これまで大統領選挙や上院選挙などに陣営スタッフとして関与してきた著者が2008年の大統領選挙を切り口に現代アメリカの姿を描き出す。日本にいてはなかなか知ることのできない大統領選挙や党予備選挙の仕組みや裏事情が見えてくるのは他の本にはない本書の特徴的な点のように思う。
「インターネットがなかったらオバマの勝利はなかっただろう」とはよく耳にする話だが、本書もまたインターネット時代における大統領選挙戦略の変貌に大きく着目するものである。YouTubeやソーシャルネットワーキングサービスなどを駆使して展開されるグラスルーツ革命こそが若年層の参加をもたらしオバマ勝利の鍵となったとのこと。また、アイオワなど小さな州におけるそういった草の根のオバマ旋風がさらにネットで他州に伝播していき、結果オバマ陣営は小州を着実に積み重ねていくことができたという。「人口の多い激戦州以外は切り捨てる」という伝統的選挙戦略はネット時代には通用しなくなりつつある。大きな利益団体に対して草の根が、大きな州に対して小さな州が影響力を相対的に増しつつあるのだ。トマス・フリードマンが描き出す「フラット化する世界」において選挙はどう変わっていくのかということを占う上でも今回の大統領選挙は注目すべきものだったといえるだろう。

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オバマのアメリカ: 大統領選挙と超大国のゆくえ (幻冬舎新書 わ 3-1) 新書 – 2008/11/1
渡辺 将人
(著)
- ISBN-104344981014
- ISBN-13978-4344981010
- 出版社幻冬舎
- 発売日2008/11/1
- 言語日本語
- 本の長さ228ページ
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登録情報
- 出版社 : 幻冬舎 (2008/11/1)
- 発売日 : 2008/11/1
- 言語 : 日本語
- 新書 : 228ページ
- ISBN-10 : 4344981014
- ISBN-13 : 978-4344981010
- Amazon 売れ筋ランキング: - 857,892位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 381位アメリカのエリアスタディ
- - 1,065位幻冬舎新書
- - 5,381位政治入門
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2009年2月27日に日本でレビュー済み
とにかく米国における党大会や大統領選の実際について、こんなに興味深いディテール豊かで分かりやすくリアルに教えてくれる本に出会えたのは大収穫。さすがに民主党スタッフとして働いていただけのことはあって、「ナルホドナー」と何度も頷いた。またオバマとシカゴとの関わりについても、著者自身がシカゴ大で学んだ強みで地区ごとの雰囲気の違いにまで踏み込んで書かれており、記述に確かさを感じさせる。
ただ著者がエピローグで「脱線だらけの、まとまりのない自由奔放なレポート」(p227)と断っているのは、まんざら謙遜というわけでもなく、各章はそれぞれに刺激的なのだが、全体を貫く主題的一貫性という点では弱さも感じる。米国の選挙制度を記述した前半と、その制度の中からオバマがいかに登場したかを語る後半とが、必ずしもうまくつながっていない印象を受ける。
例えば米国の選挙においてメディアがどのような役割を演じてきたかについての解説から、インターネットの影響が増している現状への流れの分析も手際の良いものだ。オバマ陣営がユーチューブを効果的に活用したことも指摘されている。しかしそれがどこまで意図的な戦略によるのかについては、よく分からない。
第2章「ネット時代のグラスルーツ革命」はオバマが副大統領候補の決定をテキストメッセージで議員や支持者に配信したエピソードから始まるのだが、章の最後には「グラスルーツの実働隊が、ユーチューブに動画を載せて草の根の『空中戦』をやる。しかも陣営の命令ではなく。そういう時代が始まっている」(p92)ともあって、これはネット上の情報はコントロールし切れないということだろう。だとすれば、問題は「ギャンブルに打って出られるか」(p92)どうかというよりは、なぜネットのグラスルーツはオバマというイコンを選んだのかということではないのか? 「『物語』の政治」と題された第4章がそういう論点にまで考察を深めていたなら……と、まあこれは無いものねだりになるだろうか。
