スマイルズの「自助論」が日本では、「社会で成功をおさめるため」と読まれたようだ。しかし「自助論」の主旨はそういうことではない。なぜ西洋の国は強いのか?それは、「西洋の人々は信仰が篤く、自主と自由に生きているから強いのだ。」ということだ。自己啓発書に影響されて、あるいは騙されて、資格を取ったり、雇用する側の都合のよい人間になったりすることではない。「自助論」に表れている自助の精神は、自らの職業は神から与えられた天職として受けとめ、それを勤勉と努力とによって全うすることをもって、神の呼びかけに応えるものだというプロテスタンティズムの職業倫理に基づいているのである。
日本人には日本人の倫理があるはずだ。いわれなきこと(例えば災害など)によって苦しんでいる人たちをなんとかしてあげたい、助けてあげたい。そういう人たちはたくさんいるはずだ。国民を外国に売り渡して自分たちは裏金作りに励んでいる者たちの都合のよい人間になってはならない。我々は心ある人々であるべき日本を新しくつくっていくべきではないか。
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「自己啓発病」社会 「スキルアップ」という病に冒される日本人 (祥伝社黄金文庫) 文庫 – 2014/3/12
宮崎 学
(著)
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購入オプションとあわせ買い
「失われた20年」と軌を一にするように、日本人の間で自己啓発ブームが巻き起こった。合言葉は「セルフヘルプ」、「スキルアップ」、「夢をかなえる」……。 このブームを支えたのが『自助論』という翻訳書だ。彼ら自己啓発に励む日本人は、同書をバイブルと崇めたてた。だが、そのバイブルは、実は抄訳であり、原点(完全訳)の持つ精神を損ない、単なる成功のためのハウツー集になってしまっており、それをありがたく読んでいる。日本人は、いわば「ゆがめられた自助」を盲信してきたのだ。そして、自己啓発ブームの結果、格差は拡大し、「あきらめ感」が蔓延してしまったのだ。 著者は本書で、現代日本の社会病理を徹底的に解剖している。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社祥伝社
- 発売日2014/3/12
- 寸法10.7 x 1 x 15.2 cm
- ISBN-10439631633X
- ISBN-13978-4396316334
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商品の説明
出版社からのコメント
日本人が冒された「自助(セルフヘルプ)」という社会病理 「失われた20年」と軌を一にするように、日本人の間で自己啓発ブームが巻き起こった。合言葉は「スキルアップ」、「セルフヘルプ」、「夢をかなえる」……。このブームを支えたのが『自助論』という翻訳書だ。自己啓発に励む日本人は、同書をバイブルとして崇め立てた。 だが、そのバイブルは実は抄訳であり、成功のためのハウツー集となっていることに気づかず、人々は「ゆがめられた自助」を盲信してきたのだ。自己啓発ブームの結果、格差は拡大し、「あきらめ感」が蔓延した。本書では現代日本の社会病理を徹底的に解剖する。
著者について
宮崎学 1945年、京都府生まれ。早稲田大学中退。父は伏見のヤクザ、寺村組組長。早稲田大学在学中は学生運動に没頭し、共産系ゲバルト部隊隊長として名を馳せる。週刊誌記者を経て実家の建築解体業を継ぐが倒産。半生を綴った『突破者』(南風社)で衝撃デビューを果たし、以後旺盛な執筆活動を続ける。近年の主要テーマは、警察の腐敗追及やアウトローの世界。談合を日本独特の文化とする『談合文化論』(小社刊)は各界から絶賛された。 主な著者に『ヤクザと日本』(ちくま新書)、『国家の崩壊』(角川、佐藤優氏と共著)など。
登録情報
- 出版社 : 祥伝社 (2014/3/12)
- 発売日 : 2014/3/12
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 240ページ
- ISBN-10 : 439631633X
- ISBN-13 : 978-4396316334
- 寸法 : 10.7 x 1 x 15.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 691,580位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 370位祥伝社黄金文庫
- - 1,294位MBA(経営学修士)
- - 5,664位社会一般関連書籍
