1982年〜2003年に刊行された67号を数える『幻想文学』(および『別冊幻想文学』)から選ばれた作家・評論家他へのインタビュー83本(74人)を収録している。また本書発行時点の生没年がそれぞれ記載されているが、それをみると31人もが亡くなっている(矢川澄子のような自殺者もいる)。
生没年月までの記載がないので満年齢の正確な没年ではないが、70歳台での死亡が16人と最も多く、次いで80歳台が7人、あとは50歳台、60歳台、90歳台がそれぞれ2,3人である(京大入学が若すぎる前川道介は不自然なので調べたら1928年生まれではなく1923年だったが、80歳台での死亡には変わりない)。
数日前、本書を手にしたとき全部読めるだろうかと思ったが、興味がありそうなものを拾い読みし、その後なんとなく途中から最後まで読み、最初にもどって一応全部を読んだ。沼野充義「ロシア東欧幻想文学研究書案内」は1987年、まだソ連崩壊以前であり、この発表順に並べられたインタビュー集に時間と歴史があることを実感させられたのがページ順に読む契機となったのかもしれない。
インタビューされた人たちに死者が多いこともそうだが歴史と時間が本書にはつまっている。日本における、いわゆる「幻想文学」の受容にも「歴史」があると感じたのは、紀田順一郎「恐怖文学出版夜話」を読んだときだ。《戦時中の非合理を知っていました》と語る紀田は《戦後のエンタテインメントとして、まず一般の支持を得たのは推理小説だといっていいでしょう》という。横溝正史やディクスン・カーの場合も《怪奇・猟奇趣味を本格推理小説の枠内で合理的に解釈していく》と判断される。「幻想文学」が何かという定義自体が問題だとしても、死や飢餓をともなう歴史のなかにおいてみた場合、時代の変化なしには、非合理をふくむさまざまな文学的展開が広くうけいれられることはなかったのかもしれない。
驚くほど多方面にわたる人たちへのインタビューとその内容の充実度に堪能させられたが、たとえばヘンリー・ジェイムズの短編「密林の獣」あるいは「荒涼のベンチ」などは、「幻想文学」的にどう考えられているのだろうかと思った。前者の冗長、後者の貧寒の片隅からにじみでるものには、「幻想文学」ではないがゆえの凄さ、奇妙さがある。生の「充実」そのものへの問いを、それら短編に対して感じるのは、「幻想文学」についての本書における発言がなんらかのかたちで充実していると思ったせいがある。暗さのなかにも華やかさがあり、総じて面白く、豊かすぎる印象なのである。
もっともそうした疑問(というより何か識別しにくい不審)も好みの問題でしかなさそうだ。たとえばスティーヴン・キング『ペット・セマタリー』について《もっと掘り下げたものが書けないのかなと思ったり》などと皆川博子はおっしゃるが、あれほどに驚異的な「掘り下げ」がなされた小説はないと私は思っている。
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幻想文学講義: 「幻想文学」インタビュー集成 単行本 – 2012/8/23
東雅夫
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- 本の長さ704ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日2012/8/23
- ISBN-104336055203
- ISBN-13978-4336055200
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商品の説明
著者について
1958年神奈川県生まれ。アンソロジスト、文芸評論家。元「幻想文学」編集長、現「幽」編集長。著書に『遠野物語と怪談の時代』(角川学芸出版、日本推理作家協会賞受賞)、『文学の極意は怪談である』(筑摩書房)、編著に『文豪てのひら怪談』(ポプラ文庫)、共著に『日本幻想作家事典』(国書刊行会)、『響鬼探究』(国書刊行会)ほか多数。
登録情報
- 出版社 : 国書刊行会 (2012/8/23)
- 発売日 : 2012/8/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 704ページ
- ISBN-10 : 4336055203
- ISBN-13 : 978-4336055200
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,360,967位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,443位論文集・講演集・対談集
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