冷泉彰彦の『 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ 』と併読すると、さらに面白いと思う。
ただ著者がエピローグで「脱線だらけの、まとまりのない自由奔放なレポート」(p227)と断っているのは、まんざら謙遜というわけでもなく、各章はそれぞれに刺激的なのだが、全体を貫く主題的一貫性という点では弱さも感じる。米国の選挙制度を記述した前半と、その制度の中からオバマがいかに登場したかを語る後半とが、必ずしもうまくつながっていない印象を受ける。
例えば米国の選挙においてメディアがどのような役割を演じてきたかについての解説から、インターネットの影響が増している現状への流れの分析も手際の良いものだ。オバマ陣営がユーチューブを効果的に活用したことも指摘されている。しかしそれがどこまで意図的な戦略によるのかについては、よく分からない。
第2章「ネット時代のグラスルーツ革命」はオバマが副大統領候補の決定をテキストメッセージで議員や支持者に配信したエピソードから始まるのだが、章の最後には「グラスルーツの実働隊が、ユーチューブに動画を載せて草の根の『空中戦』をやる。しかも陣営の命令ではなく。そういう時代が始まっている」(p92)ともあって、これはネット上の情報はコントロールし切れないということだろう。だとすれば、問題は「ギャンブルに打って出られるか」(p92)どうかというよりは、なぜネットのグラスルーツはオバマというイコンを選んだのかということではないのか? 「『物語』の政治」と題された第4章がそういう論点にまで考察を深めていたなら……と、まあこれは無いものねだりになるだろうか。
冷泉彰彦の『 民主党のアメリカ 共和党のアメリカ 』と併読すると、さらに面白いと思う。
2009年1月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なかなか読み応えがある。「オバマ」のアメリカ、とある通り、オバマという人物の大統領選挙戦が周辺状況説明を交えながら詳しく記述されている。
1,2,3章で、党大会の持つ本当の意義、大統領選挙におけるアイオワ州の特殊性、大統領選挙でメディアが果たしてきた役割とその変遷などなど、選挙戦の仕組みが詳しく説明されており、知識の薄かった私にも選挙の流れがよく分かる。ただしこの3章は、ところどころ事実の羅列が続く箇所もあり、とてもドライで、時々意識が遠のいていった。
ところが第4章でまた引き戻される。オバマ氏がどのようにハワイからシカゴに移り、シカゴで「黒人」として認められるに至ったか、シカゴの黒人社会の仕組みはどのようなものか、ミシェル夫人がオバマ氏の政治生活においてどのような意義を持っているかなど、とても面白く書かれている。
ミシェル夫人は、黒人であり高学歴であるということは「自分のコミュニティで生きて行くために、知性を覆い隠さねばならないフラストレーション」(p.192)を感じざるを得ないと述べている。米国は初の黒人大統領を迎えて、どのように変わっていくのか、非常に興味深い。
本書は期間限定付きの感があるが、オバマが大統領になるまでの経緯や大統領選の裏話に興味のある方には面白い一冊だと思います。
1,2,3章で、党大会の持つ本当の意義、大統領選挙におけるアイオワ州の特殊性、大統領選挙でメディアが果たしてきた役割とその変遷などなど、選挙戦の仕組みが詳しく説明されており、知識の薄かった私にも選挙の流れがよく分かる。ただしこの3章は、ところどころ事実の羅列が続く箇所もあり、とてもドライで、時々意識が遠のいていった。
ところが第4章でまた引き戻される。オバマ氏がどのようにハワイからシカゴに移り、シカゴで「黒人」として認められるに至ったか、シカゴの黒人社会の仕組みはどのようなものか、ミシェル夫人がオバマ氏の政治生活においてどのような意義を持っているかなど、とても面白く書かれている。
ミシェル夫人は、黒人であり高学歴であるということは「自分のコミュニティで生きて行くために、知性を覆い隠さねばならないフラストレーション」(p.192)を感じざるを得ないと述べている。米国は初の黒人大統領を迎えて、どのように変わっていくのか、非常に興味深い。
