南伸坊のエッセイ集で、連載中のみやび出版『myb』の「日々のシンボー」と毎日新聞『本の時間』の「じじの時間」を軸に、『文藝春秋スペシャル』『うえの』『室内』の各誌に注文されて執筆した文を集めています。そのさい、年寄りがよくする懐旧談、自分が老化に直面したことについての文章を選んだという。「老化を認めたくない自分」を意識した上で、そんな自分をも同世代に笑ってもらおうという戦略にまず感服。本の帯の背にあたるところに「オレって老人？」という問いに対して、「ええまあ（笑）」と答えが書いているのに一笑。
一気に通読し、「ああ面白かった」と2年くらい放っておいて、最近になって再読すると相変わらずの意想外な思考法に気がつきました。例えばどのように死ぬか、そんなことは考えても仕方がない、「そういうことは考えない」つもりだという。しかしTVを見ていると、「そういうことを考えろ考えろ、なぜ考えないのか? としじゅう言われているような気がする」と。このちょっとした違和感、漠然とした世間とのズレを南伸坊という人は文章にできる。私が彼の本を好んで読み始めた十数年前から、変わってません。いてくれて有り難い、先達の一人です。
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