この作品を手に取るきっかけとなったのは、YouTubeで観た「ビブリオバトル」動画です。
「ビブリオバトル」とは、数人が集まり、一人一人が、自分が読んで感銘を受けた書物を、他の参加者たちに、どれだけ説得力を持って読むことを薦められるか、を競う知的ゲームです。
言ってみれば、かつて、NHK「週刊ブックレビュー」にあったコーナー「私のお薦めの一冊」を、点数を付けることによって、話術の巧みさを競うゲーム形式に変えたもの、と言った感じでしょうか。
その動画の一つに、ある女子大生が、この作品を強烈にプッシュしていたものがあり、興味を持って読んでみました。
うむむ。確かに、ページをめくる手を止められなくなり、一晩で一気読みしてしまいました。無論、動画の中で女子大生が語っていた「驚愕の結末」まて゜早く辿り着きたくて、と言うこともありますが、それを割り引いても、作者の筆力は、中々のものだと思います。
ただ、多くの方が指摘しているとおり、最初にトリックありき、で、そのトリックを活かすためにキャラクターを作り、ストーリーの中で、彼らを駒のように動かしている、そうした感じは否めません。
複雑な生い立ちを持ち、屈折した心理を持つ主人公など、人格描写により、ぐっとその内面を深く掘り下げられたはずなのに、結局、「厨二病をこじらせた、変態中年おじさん」になってしまっています。
そのおじさんが、これまた、ダメダメな甥っ子を「あいつは、まだガキだ!」などと評するものだから、もしかして、これは笑う箇所!?と勘繰ってしまいました。
主人公が、たとえ、非道な行為をしたとしても、彼の性格に切なさを漂わせるところがあったり、「レクター博士」のように並外れた知性があったりしたら、読者として、感情移入出来るのですが、そうではないものだから、ラストも、意外ではあっても、決して、心を動かされるものではありませんでした。
これは、僕の勝手な推測ですが、作者は、この小説を、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」へのオマージュとして書いたような気がします。
二つの小説に共通したテーマは、「友情への、ほろ苦い決別」です。ただし、この作品では、「ほろ苦い」などという、生やさしいものではありませんが。
他にも、「整形」「謎の過去を持つ男」など、いくつかの共通点があります。
この小説の主人公の真の悲劇は、自身の性癖に気付いていなかったことでしょう。
肉体は女性を求め、精神は男性を愛する、と言う、不思議な性癖。
ゆえに、主人公とヒロインは、恋愛感情ではなく、「同性としての深い友情」で結ばれていたのです。お互いに意識することなく。
ネタバレになりそうなので、これ以上は書きません。
しかし、仮に、この小説が、「ロング・グッドバイ」へのオマージュとして書かれたものとするならば、作者は、とんでもない離れ業を用いたものだなあ、と感心するばかりです。
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彼女はもういない 単行本 – 2011/10/6
西澤 保彦
(著)
異常快楽のためではない……女を殺せば殺すほど、あの人に会えると信じていた。
完全犯罪のトリックが冴えわたる、書き下ろし傑作ミステリ
母校の高校事務局から届いた一冊の同窓会名簿。資産家の両親を亡くし、莫大な遺産を受け継いだ鳴沢文彦は、すぐさま同学年の比奈岡奏絵の項を開いた。10年前、札幌在住だった彼女の連絡先が、今回は空欄であることを見て取ったその瞬間、彼は自分でも不可解なほどの困惑と女性への強烈な憎悪を覚え、やがて連続殺人鬼へと変貌する。誘拐、拉致、凌辱の様子を撮影し殺害する。冷酷の限りを尽くした完全殺人の計画は何のためだったのか――。一方、突如起こった連続殺人に翻弄される刑事・城田理会らは、わずかに残された手がかりを元に犯人を追う。鳴沢の暴走を城田は止めることができるのか?青春の淡い想いは、取り返しのつかないグロテスクな愛の暴走へと変わる……。R-18ミステリ。
完全犯罪のトリックが冴えわたる、書き下ろし傑作ミステリ