本書は期間限定付きの感があるが、オバマが大統領になるまでの経緯や大統領選の裏話に興味のある方には面白い一冊だと思います。
2009年3月4日に日本でレビュー済み
オバマのシカゴにおけるコミュニティオーガナイザー時代や大学講師時代からの実地レポートをもとにしているので、非常に中身は濃く、新書とは思えない読み応えがある秀作だと思う。
昨今のオバマ現象をただのブームと考えず、それを可能にした裏側に肉薄しようとしており、選挙制度やアメリカの政治に興味がある人には必読かもしれない。
政治には「物語性」が必要というが、日本の状況と照らし合わせてみていよいよその重要性を痛感する。無数の「物語」を持った候補者の、そのさらに頂点がオバマなのだとすると、日本の政治家の粒の小ささが本当に悲しくもなる。
なお、まったく別のアプローチで書かれた本だが、アスキー新書から最近出た「オバマ現象のカラクリ」(田中慎一・本田哲也共著)と合わせて読むと、今回のオバマ現象を多面的に捉えられて非常に興味深いと思った。オバマを「コミュニケーションの力」という新しい視点で分析したあちらも良書。
昨今のオバマ現象をただのブームと考えず、それを可能にした裏側に肉薄しようとしており、選挙制度やアメリカの政治に興味がある人には必読かもしれない。
政治には「物語性」が必要というが、日本の状況と照らし合わせてみていよいよその重要性を痛感する。無数の「物語」を持った候補者の、そのさらに頂点がオバマなのだとすると、日本の政治家の粒の小ささが本当に悲しくもなる。
なお、まったく別のアプローチで書かれた本だが、アスキー新書から最近出た「オバマ現象のカラクリ」(田中慎一・本田哲也共著)と合わせて読むと、今回のオバマ現象を多面的に捉えられて非常に興味深いと思った。オバマを「コミュニケーションの力」という新しい視点で分析したあちらも良書。
2009年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アメリカの大統領選挙の実態を紹介しながら、オバマの個人史とそのオバマがアメリカ大統領候補となることのの「物語」の意味合いを解説してあり、非常に面白かった。
自らが協力された選挙戦のレポートで、ドラマ性を持っては書かれていないが、そのことで逆に、真にせまるものがあった。
それにしても、現職の大統領(ブッシュ)が、自分の後継になる人物を選挙のわずか4年前まで全く知らなかった。とういのには改めて驚いた。
自らが協力された選挙戦のレポートで、ドラマ性を持っては書かれていないが、そのことで逆に、真にせまるものがあった。
それにしても、現職の大統領(ブッシュ)が、自分の後継になる人物を選挙のわずか4年前まで全く知らなかった。とういのには改めて驚いた。
2008年12月9日に日本でレビュー済み
著者はシカゴ大に学び、オバマ次期米大統領の政界での姉貴分に当たるシャコウスキー下院議員のスタッフをし、オバマの大統領選にも初めから参加していたため、オバマがシカゴ大講師から10年で大統領まで駆け上がった過程を目の当たりにしている。おそらく日本人で、著者以上にオバマについて語るに適当な人物はいないのではなかろうか。まさに超特急で政界を駆け上がって来たのだが、4年前の民主党大会での「1つのアメリカ」演説以前はシカゴの黒人社会の主導権争いにも負ける脆弱な人物だった。アメリカ黒人ではない、ハワイからシカゴへ移住したという大きなバックを持たないアイデンティティだったから、アメリカ黒人にも白人にも仲間として受け入れられない、しかしそうであるが故に、双方にとけ込む余地もあった。
また、大統領選についても、党大会のチケット配分、アイオワ州民の特権など、舞台裏を知るものにしか知り得ない迫力があった。著者が政治スタッフとして実際に見た一次情報の上、ジャーナリスト生々しい報告、研究者としての分析と重層的な視点で大統領選を切り取る。内容がぎゅっと詰まっていて新書にはもったいない感があったけど、時宜を得た良い本である。
また、大統領選についても、党大会のチケット配分、アイオワ州民の特権など、舞台裏を知るものにしか知り得ない迫力があった。著者が政治スタッフとして実際に見た一次情報の上、ジャーナリスト生々しい報告、研究者としての分析と重層的な視点で大統領選を切り取る。内容がぎゅっと詰まっていて新書にはもったいない感があったけど、時宜を得た良い本である。