2005年5月初版の本です。一篇を除き十一篇が書き下ろしだそうです。「一緒にレストランへ」「ネギをさげて、高らかに自由を」など愉しいエッセイの中から「朝寝の荷風」を本のタイトルにしたのはなぜだろうな。永井荷風の本だと誰でも分かるからかな。
そう思い「あとがき」を読むと次のことが書かれていました。
いわゆる、好色な人としての荷風のイメージ。そんな作家に、うーん、女性はどうやって近づけばよいのか。(略)ようやく見つけました、ひそかな入り口を。
それはまさしく秘密の花園のような。荷風が深く愛した庭。高く涼やかな樹々に守られ、初夏にははちみつのように甘い匂いを放つ〈来青花〉や薔薇が咲き満ち、秋には樹々の黄落が微妙な織物を紡ぐ。その庭の中で荷風はそっと花びらに触れ、新緑のシンフォニーを感じ、土を掘り起こして草木の芽ぶきを助ける……。そんな荷風に寄り添ううちに、不思議に豊かな女性性を備える彼のさまざまな姿も見えてきて。
朝寝ぼう。枕元にフランスの雑誌の散らかるベッドの中で、熱くて甘いショコラをすする荷風。きらびやかに化粧し装う女性を見て、自分もああなりたいと憧れてしまう荷風。買物籠にネギを入れ、時雨の中をとぼとぼと歩く荷風ーー(略)今、私にはそこからしきりに、人を押しのけ弱肉強食に突き進む日本近代社会への、第一級の抵抗の詩が聴こえてくる。荷風流のこのしなやかなラ・マルセイエーズにもっと耳を傾けよう、
このあとがきを読み、表題作を繙くと「フェミニン・荷風」が描かれていました。
うふふ、ちょっと、おもしろいっぽい。
126ぺージに「荷風が渾身の力をこめて描きつづけたアソビの世界の女性の姿を想わせる。その姿態が荷風に乗り移り、息づいている感じ」とありますが、こうした女性への眼差しが、そのまま、荷風への筆者の眼差しのようにも思えてしまいます。
持田さん特有の愉しい話し方(書き方)も、とっても可愛い。おじさまたちのあの荷風とは違う荷風に出逢えます。荷風の女子力、っていうか、荷風の独身力? が見えたりします。みなさん、読んでみてください。
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朝寝の荷風 単行本 – 2005/5/1
持田 叙子
(著)
- 本の長さ242ページ
- 言語日本語
- 出版社人文書院
- 発売日2005/5/1
- ISBN-104409160885
- ISBN-13978-4409160886
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登録情報
- 出版社 : 人文書院 (2005/5/1)
- 発売日 : 2005/5/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 242ページ
- ISBN-10 : 4409160885
- ISBN-13 : 978-4409160886
- Amazon 売れ筋ランキング: - 909,156位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 135,679位ノンフィクション (本)
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