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.2つ
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5グローバルレーティング
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年10月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の言わんとすることがイマイチ掴みきれなかった。読解力不足といえばそれまでだが。
自己啓発そのものを否定している訳ではなさそうだ。強迫観念をもって自己啓発している人たちを批判しているが、強制されたり強迫観念で自己啓発する人はその時点で、もはや自己啓発とは言わないのではないか。元々人間は好奇心の動物なので、知りたい学びたいという気持ちは自然なものだと思う。つまり動機の不純を批判しているのかな。
自助論の理解が皆さん違ってますよと警告されているが、自助論そのものを否定しているのでもなさそうだ。
東北大震災や小泉劇場の話もあり、勤勉=美徳という考え方にも批判的だが、話があっちこっちして、それと自己啓発病がどう結びつくのか、よく分からなかった。
自己啓発そのものを否定している訳ではなさそうだ。強迫観念をもって自己啓発している人たちを批判しているが、強制されたり強迫観念で自己啓発する人はその時点で、もはや自己啓発とは言わないのではないか。元々人間は好奇心の動物なので、知りたい学びたいという気持ちは自然なものだと思う。つまり動機の不純を批判しているのかな。
自助論の理解が皆さん違ってますよと警告されているが、自助論そのものを否定しているのでもなさそうだ。
東北大震災や小泉劇場の話もあり、勤勉=美徳という考え方にも批判的だが、話があっちこっちして、それと自己啓発病がどう結びつくのか、よく分からなかった。
2018年5月15日に日本でレビュー済み
自己啓発もビジネス書も、とにかくわかり易く書かれています。
それは、わかりにくいと売れないからです。
出版不況や若者の読書離れによって、読者第一主義になり、
その結果として、異様にわかりやすい本が溢れています。
たくさん自己啓発やビジネス書を読んできて思ったことは、
自分がやっていることは、「読書」なんだろうかということです。
読書メーターなどのSNSをやっていると、
毎日1冊、2冊を読み、感想を発信するヘビーな方がかなりいます。
その少なくない人が、自己啓発とビジネス書がメインです。
こういった方は、果たして、読書家なのでしょうか?
14年に行った調査によると、
漫画や雑誌を除く1か月の1人当たりの読書量は、
1.2冊→34.5%
3.4冊→10.9%
5.6冊→3.4%
7冊以上→3.6%
読まない→47.5%
となっています。
よく読む人は3.6%ほどです。
よって、読書メーターで、よく見かけるヘビーユーザーは、
全体の中では、少数派だとわかります。
しかし、その人たちは、読書家なのでしょうか?
その読者家たちが読んでいる本は、厳密に分析したわけではありませんが、
自己啓発書や、ビジネス書の他に、新書や新刊本などが、ほとんどだと思いました。
経済学の理論書や哲学書といったものは、滅多に見かけません。
個人的には、今の自己啓発書やビジネス書、新書や新刊本は、
ネットニュースと変わらないぐらいの文章の難易度で、
中高生でも問題意識があれば、余裕で理解できるものばかりです。
ネットニュースと違うのは、少し深堀りしている所でしょう。
問題提起した内容の背景や原因を少し詳しく書いているような印象があります。
またビジネス書なら、○○すれば、○○になるという、わかりやすい原因と結果の
論理の他に、どういう場面で、どういうしたかという具体的も豊富に書かれていたりします。
問題は、たいして考えずに、簡単に読めることです。
読書の目的はなんですか?と聞かれて、簡単に答えられる人はいません。
①専門知識を深めたい
②論文の参考文献として参照したい、人生の意味を見つけたい
などの目的は、真面目な大学生以外と、本当にプロフェッショナルに仕事を極めたい人、
哲学が大好きな人以外は、あまりしません。
③単純に面白いから
④仕事で必要な知識を得るため
⑤好きな作家や好きなテーマがあるから
⑥今、社会で話題になっているから
⑦頭が良くなるかもしれないから
⑧たまたま手にとってみたらおもしろかったから
⑨新聞やテレビ、ネット紹介されていたから
⑩人生の意味を見つけたいから
多くのの読書好きが、このような理由から、本をよく読むと思います。
その中で、少なくない読書家が、わかりやすい本を読んでいます。
もし「わかりやすい本」を読むことと、ネットニュースを見ることが、
本質的に同じならどうでしょうか?
