【偶然の認識】過去時系列を「偶然」と美化する歴史家、未来不安を確率・統計で希釈する数学者
「偶然」という認識は、「あ、そういうことなのか!」と気が付くと、一瞬で「必然」の認識に変わる。過去の出来事について、納得できる時系列的な因果関係を説明できれば、偶然とは思わない。「無知による偶然」と言われる所以である。一方、未来に起こるかもしれない災害や事故も、「偶然」の思考が支配している。「風が吹けば桶屋が儲かる」式のバタフライ効果やドミノ理論は、数学的両極端「決定論と不条理」の間隙を確率統計的に彷徨うもの、と考えれば「偶然」という不安感を、多少なりとも落ち着かせることができる。
フランス数学者である著者は、ジャン=ロスタン賞を受賞した『予測不可能性、あるいは計算の魔』の中で語り尽くせなかった、カタストロフィー理論(ルネ・トム、フランス数学者)の「時の本性」の考察を拡張し、数理物理学(任意時間)と偶然(絶対時刻)の乖離性を踏まえて、豊富な文学資料(特に北欧神話サガ)と、カオス理論、情報理論、確率過程、量子統計などを関連付けながら平易に解説している。更に、本書には、4年後に出版を予定していた『数学は最善世界の夢を見るか?』の事前予告が盛り込まれており、「古典力学の不確定性原理」(グロモフ、フランス数学者)の科学的計算限界について言及されており、これら邦訳3点セットに、著者が抱く自然の神秘性・計算不可能性が相補的に解説されている。
原書出版年
1984年『予測不可能性、あるいは計算の魔~あるいは、時の形象をめぐる瞑想~』みすず書房 2018年
1991年『偶然とは何か~北欧神話で読む現代数学理論全6章~』 創元社 2006年
2000年『数学は最善世界の夢を見るか?~最小作用の原理から最適化理論へ~』 みすず書房 2009年
【偶然の変容】北欧神話(サガ)で装った偶然と、未来危機予測という偶然の数学エッセイ
日本語の「偶然」には、英語の「chance:機会」と「hazard:危機」の2つの意味が含まれるようだ。どちらも、公明正大な神の裁きとみなせるサイコロを語源とする言葉であることが興味深い。
・chance:思いがけない良い機会 サイコロの転がり方を示すフランス語「chéance」 が語源
・hazard:因果関係を予測できない危険 サイコロそのものを意味するアラビア語「خطر」が語源
ノルウェー系のフランス人数学者である著者は、自身のルーツを辿る北欧神話『ノルウェー王のサガ』を通して、中心的なテーマの1つである偶然と運命の関係を探求した。聖オラフがサイコロを振って村の支配者になる、という最初の神話のエピソードは、偶然(サイコロ)を公明正大な神の裁きとみなしている。著者曰く、以下の6つの章は、章ごとの雑多な数学解説が独立するように構成したようだ。サイコロを振って出た目の章から読み始めるのが、著者流の推奨作法らしい。
過去
│第1章 偶然 (神学)偶然は、無い。 神の裁きが、天地創造から未来永劫の世界を決定している。
│ (仏教)偶然は、無い。 自然界は、決められた宿命(決定論)を輪廻転生する。
│第2章 運命 (神話)偶然は、魔術。 古代北欧「セイズ」呪術・魔術、サイコロ、乱数に頼る。
│ (歴史)偶然は、羅列。 乏しい因果関係を、偶然の驚きや美として飾りたてる。
未来
│第3章 予想 (自然)偶然は、熱振動。 自然・生命・気象・経済活動はブラウン運動が生成する。
│ (災害)偶然は、不条理。 気象・火山・地震学者が予測できないと言い訳する。
│第4章 カオス(数理)偶然は、不安定。 指数関数的に発散するシミュレーション。
│第5章 リスク(心理)偶然は、無知。 確率が、リスク(危険)という恐れを平穏にさせる。
│第6章 統計 (経済)偶然は、正規分布。統計、自然(エネルギー・雑音)は、二乗平均演算が可能。
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偶然とは何か:北欧神話で読む現代数学理論全6章 単行本 – 2006/2/1
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「偶然」の多面性を様々な角度から明らかにする
ダランベール賞を受賞した極上の数学エッセイ、ついに日本語版刊行! !
科学はどこまで偶然と運命を明らかにしたか?
