この本は朝日新聞の読者から寄せられるいろいろな人生相談に、著者が1000文字程度で回答する企画が発端。
著者がどうやってその回答を導き出したのか、その過程を細かくかみ砕いて解説することで、さまざまな悩み解決のための思考法を提示している。
つまり、人生を生きるうえで次々と出てくる悩み、難問（と思える問題）を、自分自身の力で乗り越えていくための、ツールとしての思考法を示している。
ポジティブな人やすごく賢い人はこの本は大したことないな、と思うかも。
なぜならそういう人はこの本に書かれていることはだいたいわかってるし、実際にやってきているから。
でも私のような根がネガティブな人や、優しい人、自分は普通だと思う人、弱いと思っている人には、これからぶつかる人生の難問にこの本の思考法がとても役に立つかも、と思った。
いっけん、他人の人生相談とその回答なんて、自分には関係ないし、どうでもいい。
相談も軽いものから「人生八方ふさがり」の重いものまでいろいろ。
本書の肝は、悩みを抱える本人が問題の本質に気づくこと、状況が複雑に絡み合っているように見える問題の、「今、何をすべきか」という最初の一歩を導き出せるまでに必要な、考え方の示唆です。
本書で取り上げられている悩みは「今の自分」にはどうでもよくても、これからの人生、似たような悩みが起こるかもしれない。
似たような相談を友達から受けるかもしれない。
そういう悩みがあえて取り上げられている。（ように思う）
思考法の示唆とは別に本書でもうひとつ面白いのは、著者は第1回の相談への回答からいろいろな相談に向き合うなかで、「この回答でよかったのか」「この回答に愛がなかった」など自問自答しながら進んでいく部分。
神様のように「こうするのがベスト」と常に上から目線ではなく、著者が悩みとどう向き合ったのか、1000文字と限られた文字数に回答をおさめるまでに、どれだけの下書きを書いて悩んだのか、本企画で4人いる回答者のなかで、著者がどうやって「自分にしかできない回答」を書こうとしたか、というのもわかる。
それらが明らかになって、権威性がいい具合に中和されているなと感じた。
実際に回答に愛があるかどうかは別にして。
本書のタイトルになっている相談、「もうすぐ30歳になろうかという息子がアニメオタクで、部屋はグッズであふれている。親として心配で、幼いことはやめろ、と息子にいってもほっといてくれ、と言い合いになり解決しない、どうしたらいいですか。」
これに対して自分ならなんて回答するかしら？
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