その本質とは、
自分で主体的に読んだり、見ているのではなく、
読まされたり、見させられているとしたらどうでしょうか?
「わかりやすい本」をなぜ、好んで読んでしまうのか?
それは、自己目的的な理由があるからです。
「わかりやすい本」を読むことで、自分の思いを満たしてくれたり、
「そうそう、こういう事を私は言いたかったんだと」と、わかりやすい本の著者が、自分の考えてくれていることを言語かしてくれたり、また、不謹慎ですが、本が問題提起としている社会問題の状況をみて、世の中には自分よりひどい状況の人はたくさんいるわかったり、自分の状況と比較して、安心したり、憤ったりと喜怒哀楽の感情を、「わかりやすい本」を読むことで、容易に作り出すことができるからです。
脳科学の視点で、わかりやすい本を考察してみます。
本は、情報の一つの形態です。
最近の脳科学の成果では、「情報」は報酬刺激、
つまり脳の中の神経伝達物質の放出をもたらす興奮性刺激物として考えられています。
なぜ、わかりやすい本を、大量に読めるのか?
その答えは、わかりやすい本を読んだ私たちの脳は、
神経伝達である物質のドーパミンが放出されて気持ちよくなるからです。
もしかしたら、わかりやすい本は、思考する道具ではなく、嗜好品と位置づけた方が、
よいかもしれません。
ドーパミン神経系は、予期せぬものや、新しいモノを期待することで、より活性化します。
これが、どんどん、わかりやすい本を読んでしまう理由の一つです。
そして、多くの出版社が絶え間なく、わかりやすい本を出版する理由の一つです。
しかし、ネットニュースを配信する方が、わかりやすい本を出版するより、
圧倒的に発信が簡単です。ネットニュースも、「わかりやすい」が一つの魅力です。
もしかしたら、現在の出版不況の原因の一つは、「わかりやすい本」が大量に出版されているからかもしれません。ネットニュースと「わかりやすい本」に、それほどの、
内容の差がなかったら、消費者はネットニュースを選ぶに決まっています。
また「わかりやすい本」が私たちの脳の中で報酬を引き起こす仕組みとして、もう一つ重要なことがあります。それは、私たちの脳は「すでに知っている事柄」について、
「さらなる情報」を求めるよう、調整されているということです。
このことは、もっと強調されてよいかもしれません。
つまり、「わかりやすい本」をたくさん見ても、「自分が知りたいことを、
知れる」わけではありません。ただ、「知っていること」が、どんどん知れるように脳の力学が働くだけです。この意味で、「わかりやすい本」を読んでも、脳に素晴らしい影響を与えるとは言えないでしょう。
もしかしたら、「わかりやすい本」は自分が「知らないこと」を「知る」という目的では、
あまり役立たないものかもしれません。能動的なように見えて、圧倒的に知性の態度と呼ぶべきものが受動的だからです。ただ、知っていることを、反芻しているだけです。
人が何かに「はまる」理由は、知らない、わからない、できないという理由は少数だと思います。知っている、わかる、できる、だから「はまる」という理由の方が圧倒的に多いと思います。
「わかりやすい本」には、難解な数式がのることは、あまりありません。
なぜなら、それは、多くの人が「知らない」「わからない」からです。
そういうことに興味が湧くのは、ごくごく少数派です。
「知らない」や「わからない」ものに、多くの人は、興味が湧きません。
簡単に知りえるとわかることに興味が湧きます。最近のベストセラーは、
その時代性によって変化しますが、変化しないものは、圧倒的なわかりやすさです。
「わかりやすい本を読む」ことは、自分が「知っている」ことを、ただ反芻して、
