私がこの本の存在を知ったのは著者（川渕圭一氏）が民放のＴ放送に出演された時、偶然ラジオのスイッチを入れたためである。印象に残ったのはラジオから流れてくる川渕氏の声であった。ラジオであるが故にvisualの要素が取り外され、声そのものが唯一の媒体であるが、アナウンサーの質問にもはぐらかすことなく答えておられる声は優しそうで、かつ真面目そうな声であった。
私の自己紹介をすると、私自身が医師であり、そして神経系の難病をもつ患者でもある。即ち、ある時は白衣を着て、またある時はパジャマを着て、ある意味で「二足の草鞋」を履いているのである。つまり、著者のこの本におけるテーマである「患者のための医療」を実感できる立場にある。
この立場にいる者が敢えて辛口コメントを述べるならば、川渕氏によれば忙しい勤務→なおかつアルバイトをする研修医→そのためにさらに患者不在の医療という構図になるのである。それではアルバイトは全く無意味なことであろうか？私の答えは否である。医師にとって『患者はもっとも大事な教科書』であり、かつ、若き頃の経験こそが医師にとり、『医師の自覚と医師の性（さが）』を育むのである。したがって他の悪しき行事と川渕氏に思われていることも決して無駄・無意味ではないと思われるのである。
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