長らく不思議の思っていたことの答えが示されたのに感動した。西洋史で一番の疑問が、なぜイギリスもフランスも租税の賦課で議会がもめて、フランスに至っては王政が廃止されるところまで行った。しかし生産や流通に課税することは日本では当たり前のことで、それも奈良、平安の時代から1400年は当たり前のように行われてきた。もちろん、諸侯が分立しそれぞれで課税をしていたが、制度の枠組みは国司受領の時代から大まかには変わっていない。議会はないが農民や町民は幕府や藩と交渉し現実的な税率をはじきだしていた。そうした仕組みが西洋にはなく、議会という方法で国民一律の同意を得ようとして反発を買うのは洗練されているとは言えない。政治としては非常に未熟な印象がある。
なぜ、近世の西洋の政治は未熟だったのか。その答えはメロヴィング朝とカロリング朝の間の断絶にある。ローマの政治や行政そして商業システムを受け継いだメロヴィング朝では全国的な商業流通への課税で堅固な財政基盤が確立していた。それはローマ帝国のものを受け継ぎ、まだ宗教的に東西の分裂が深刻化する前のビザンツ帝国との協調で円滑に機能していた。それがイスラムの台頭で地中海の東西の物流が分断され、欧州の商業が衰退しローマ式の財政システムが崩壊した結果、大土地所有による地代と修道院による自給自足的な生産体制がとってかわった結果、課税というシステムが忘れ去られた。
かなり突飛な印象は受けるが、王権が貴族とともに大土地所有とそこからの収益で運営されるため、他の諸侯の政策に口出しができるものではない。日本の場合は朝廷による全国一律の課税制度からの転換だけに、その連続性と均衡が意識された。しかし西洋の場合は全国一律という考え方自体がもともとなく、戦争費用をねん出するために議会を開催して国民の同意を得なくてはならなかったという消極的なものだった。しかも問題なのはその同意のための譲歩を王権がしばしば反故にしたことだ。王の首がすげ代わるのも無理はない。
教科書ではフランク王国の王朝交代はなんとなく下剋上程度にしか書かれていない。しかし実際にはローマ帝国とその後継帝国の滅亡と陰鬱な中世ヨーロッパの始まりという歴史の画期だったことは目からうろこというくらいの驚きだった。同時になぜ、スペインやポルトガルが一時は世界征服を狙う勢いだったのにあっさりと植民地帝国が崩壊し、その植民地にできた諸国があまりぱっとしない理由もわかる。スペインもポルトガルも単によそから奪ってきた金銀を費消するだけだった。オランダは商業活動でそれを何倍にも膨らませていき、さらに金融と投資でそこから富を膨らませた。それを受け継いだイギリスはスペインとポルトガルの征服事業を受け継ぎ市場としての植民地を獲得、さらにオランダの商業と金融を組み合わせることで高度経済成長を実現した。それをフランス、ドイツ、そしてアメリカが真似をし、やや遅れて日本が加わった。
商業と金融は経済の中心だが、そこへの課税は財政基盤としてはこの上なく堅固で巨大だ。それがイスラム諸国によって地中海が分割されたことで崩壊した。細かいところに気になる点は多々あるが、中世ヨーロッパについての疑問が氷解する一冊だ。
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ヨーロッパ世界の誕生: マホメットとシャルルマーニュ (名著翻訳叢書) 単行本 – 1960/8/1
- 本の長さ415ページ
- 言語日本語
- 出版社創文社出版販売
- 発売日1960/8/1
- ISBN-104423492016
- ISBN-13978-4423492017
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登録情報
- 出版社 : 創文社出版販売 (1960/8/1)
- 発売日 : 1960/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 415ページ
- ISBN-10 : 4423492016
- ISBN-13 : 978-4423492017
