためには、神様は“どじ”でなければならない。
「占拠された家」(フリオ・コルタサル)
現実が何ものかによって浸食されていく恐怖が淡々と語られていく。終わりの見えない恐怖譚。
「駅馬車」(マヌエル・ムヒカ=ライネス)
昔の駅馬車とはどのような状態だったのかが良く伝わる。昔の人にとっての遠距離旅行とは地獄に等しかったに違いない。しかも夜の大草原にぽつんと置き去りにされたお婆ちゃんの心境たるや。
「物」(シルビーナ・オカンボ)
人間と事物との関係性についてのショートショート。少し意味不明。
「チェスの師匠」(フェデリコ・ベルファー)
最後に「神」が登場して終わる。これをオチにしてしまうと全てが許されてしまう気がするのだが。「わが身にほんとうに起こったこと」(マヌエル・ベイロウ)
時間のずれを使ってある人に会おうとするが、なかなかそうはうまくはいかない。うまくいかないのがミソ。
「選ばれし人」(マリア・エステル・バスケス)
バスケスによるラザロの告白譚。
「月報20」として、訳者の内田吉彦氏による「ボルヘスと幻想文学」が添付されている。その中で、ボルヘスが幻想文学を五つのテーマに分類・整理していること、バスケスとボルヘスとの関係性などについて解説されている。
ちなみに、ルゴーネスはこのシリーズの中で別に「ルゴーネス 塩の像」(バベルの図書館18)として独立した一冊となっており、ボルヘスはよほど気に入ったのか、その中でも「イスール」を掲載している。
「新編 バベルの図書館 6 ラテンアメリカ・中国・アラビア編」に収録されています。

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アルゼンチン短篇集 (バベルの図書館 20) ペーパーバック – 1994/3/1
- 本の長さ163ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日1994/3/1
- ISBN-104336025754
- ISBN-13978-4336025753
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登録情報
- 出版社 : 国書刊行会 (1994/3/1)
- 発売日 : 1994/3/1
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 163ページ
- ISBN-10 : 4336025754
- ISBN-13 : 978-4336025753
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,188,425位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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