著者は、本書の中で「何もかもあいまいな話であるが、単に一般的な原理を導き、そこから大まかな結論を引き出すのが目的であり、このような過程は、より正確な数学モデルを作るのに重要な準備となる」と述べている。自然と対峙する工学技術者は、未知の現象を雑駁に推論し、徐々に精度を高め、現象の核心に迫ろうとするアプローチを、日常茶飯事に選択する。最初から解析的な偏微分方程式を構築し、スーパーコンピュータで解を探索するような愚かな浪費を行わない。裏紙にポンチ絵を描いて、簡単な数式を電卓で計算し、理論の見通しを立てるところから始まる。
学生時代は、「理論を学び、その応用を考える」だけで、未知の現象を解析するテクニック、つまり「現象をモデル化し、理論を作る」思考過程を学ばなかった。数式で表すことすらためらうような現象をモデル化し、具体的な数字を入れて実際と合っていることを確かめ、新たな分野を開拓して行く。これが現代の技術者の生き残るための特殊技能になる。
さて、本書の中で扱う以下の先達の理論は、コンピュータに頼らず、どのようにしてモデルを単純化し、計算したのだろうか? 是非、技術者の道を志す読者は、本書を開いて「シンプルな思考過程」を体感してほしい。尚、本書の価値を見い出された翻訳者の方々に敬意を評します。
【上巻から抜粋した、興味深いモデルの例】
1章 自然と数学モデルの合流点
・ 川は、川幅の10倍以上の距離を、直線的に流れない。
・ 雪玉が1時間で半分融ける環境では、全部融けるのに5時間かかる。
2章 推定 ー フェルミ問題を解く上での計算と力
・ 油を湖に一滴0.1cm3たらすと40m2の面積に広がる
・ 髪の毛と子供の成長速度は、ほぼ同じで、時速10μm
・ 赤道上に巻いた帯40,000kmを、25cm伸ばすとネズミが通れる隙間ができる
・ ストークスの法則:高度1kmにある20μmの霧の落下速度は1cm/s
3章 形、大きさ、相似 ー スケール問題
・ マウスより小さい動物なら、1kmの高さから落ちても死なない
・ 身長90cmの子供は、2倍の180cmの親と比べて、0.71 倍の速度で歩く
・ 生存能力指数:窒息死を避けるため、一定の大きさになると細胞は分裂する
・ 次元解析バッキンガムのπ定理:原爆の衝撃波の半径r(t)
・ 質量Mの動物の体の表面積はM0.63、代謝による熱の発生はM0.67 に比例
4章 気象光学 I ー 影、黄昏の光線、その他の光学的現象
・ 水平方向の大気は、垂直方向の大気の40倍厚い
・ レイリー散乱:エロゾルによる日光の赤色化は、音の波長でも起こる
5章 気象光学 II ー 微積分を用いた虹、ハロ、グローリーへのアプローチ
・ 最高の虹は、雨滴の直径が1mm以上のときにできる
・ マリンズーセケルカ不安定性:雪の結晶に同じものはない。本当か?
6章 雲、砂丘、ハリケーン
・ 積乱雲の投影面積1km2は、500tの水を含む
・ 霧中より雨中の方が遠くまで見える
・ ラングミュア循環:海に漂う海藻が100〜200m間隔で縞模様を作る
・ 最大風速46m/sの台風は、広島型原爆の100倍のエネルギーに相当する
7章 すべての種類の(線形)波
・ 深水波は波長が短いほど早く進むが、浅水波はの速度は波長に関係しない
・ 海の波は、必ず浜辺に平行に進んでくる
・ フルードの法則:船の出せる最高速度は制限される
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自然の中の数学 上: 数学で見る自然の美しさ (シュプリンガー数学リーディングス 第 14巻) 単行本 – 2008/7/1
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- 本の長さ217ページ
- 言語日本語
- 出版社シュプリンガー・ジャパン
- 発売日2008/7/1
- ISBN-104431100121
- ISBN-13978-4431100126
登録情報
- 出版社 : シュプリンガー・ジャパン (2008/7/1)
- 発売日 : 2008/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 217ページ
- ISBN-10 : 4431100121
- ISBN-13 : 978-4431100126
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,296,526位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,085位数学一般関連書籍
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年7月21日に日本でレビュー済み
"Mathematics in Nature: Modeling Patterns in the Natural World"の和訳(上巻)です。
自然界に見られるパターン(※)を、ただ単に眺めるだけでも「美しい」と感じますが、それを説明できる"数式モデル"が理解できるようになると、また別の意味で「美しい」と感じられるようになります。(☆) そうです、数式も"美しい"のです! 本書はそんな数式モデルの"美しさ"を理解するための『地頭力』が自然に鍛えられる好著です。("寺田物理学"的な)自然科学エッセイが好きで、かつ、大学教養レベル以上の数学力を自負する方は、本書を楽しく読み進めることが出来るでしょう。こういう"数式モデル記述のセンス"が磨かれると、実際の科学研究の場面で役に立つ場面が出てくるのではないかと大いに期待されますね。(特に"フェルミ推定"や"次元解析"に関する知識は、問題解決の"取っ掛かり"にも繋がります) 今から下巻刊行が待ちきれませんね。(^-^)v
【主要目次】第1章 自然と数学的モデルの合流点、第2章 推定―フェルミ問題を解く上での計算の力、第3章 形、大きさ、相似―スケール問題、第4章 気象光学1―影、黄昏の光線、その他の光学的現象、第5章 気象光学2―微積分を用いた虹、ハロ、グローリーへのアプローチ、第6章 雲、砂丘、ハリケーン、第7章 すべての種類の(線形)波
(※)著者のサイト([...]‾jadam/)の"gallery"に色々と美しい画像があります。
(☆)Feynmanは「数学を知らない人には、自然の美、最も深い美を本当に感じ取ることは困難であります。(中略) 自然について学び、自然を理解し鑑賞したいと仰るならば、自然が話す言葉を聞き分ける必要があります。」と言っています。
自然界に見られるパターン(※)を、ただ単に眺めるだけでも「美しい」と感じますが、それを説明できる"数式モデル"が理解できるようになると、また別の意味で「美しい」と感じられるようになります。(☆) そうです、数式も"美しい"のです! 本書はそんな数式モデルの"美しさ"を理解するための『地頭力』が自然に鍛えられる好著です。("寺田物理学"的な)自然科学エッセイが好きで、かつ、大学教養レベル以上の数学力を自負する方は、本書を楽しく読み進めることが出来るでしょう。こういう"数式モデル記述のセンス"が磨かれると、実際の科学研究の場面で役に立つ場面が出てくるのではないかと大いに期待されますね。(特に"フェルミ推定"や"次元解析"に関する知識は、問題解決の"取っ掛かり"にも繋がります) 今から下巻刊行が待ちきれませんね。(^-^)v
【主要目次】第1章 自然と数学的モデルの合流点、第2章 推定―フェルミ問題を解く上での計算の力、第3章 形、大きさ、相似―スケール問題、第4章 気象光学1―影、黄昏の光線、その他の光学的現象、第5章 気象光学2―微積分を用いた虹、ハロ、グローリーへのアプローチ、第6章 雲、砂丘、ハリケーン、第7章 すべての種類の(線形)波
(※)著者のサイト([...]‾jadam/)の"gallery"に色々と美しい画像があります。
(☆)Feynmanは「数学を知らない人には、自然の美、最も深い美を本当に感じ取ることは困難であります。(中略) 自然について学び、自然を理解し鑑賞したいと仰るならば、自然が話す言葉を聞き分ける必要があります。」と言っています。