- Amazon 売れ筋ランキング: - 90,020位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,258位世界史 (本)
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2022年11月12日に日本でレビュー済み
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2023年12月5日に日本でレビュー済み
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世界史を学ぶに当たり、私達の世代ですと、テキストは山川出版。岩波新書。然しこの「ムハンマドとシャルルマーニュ」を読まずしてはヨーロッパ史の真髄に近寄るうべからず。
2020年12月9日に日本でレビュー済み
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世界史におけるイスラム教の役割を示した本だと思います。ヨーロッパ史を理解する為にイスラムを知らなければいけないことを知った本である。
2022年1月27日に日本でレビュー済み
ヴェーバーの『プロ倫』、フレイザー『金枝篇』同様往年の偉大な作文で、まともに取る者が存在するとは思えません。
ピレンヌテーゼは、大前提たる「イスラーム支配による地中海世界の断絶、西欧の孤立」が全き虚構と露呈、破綻している。もっとも「マホメット無くしてシャルルマーニュ無し」は結果的には正しいが、イスラーム圏との交流下に西欧中世が成立という、ピレンヌの意図とは正反対の形ですが。
あら探しを目的に読むのが、適切でしょうか。
ピレンヌテーゼは、大前提たる「イスラーム支配による地中海世界の断絶、西欧の孤立」が全き虚構と露呈、破綻している。もっとも「マホメット無くしてシャルルマーニュ無し」は結果的には正しいが、イスラーム圏との交流下に西欧中世が成立という、ピレンヌの意図とは正反対の形ですが。
あら探しを目的に読むのが、適切でしょうか。
2020年8月15日に日本でレビュー済み
ピレンヌはその叙述の平明さによって定評があったとのことである。訳者の方々の能力もあったのだろいうが、なるほど読みやすく、膨大な情報量の負荷を、mitigateしてくれるのは、叙述の平明さにほかならない、とおもう。
ヨーロッパ中世の誕生を、800年のカール大帝の治世に至るまで膨大な資料を見事に整理して網羅し、筋道を崩さない語り口は、まさに、巨匠中の巨匠。読み物としての面白さを失わない点も本書の素晴らしさだと思う。
史観の特徴は、中世的世界の誕生が、実は、ローマ帝国に寄り添い、ローマの遺制になんとか、ゲルマン的習俗を放り込んで形付けようとする行為の結果であって、ローマ的世界の破壊ではない、とのことにあると思う。
なるほど、何の関係もない筈のヨーロッパ人が、得手勝手に、ギリシャ・ローマを自分たちの先祖と考えるあの、無茶苦茶ぶりの起源は、まさにここにあったかと、改めて納得する。
1世代前のマルクス・エンゲルスは、ことさらに、ギリシャ・ローマ時代とゲルマン的期世界(中世以降)を区別した。そして、彼らの壮大な歴史的思想への対抗馬としての、ピレンヌと同世代のウエーバーは、これまた、資本主義的世界なるものを、自分流に位置づけようと、ことらさに、古典古代と中世の区別にこだわったように思われる。いずれも、概念や類型議論が先行し、それが却って、自らに理論的脇固めを強いたがために、論述はわかりずらく、歴史的世界のイメージは誠に浮かび上がりにくかった。叙述の見事なゾンバルトにしても、やはり概念先行の観は否定できなかった。
これに比べて、ピレンヌの、歴史的世界とはなんと伸びやかに、歴史的想像力を刺激することだろう。ピレンヌは、如上の思想家のような「理論派」ではなかっただろうが、子細な資料を渉猟、構成していく手腕と理論は、非常に偉大だったような気がする。
