別役実さんの童話集の中でも、僕の一押しがこれです。
劇作家や舞台演出家として第１級の氏が書く童話は、決して子供のための童話でないことは、他の作品に対するレビュアーの多くが書かれている通りです。舞台では実現することが難しい、でも氏の中にこだわりに似た創作意欲の表現の場が、童話という形に辿り着いたのではないでしょうか？時に神話を題材として、時に近代の大いなる夢に触れ、また時に宮沢賢治の世界を覗きながら、氏は心ざわめく、あるいは心安らぐ不思議な世界に誘ってくれます。
サーカス、空中ブランコ、金星、うらまち、飛行船、ざくろ、貝殻、海峡、メリーゴーラウンド、三角定規･･･どこにでもある、でも何故か懐かしい言葉たちが、氏の童話の中ではキラキラと輝きながら息づき、いつしかとても重要な役割を果たしていることに気付かされます。
ここに収められている『青いオーロラ号の冒険』、読んでみてください。
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