15篇の異様極まりない作品集。
どの作品にも「異様」という言葉に加えて「突飛」という言葉すら当てはまる。
それは、読者の予想が大きく裏切られるという、読み手側にとっての楽しみが大きいという意味だ。
例えば、前の方に配置されている「スペインの苔」では、少女とロボットのオモチャとの関係の解説は、十分に分かる。
ところが、ロボットのオモチャとスペインの苔との関係は、、、!!!???
いったんは、我が眼を疑ったが、とにかく突飛なのだ。
全作品が、こんな調子であって、ファンタジーとは、趣が異なる。
それでは、これらの作品群は何なのか?
著者の数々の長編推理小説には、度々、展開の予想を大きく裏切られて、悔しい思いをするが、それが楽しみでもある。
同様に、本書では、物語の流れの中で、予想する数ページ先には、まるで想像も出来なかった事が書かれている。
つまり、常人が通常、考えもしない様な事が描かれているのだ。
異様かつ突飛なのだが、決して悪い意味ではない。
ページをめくると、10分間隔で脳がしびれる、刺激的な作品群だ。
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いのちのパレード 単行本 – 2007/12/14
恩田 陸
(著)
<あの黒い表紙、強烈な帯コピー、シンプルかつ洗練されたデザイン。手に取った時の、嬉しいような怖いようなおののきを今でも覚えている。(中略)かつて「幻想と怪奇」というジャンルのくくりでお馴染みであった、奇妙でイマジネーション豊かな短編群には、今なお影響を受け続けている。あの異色作家短篇集のような無国籍で不思議な短編集を作りたい、という思いつきから連載をさせてもらった>(あとがきより)。
恩田ワールドの原点<異色作家短編集>への熱きオマージュ。ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。
恩田ワールドの原点<異色作家短編集>への熱きオマージュ。ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社実業之日本社
- 発売日2007/12/14
- ISBN-104408535176
- ISBN-13978-4408535173
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登録情報
- 出版社 : 実業之日本社 (2007/12/14)
- 発売日 : 2007/12/14
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 336ページ
- ISBN-10 : 4408535176
- ISBN-13 : 978-4408535173
- Amazon 売れ筋ランキング: - 982,945位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 22,566位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1964(昭和39)年、宮城県生れ。早稲田大学卒。
1992(平成4)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞を、2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞をそれぞれ受賞した。
ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。著書に、『三月は深き紅の淵を』『光の帝国 常野物語』『ネバーランド』『木曜組曲』『チョコレートコスモス』『きのうの世界』などがある。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年2月15日に日本でレビュー済み
ちょっと面倒くさい話を。
人ってラベルを張りたがりますよね。〇〇って細かい人、私は文系、彼女は理系、とか。
もちろん、それは個々人の目立つ・印象的な部分を取り出して言っているわけで、それがすべてではない筈です。文系男にもロジカルな部分はあろうし、冷徹で詰めてくる上司にも詩的で感情的な心の動きがあるかもしれません。
・・・
何を言いたいかというと恩田陸氏です。一つの色に染まらない、実に多様な作品をかける方だなと。
私にとって当初恩田氏はヤングアダルト・青春系のラベルの方でした。氏の作品で一番初めに読んだ「夜のピクニック」の印象が強かった。作品も好きなのです。
ところが爾後色々読んでいくと、モダンホラー系の作品や舞台を想起させるドラマ等、当初の印象は徐々に書き換えなくてはならないと思うようになりました。
そして本作に至っては、「奇想短編」集です。
私の当初の印象からは、かなり遠いところに来てしまいました。そして、改めてその幅の広い作風に驚いた次第です。
・・・
で本題。
短編はどれも作風が異なるのですが、どれもが明かに現実世界を描いたのではないので、読んでいて違和感を感じながら読み進めた次第です。
そのあたりの「引っかかり」「没中できなさ」が私にとっては星新一を想起させました。教科書の「おすすめ図書」みたいなのに名前を見つけて読んでみるも、どうにもしっくりこず、何だよ「おすすめ」のわりにいまいちじゃねえかよ、と。
今は長じて、この「没入できなさ」は自分の趣向と距離があるという解釈ができます。そして、別につまらないわけではないのです。このあたりは表現が難しいのですが・・・。なんというか、よくもまあこんな作品がかけるなあという驚き?
