蒲郡風太郎を通してみた世界は、この言葉に集約されるんじゃないだろうか。
冒頭の地面から天にのびた手は、まるで酸素や水を欲するかのように「銭」に死に物狂いなる魂の叫びにも見えた。
風太郎は銭のためなら人殺しも厭わない、あらゆる手段を尽くす。それほどの貧困から這い上がり立ち向かい、成りあがってきたのだ。だから公害に苦しむ他人は眼中に入らない。ときには宿敵の部長刑事も殺す。
そうして子供の時の銭がないゆえの強烈なトラウマが事あるごとに去来し、風太郎を苦悩させる。
欲しいものは確かに手に入れてきた。しかし悪人ばかりの世渡りで、無条件に彼を受け入れる者はだれもいないという絶望があり、その苦痛にもだえ苦しむことが人間にとって生きるという本当の意味を示していた。
なぜ悪人ばかりの苦しい世を生きて、幸福を実感できるだろうか。
原稿用紙のうえに描かれた幸福像も実は偽りでしかない。にもかかわらず、なぜ自分の心を穢されても、能天気に生きられるのか。人はだれしもその命が尽きるまでフライパンの上で熱せられ踊り狂う運命から逃れえないのにである。
今は慎ましやかな普通の家庭生活が営んでも、十年先は、五十年先は、将来の孫世代や曽孫世代は?
お金はあれば権謀術数で猜疑的になり、なければ何もできない。風太郎は極端かもしれない。
大概の人間はその中間を生きている。それも熱せられたフライパンの上を踊っていることに変わりはないが。
今生きている、その事実だけで十分立派な罪人である。その不都合な事実を受け入れ、悪人面して生きる覚悟は、
あるだろうか。そう問うているのだ。
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銭ゲバ (上) (幻冬舎文庫 し 20-4) 文庫 – 2007/10/10
ジョージ秋山
(著)
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銭ゲバ
- 本の長さ496ページ
- 言語日本語
- 出版社幻冬舎
- 発売日2007/10/10
- ISBN-104344410289
- ISBN-13978-4344410282
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登録情報
- 出版社 : 幻冬舎 (2007/10/10)
- 発売日 : 2007/10/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 496ページ
- ISBN-10 : 4344410289
- ISBN-13 : 978-4344410282
- Amazon 売れ筋ランキング: - 297,581位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2018年8月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
風太郎のセリフの「銭」を「愛」に置き換えればすべてわかる。
愛がほしいズラ
愛がすべてズラ
愛のためならなんでもするズラ
ただそれだけなのである。
彼が地獄から救われるチャンスはただ一度、正美の愛によってだけだっただろう。
しかし、彼は、自分が醜いがゆえに父親の愛を受けられず、むしろ激しい憎悪を向けられた
と思っているため、(外見が)醜い人をどうしてもどうしても愛することができず、むしろ「憎悪された醜い自分」
をそこに見てしまうので、正美の愛をどうしても受け入れられないのである。
そして、正美だけが彼の「真実」を理解して、そして自殺した。(理解して、というのが重要で、そうでなければ
安い昼ドラである)
彼はただ愛がほしかったのである。
突然失われた母の愛、虐待した父の愛。
もう一つの軸は、自分が醜いがゆえに愛されないという強烈な意識。
だから、「美しい」女性の「愛」を求めるほど、その心の「醜さ」に苦しんでいく。
もちろん、美しい女性の心が皆醜いわけはないので、それは単に彼自身の劣等感の問題である。
女子高生を撲殺するシーンは、(非常に残酷で女子高生には何の非もないのだが)、風太郎の苦しみに思わず同情して
しまうのである。
もちろん、彼を化け物にしたのは、虐待と貧困だけでなく、父親の淫蕩な血もある。
一方で、極めて純粋な心もある。
彼は、自分が手にいれることができない「愛」よりも、「銭」のほうが強いということを、繰り返し繰り返し
確認するために悪行を重ねるのである。
そして最後には、「愛」がはるかに「銭」よりも価値がある、少なくとも自分が本当に求めていたのは「愛」だが
それは決して「銭」では手に入らない、故に決して手に入らないと、思い知って自殺する。
ただ、もうこの本を読むと、私は風太郎がかわいそうで、かわいそうで、そのあまりの救われなさに
苦しくなるのである。
愛がほしいズラ
愛がすべてズラ
愛のためならなんでもするズラ
ただそれだけなのである。
彼が地獄から救われるチャンスはただ一度、正美の愛によってだけだっただろう。
しかし、彼は、自分が醜いがゆえに父親の愛を受けられず、むしろ激しい憎悪を向けられた
と思っているため、(外見が)醜い人をどうしてもどうしても愛することができず、むしろ「憎悪された醜い自分」
をそこに見てしまうので、正美の愛をどうしても受け入れられないのである。
そして、正美だけが彼の「真実」を理解して、そして自殺した。(理解して、というのが重要で、そうでなければ
安い昼ドラである)
彼はただ愛がほしかったのである。
突然失われた母の愛、虐待した父の愛。
もう一つの軸は、自分が醜いがゆえに愛されないという強烈な意識。
