この物語をサスペンスとして読むと、
初手の犯罪における動機の凡庸さ、
すぐに殺意にかられて行動してしまう女主人公の軽挙妄動に、
軽く失望させられる。
「そんなんで人を殺しちゃうって、どうよ?」と、思わずツッコミたくもなる。
細かいトリックも、「偶然に頼っちゃダメじゃん」が山盛り。
証言をする登場人物に対しても、
「もしかして、ヒマなの?」と、問いかけたくなる場面もしばしば。
もうひとりの主人公である刑事さんの設定も、
警察内部の人間関係、操作手順などが通りいっぺんで、
「足でかせぐ現場主義の職人刑事」っていうプロフィールを押し通すには、
ずいぶんと書き込み不足(これって、藤田まことが扮する安浦刑事を想定してたんだろうか)を感じる。
それでも、この長尺の小説がぐいぐい読ませる力を持っているのは、
女主人公の恭子が、「負の成長」をしていくからだと思う。
プライドが晴れ晴れと高く、
自分より下のランクの人間を見下してはばからないセレブ妻が、
自分のプライドを守りたいがゆえに、
どんどん強くなり、賢くなり、心は冷たく燃える。
もちろん、ただ環境に恵まれただけのセレブ妻ではなく、
彼女は彼女なりの「闇」を抱えているのだけれど。
恵まれた生活を、安穏に保つためだけではなく、
もっと根の深いところで、彼女の「負の成長譚」が進行していくうちに、
「このひと、どこまで行くんだろう」という好奇心に駆り立てられて、
読者は(少なくとも私は)最終ページまでつき合わされてしまう(しまいました)。
その力強い牽引力に、やはり敬意を表して四つ星。
ドラマ化を意識した章構成、場面展開、小道具の設え具合は、
まあ、さもありなんですが、
池袋駅を中心とした私鉄まわりの風景が、
女性の作家としてはとても視覚的に、女性の立場から描かれていたことも
評価のポイントとさせていただきます。
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氷の華 単行本 – 2007/3/1
天野 節子
(著)
- 本の長さ413ページ
- 言語日本語
- 出版社幻冬舎
- 発売日2007/3/1
- ISBN-104344013018
- ISBN-13978-4344013018
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登録情報
- 出版社 : 幻冬舎 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 413ページ
- ISBN-10 : 4344013018
- ISBN-13 : 978-4344013018
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,355,513位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 337,132位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年10月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
で一時も退屈することはありませんでした。
プロローグの意味がわかるまでかなり最後の方まで
読み進めて行かないとわからなくわかったときは快感でした(笑)
最後の最後まで飽きさせないようになっていて
この作者の作品をまた読みたいと思いました。
実際登場人物の戸田刑事が出てくる本があるようで楽しみです。
ドラマもみてみたいと思いました。
プロローグの意味がわかるまでかなり最後の方まで
読み進めて行かないとわからなくわかったときは快感でした(笑)
最後の最後まで飽きさせないようになっていて
この作者の作品をまた読みたいと思いました。
実際登場人物の戸田刑事が出てくる本があるようで楽しみです。
ドラマもみてみたいと思いました。
2016年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まず主人公の高慢な女の転落は、しっかりと描けている。
物語の軸がしっかりしているので、最後まで緊張感を持って読める。
敵が仕掛けてくる心理的なトラップも面白い。
このトラップが重要で、二重構造になっているのだが、簡単過ぎず複雑過ぎず、その塩梅がとても良い。
(以下、ネタバレ。)
一方で、若干、登場人物が多すぎるという気がした。中年女性が4~5人出てくるのだが、けっこう肝心なところでごっちゃになる。
特に真犯人の下りなど、「ん? てかこの人誰だっけ」ってのが率直な印象。
あと、やたら「刑事ドラマじゃあるまいし」とか「推理小説じゃあるまいし」って文章が出てくるのが気になった。
この手の表現は、よっぽどリアルに書けている事が条件なので、不要にハードルを上げているだけのような気がする。
実際に、リアルな事件であるとするなら、最後の証拠の隠蔽工作など、そもそも不要である。あの程度のミスで検事が立件する事など、それこそ現実問題では起こりえないだろう。
また、主人公の身の処し方も、こてこての「火曜サスペンス」なので、読んでる側からすると、「てか、火サスやん」って突っ込まずにはいられない。
旦那が脅迫されるきっかけとなった事件も、ひき逃げを知り合いに目撃されるなんか、リアルでありますかね?
もう、べったべた。
私はリアル人生でひき逃げすら目撃した事ないですが。
最後に、タイトルの「氷の華」の意味がよくわかりませんでした。
物語の軸がしっかりしているので、最後まで緊張感を持って読める。
敵が仕掛けてくる心理的なトラップも面白い。
このトラップが重要で、二重構造になっているのだが、簡単過ぎず複雑過ぎず、その塩梅がとても良い。
(以下、ネタバレ。)
一方で、若干、登場人物が多すぎるという気がした。中年女性が4~5人出てくるのだが、けっこう肝心なところでごっちゃになる。
特に真犯人の下りなど、「ん? てかこの人誰だっけ」ってのが率直な印象。
あと、やたら「刑事ドラマじゃあるまいし」とか「推理小説じゃあるまいし」って文章が出てくるのが気になった。
この手の表現は、よっぽどリアルに書けている事が条件なので、不要にハードルを上げているだけのような気がする。
実際に、リアルな事件であるとするなら、最後の証拠の隠蔽工作など、そもそも不要である。あの程度のミスで検事が立件する事など、それこそ現実問題では起こりえないだろう。
また、主人公の身の処し方も、こてこての「火曜サスペンス」なので、読んでる側からすると、「てか、火サスやん」って突っ込まずにはいられない。
旦那が脅迫されるきっかけとなった事件も、ひき逃げを知り合いに目撃されるなんか、リアルでありますかね?