で、その中でも印象的だったものを幾つか。
・・・
小学生と思しき三兄妹がことばの印象から幻影を具象化する「夕飯は七時」。擬態語など「ことば」の心象ってありますよね。そのような心象が形になるという着想がすごい。そしてこの子どもたちをこれを必死に防ごうとする姿が可愛らしい。
リアル野球版よろしく、リアルに双六が展開される王国を描く「SUGOROKU」はホラーチックな作風。王国を支配する三姉妹は、王国から女子を集め、リアル双六を行わせるのが慣例。「上がり」となると豪華な褒美を取らせて出身の村に返すという話だが、実際には・・・。
「エンドマークまでご一緒に」はミュージカルの主人公の独白の話。現実の生活をミュージカルで行うという奇想天外のストーリ。主人公は自己省察的に「寝起きに歌うなんて辛いけど、ミュージカルだから仕方ない」とか「僕を追いかけるオーケストラ連中も汗だく」など、この奇妙な設定をユーモラスかつ冷静に評価。タイトルも、仕掛けまで理解している読者を想定したネーミングであり、一層味わい深いものとなっていると思います。
これ以外にもホラー系・スリラー系は読みごたえのあるものが多かったと思います。
・・・
ということで恩田氏の短編集でした。
解説で杉村松恋氏が海外の奇想作家と並べてアツく激賞していましたが、素人の私はそうした海外勢は全く知らない方々でした。
風変りな話、ホラー系、SFが好きな人にはお勧めできる作品だと思います。
人ってラベルを張りたがりますよね。〇〇って細かい人、私は文系、彼女は理系、とか。
もちろん、それは個々人の目立つ・印象的な部分を取り出して言っているわけで、それがすべてではない筈です。文系男にもロジカルな部分はあろうし、冷徹で詰めてくる上司にも詩的で感情的な心の動きがあるかもしれません。
・・・
何を言いたいかというと恩田陸氏です。一つの色に染まらない、実に多様な作品をかける方だなと。
私にとって当初恩田氏はヤングアダルト・青春系のラベルの方でした。氏の作品で一番初めに読んだ「夜のピクニック」の印象が強かった。作品も好きなのです。
ところが爾後色々読んでいくと、モダンホラー系の作品や舞台を想起させるドラマ等、当初の印象は徐々に書き換えなくてはならないと思うようになりました。
そして本作に至っては、「奇想短編」集です。
私の当初の印象からは、かなり遠いところに来てしまいました。そして、改めてその幅の広い作風に驚いた次第です。
・・・
で本題。
短編はどれも作風が異なるのですが、どれもが明かに現実世界を描いたのではないので、読んでいて違和感を感じながら読み進めた次第です。
そのあたりの「引っかかり」「没中できなさ」が私にとっては星新一を想起させました。教科書の「おすすめ図書」みたいなのに名前を見つけて読んでみるも、どうにもしっくりこず、何だよ「おすすめ」のわりにいまいちじゃねえかよ、と。
今は長じて、この「没入できなさ」は自分の趣向と距離があるという解釈ができます。そして、別につまらないわけではないのです。このあたりは表現が難しいのですが・・・。なんというか、よくもまあこんな作品がかけるなあという驚き?