ウェーバーやゾンバルトからは手厳しい批判があったようだが、理論好きからすれば、ピレンヌに分が悪く見えても、いまにしてみると、理論派の言い分が「証明される」可能性もないことから、無意味な批判だったような気がする。
ピレンヌテーゼという、「イスラム世界がヨーロッパ中世を作った」という理論だが、私はこういうのはあまり持ち上げたくない。何につけ実体概念は関係概念の賜物である以上、相関性から「或る物」が成立するというのは、これに限らないわけで「テーゼ」というほどの話ではないからだ。だが、東地中海を帝国がイスラムに対峙して、維持できたがために、大きな変化はなかったが、北アフリカ、南イタリアをイスラムに制圧されてからは、西ヨーロッパは、かつての面影を失い内陸的な、つまり「中世」が誕生したのだ、ということになる。これは交易、貨幣経済の衰退と自給自足の世界を意味したわけである。800年頃を以て中世の誕生と考えているようだが、筆致は豊かで政治経済文化と多岐にわたる。
かたや、ピレンヌの次世代で、別流派のブロックやブローデル、これまた別派のホイジンハといった歴史家だが、ピレンヌに比べて、本当に「歴史的世界」が駄目だと思う。あたりまえの「日常」に真理がある、といった今にすれば凡庸な視点で、ことさらに一時騒がれていたが、私個人は、詰まらない連中に感じている。
ピレンヌを再読していきたい。
ヨーロッパ中世の誕生を、800年のカール大帝の治世に至るまで膨大な資料を見事に整理して網羅し、筋道を崩さない語り口は、まさに、巨匠中の巨匠。読み物としての面白さを失わない点も本書の素晴らしさだと思う。
史観の特徴は、中世的世界の誕生が、実は、ローマ帝国に寄り添い、ローマの遺制になんとか、ゲルマン的習俗を放り込んで形付けようとする行為の結果であって、ローマ的世界の破壊ではない、とのことにあると思う。
なるほど、何の関係もない筈のヨーロッパ人が、得手勝手に、ギリシャ・ローマを自分たちの先祖と考えるあの、無茶苦茶ぶりの起源は、まさにここにあったかと、改めて納得する。
1世代前のマルクス・エンゲルスは、ことさらに、ギリシャ・ローマ時代とゲルマン的期世界(中世以降)を区別した。そして、彼らの壮大な歴史的思想への対抗馬としての、ピレンヌと同世代のウエーバーは、これまた、資本主義的世界なるものを、自分流に位置づけようと、ことらさに、古典古代と中世の区別にこだわったように思われる。いずれも、概念や類型議論が先行し、それが却って、自らに理論的脇固めを強いたがために、論述はわかりずらく、歴史的世界のイメージは誠に浮かび上がりにくかった。叙述の見事なゾンバルトにしても、やはり概念先行の観は否定できなかった。
これに比べて、ピレンヌの、歴史的世界とはなんと伸びやかに、歴史的想像力を刺激することだろう。ピレンヌは、如上の思想家のような「理論派」ではなかっただろうが、子細な資料を渉猟、構成していく手腕と理論は、非常に偉大だったような気がする。
ウェーバーやゾンバルトからは手厳しい批判があったようだが、理論好きからすれば、ピレンヌに分が悪く見えても、いまにしてみると、理論派の言い分が「証明される」可能性もないことから、無意味な批判だったような気がする。
ピレンヌテーゼという、「イスラム世界がヨーロッパ中世を作った」という理論だが、私はこういうのはあまり持ち上げたくない。何につけ実体概念は関係概念の賜物である以上、相関性から「或る物」が成立するというのは、これに限らないわけで「テーゼ」というほどの話ではないからだ。だが、東地中海を帝国がイスラムに対峙して、維持できたがために、大きな変化はなかったが、北アフリカ、南イタリアをイスラムに制圧されてからは、西ヨーロッパは、かつての面影を失い内陸的な、つまり「中世」が誕生したのだ、ということになる。これは交易、貨幣経済の衰退と自給自足の世界を意味したわけである。800年頃を以て中世の誕生と考えているようだが、筆致は豊かで政治経済文化と多岐にわたる。