くじ引き、量子力学、不完全性定理、金融オプションなど一件関係ないテーマ間を
縦横に移り、透徹した視線で諸現象の本質を鮮やかにえぐり出す。
欧米人の精神風土を基礎づけた散文物語「サガ」を起点に
ラブレーやゲーテなどの文章も随所に織り込んだ、深みあるエッセイ。
これがヨーロッパ最高の知性だ。
◎目次
はじめに
北欧史について
第1章 偶然
サイコロとビリヤードの違い/分割できないものを分配する方法/インチキできないくじ引きは実現できるか/修道士エドヴィンの論証 ほか
第2章 運命
世界に意味があるとは? /マックスウェルの悪魔に世界はどう見えるか?/偶然を装う/純粋に不条理な世界 ほか
第3章 予想
「聞く気ある者」が聞く/預言とその実現/合理的予想/状況判断の難しさ ほか
第4章 カオス
もしあのとき……/指数関数的不安定性/不安定性を利用する/時間の尺度の問題 ほか
第5章 リスク
出来事に確率を割りふる/微小要素に分解する/「無知」の状況、「不確実な」状況、「確率論的な」状況/神が存在する方に賭ける ほか
第6章 統計
ファラオの政策/リスクを分散させる/独立性/統計学/相関性のある場合 ほか
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ラブレーやゲーテなどの文章も随所に織り込んだ、深みあるエッセイ。
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◎目次
はじめに
北欧史について
第1章 偶然
サイコロとビリヤードの違い/分割できないものを分配する方法/インチキできないくじ引きは実現できるか/修道士エドヴィンの論証 ほか
第2章 運命
世界に意味があるとは? /マックスウェルの悪魔に世界はどう見えるか?/偶然を装う/純粋に不条理な世界 ほか
第3章 予想
「聞く気ある者」が聞く/預言とその実現/合理的予想/状況判断の難しさ ほか
第4章 カオス
もしあのとき……/指数関数的不安定性/不安定性を利用する/時間の尺度の問題 ほか
第5章 リスク
出来事に確率を割りふる/微小要素に分解する/「無知」の状況、「不確実な」状況、「確率論的な」状況/神が存在する方に賭ける ほか
第6章 統計
ファラオの政策/リスクを分散させる/独立性/統計学/相関性のある場合 ほか
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社創元社
- 発売日2006/2/1
- 寸法12.8 x 2.8 x 18.2 cm
- ISBN-104422400193
- ISBN-13978-4422400198
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登録情報
- 出版社 : 創元社 (2006/2/1)
- 発売日 : 2006/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 280ページ
- ISBN-10 : 4422400193
- ISBN-13 : 978-4422400198
- 寸法 : 12.8 x 2.8 x 18.2 cm
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2021年5月7日に日本でレビュー済み
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2015年7月8日に日本でレビュー済み
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テーマとしては良いが、やはり、偶然という問題を論じるにしては思想的な面が多く
やはり最後は?マークがのこる。
やはり最後は?マークがのこる。
2012年12月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は、とても難しくって理解できなかった。数学学者しか理解できない内容で面白くなかった。
2016年9月1日に日本でレビュー済み
現代数学理論全6章 #説明歌 偶然と運命予想カオスリスク統計北欧神話題材
2017年1月31日に日本でレビュー済み
運が良いとか悪いとか、あるいは昔の友達に街で思いがけずばったり会ったとか、偶然と思える出来事は至るところにあふれている。でも、偶然っていったい何なのだろう?意思のように人間が自ら選んだ結果、あるいはコンピュータプログラムのように決められた手順のとおりに進んでいくプロセス、これらは偶然とほど遠いように見える。他方でサイコロを転がしてどの目が出るのか、1なのか4なのか、それとも6なのか。これは典型的な偶然の結果に思える。でも、もしサイコロを振ることに熟達したギャンブラーなら出目を自分で好きなように選べるかも知れない。偶然には色んな顔がある、それを伝える本書はブリティッシュ・コロンビアの数学者イーヴァル・エクランドによる一風変わった数学読み物だ。
