著者のElliott Soberは、生物学の哲学を30年近くに渡ってリードしてきた人物である。本書は彼がこれまで扱ってきた(あるいは本書以降でも発展させ続けた)テーマを簡潔に紹介したものであるが、彼の議論は常に生物学の哲学の中で重要な役割を果たしてきているので、彼の議論の紹介を生物学の哲学の入門と呼んでも差し支えは無いだろう。
ただ、本書の評価を行うのはある意味非常に難しい。というのも、本書で扱われているテーマ(選択の単位、創造論、適応主義など)に関して、(少なくとも生物学の哲学において)Soberの議論を知らずに論じるというのは、Darwinを知らないで進化について語るようなものだからだ。もちろん、個別の議論内容に関しては批判も少なくないし、議論の的になってきたものも多い。だが、誰しもが一度は参照すべき議論を簡潔に紹介したものとして、本書の価値は揺るぎないものである。
ちなみに、各章のテーマをさらに展開させた著作には次のようなものがある。
第1章:進化論とは何か?:The Nature of Selection (1984)
第2章:創造論:Evidence and Evolution (2008)
第4章:選択の単位の問題:Unto Others (1998), with David Sloan Wilson
第5章:適応主義:Adaptationism and Optimality (2001), with Steven Orzack
第6章:体系学:Reconstructing the Past (1989) [邦訳は三中信宏訳『過去を復元する』蒼樹書房。この邦訳はしばらく絶版だったが、訳者の日録(dagboek)によれば別の出版社から近々復刊の予定らしい]
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進化論の射程: 生物学の哲学入門 (現代哲学への招待 Great Works) 単行本 – 2009/4/1
- ISBN-104393323181
- ISBN-13978-4393323182
- 出版社春秋社
- 発売日2009/4/1
- 言語日本語
- 本の長さ464ページ
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登録情報
- 出版社 : 春秋社 (2009/4/1)
- 発売日 : 2009/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 464ページ
- ISBN-10 : 4393323181
- ISBN-13 : 978-4393323182
- Amazon 売れ筋ランキング: - 958,615位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年11月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
●この大著を数行で要約するのは無理なので(私の理解もそれほど完全ではない)、読後感のみを紹介する。まず、訳書サブタイトルにあるような一般向けの「入門」書ではないだろうと私は思った(原書タイトルは”Philosophy of Biology”)。もちろん、論理的な頭でキチンと読めば理解することはできる(それが、哲学というもの)。しかし、進化生物学で今なにが問題になっているのかを多少は把握していないと、冷静な文章から各テーマの面白さを読み取ることは難しい。
●ここでは、進化の大問題のほとんどが次々と無駄なく検討される。創造論、選択の単位、利他行動、種概念、適応主義、社会生物学――どうでも良いジョークや要らぬ知識のひけらかしをやっているヒマはない。問題を分解してその構造をひとつひとつ点検し、それは自明なことなのか?定義できるものなのか?論理的に矛盾はないか?テスト可能なのか?などが、哲学者の態度で明らかにされる。
●生物学の現場を離れないのが著者ソーバーの生物哲学である、と訳者のあとがきには書かれているが、私にはそうは感じられなかった。良くいえば、生物学者の陥りやすいバイアスと喧噪からうまく離脱できている優れた哲学書である。悪くいえば、ロジックを突き詰めた結果案外つまらない所にポンと出てしまったような、いきり立っていた生物学者が拍子抜けするような所がないではない(それこそ哲学者の仕事なのかもしれないが)。
●ここでは、進化の大問題のほとんどが次々と無駄なく検討される。創造論、選択の単位、利他行動、種概念、適応主義、社会生物学――どうでも良いジョークや要らぬ知識のひけらかしをやっているヒマはない。問題を分解してその構造をひとつひとつ点検し、それは自明なことなのか?定義できるものなのか?論理的に矛盾はないか?テスト可能なのか?などが、哲学者の態度で明らかにされる。
●生物学の現場を離れないのが著者ソーバーの生物哲学である、と訳者のあとがきには書かれているが、私にはそうは感じられなかった。良くいえば、生物学者の陥りやすいバイアスと喧噪からうまく離脱できている優れた哲学書である。悪くいえば、ロジックを突き詰めた結果案外つまらない所にポンと出てしまったような、いきり立っていた生物学者が拍子抜けするような所がないではない(それこそ哲学者の仕事なのかもしれないが)。
2010年2月2日に日本でレビュー済み
生物学の哲学の第一人者、ソーバーによる生物学の哲学の概説書。
扱われている内容は、進化論に絡んで出てくるであろうほぼすべてのトピックを網羅しているといってもいい。そのぐらい幅広い内容を扱っている。
簡単なわけではないが、明晰に書かれているので、じっくり読めばちゃんと理解できる。
本書のメインは、タイトルにもなっているように進化論である。
進化論というと、何となくのイメージはあるが、いざきちんと説明しろと言われると、適者生存、自然淘汰云々というフレーズだけは浮かんできても細かくは説明できない人がほとんどだろう。
本書では、進化論を軸にしながら、それらがどのような形でどういう説明を行っているのか、そしてそれはどこまで妥当性を持つのか、を哲学的に分析している。
科学哲学というとどうも物理学を科学の標準形として考えることが多い。
しかし、進化論における科学的説明とは、物理学のそれとは大いに異なる仕方での説明である。
物理学において目指されるのは法則的な説明(ある条件が満たされたら、どうなるのか)だが、進化論において目指されるのは歴史的な説明(なぜ今のような状態にあるのか)である。
物理学と生物学では説明のレイヤーが異なっているので、それぞれの観点から説明を行うことも可能である。
また、誤解の多い種の概念についてもきちんとした説明がなされている。
生物学における種は、化学における元素のように現在の性質でのみカテゴライズ出来るものではない。種というのは、先祖の共通性や系統などといった歴史的要素に大きく依存して作られた概念なのである。
他にも、創造説と非科学の問題、社会生物学、遺伝子淘汰と群淘汰、トートロジーなど盛りだくさんの内容である。
進化論を考える上では必読。おススメ。
扱われている内容は、進化論に絡んで出てくるであろうほぼすべてのトピックを網羅しているといってもいい。そのぐらい幅広い内容を扱っている。
簡単なわけではないが、明晰に書かれているので、じっくり読めばちゃんと理解できる。
本書のメインは、タイトルにもなっているように進化論である。
進化論というと、何となくのイメージはあるが、いざきちんと説明しろと言われると、適者生存、自然淘汰云々というフレーズだけは浮かんできても細かくは説明できない人がほとんどだろう。
本書では、進化論を軸にしながら、それらがどのような形でどういう説明を行っているのか、そしてそれはどこまで妥当性を持つのか、を哲学的に分析している。
科学哲学というとどうも物理学を科学の標準形として考えることが多い。
しかし、進化論における科学的説明とは、物理学のそれとは大いに異なる仕方での説明である。
物理学において目指されるのは法則的な説明(ある条件が満たされたら、どうなるのか)だが、進化論において目指されるのは歴史的な説明(なぜ今のような状態にあるのか)である。
物理学と生物学では説明のレイヤーが異なっているので、それぞれの観点から説明を行うことも可能である。
また、誤解の多い種の概念についてもきちんとした説明がなされている。
生物学における種は、化学における元素のように現在の性質でのみカテゴライズ出来るものではない。種というのは、先祖の共通性や系統などといった歴史的要素に大きく依存して作られた概念なのである。
他にも、創造説と非科学の問題、社会生物学、遺伝子淘汰と群淘汰、トートロジーなど盛りだくさんの内容である。
進化論を考える上では必読。おススメ。