で、その中でも印象的だったものを幾つか。
・・・
小学生と思しき三兄妹がことばの印象から幻影を具象化する「夕飯は七時」。擬態語など「ことば」の心象ってありますよね。そのような心象が形になるという着想がすごい。そしてこの子どもたちをこれを必死に防ごうとする姿が可愛らしい。
リアル野球版よろしく、リアルに双六が展開される王国を描く「SUGOROKU」はホラーチックな作風。王国を支配する三姉妹は、王国から女子を集め、リアル双六を行わせるのが慣例。「上がり」となると豪華な褒美を取らせて出身の村に返すという話だが、実際には・・・。
「エンドマークまでご一緒に」はミュージカルの主人公の独白の話。現実の生活をミュージカルで行うという奇想天外のストーリ。主人公は自己省察的に「寝起きに歌うなんて辛いけど、ミュージカルだから仕方ない」とか「僕を追いかけるオーケストラ連中も汗だく」など、この奇妙な設定をユーモラスかつ冷静に評価。タイトルも、仕掛けまで理解している読者を想定したネーミングであり、一層味わい深いものとなっていると思います。
これ以外にもホラー系・スリラー系は読みごたえのあるものが多かったと思います。
・・・
ということで恩田氏の短編集でした。
解説で杉村松恋氏が海外の奇想作家と並べてアツく激賞していましたが、素人の私はそうした海外勢は全く知らない方々でした。
風変りな話、ホラー系、SFが好きな人にはお勧めできる作品だと思います。
2007年12月17日に日本でレビュー済み
表題作「いのちのパレード」を含む全15編の短編集。
恩田陸としては5冊目の短編であるが、今回は前作までとは明らかに毛色が違う。
ファンタジー、SF、ミステリ、ホラーと色とりどりの数々のジャンルを網羅しているのは前作までと同様。恩田陸らしさも同様。
しかし、後書きで本人が「無国籍で不思議な短編集を作りたい」と語る通り、一見無作為に見えて、上記のような明確なテーマと、海外の大作家たちの「異色作家短編集」へのオマージュという明確な意思を持って繰り広げられる作品群は圧巻。
評価の分かれる作品(特にもう一つの表題作に用意されていた「スペインの苔」は強烈。彼女の容赦のなさを垣間見られる珍しい作品)だとは思うが、私は恩田陸の短編集では最高の出来だと思う。前作までと異なり、他作品とリンクも一切無く、そこにも今までとは違う明確な意思を感じる。
個人的には「図書館の海」の「オデュッセイア」に似た「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」や、近年の彼女らしい演劇調「エンドマークまでご一緒に」がおススメ。
また、内容・テーマに呼応したかのような不思議な表紙、タイトルの洋訳、珍しいページ表記と作品群以外も素晴らしい出来です。
「これは罪でしょうか。それとも、時と場所による真実の善なのでしょうか。それを決めるのは誰なのでしょうか。」 本文217ページより
恩田陸としては5冊目の短編であるが、今回は前作までとは明らかに毛色が違う。
ファンタジー、SF、ミステリ、ホラーと色とりどりの数々のジャンルを網羅しているのは前作までと同様。恩田陸らしさも同様。
しかし、後書きで本人が「無国籍で不思議な短編集を作りたい」と語る通り、一見無作為に見えて、上記のような明確なテーマと、海外の大作家たちの「異色作家短編集」へのオマージュという明確な意思を持って繰り広げられる作品群は圧巻。
評価の分かれる作品(特にもう一つの表題作に用意されていた「スペインの苔」は強烈。彼女の容赦のなさを垣間見られる珍しい作品)だとは思うが、私は恩田陸の短編集では最高の出来だと思う。前作までと異なり、他作品とリンクも一切無く、そこにも今までとは違う明確な意思を感じる。
個人的には「図書館の海」の「オデュッセイア」に似た「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」や、近年の彼女らしい演劇調「エンドマークまでご一緒に」がおススメ。
また、内容・テーマに呼応したかのような不思議な表紙、タイトルの洋訳、珍しいページ表記と作品群以外も素晴らしい出来です。
「これは罪でしょうか。それとも、時と場所による真実の善なのでしょうか。それを決めるのは誰なのでしょうか。」 本文217ページより
2014年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
やはり私には恩田作品は長編しか向かないようです。
もう少し関連性が欲しかったかも。
もう少し関連性が欲しかったかも。
2011年10月5日に日本でレビュー済み
久し振りに恩田陸らしさのある短編集でした
「幻想と怪奇」というシリーズものに捧げるオマージュというところがまたツボでした。
シャーリー・ジャクスン、ルース・レンデル、レイ・ブラッドベリ、ディーノ・ブッツァーティ、などなど。
読みながら先人の足跡が行間によみがえる不思議な感覚を味わえて、怪奇幻想小説に親しんだ読者にとっては、
2度美味しい短編集かもしれません。
内容といえば、とんでもないイマジネーションの塊。
とにかく1編ごとに趣向を凝らした恩田ワールドが展開され、読者をひっぱりまわしてくれます。
どれも面白いのですが、人によって好きな作品が全然違ってきそうなところもまた魅力の一つかもしれませんね。
私個人の一押しとしては
「蝶遣いと春、そして夏」
「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
「SUGOROKU」
「夜想曲」
そして次点が
「いのちのパレード」
「観光旅行」
「夕飯は七時」
1作1作を取り上げるのもいいですが、全体で一つの世界が構築されていくのを見るのもまた、味わい深いものがあります。
「幻想と怪奇」というシリーズものに捧げるオマージュというところがまたツボでした。
シャーリー・ジャクスン、ルース・レンデル、レイ・ブラッドベリ、ディーノ・ブッツァーティ、などなど。
読みながら先人の足跡が行間によみがえる不思議な感覚を味わえて、怪奇幻想小説に親しんだ読者にとっては、
2度美味しい短編集かもしれません。
内容といえば、とんでもないイマジネーションの塊。
とにかく1編ごとに趣向を凝らした恩田ワールドが展開され、読者をひっぱりまわしてくれます。
どれも面白いのですが、人によって好きな作品が全然違ってきそうなところもまた魅力の一つかもしれませんね。
私個人の一押しとしては
「蝶遣いと春、そして夏」
「走り続けよ、ひとすじの煙となるまで」
「SUGOROKU」
「夜想曲」
そして次点が
「いのちのパレード」
「観光旅行」
「夕飯は七時」
1作1作を取り上げるのもいいですが、全体で一つの世界が構築されていくのを見るのもまた、味わい深いものがあります。
2010年4月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ああ、ねえさん、血のような夕陽が沈むわ」
「あんな色、生涯で二度しか見ていない」
かあーーー。打たれる!!