かたや、ピレンヌの次世代で、別流派のブロックやブローデル、これまた別派のホイジンハといった歴史家だが、ピレンヌに比べて、本当に「歴史的世界」が駄目だと思う。あたりまえの「日常」に真理がある、といった今にすれば凡庸な視点で、ことさらに一時騒がれていたが、私個人は、詰まらない連中に感じている。
ピレンヌを再読していきたい。
2022年10月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本作、世界史の授業でしばしば言及される作品です。出色なのは「イスラムがヨーロッパを形作った」とする言説です。
もう少し丁寧に言うと、現在のヨーロッパを基礎づけたのはイスラム教の侵入とカロリング朝だという言説。なお本作第二部でのメインテーマです。
・・・
ロジックは以下の通りです。
5世紀以降のイスラムの急激なる隆盛(アラビア半島からの北上)によって、先ずは商業圏としての地中海からキリスト教徒・欧州人たちは排除される。ローマ時代以降、商業で大いに栄えたマルセイユなどの港湾都市での取引はしりすぼみとなり、ローマ時代は大いに使用されていた香草やハーブ等は600/700年代以降はさっぱりヨーロッパに入ってこなくなったとか。
その結果、東方世界(現ギリシア・トルコを中心とする東ローマ帝国:イスラムとの対峙で精いっぱい)と西方世界(フランク王国等それ以外のヨーロッパ)とが分断してしまったという。
さらに、海上貿易の途絶は各王室財政に窮乏をもたらす一方、土地持ち貴族が(税が揚がるから)有利になる。そうこうしている間に、宮宰カロリング一家が無策な王家をのっとって覇を唱えたということのようです。
丁度そのころ、イコン崇拝問題でビザンツ皇帝と揉めていたローマ・カトリックはシャルルマーニュを皇帝として戴冠することで教会の自治を確保するという形となりました。
ちなみにシャルルマーニュが皇帝となった当時、俗人教育は完全にすたれ、読み書きできるものはまれであったということらしく、聖職=学者、と同義だったそうです。結果、皇帝の傍に仕える読み書きできる聖職のみがラテン語を使用する一方、皇帝をはじめとした俗人たちは土着の言葉(フランス語等)を使用するという流れになったということのようです。ここに世界語としてのラテン語の命運の尽きようが確認できます。
ということで、イスラム隆盛→地中海海上貿易途絶→各王国財政困窮→臣下がのし上がる→その臣下(カロリング家)の勢いにローマ教会が乗っかる→ヨーロッパの誕生そして中世の始まり、とこんな感じのようです。
・・・
どうですか?面白くないですか?笑
この言説は、さらに「そもそもヨーロッパとはどの部分のことなのか」とか更なる疑問を呼びそうな気もします。ただ、きっとピレンヌは、同じ土地に同じ民族が住まうけれど、シャルルマーニュ以降は文化の性格が異なる、こういいたかったのだろうと思います。これは中世以降の歴史を学ぶ上では大きなヒントになるのだろうと思います。
・・・
ちなみに第一部は、ゲルマン民族の移動はヨーロッパ文化への影響はほとんどなかったという言説。これは驚きとかは特にありませんが、世界史でそれなりに習う割に影響なかったのね、という軽い驚き。なんでもゲルマン民族はヨーロッパ世界に侵入してきたものの、あっという間にラテン文化に馴染んでしまい、法律も文化もすべてラテン色に染まったということらしいです。
・・・
ということで世界史に興味がない人にとってはさっぱり面白くない本かもしれません。でも歴史の授業が無味乾燥であると感じた時など、こうした書籍は助けになるのではないかと思いました(さらに眠気を催す可能性もあります)。あらゆる物事は必ず因果の糸でつながっています。そして授業では説明されないことが多い物事の因果が、こうした書籍で確認できると、歴史も世界も一層面白くそして身近に感じられるのではないか、と思った次第です。
もう少し丁寧に言うと、現在のヨーロッパを基礎づけたのはイスラム教の侵入とカロリング朝だという言説。なお本作第二部でのメインテーマです。
・・・
ロジックは以下の通りです。