脳の報酬系にただ訴えているだけの行為かもしれません。
もう一つ大事な知見があります。
それは、神経伝達物質のドーパミンは、報酬そのものに反応するのでなく、
報酬を予期させる情報をいち早く見つけようとする性質を持っています。
それは、絶え間なく、「わかりやすい本」を買ってしまう理由を説明づけることができます。
「あっこれ面白そうだな」と思ってとった本が、本当に面白かった時、言い表せない快感を感じることがあります。
それは、脳の報酬系は、予測していたよりも、
実際に、享受したものの報酬が大きいと、よりドーパミンが放出される機能があることからも頷けます。
よって、読者である私たちは、自然と、もっと面白い「わかりやすい本」はないかと探す
「終わることのない旅」をすることになります。この旅の成果は何かと考えたら、
よくいうように、読書を通して、様々な視点を知ることが出来たことや、
知識の獲得や、読解力の向上のようなものではないでしょう。
「わかりやすい本」を読むことは、脳科学の視点では、「遊び」と言ってよいかもしれません。本質的には、ネットニュースと変わらず、嗜好品の王様であるタバコやチョコレート、アルコールと、そこまでの差はないかもしれません。
以上の「わかりやすい本」の特性は、「依存症」になってしまう危険性をはらんでいます。
よって、「わかりやすい本」の付き合い方は、ある面では、非常に慎重になった方がよいと思います。
もちろん、「わかりやすい本・依存症」というのは、アルコール依存症やギャンブル依存症などの精神疾患ではありませんが、新種の依存症になり得るかもしれません。
現に読書メーターでは、毎日数冊の「わかりやすい本」を読んだ、「わかりやすい本・依存症」の人がたくさんいます。これって、どう考えても、仕事や学業に影響出ているんじゃないかと思います。
本を読むことは、とてもまじめな「良い行為」として、社会的な合意がありますが、
しかし、「わかりやすい本」を好んで読んでいる人の方が圧倒的です。その人たちは、本を読まない人が、あまり理解できませんし、「読んだ方が、人生楽しいのに」と考える人もいますが。何度も言いますが、本質的に、そういう人も、ネットニュースをガンガン見る人も変わらないような気がします。
以上の考察から、自分が頻繁にやっている「わかりやすい本」を読む行為は、
あまり好ましいものではないと思います。じゃあ、何が好ましいのか?
それは、やはりバランスかなと思います。
バランスよく、読書という行為をすることが、「わかりやすい本」を読んでしまう自分を克服できる態度だと考えています。
それは、わかりにくいと売れないからです。
出版不況や若者の読書離れによって、読者第一主義になり、
その結果として、異様にわかりやすい本が溢れています。
たくさん自己啓発やビジネス書を読んできて思ったことは、
自分がやっていることは、「読書」なんだろうかということです。
読書メーターなどのSNSをやっていると、
毎日1冊、2冊を読み、感想を発信するヘビーな方がかなりいます。
その少なくない人が、自己啓発とビジネス書がメインです。
こういった方は、果たして、読書家なのでしょうか?
14年に行った調査によると、
漫画や雑誌を除く1か月の1人当たりの読書量は、
1.2冊→34.5%
3.4冊→10.9%
5.6冊→3.4%
7冊以上→3.6%
読まない→47.5%
となっています。
よく読む人は3.6%ほどです。
よって、読書メーターで、よく見かけるヘビーユーザーは、
全体の中では、少数派だとわかります。
しかし、その人たちは、読書家なのでしょうか?