母校の高校事務局から届いた一冊の同窓会名簿。資産家の両親を亡くし、莫大な遺産を受け継いだ鳴沢文彦は、すぐさま同学年の比奈岡奏絵の項を開いた。10年前、札幌在住だった彼女の連絡先が、今回は空欄であることを見て取ったその瞬間、彼は自分でも不可解なほどの困惑と女性への強烈な憎悪を覚え、やがて連続殺人鬼へと変貌する。誘拐、拉致、凌辱の様子を撮影し殺害する。冷酷の限りを尽くした完全殺人の計画は何のためだったのか――。一方、突如起こった連続殺人に翻弄される刑事・城田理会らは、わずかに残された手がかりを元に犯人を追う。鳴沢の暴走を城田は止めることができるのか?青春の淡い想いは、取り返しのつかないグロテスクな愛の暴走へと変わる……。R-18ミステリ。
- 本の長さ274ページ
- 言語日本語
- 出版社幻冬舎
- 発売日2011/10/6
- ISBN-104344020618
- ISBN-13978-4344020610
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商品の説明
著者について
1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修。高知大学助手を経て95年、トリックの限りを尽くした本格ミステリ『解体諸因』で衝撃デビュー。以後、SF的設定と本格ミステリを融合した独自の小説世界の話題作を続々と発表。『赤い糸の呻き』(東京創元社)、『依存』『収穫祭』(ともに幻冬舎文庫)など著書多数。
登録情報
- 出版社 : 幻冬舎 (2011/10/6)
- 発売日 : 2011/10/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 274ページ
- ISBN-10 : 4344020618
- ISBN-13 : 978-4344020610
- Amazon 売れ筋ランキング: - 314,413位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,876位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
西澤さんの作風が大好きで、新作をいつも楽しみにしてます。
今回、説明文に『R18』と記載されていた為、ある程度のえげつなさを想像してましたが…想像以上のえげつなさです。
読み終えた第一印象は、救いの『す』の字も無い、えげつなさと悲しさです。
ラストは、読み終わる寸前、
『もしかして…』と予想した結果と同じでした。
そして、陰惨な内容は今までと似たような雰囲気ですが、何故か新しい作風だなと思いました。
『猟死の果て』という作品に出てくる女刑事が再登場します。
えげつないですが、やはり一気に読んでしまう所がさすがです。
読み終えてから、タイトルと表紙を見返すと、更に悲しい気分になります(笑)
今回、説明文に『R18』と記載されていた為、ある程度のえげつなさを想像してましたが…想像以上のえげつなさです。
読み終えた第一印象は、救いの『す』の字も無い、えげつなさと悲しさです。
ラストは、読み終わる寸前、
『もしかして…』と予想した結果と同じでした。
そして、陰惨な内容は今までと似たような雰囲気ですが、何故か新しい作風だなと思いました。
『猟死の果て』という作品に出てくる女刑事が再登場します。
えげつないですが、やはり一気に読んでしまう所がさすがです。
読み終えてから、タイトルと表紙を見返すと、更に悲しい気分になります(笑)
2014年12月31日に日本でレビュー済み
金持ちの主人公は連続強姦殺人を企てる.
その真の目的と結末は?
犯人目線から描かれるミステリーであるが,その目的は最後に明かされる.
序盤から繰り返される犯罪シーンの残虐さもミスリードの一環だろう.
元同級生の所在にまつわる真相と相まって,かなりの意外性を演出している.
この計算はなかなかおもしろい.
一方で,刑事たちの推理のパートはやや説得力に欠け,物足りなさを感じる.
こちらにもう一捻りあれば,より完成度が高くなったように思う.
その真の目的と結末は?
犯人目線から描かれるミステリーであるが,その目的は最後に明かされる.
序盤から繰り返される犯罪シーンの残虐さもミスリードの一環だろう.
