ディッシュの中短編の傑作もたいていそうですが、一読して、SFという看板は別にいらないんじゃないかな、という気がする作品です。
メインストリームに近いとか、ジャンルを超えているというレベルではなく、普通に小説として成立しています。
大きな理由としては、主人公が「飛翔」を人生の目的としながら、決して妄執としていないこと。目的に向かって画策や努力はもちろん重ねるけれど、日々の糧のため、快楽のため、降りかかる災難からの逃避のために毎日を生きぬいている様子が大変リアルです。
収入が増えると浪費が始まる点なども説得力があり、SF的なヒーローではない普通の少年の成長物語として優れています。
舞台は閉塞的で貧しくなる一方の近未来世界ですが、「飛翔」を、そこからの脱出や解放、未来へ希望の象徴と考えるのは、ちょっと安易にすぎると思います。
ディッシュという作家の資質からしても、そんなにシンプルな発想だけでこれだけの重層的な作品を書くとは思えません。
別にモラルやイデオロギーの面で大きな意味を持たないことでも、それ自体が自己目的化してしまうような強い憧憬、主人公にとっての「歌」と「飛翔」はあくまでそういった、少年の日に出会ってしまった夢と考えたいです。もちろんその裏に、憧れの対象を「飛翔」に求めずにいられない現実があるにせよ。
だからこそ、文字数としては少ない「飛翔」のSF的説明がよけい説得力を持ち、やはりSFの看板を掲げてくれてよかったな、と思える作品になっていると思います。
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歌の翼に(未来の文学) 単行本 – 2009/9/30
トマス・M・ディッシュ
(著),
友枝康子
(翻訳)
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購入オプションとあわせ買い
歌をうたうことによって肉体から精神を解き放つこと、それが〈飛翔〉である。宗教と経済に支配され食糧危機が慢性化している近未来アメリカにおいて禁止されている〈飛翔〉の魅力にとりつかれた少年ダニエルは、ある日突然アイオワの有力者の策略により刑務所へ、そこから彼の数奇な流転の人生がはじまる。やがて結婚、妻のボウアは飛翔装置に入ったまま帰らぬ人となり、抜け殻となった妻とともにニューヨークへ向かう。オペラ劇場で働きはじめたダニエルは、人気歌手のレイと出会い、恥辱と快楽にまみれた生活を過ごしながら歌手を目指すことになるのだが……SFのみならずゲイ小説、教養小説、音楽小説などのあらゆる要素を投入しながら、支配する者とされる者の宿命、芸術の喜びと悲惨をエモーショナルに描く、奇才ディッシュの半自伝的長編にして最高傑作がついに復刊!(サンリオSF文庫版[1980年刊]を全面改訳)
- 本の長さ420ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日2009/9/30
- ISBN-10433605116X
- ISBN-13978-4336051165
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商品の説明
著者について
1960年代に起こったSFニュー・ウェーブ運動の中心作家。代表作に、ニュー・ウェーブを象徴する作品『リスの檻』(短篇)のほか『人類皆殺し』、『虚像のエコー』、『黒いアリス』、子ども向けの作品「いさましいちびのトースター」などがある。『歌の翼に』は1980年にキャンベル記念賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 国書刊行会; 初版 (2009/9/30)
- 発売日 : 2009/9/30
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 420ページ
- ISBN-10 : 433605116X
- ISBN-13 : 978-4336051165
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,018,267位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 268,814位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年4月6日に日本でレビュー済み
通読して思ったことは、普通SFで使われるような道具等が全くと言っていいほど出てこず、普通の小説を読んだ感じがしたということ。内容も主人公がひたすら歌を歌い飛翔することを願うという粗筋で、あまりSFというかこういう叢書に収録されるているのが意外な感じも受けました。
この小説のメインテーマの「歌う=翔ぶ」事に関してどういう解釈が成り立つかは解説に詳しいけど、私もやはり精神的解放を意味するのでは、と思いました。そういう意味ではトニ・モリソン「ソロモンの歌」とも期せずして同期するのかとも思いますし、同性愛的側面でいうと故・瀬戸川猛資氏の「夢想の研究」で触れれられている「天空思想」とも親和性があるのかなとも思いました(蛇足ですがVan Halenにも「Jump」という曲がありましたね)。性的、同性愛的メタファーに「飛ぶ」「鳥」とうが使われることが洋の東西を問わず多いのは偶然なのでしょうか。最後のカタストロフィはこの時点でのアメリカで精神的に否定されるという暗示とも取れそうにも思いますし、著者が自分の最期を薄々感じていたのかとも思いました。勿論、SFとしても十分読めますが、スティーヴ・エリクソン等の現代文学に接近してるようにも感じました。
発売されてから、誰もレビューを書かないのでさぞかし難解な小説なのかなと、身構えて読んだところ、平明で判り易い文章で、内容もそれ程難しくもなく、あまり評価されてないのが少し意外な作品。尚、元々は文庫で出た物をハードカバーで復刊したそうです(こういう経緯も珍しい)。
この小説のメインテーマの「歌う=翔ぶ」事に関してどういう解釈が成り立つかは解説に詳しいけど、私もやはり精神的解放を意味するのでは、と思いました。そういう意味ではトニ・モリソン「ソロモンの歌」とも期せずして同期するのかとも思いますし、同性愛的側面でいうと故・瀬戸川猛資氏の「夢想の研究」で触れれられている「天空思想」とも親和性があるのかなとも思いました(蛇足ですがVan Halenにも「Jump」という曲がありましたね)。性的、同性愛的メタファーに「飛ぶ」「鳥」とうが使われることが洋の東西を問わず多いのは偶然なのでしょうか。最後のカタストロフィはこの時点でのアメリカで精神的に否定されるという暗示とも取れそうにも思いますし、著者が自分の最期を薄々感じていたのかとも思いました。勿論、SFとしても十分読めますが、スティーヴ・エリクソン等の現代文学に接近してるようにも感じました。
発売されてから、誰もレビューを書かないのでさぞかし難解な小説なのかなと、身構えて読んだところ、平明で判り易い文章で、内容もそれ程難しくもなく、あまり評価されてないのが少し意外な作品。尚、元々は文庫で出た物をハードカバーで復刊したそうです(こういう経緯も珍しい)。