一風変わった、と言ったのはよくある数学読み物と違って全体的に文学的な雰囲気が漂っているからだ。数学と文学なんて水と油のように思えるのでは?でもそうではないことを本書は示している。各章の冒頭には古い北欧の散文物語(サガ)が紹介されている。パリ生まれながらノルウェー語も解する著者ならではと言えるかもしれない。それらの物語に、著者は現代数学を読み取っていく。「偶然」「運命」「予想」「カオス」「リスク」「統計」という6つの章でふれられているエピソードは量子力学からゲーム理論まで幅広い。
読んでいて楽しい豊富なエピソードだけでなく、出てくる数学の概念について丁寧な説明がある。大体は読めば分かるものの、そうではないものもあった(特にカオスについての第4章)。ただ、そうであっても、日常にこんなにも数学が関係しているのを知るだけでも新鮮な感じがすると思う。数学読み物が好きなひとだけでなく、多くのひとに読んでほしい本である。
一風変わった、と言ったのはよくある数学読み物と違って全体的に文学的な雰囲気が漂っているからだ。数学と文学なんて水と油のように思えるのでは?でもそうではないことを本書は示している。各章の冒頭には古い北欧の散文物語(サガ)が紹介されている。パリ生まれながらノルウェー語も解する著者ならではと言えるかもしれない。それらの物語に、著者は現代数学を読み取っていく。「偶然」「運命」「予想」「カオス」「リスク」「統計」という6つの章でふれられているエピソードは量子力学からゲーム理論まで幅広い。
読んでいて楽しい豊富なエピソードだけでなく、出てくる数学の概念について丁寧な説明がある。大体は読めば分かるものの、そうではないものもあった(特にカオスについての第4章)。ただ、そうであっても、日常にこんなにも数学が関係しているのを知るだけでも新鮮な感じがすると思う。数学読み物が好きなひとだけでなく、多くのひとに読んでほしい本である。
2010年8月29日に日本でレビュー済み
「わたしたち人間は、不可解な現象を無防備に受け入れるわけにはいかない。 (中略) だから、意味が明らかでない出来事、つまり人類がそれまで積み上げてきた経験に照らして決定論の枠組みに入らない出来事には、大急ぎでオカルト的な意味をあたえてやらなければならない。」
著者は、北欧神話(サガ)が「神託」「魔術」「運命」について語っていることが、実は、現代数学が問題とする「偶然」「カオス」「リスク」と同じ物語を語っていることを明らかにします。
科学の進歩により人類は進歩したのか?
古代の人々は、人間のコントロールできない出来事が存在することを理解していたという点では、現代人と何ら違いがありません。雨乞いや生贄の儀式は、それによって人間の思うように事が運ぶと思って行なった行為ではなく、人智を超えたところにある自然現象の耐え難さに耐えるために編み出した便法なのだろうと思います。
科学というのも、世界を図式化する手段の一つに過ぎないというレヴィ・ストロースの発見については、さまざまな意見があるだろうと思いますが、昨今の地球温暖化の議論を見ていると、レヴィ・ストロースの洞察が正しいのだろうと思えてきます。もちろん地球温暖化は、科学というよりも政治的な問題ですが、そのことがまさに人類の進歩のなさを証明しています。
著者は、北欧神話(サガ)が「神託」「魔術」「運命」について語っていることが、実は、現代数学が問題とする「偶然」「カオス」「リスク」と同じ物語を語っていることを明らかにします。
科学の進歩により人類は進歩したのか?
古代の人々は、人間のコントロールできない出来事が存在することを理解していたという点では、現代人と何ら違いがありません。雨乞いや生贄の儀式は、それによって人間の思うように事が運ぶと思って行なった行為ではなく、人智を超えたところにある自然現象の耐え難さに耐えるために編み出した便法なのだろうと思います。
科学というのも、世界を図式化する手段の一つに過ぎないというレヴィ・ストロースの発見については、さまざまな意見があるだろうと思いますが、昨今の地球温暖化の議論を見ていると、レヴィ・ストロースの洞察が正しいのだろうと思えてきます。もちろん地球温暖化は、科学というよりも政治的な問題ですが、そのことがまさに人類の進歩のなさを証明しています。
2008年4月30日に日本でレビュー済み
原題は"Au hasard: La chance,la science et le monde"。『偶然とは何か』との邦題を
与えられてはいるが、その問いに対して決定的な答えを与えるテキストではない。
「偶然は、ローマ神話の双面神ヤヌスのように複数の顔をもっている。その多面的な豊かさを
わたしは書きたいと思った」。
そうした著者の意図に沿って、北欧の神話を導入にして、量子力学や株式相場など現代的な
具体例から、偶然の有する複雑な表情をエッセイタッチで端正につづる。
「偶然」「運命」「カオス」などの表題の下、サイコロになぞらえて全六章から構成。
偶然とはそもそも人間の無知がそう見せているに過ぎず、すべては神の思し召しのままに
仕組まれた必然でしかないのか?
「クレオパトラの鼻がもう少し低ければ……」とのブレーズの嘆きよろしく、現在する世界は
他のありようを取り得た。しかし事実「他のようではなく、まさにこのようにあるという、
理屈も必然性もない、そのあり方」を取っている、この不条理。
たとえ決定論を逃れたところで、われわれはすぐさま確率論に出くわす。この両極のいずれ
でもない、第三の道を人は果たして持ちうるのか? etc...