だから、「美しい」女性の「愛」を求めるほど、その心の「醜さ」に苦しんでいく。
もちろん、美しい女性の心が皆醜いわけはないので、それは単に彼自身の劣等感の問題である。
女子高生を撲殺するシーンは、(非常に残酷で女子高生には何の非もないのだが)、風太郎の苦しみに思わず同情して
しまうのである。
もちろん、彼を化け物にしたのは、虐待と貧困だけでなく、父親の淫蕩な血もある。
一方で、極めて純粋な心もある。
彼は、自分が手にいれることができない「愛」よりも、「銭」のほうが強いということを、繰り返し繰り返し
確認するために悪行を重ねるのである。
そして最後には、「愛」がはるかに「銭」よりも価値がある、少なくとも自分が本当に求めていたのは「愛」だが
それは決して「銭」では手に入らない、故に決して手に入らないと、思い知って自殺する。
ただ、もうこの本を読むと、私は風太郎がかわいそうで、かわいそうで、そのあまりの救われなさに
苦しくなるのである。
2022年1月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者さんの作風なのか時代のせいなのか、物語のディテールにはこだわらずに
主人公が次々悪事を重ねていくシンプルな内容です。
シナリオやキャラ設定についても、緻密に作り込まれたものとは言えず、
「世の中銭が全て」という作品全体のテーマだけ決めて、あとは全体的に
その場のノリでキャラを動かしているような印象を受けます。
唐突で衝撃的なラストはその最たるものですね。
・・という感じで、今の目線で見ると作りの上で粗い点があちこちで目につきますが
このテーマに込められた作者さんのエネルギーみたいなものは凄く感じられる内容です。
主人公が次々悪事を重ねていくシンプルな内容です。
シナリオやキャラ設定についても、緻密に作り込まれたものとは言えず、
「世の中銭が全て」という作品全体のテーマだけ決めて、あとは全体的に
その場のノリでキャラを動かしているような印象を受けます。
唐突で衝撃的なラストはその最たるものですね。
・・という感じで、今の目線で見ると作りの上で粗い点があちこちで目につきますが
このテーマに込められた作者さんのエネルギーみたいなものは凄く感じられる内容です。
2018年4月19日に日本でレビュー済み
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かなりどぎつい話だが、ナニワ金融道やウシジマくんが好きな人にはオススメ。
2015年2月25日に日本でレビュー済み
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ジョージ秋山さんの作品は初めて拝見しました。
怨念が溢れんばかりの地面から突き出た死体の腕の描写。
セックスや強姦を予感させる女の服を一払いで破きさる描写。
荒廃した誰もいない街で一人選挙活動を行う描写。
たったワンシーンで、今後の展開を予想させたり、登場人物の心情を描くのがうまい人なのだと感じました。
小説ではないのですが、「行間を読」ませてくる作家さんです。
印象に残るシーンが多い作品でした。
怨念が溢れんばかりの地面から突き出た死体の腕の描写。
セックスや強姦を予感させる女の服を一払いで破きさる描写。
荒廃した誰もいない街で一人選挙活動を行う描写。
たったワンシーンで、今後の展開を予想させたり、登場人物の心情を描くのがうまい人なのだと感じました。
小説ではないのですが、「行間を読」ませてくる作家さんです。
印象に残るシーンが多い作品でした。
2016年9月10日に日本でレビュー済み
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ドラマで放送された松山ケンイチのイメージが強かったのですが、顔通りのキャラクターでしたね なかなか面白かったと思います
2016年5月13日に日本でレビュー済み
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主人公はただただ貪欲にお金を求める。その方針一つを軸に行動が動いていくのですが、これだけ純粋に一つのポリシーで動ける人間を描くとこうなるのか、と感じることができた作品でした。
2016年11月17日に日本でレビュー済み
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幼い頃、銭が無かったせいで母の病気を治せなかった事がトラウマとなり、銭を得るため悪事に手を染めた主人公の蒲郡風太郎。
残念ながら我慢というものを知らない性格らしい。
銭を追い求めるだけならまだしも、醜いものが嫌いという理由で人を痛めつけて自殺に追い込み、期待を裏切られたという理由でいとも簡単に人を殺し・・・
銭ゲバである以前に単なるサイコパスである。
突っ込みどころは満載(何故警察は捕まえられないのか、無学なのに社長が務まるのか等々)だが、これらに目を瞑ったとしても考えさせられるストーリーにはなっていない。
文学的だなどという他のレビューの高評価には甚だ疑問を感じる。
残念ながら我慢というものを知らない性格らしい。
銭を追い求めるだけならまだしも、醜いものが嫌いという理由で人を痛めつけて自殺に追い込み、期待を裏切られたという理由でいとも簡単に人を殺し・・・
銭ゲバである以前に単なるサイコパスである。
突っ込みどころは満載(何故警察は捕まえられないのか、無学なのに社長が務まるのか等々)だが、これらに目を瞑ったとしても考えさせられるストーリーにはなっていない。
文学的だなどという他のレビューの高評価には甚だ疑問を感じる。