その読者家たちが読んでいる本は、厳密に分析したわけではありませんが、
自己啓発書や、ビジネス書の他に、新書や新刊本などが、ほとんどだと思いました。
経済学の理論書や哲学書といったものは、滅多に見かけません。
個人的には、今の自己啓発書やビジネス書、新書や新刊本は、
ネットニュースと変わらないぐらいの文章の難易度で、
中高生でも問題意識があれば、余裕で理解できるものばかりです。
ネットニュースと違うのは、少し深堀りしている所でしょう。
問題提起した内容の背景や原因を少し詳しく書いているような印象があります。
またビジネス書なら、○○すれば、○○になるという、わかりやすい原因と結果の
論理の他に、どういう場面で、どういうしたかという具体的も豊富に書かれていたりします。
問題は、たいして考えずに、簡単に読めることです。
読書の目的はなんですか?と聞かれて、簡単に答えられる人はいません。
①専門知識を深めたい
②論文の参考文献として参照したい、人生の意味を見つけたい
などの目的は、真面目な大学生以外と、本当にプロフェッショナルに仕事を極めたい人、
哲学が大好きな人以外は、あまりしません。
③単純に面白いから
④仕事で必要な知識を得るため
⑤好きな作家や好きなテーマがあるから
⑥今、社会で話題になっているから
⑦頭が良くなるかもしれないから
⑧たまたま手にとってみたらおもしろかったから
⑨新聞やテレビ、ネット紹介されていたから
⑩人生の意味を見つけたいから
多くのの読書好きが、このような理由から、本をよく読むと思います。
その中で、少なくない読書家が、わかりやすい本を読んでいます。
もし「わかりやすい本」を読むことと、ネットニュースを見ることが、
本質的に同じならどうでしょうか?
その本質とは、
自分で主体的に読んだり、見ているのではなく、
読まされたり、見させられているとしたらどうでしょうか?
「わかりやすい本」をなぜ、好んで読んでしまうのか?
それは、自己目的的な理由があるからです。
「わかりやすい本」を読むことで、自分の思いを満たしてくれたり、
「そうそう、こういう事を私は言いたかったんだと」と、わかりやすい本の著者が、自分の考えてくれていることを言語かしてくれたり、また、不謹慎ですが、本が問題提起としている社会問題の状況をみて、世の中には自分よりひどい状況の人はたくさんいるわかったり、自分の状況と比較して、安心したり、憤ったりと喜怒哀楽の感情を、「わかりやすい本」を読むことで、容易に作り出すことができるからです。
脳科学の視点で、わかりやすい本を考察してみます。
本は、情報の一つの形態です。
最近の脳科学の成果では、「情報」は報酬刺激、
つまり脳の中の神経伝達物質の放出をもたらす興奮性刺激物として考えられています。
なぜ、わかりやすい本を、大量に読めるのか?
その答えは、わかりやすい本を読んだ私たちの脳は、
神経伝達である物質のドーパミンが放出されて気持ちよくなるからです。
もしかしたら、わかりやすい本は、思考する道具ではなく、嗜好品と位置づけた方が、
よいかもしれません。
ドーパミン神経系は、予期せぬものや、新しいモノを期待することで、より活性化します。
これが、どんどん、わかりやすい本を読んでしまう理由の一つです。
そして、多くの出版社が絶え間なく、わかりやすい本を出版する理由の一つです。
しかし、ネットニュースを配信する方が、わかりやすい本を出版するより、
圧倒的に発信が簡単です。ネットニュースも、「わかりやすい」が一つの魅力です。
もしかしたら、現在の出版不況の原因の一つは、「わかりやすい本」が大量に出版されているからかもしれません。ネットニュースと「わかりやすい本」に、それほどの、
内容の差がなかったら、消費者はネットニュースを選ぶに決まっています。
また「わかりやすい本」が私たちの脳の中で報酬を引き起こす仕組みとして、もう一つ重要なことがあります。それは、私たちの脳は「すでに知っている事柄」について、
「さらなる情報」を求めるよう、調整されているということです。
このことは、もっと強調されてよいかもしれません。
つまり、「わかりやすい本」をたくさん見ても、「自分が知りたいことを、
知れる」わけではありません。ただ、「知っていること」が、どんどん知れるように脳の力学が働くだけです。この意味で、「わかりやすい本」を読んでも、脳に素晴らしい影響を与えるとは言えないでしょう。