確かに、エクランドの提示するサンプルの多くは20世紀的なものであるかもしれない。
ただし、議論の核となる部分に関しては、とりたてて新しい視点は感じられない。それこそ
文中にも登場するパスカルやライプニツがこの主題については散々語っているわけで、もっと
言えば、因果律や自由の問題は古代ギリシア以来哲学2500年の歴史が誇る18番。
現代数学理論、との副題に従って手に取ると思わぬ肩透かしを食らうので、その点は注意を
促しておく必要があろうかと思う。
基本的には数学の知識はなくとも、一定程度の論理的な思考さえ備えていれば、軽やかに
読める一冊。いずれにせよ、非常に面白い一冊であることには違いない。
与えられてはいるが、その問いに対して決定的な答えを与えるテキストではない。
「偶然は、ローマ神話の双面神ヤヌスのように複数の顔をもっている。その多面的な豊かさを
わたしは書きたいと思った」。
そうした著者の意図に沿って、北欧の神話を導入にして、量子力学や株式相場など現代的な
具体例から、偶然の有する複雑な表情をエッセイタッチで端正につづる。
「偶然」「運命」「カオス」などの表題の下、サイコロになぞらえて全六章から構成。
偶然とはそもそも人間の無知がそう見せているに過ぎず、すべては神の思し召しのままに
仕組まれた必然でしかないのか?
「クレオパトラの鼻がもう少し低ければ……」とのブレーズの嘆きよろしく、現在する世界は
他のありようを取り得た。しかし事実「他のようではなく、まさにこのようにあるという、
理屈も必然性もない、そのあり方」を取っている、この不条理。
たとえ決定論を逃れたところで、われわれはすぐさま確率論に出くわす。この両極のいずれ
でもない、第三の道を人は果たして持ちうるのか? etc...
確かに、エクランドの提示するサンプルの多くは20世紀的なものであるかもしれない。
ただし、議論の核となる部分に関しては、とりたてて新しい視点は感じられない。それこそ
文中にも登場するパスカルやライプニツがこの主題については散々語っているわけで、もっと
言えば、因果律や自由の問題は古代ギリシア以来哲学2500年の歴史が誇る18番。
現代数学理論、との副題に従って手に取ると思わぬ肩透かしを食らうので、その点は注意を
促しておく必要があろうかと思う。
基本的には数学の知識はなくとも、一定程度の論理的な思考さえ備えていれば、軽やかに
読める一冊。いずれにせよ、非常に面白い一冊であることには違いない。
2006年7月11日に日本でレビュー済み
サブタイトルには、「現代数学理論」などと厳めしい題がついているが、内容は極めてわかりやすい一般数学書。数学書といっても、数式はほとんど出てくることはなく、どちらかというと、思想体系で議論展開していく、記号意味論などのスタイルに近い。
「偶然性」の象徴である、サイコロの出目に習って(実際筆者はこのサイコロの偶然性も議論しているのだが)、6章立てで話が構成されている。「偶然」「運命」「予想」「カオス」「リスク」そして「統計」だ。
本書で特に特徴的なのは、これらの数学理論が、実際の現実世界にどのように投影できるかを、わかりやすい例(北欧神話)と共に議論展開されていく点にある。
扱っている項目は6章それぞれに異なるわけだが、本書は一貫して、「この世界を数学によって完全に記述するということは可能なのか、幻想なのか」というテーマを追っている。偶然性が支配するように「見える」この世界も、実は我々の知らない決定論が支配しているのではないか、いや、その可能性があるとしたら・・・という議論をわかりやすい数学議論で展開していく本書、ぜひ一度手にとって見ることをお勧めする。読後はきっと、自分なりにこの世界を考えてみたくなること請け合いの一冊である。
「偶然性」の象徴である、サイコロの出目に習って(実際筆者はこのサイコロの偶然性も議論しているのだが)、6章立てで話が構成されている。「偶然」「運命」「予想」「カオス」「リスク」そして「統計」だ。
本書で特に特徴的なのは、これらの数学理論が、実際の現実世界にどのように投影できるかを、わかりやすい例(北欧神話)と共に議論展開されていく点にある。
扱っている項目は6章それぞれに異なるわけだが、本書は一貫して、「この世界を数学によって完全に記述するということは可能なのか、幻想なのか」というテーマを追っている。偶然性が支配するように「見える」この世界も、実は我々の知らない決定論が支配しているのではないか、いや、その可能性があるとしたら・・・という議論をわかりやすい数学議論で展開していく本書、ぜひ一度手にとって見ることをお勧めする。読後はきっと、自分なりにこの世界を考えてみたくなること請け合いの一冊である。