【夕食は七時】に沁み込ませた幼き日の幻影。
恩田陸は、一体どんな人生を送っているんだろう。
普通、読んでいるうちは作家の背景などそうは気にならないかもしれないが、
それほどにイマジネーションの色彩に、翻弄される。
何度も読み返したくなるフェイクが、ふたつある。
あ、1作目の【観光旅行】も捨てがたい。。。。
「あんな色、生涯で二度しか見ていない」
かあーーー。打たれる!!
【夕食は七時】に沁み込ませた幼き日の幻影。
恩田陸は、一体どんな人生を送っているんだろう。
普通、読んでいるうちは作家の背景などそうは気にならないかもしれないが、
それほどにイマジネーションの色彩に、翻弄される。
何度も読み返したくなるフェイクが、ふたつある。
あ、1作目の【観光旅行】も捨てがたい。。。。
2015年11月20日に日本でレビュー済み
かつて知人から「間違えて二冊買っちゃったからあげる」と言われ読んだ
『真夜中のピクニック』がぜんぜん肌に合わなかったので、以来氏の作品は
手にとったことがなかったのですが、図書館で短編集を見つけ、オビにはなんだか
美惑的な文言が書かれていたので(またその文字がネオンが発光しているような
素敵なものだったので借りてしまいました)短編集好きなこともあり私は借りてきて
しまいました。 が、冒頭の不可思議な作品を読んで「ありゃ、これは私のでないなと・・」
残りは読む気になれませんでした。秘密の観光バスで秘密の村に行くと、不思議な◯◯◯が
というシュールな設定は悪く無いのですが、「不思議」をただ提示しただけで終わってしまうのが
私には全く物足りませんでした。足りないものをたやすく補う想像力がある人には面白い
作品なのかもしれませんね。私はダメでした(笑)。
『真夜中のピクニック』がぜんぜん肌に合わなかったので、以来氏の作品は
手にとったことがなかったのですが、図書館で短編集を見つけ、オビにはなんだか
美惑的な文言が書かれていたので(またその文字がネオンが発光しているような
素敵なものだったので借りてしまいました)短編集好きなこともあり私は借りてきて
しまいました。 が、冒頭の不可思議な作品を読んで「ありゃ、これは私のでないなと・・」
残りは読む気になれませんでした。秘密の観光バスで秘密の村に行くと、不思議な◯◯◯が
というシュールな設定は悪く無いのですが、「不思議」をただ提示しただけで終わってしまうのが
私には全く物足りませんでした。足りないものをたやすく補う想像力がある人には面白い
作品なのかもしれませんね。私はダメでした(笑)。
2011年4月15日に日本でレビュー済み
あり得そうだけれども、決してあり得ない世界の物語たち。
つながりそうでつながらない世界たちの物語。
だからこそ、パレードという表現がぴったりなのかもしれない。
ホバークラフトの沈黙が非常に静かで静謐な世界観を表しているのだ。
つながりそうでつながらない世界たちの物語。
だからこそ、パレードという表現がぴったりなのかもしれない。
ホバークラフトの沈黙が非常に静かで静謐な世界観を表しているのだ。