本書は、フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエクの伝記である。
残念ながら、大学時代に経営学、経済学を修めた方々が、この学者の名を知らないことが現状である。
ハイエクが生まれた頃の家族環境や時代背景から始まり、世にハイエクの名声が轟いた晩年のインタビューを添え、平和と理想を謳った「法と立法と秩序」を讃えて終わっている本書は、著者であるラニー・エーベンシュタインが本編後の謝辞にて述べている通り単なる伝記ではなく、ハイエクの知的道程を辿った書である。
ハイエクは、オーストリア学派の代表的学者の一人であり、ノーベル経済学賞を受賞し、経済学、政治哲学、法哲学、心理学、倫理学と多岐に渡る業績を残した、20世紀最大のリバタリアニズム思想家である。
ハイエク思想は、英国マーガレット・サッチャー元首相、米国のロナルド・レーガン元大統領らの政策の根幹とされたことは有名であり、特にマーガレット・サッチャー元首相は、イギリス労働党の掲げた「ゆりかごから墓場まで」というスローガンの基、左翼政策を取り、疲弊し「英国病」に堕ちいった英国をハイエクの理念を取り入れ「大きな政府」から「小さな政府」に切り替え見事に国を再生させたことは周知の事実である。
ハイエクの知的道程を綴った本書は、一読して終える伝記ではない。その証拠は、原注(略記)と人名索引の膨大な量が証明しているのである。また、ハイエクの生涯は戦争に多大な影響を受け人生が一変した。故に、本書を読むに当たり、ハイエクの生まれる以前の30年戦争、青年時代に17歳で入隊し将校として過ごした頃の第一次世界大戦などのヨーロッパ史にある程度の知識と理解力が必要であると考える。
ケインズと反目し、当時主流だった古典社会主義を真っ向から批判したハイエクは、不遇の時期をむかえることになる。さらに、ハイエクの名声は、彼の名著であり大ベストセラーでもある「隷属への道」が発表された後も直ぐには上がらず、不遇の時代はさらに続いた。しかし、1年後ニューヨーク・タイムズ紙に社会主義派のハロルド・ジョセフ・ラスキと正反対の文章を寄稿し、後の首相ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチルの支持も得て名声は徐々に世界に高まっていったのである。
本書を一読後、必要に応じ各章ごとに繙読し、ハイエク入門書とすることをお勧めする。
最後に、ラニー・エーベンシュタイン氏の調査・編集の見事さに加え、田総恵子氏の翻訳の素晴らしさに感謝する次第である。
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フリードリヒ・ハイエク 単行本 – 2012/8/24
ラニー・エーベンシュタイン
(著),
田総 恵子
(翻訳)
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- 本の長さ497ページ
- 言語日本語
- 出版社春秋社
- 発売日2012/8/24
- 寸法14 x 3.6 x 19.5 cm
- ISBN-104393621840
- ISBN-13978-4393621844
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登録情報
- 出版社 : 春秋社 (2012/8/24)
- 発売日 : 2012/8/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 497ページ
- ISBN-10 : 4393621840
- ISBN-13 : 978-4393621844
- 寸法 : 14 x 3.6 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 644,504位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 626位経済思想・経済学説 (本)
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2013年3月11日に日本でレビュー済み
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2012年10月8日に日本でレビュー済み
ちょうど、このレビューを書いていた今日、山中教授のノーベル賞受賞のビッグニュースが飛び込んできた。先程来Twitter等で色々な情報が流れて来たが、その中で面白いと思ったのが山中教授が手術が下手(ジャマナカと揶揄されたことも)だったため、基礎研究の方に転身し今日の栄冠につながったという話だった。
本書はノーベル経済学賞受賞者であるハイエクの伝記なのだが、私は四半世紀前の経済学部卒であるにもかかわらずつい数年前までハイエクの名を知らなかったし、彼が大戦中に「隷属への道」という大ベストセラーを飛ばしながら、その後長きに渡り不遇な時代を経験(一時は心の病に)した後に、ノーベル賞受賞やサッチャー元首相やレーガン元大統領がハイエクの理論を擁護、依拠するなど晩年ようやく栄光の日々を得た人とは知らなかった。
ハイエクの学問的な功績等について詳しく書かれているわけではないが、その波乱万丈の人生を追体験するのも悪くはないと思う。
本書はノーベル経済学賞受賞者であるハイエクの伝記なのだが、私は四半世紀前の経済学部卒であるにもかかわらずつい数年前までハイエクの名を知らなかったし、彼が大戦中に「隷属への道」という大ベストセラーを飛ばしながら、その後長きに渡り不遇な時代を経験(一時は心の病に)した後に、ノーベル賞受賞やサッチャー元首相やレーガン元大統領がハイエクの理論を擁護、依拠するなど晩年ようやく栄光の日々を得た人とは知らなかった。
ハイエクの学問的な功績等について詳しく書かれているわけではないが、その波乱万丈の人生を追体験するのも悪くはないと思う。
2012年12月4日に日本でレビュー済み
90年以上の生涯でかつ欧州並びに米国で活躍したしたこの深遠な思想家をわずか300ページにまとめるのは大変な作業だと思います。またその生涯の間の大きなCLIMATE OF OPINIONの変化により、これほど評価が急転した思想家もまれだと思われます。世紀末のウイーンに生まれ第一次大戦での従軍を経て、その後イギリスにわたることになるこの思想家の長い生涯を時代をたどりながら、他の巨人とのかかわりを交えながら、簡潔にまとめています。日本での矮小化されたハイエクの紹介にずっと毒されてきた私のようなハイエクの初心者にとっては非常に参考になりました。巻末にハイエク関連の文献ガイドもついています。