都合により、「バイオラバー」の項をまず読んだ。身につけているだけで、体質が改善され、痛みが緩和され、ガン細胞さえも死滅させると謳われた「魔法の絨毯」である。2006年刊のハードカバーの文庫本版。発行は2009年8月。この発行日付が微妙。この本の発行2ヵ月後、即ち2009年10月、京都府警が、バイオラバー発売元の山本化学工業の関連会社や健康用品販売会社の社員計３名を逮捕した。そして略式命令による罰金刑が確定している(以上wikipediaに拠る)。逮捕の理由は、医療機器としての厚生労働大臣の承認を受けていないにも関わらず、医学的効能を謳って販売した、という「代替医療」につきものの薬事法違反。罰金刑で済んだ、ということは、宣伝文句さえ替えれば、販売を継続してもいい、ということである。現に今でもガン治療の「バイブル本」には本商品が紹介されている。「キラキラ」の小島慶子や、かの藤原紀香がこの商品の効能を謳った(らしい)のは、著者の芸能界つながりか。いずれにしてもこの本は「バイオラバー」の売り上げに多大に貢献したに違いない。「みのもんた効果」である。ネットで「バイオラバー」を検索すると、恰も「ショーコー、ショーコー」を連呼した某カルト集団の選挙宣伝を思わせるようなCM画像を見ることが出来るし、本商品の「インチキ」ぶりを過酷に暴くページも読むことができる。
科学と非科学を区別するのは誰にでも出来そうな気がするが、論理学と科学の違いを知ることの方は難しい。論理的=科学的ではない。特に三段論法の体裁をとって提示されると、前後関係と因果関係を取り違えてしまうことがある。山本化学工業が提示してるのは、非常に限定的なひとつの実験の、バイオラバー装着前後の生理データだけである。その変化をもってバイオラバーに生体活性化の効能あり、とするが、それは前後関係ないし相関関係であって因果関係ではない。ガン細胞撲滅効果を立証する論文がNature誌に載ったことはテレビのニュース番組でも取り上げられた。しかし実際は掲載されたのは、専門家による「査読」のあるNature誌ではなく、「査読」のないその関連雑誌である。およそ医薬品、医療器具の効能は「二重盲検ランダムプラセボ試験」によってしか証明されえないところ、その試験を経ていない論文は、査読を受けることすらできない。しかし病人は科学ではなく希望を追求する。そしてその希望自体が病勢を改善するという事実がある以上、病人に希望を与えるこれらの商品は、これからも売られ続け、開発され続けていくだろう。影響力のある著者には「バイオラバー」の近況報告を含め、その他の健康関連商品の追加レポートを書いて欲しい、と希望するものである。その際は「ドクター」として、科学的なるものについての考察も、ぜひ入れて欲しい。
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