その現在＝混乱、未精査ということを象徴する1冊である。
多文化主義と言うのが各国の文脈や状況によってきわめて違う点、学術的な学派では決してなく、現在進行形の政策であるということから、現実の状況に基礎をおいて議論を進めなければならないが、まずその作業が出来ていない。
そしてそうした現実から「多文化主義的」なるものの意味を思考しないといけないが、その前段階の作業が出来ていないのでまったく混乱の極みである。
ただカナダ、豪両国の先住民に関する論考はその限りにおいては良くまとめたものと思われる（細川・ヘンリ）。
それ以外は、ほとんど価値のないものである。もっともひどいのは杉本であり、他の第一段階のいい加減な作業に終わっているものならまだしも、その未精査の議!論から文化の並列序列を行うのだからどうしようもない。
これは日本の移民研究のレベルの低劣さを示すものであり、また多文化主義と言うのが混乱・誤解されているということをその「現在」と言うタイトルが皮肉にも示している。
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