元同級生の所在にまつわる真相と相まって,かなりの意外性を演出している.
この計算はなかなかおもしろい.
一方で,刑事たちの推理のパートはやや説得力に欠け,物足りなさを感じる.
こちらにもう一捻りあれば,より完成度が高くなったように思う.
2012年5月31日に日本でレビュー済み
高校の同級生名簿から、かつてバンドを組んでいた女生徒の住所が消えた。
そこから主人公の憎悪の炎が上がり、凶行へと駆り立てられていきます。
殺人鬼と化した主人公の行為は、描写もグロテスクに過ぎます。
プロットからすれば無差別かつ残虐な行為にも必然性はあるのでしょうが、
大前提となる動機、そして行為への過程は、飛躍し過ぎの感があります。
もちろん、殺人鬼の心情は一般の理解など超越しているのでしょうけど。
他の方も言及されていますが、ラストは衝撃です。
その切れ味は大きな驚きと重い余韻をもたらす抜群の鮮やかさです。
ラストを読むと、途中のあれもこれも布石だったことがわかります。
ただそれはストーリーがラストありきの流れに偏っていて、
無理筋や飛躍が見えてくることと表裏一体かもしれません。
それにしてもあんな落とし方でくるとは…。
そう本を閉じて表紙に目を落とす。
タイトル…とても秀逸ですね。なるほどなあ。
西澤さんの他の作品もぜひ読んでみたいと思いました。
そこから主人公の憎悪の炎が上がり、凶行へと駆り立てられていきます。
殺人鬼と化した主人公の行為は、描写もグロテスクに過ぎます。
プロットからすれば無差別かつ残虐な行為にも必然性はあるのでしょうが、
大前提となる動機、そして行為への過程は、飛躍し過ぎの感があります。
もちろん、殺人鬼の心情は一般の理解など超越しているのでしょうけど。
他の方も言及されていますが、ラストは衝撃です。
その切れ味は大きな驚きと重い余韻をもたらす抜群の鮮やかさです。
ラストを読むと、途中のあれもこれも布石だったことがわかります。
ただそれはストーリーがラストありきの流れに偏っていて、
無理筋や飛躍が見えてくることと表裏一体かもしれません。
それにしてもあんな落とし方でくるとは…。
そう本を閉じて表紙に目を落とす。
タイトル…とても秀逸ですね。なるほどなあ。
西澤さんの他の作品もぜひ読んでみたいと思いました。
2019年12月19日に日本でレビュー済み
自分が女だから、というのもあって特殊な感情を持つ主人公鳴沢の気持ちに共感できないし、殺人の目的もめちゃくちゃなんだけどとりあえずページをめくる手が止まらなかった。
女性への暴行シーンもR18にしてはさほど過激ではなかったのでよかった。
想像の遥か上をいくラストに驚いた。
女性への暴行シーンもR18にしてはさほど過激ではなかったのでよかった。
想像の遥か上をいくラストに驚いた。
2011年11月9日に日本でレビュー済み
話としては、ヘビーです。
人によっては途中で読むのを止めるグロさでしょう。
一冊の卒業後の住所録で、狂気の世界にはいっていく男。
狂気の世界は読者の心まで狂わせそうです。
学生時代に思いを寄せた少女。
どこに今はいるのか?
その少女への思いを、恐ろしい表現ですすめていきます。
とはいえ、物語へ引き込むチカラは作者ならでは。。と
いったところでしょうか。
後味は悪いのに、読んだ事への後悔はありません。
人によっては途中で読むのを止めるグロさでしょう。
一冊の卒業後の住所録で、狂気の世界にはいっていく男。
狂気の世界は読者の心まで狂わせそうです。
学生時代に思いを寄せた少女。
どこに今はいるのか?
その少女への思いを、恐ろしい表現ですすめていきます。
とはいえ、物語へ引き込むチカラは作者ならでは。。と
いったところでしょうか。
後味は悪いのに、読んだ事への後悔はありません。