もう、べったべた。
私はリアル人生でひき逃げすら目撃した事ないですが。
最後に、タイトルの「氷の華」の意味がよくわかりませんでした。
2019年1月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一気に読める面白さでした。
多少謎解きの説明調になってしまってるようには感じますが、
主人公の追い詰められる心情にはこにらもいやなドキドキ感がずっとあり、ハラハラいたしました。
ほかの作品も読ませていただきます。
多少謎解きの説明調になってしまってるようには感じますが、
主人公の追い詰められる心情にはこにらもいやなドキドキ感がずっとあり、ハラハラいたしました。
ほかの作品も読ませていただきます。
2010年12月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
テレビドラマ化決定!
そんな宣伝に惹かれ著者の本を初めて読みました。
なにやら、設定人物が、
東野圭吾さんの「白夜行」に登場する、
大人になってからの唐沢雪穂さんと、笹垣刑事の対決を見ているかのようでした。
だからというわけではありませんが、
とても読みやすい文体でもあって、すらすら読めてしまう。
そこに、先が見えず、先を早く知りたい衝動に駆られて、
さらに、読書スピードが加速。氷が溶ける時間なんてないくらいの
ハイスピードで一気に読みきってしまいました。
一体、どのようにドラマ化するのでしょうか。
ストーリーは知ってしまいましたけれども、こちらも楽しみになりました(笑顔)
そんな宣伝に惹かれ著者の本を初めて読みました。
なにやら、設定人物が、
東野圭吾さんの「白夜行」に登場する、
大人になってからの唐沢雪穂さんと、笹垣刑事の対決を見ているかのようでした。
だからというわけではありませんが、
とても読みやすい文体でもあって、すらすら読めてしまう。
そこに、先が見えず、先を早く知りたい衝動に駆られて、
さらに、読書スピードが加速。氷が溶ける時間なんてないくらいの
ハイスピードで一気に読みきってしまいました。
一体、どのようにドラマ化するのでしょうか。
ストーリーは知ってしまいましたけれども、こちらも楽しみになりました(笑顔)
2010年10月15日に日本でレビュー済み
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読み応えのない作品。冒頭からして安易過ぎる。ヒロインの恭子が夫隆之の愛人と名乗る女から告白の電話を受け、住所と名前を知らされた挙句、相手の素性や事実関係を"確かめもせず"に、翌日にその住所の部屋に忍び込み、毒を仕掛けるとは余りにも漫画チック。誰がその毒入り液体を飲むか不明な上に、一旦事が起これば、海外出張中の隆之に類が及ぶ事は必定であり、そうなれば恭子自身にも類が及ぶ事は必定なのに。恭子が、隆之の会社の元常務の娘というのも類型的過ぎる。また、第一章を普通に読めば、誰が事件の首謀者かは自明であろう。これで、まともなミステリや犯罪心理小説が産まれる筈はない。
実際その後の進行を見ても、恭子の心理を主体に描きたいのか、捜査の進展を描きたいのか伝わって来ない。文体も中途半端で、刑事小説にしては写実性・簡潔性に欠けるし、犯罪心理小説にしては切迫性・異常性あるいは一種の狂気めいたものが感じられない。淡々と物語が進むだけで、読む者の意表を衝く要素がカケラもない。むしろ、恭子がある人物の正体に途中まで気付かない余りの不自然さに驚いた。隆之という人物の書き込みも不充分で、単なる記号にしか見えなかった。全般的に男を描く筆力が欠けていると思う。
作品の構成力や文章の練達度において習作レベルと言って良い内容。特に、冒頭の軽挙妄動によって、作者が設定した冷酷な筈の恭子の性格が微塵と散って、「氷」とは程遠くなってしまったのは致命的だろう。
実際その後の進行を見ても、恭子の心理を主体に描きたいのか、捜査の進展を描きたいのか伝わって来ない。文体も中途半端で、刑事小説にしては写実性・簡潔性に欠けるし、犯罪心理小説にしては切迫性・異常性あるいは一種の狂気めいたものが感じられない。淡々と物語が進むだけで、読む者の意表を衝く要素がカケラもない。むしろ、恭子がある人物の正体に途中まで気付かない余りの不自然さに驚いた。隆之という人物の書き込みも不充分で、単なる記号にしか見えなかった。全般的に男を描く筆力が欠けていると思う。
作品の構成力や文章の練達度において習作レベルと言って良い内容。特に、冒頭の軽挙妄動によって、作者が設定した冷酷な筈の恭子の性格が微塵と散って、「氷」とは程遠くなってしまったのは致命的だろう。
2008年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
非常に良い描写(演出)の上で次々と二転三転して明らかになる真実、ハラハラせずにはいられませんでした、寝不足になってでもいいから読もうと思える良書です。
残念なのは、後半から少し主人公が慎重さを欠く点でしょうか、これほどの完成度の中で心残りな点でした。
ともあれ、読後に売らない本の一冊として大切に保存したいです。
残念なのは、後半から少し主人公が慎重さを欠く点でしょうか、これほどの完成度の中で心残りな点でした。
ともあれ、読後に売らない本の一冊として大切に保存したいです。
2016年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最初は、カトリーヌアルレーの小説っぽくて期待したけれど、謎解きの過程は都合良すぎるし、登場人物の心理描写はお粗末過ぎる。あ~あ。