アメリカの黒人作家イシュメール・リード…キップ・ハンラハンの名盤「CONJURE」は、この作家の詩や小説にジャズ、R&B、ラテン音楽などの超一流ミュージシャンが曲をつけて演奏した作品でした。
今回小説そのものを初めて読んでみましたが、予想以上にぶっ飛んだ内容でビックリ。
舞台は1920年、ニューヨークのハーレム。歴史的に「ジャズ・エイジ」と呼ばれ黒人文化が大きく花開いた時代。ジャズやラグタイムによるダンスの流行に危機感を抱いた闇のキリスト教団が、1000年以上生き続ける第2次十字軍のテンプル騎士団団長(今は出版社の編集長をやってる)に指令を出してこの動きを撲滅せんとする。一方でこの動きを永続させるためにフードゥー教の司教が古代エジプトから伝わるという聖典(「トトの書」)を探し求める。。というお話。おそらく要約しても何のこっちゃ解らないと思います。
現代~中世~古代の神話、伝説、歴史的事件、博学ネタがこれでもかと過剰にブチ込まれる様はホルヘ・ルイス・ボルヘスやジョン・バースなどの衒学趣味的な現代文学の読書体験に近い。その黒人文化版(チャーリー・パーカーやコルトレーンのウンチクが、オサレな小道具でなく血肉たる構成要素となっている)という感じ。でも主訴は現代社会の風刺であるからベクトルが少し違うかな。
本書の説によると、あらゆる宗教は古代エジプトが発祥であり、その中の「太陽神信仰」が禁欲的な唯一神信仰(ユダヤ教、イスラム教、キリスト教)に継続され、一方の「オシリス(冥界神)信仰」が享楽的な多神教として、一方は欧州に渡りバッカス信仰に、一方ではブラック・アフリカに渡り奴隷貿易を経て今のブードゥー教(アメリカではフードゥー教)に継続されている…だそうな。(これらが作家の個人的アイデアなのか、学究的に根拠のあるものかはよく判らない。)
「アフリカ」をテーマにしながら内容は古代エジプト…というのは、ジャズのマイルス・デイビスやファラオ・サンダースの作品によく見かけます。エジプトは確かにアフリカ大陸の一端にはあるけど、文化圏的には中東・地中海であって、サハラ砂漠以南のブラック・アフリカとは全然別物やん…と個人的には長い間違和感感じてましたが、実はそれなりに確信を持って演っていたんだな…というのを初めて知りました。
考えてみると、我が日本の仏教は多神教でありながら禁欲的だ。「多神教は奔放で淫猥なんじゃよ」とは宗派が禅宗の身としては何か聞き捨てならない。また日本は世界史上初めて白人文化と正面切って戦った国。こういう人々に日本という国はどう映っているのかな…と思っていたら、リード氏の最近作のテーマは何と日本だとか(「Japanese by Spring」)。果たして邦訳されてお目にかかれる日が来るのかしら。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
マンボ・ジャンボ (文学の冒険シリーズ) 単行本 – 1997/10/1
- 本の長さ347ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日1997/10/1
- ISBN-104336039526
- ISBN-13978-4336039521
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
1920年代のニューオーリンズ、ジャズを媒介とした奇病「ジェス・グルー」を巡って、秘密結社とヴードゥー探偵とが繰り広げる大活劇。オカルトを背景に黒人作家が描く、スチャラカでごきげんなジャズ小説。
登録情報
- 出版社 : 国書刊行会 (1997/10/1)
- 発売日 : 1997/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 347ページ
- ISBN-10 : 4336039526
- ISBN-13 : 978-4336039521
- Amazon 売れ筋ランキング: - 304,094位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.6つ
5つのうち4.6つ
3グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。