もしかしたら、「わかりやすい本」は自分が「知らないこと」を「知る」という目的では、
あまり役立たないものかもしれません。能動的なように見えて、圧倒的に知性の態度と呼ぶべきものが受動的だからです。ただ、知っていることを、反芻しているだけです。
人が何かに「はまる」理由は、知らない、わからない、できないという理由は少数だと思います。知っている、わかる、できる、だから「はまる」という理由の方が圧倒的に多いと思います。
「わかりやすい本」には、難解な数式がのることは、あまりありません。
なぜなら、それは、多くの人が「知らない」「わからない」からです。
そういうことに興味が湧くのは、ごくごく少数派です。
「知らない」や「わからない」ものに、多くの人は、興味が湧きません。
簡単に知りえるとわかることに興味が湧きます。最近のベストセラーは、
その時代性によって変化しますが、変化しないものは、圧倒的なわかりやすさです。
「わかりやすい本を読む」ことは、自分が「知っている」ことを、ただ反芻して、
脳の報酬系にただ訴えているだけの行為かもしれません。
もう一つ大事な知見があります。
それは、神経伝達物質のドーパミンは、報酬そのものに反応するのでなく、
報酬を予期させる情報をいち早く見つけようとする性質を持っています。
それは、絶え間なく、「わかりやすい本」を買ってしまう理由を説明づけることができます。
「あっこれ面白そうだな」と思ってとった本が、本当に面白かった時、言い表せない快感を感じることがあります。
それは、脳の報酬系は、予測していたよりも、
実際に、享受したものの報酬が大きいと、よりドーパミンが放出される機能があることからも頷けます。
よって、読者である私たちは、自然と、もっと面白い「わかりやすい本」はないかと探す
「終わることのない旅」をすることになります。この旅の成果は何かと考えたら、
よくいうように、読書を通して、様々な視点を知ることが出来たことや、
知識の獲得や、読解力の向上のようなものではないでしょう。
「わかりやすい本」を読むことは、脳科学の視点では、「遊び」と言ってよいかもしれません。本質的には、ネットニュースと変わらず、嗜好品の王様であるタバコやチョコレート、アルコールと、そこまでの差はないかもしれません。
以上の「わかりやすい本」の特性は、「依存症」になってしまう危険性をはらんでいます。
よって、「わかりやすい本」の付き合い方は、ある面では、非常に慎重になった方がよいと思います。
もちろん、「わかりやすい本・依存症」というのは、アルコール依存症やギャンブル依存症などの精神疾患ではありませんが、新種の依存症になり得るかもしれません。
現に読書メーターでは、毎日数冊の「わかりやすい本」を読んだ、「わかりやすい本・依存症」の人がたくさんいます。これって、どう考えても、仕事や学業に影響出ているんじゃないかと思います。
本を読むことは、とてもまじめな「良い行為」として、社会的な合意がありますが、
しかし、「わかりやすい本」を好んで読んでいる人の方が圧倒的です。その人たちは、本を読まない人が、あまり理解できませんし、「読んだ方が、人生楽しいのに」と考える人もいますが。何度も言いますが、本質的に、そういう人も、ネットニュースをガンガン見る人も変わらないような気がします。
以上の考察から、自分が頻繁にやっている「わかりやすい本」を読む行為は、
あまり好ましいものではないと思います。じゃあ、何が好ましいのか?
それは、やはりバランスかなと思います。
バランスよく、読書という行為をすることが、「わかりやすい本」を読んでしまう自分を克服できる態度だと考えています。
2016年2月24日に日本でレビュー済み
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自己啓発ブームへの煽りが辛辣過ぎでは、とか著者の提案する解決策が楽観的、抽象的な空中戦で終わってしまっているのが残念。
が、自己啓発ブームを入り口に、現代を小泉劇場や東日本大震災、政治哲学の観点からダイナミックに切っていく様は読んでいて痛快だった。
が、自己啓発ブームを入り口に、現代を小泉劇場や東日本大震災、政治哲学の観点からダイナミックに切っていく様は読んでいて痛快だった。