英国で1961年刊行されたものの翻訳です。
とのことで50~60年代の戦後のイギリスを舞台としたもので、おそらくは地方の小都市。
エレベータが手動開閉の扉を備えていたり、専用回線の電話線を引いていたりといったアナログ感のある時代設定です。
濃霧の夜に、電話でオフィスに呼び出された主人公が法律事務所の共同経営者である兄の遺体を発見する…という幕開けで小説は始まります。
しっとりとした人物描写で、登場人物の性格が鮮やかに描かれる一方、特に強調されていないとはいえ、冷たい小雨が降りそぼる陰鬱な冬という光景が目に浮かびます。普及しつつある自動車をはじめ、タイプライターやロウ管録音機、万年筆セットに木製のデスク…といったクラシックなオフィスの様子がまた色を添えます。
主人公の性格もまたいいですね。どうみても不公平な扱いを受けているように見えるが、兄に対する親愛の情があったり、あるいは周りの人たちに対して強く出られない弱さもあり、苛立ちを爆発させる場面もあったりと、とても人間的です。友人にもちたいタイプですね。エモーショナルな地の文にはヒントがそっと隠されています。まず読んで、そして全てがわかった後にまた読んで、そして今度は犯人捜しを離れてひとつの物語としてまた読んで。と何度も楽しめる作品です。
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兄の殺人者 (現代教養文庫 3041 ミステリ・ボックス) 文庫 – 1994/1/1
- 本の長さ318ページ
- 言語日本語
- 出版社社会思想社
- 発売日1994/1/1
- ISBN-104390130412
- ISBN-13978-4390130417
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登録情報
- 出版社 : 社会思想社 (1994/1/1)
- 発売日 : 1994/1/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 318ページ
- ISBN-10 : 4390130412
- ISBN-13 : 978-4390130417
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,084,544位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年7月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
記載通りの良好な状態でした。迅速に届き、すぐ読むことができました。
2011年7月5日に日本でレビュー済み
クリスティーが絶賛したミステリィー。
なるほど、丁寧な描写に、緻密な伏せんが張られ、
霧深いロンドンでの事件は、クラシックな魅力に溢れています。
シックな本の表紙、上品な訳語もあいまって、
エレガントな気分を醸し出す、上質本格なミステリィー。
シリーズの全訳が楽しみ楽しみ!
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シリーズの全訳が楽しみ楽しみ!
2009年11月29日に日本でレビュー済み
近年再評価され日本でも人気が高いイギリス本格ミステリーの巨匠ディヴァインの記念すべき処女作です。本書はあのミステリーの女王アガサ・クリスティーから賞賛されたという逸話が肯ける見事な出来栄えの傑作だと思います。かなり捻りを効かせたフーダニットの面白さもさる事ながら、悲劇的ではありますがシリアスな人間ドラマを内包し家族の在り方について深く考えさせてくれます。
事務弁護士サイモンは霧深い夜に兄オリバーから電話で呼び出され事務所に出向くが、そこで発見したのは何と兄の死体だった。やがて警察の捜査により兄が恐喝者だったという証拠が出て、サイモンの知人女性が逮捕される。兄が卑劣な犯罪者とはどうしても信じられないサイモンは事件の真相を求めて警察とは別に調査に乗り出して行く。
本書のミステリーとしての良さは物語の冒頭部分のさり気ない描写と無害で善良に見える人物の描き方の巧さでしょう。本当は異常なのに些細な事と思わせ欺瞞に気づかせないテクニックが抜群です。犯人の意外性も完全に虚を突かれて一瞬信じられなくなるサプライズで満点の出来です。そして私が注目する人間ドラマとしては、兄オリバーの妻マリオンが交通事故で顔に醜い傷を負ってから夫婦仲が悪くなり義弟サイモンに同情を求めて接近します。サイモンもまた妻リンダと仲違いし別居中という不幸な状況でしたが、今回の事件を契機に人間関係がこじれた原因を掴み出し元凶であるマリオンときっぱり訣別する道を選びます。他にも幼少時から甘やかされて育った娘と父との確執が生んだ悲劇の構図が読み取れる等、特に大人の読者のハートに強く訴え掛ける内容になっていると思います。本書解説には著者の魅力的な長編全13作品の一部内容紹介が書かれていてとても参考になります。現在翻訳されて読めるのは7冊で未訳の残り6冊も今のペースの年に1冊と言わず早くどんどん紹介して頂きたいと願っています。
事務弁護士サイモンは霧深い夜に兄オリバーから電話で呼び出され事務所に出向くが、そこで発見したのは何と兄の死体だった。やがて警察の捜査により兄が恐喝者だったという証拠が出て、サイモンの知人女性が逮捕される。兄が卑劣な犯罪者とはどうしても信じられないサイモンは事件の真相を求めて警察とは別に調査に乗り出して行く。
本書のミステリーとしての良さは物語の冒頭部分のさり気ない描写と無害で善良に見える人物の描き方の巧さでしょう。本当は異常なのに些細な事と思わせ欺瞞に気づかせないテクニックが抜群です。犯人の意外性も完全に虚を突かれて一瞬信じられなくなるサプライズで満点の出来です。そして私が注目する人間ドラマとしては、兄オリバーの妻マリオンが交通事故で顔に醜い傷を負ってから夫婦仲が悪くなり義弟サイモンに同情を求めて接近します。サイモンもまた妻リンダと仲違いし別居中という不幸な状況でしたが、今回の事件を契機に人間関係がこじれた原因を掴み出し元凶であるマリオンときっぱり訣別する道を選びます。他にも幼少時から甘やかされて育った娘と父との確執が生んだ悲劇の構図が読み取れる等、特に大人の読者のハートに強く訴え掛ける内容になっていると思います。本書解説には著者の魅力的な長編全13作品の一部内容紹介が書かれていてとても参考になります。現在翻訳されて読めるのは7冊で未訳の残り6冊も今のペースの年に1冊と言わず早くどんどん紹介して頂きたいと願っています。
2002年10月12日に日本でレビュー済み
主人公は若い事務弁護士。やはり弁護士である兄から、夜中に呼び出しの電話がかかって来る。しぶしぶ出向くと、兄は殺されていた! 調べていくと、兄には思わぬ "別の顔" があった事がわかっていき…。
推理物としては大した事はない。トリックも犯人も、比較的容易に見当がつくだろう。だが、あっと驚かされる事はなくとも、謎がカッチリと組み立てられていて気持ちよい。また、読み物としても結構おもしろい。テンポが速く、ドラマチックな展開で、退屈しない。とにかく楽しく読める。
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