5世紀以降のイスラムの急激なる隆盛(アラビア半島からの北上)によって、先ずは商業圏としての地中海からキリスト教徒・欧州人たちは排除される。ローマ時代以降、商業で大いに栄えたマルセイユなどの港湾都市での取引はしりすぼみとなり、ローマ時代は大いに使用されていた香草やハーブ等は600/700年代以降はさっぱりヨーロッパに入ってこなくなったとか。
その結果、東方世界(現ギリシア・トルコを中心とする東ローマ帝国:イスラムとの対峙で精いっぱい)と西方世界(フランク王国等それ以外のヨーロッパ)とが分断してしまったという。
さらに、海上貿易の途絶は各王室財政に窮乏をもたらす一方、土地持ち貴族が(税が揚がるから)有利になる。そうこうしている間に、宮宰カロリング一家が無策な王家をのっとって覇を唱えたということのようです。
丁度そのころ、イコン崇拝問題でビザンツ皇帝と揉めていたローマ・カトリックはシャルルマーニュを皇帝として戴冠することで教会の自治を確保するという形となりました。
ちなみにシャルルマーニュが皇帝となった当時、俗人教育は完全にすたれ、読み書きできるものはまれであったということらしく、聖職=学者、と同義だったそうです。結果、皇帝の傍に仕える読み書きできる聖職のみがラテン語を使用する一方、皇帝をはじめとした俗人たちは土着の言葉(フランス語等)を使用するという流れになったということのようです。ここに世界語としてのラテン語の命運の尽きようが確認できます。
ということで、イスラム隆盛→地中海海上貿易途絶→各王国財政困窮→臣下がのし上がる→その臣下(カロリング家)の勢いにローマ教会が乗っかる→ヨーロッパの誕生そして中世の始まり、とこんな感じのようです。
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どうですか?面白くないですか?笑
この言説は、さらに「そもそもヨーロッパとはどの部分のことなのか」とか更なる疑問を呼びそうな気もします。ただ、きっとピレンヌは、同じ土地に同じ民族が住まうけれど、シャルルマーニュ以降は文化の性格が異なる、こういいたかったのだろうと思います。これは中世以降の歴史を学ぶ上では大きなヒントになるのだろうと思います。
・・・
ちなみに第一部は、ゲルマン民族の移動はヨーロッパ文化への影響はほとんどなかったという言説。これは驚きとかは特にありませんが、世界史でそれなりに習う割に影響なかったのね、という軽い驚き。なんでもゲルマン民族はヨーロッパ世界に侵入してきたものの、あっという間にラテン文化に馴染んでしまい、法律も文化もすべてラテン色に染まったということらしいです。
・・・
ということで世界史に興味がない人にとってはさっぱり面白くない本かもしれません。でも歴史の授業が無味乾燥であると感じた時など、こうした書籍は助けになるのではないかと思いました(さらに眠気を催す可能性もあります)。あらゆる物事は必ず因果の糸でつながっています。そして授業では説明されないことが多い物事の因果が、こうした書籍で確認できると、歴史も世界も一層面白くそして身近に感じられるのではないか、と思った次第です。
2021年1月1日に日本でレビュー済み
すぐれた歴史書にはそれまで未解明だった個別のテーマについて明らかにした書と壮大なスケールで基本的な歴史的視座を与えてくれる書があるように思います。本書は間違いなく後者に属しています。
地中海文明というべきギリシャ・ローマ文明がゲルマン民族侵入による西ローマ帝国崩壊後も基本的には継続していたのがイスラム勢力の急激な勃興により一挙に崩壊し、それによってヨーロッパ中世世界が成立する過程が政治・文化・経済・社会の変動から明らかにされます。
その意味で、この本はヨーロッパ文明の起源を明らかにした歴史書で必読の歴史書といえましょう。
地中海文明というべきギリシャ・ローマ文明がゲルマン民族侵入による西ローマ帝国崩壊後も基本的には継続していたのがイスラム勢力の急激な勃興により一挙に崩壊し、それによってヨーロッパ中世世界が成立する過程が政治・文化・経済・社会の変動から明らかにされます。
その意味で、この本はヨーロッパ文明の起源を明らかにした歴史書で必読の歴史書といえましょう。