物理を学び、理化学研究所に勤務していた理学博士の著者が、廃棄物の処分が出来なくなった時点、すなわちエントロピーが最大となったところで、経済成長は止まらざるを得なくなることを説く。
技術発展により人類は必要以上の生産を出来るようになった。技術発展により仕事が減るはずであるが、我々は自由な時間が増えてはいない。失業者も生ずるはずであるが、先進国の失業率は、増減はあるにしても、ある水準に保たれている。それは、先進国では生産を増やし続け、余剰製品を技術発展の遅れている国へ輸出からである。そのために、遅れている国でーは、失業が増えているのが現実である。
すなわち、先進国の経済活動により増大したエントロピは後進国に廃棄されている。この仕組みでは、強者は益々利益を得、弱者は益々貧しくなる。
本来、必要な分だけを生産し消費していれば、経済活動により増大したエントロピーは自然サイクルの中で再生処分され、バランスしていた。ところが、技術発展と国際化に伴い、輸出という形でエントロピーが処分されている。このエントロピを処分できなくなったところで経済は破綻する。
この破綻を防止するためには、自由競争という名の強者の理論に従うのではなく、高い関税を導入するなど、世界的なルール作りが必要である、というのが著者の主張である。
一般的な経済書とは異なり、経済活動により生ずる負の面（エントロピー）に着目して経済活動を分析しており、我々はどう生きるべきかを考えさせられる本である。
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