だってこれは小説だから。
挿絵の線もイマイチ満足できるものではなく、これならむしろイラストなくても良かったのではとは思った。
内容は文句ない。
スーパーヒーローにありがちな、最初から完全に無双してて勝負にならないというのと違い、三重人格でピンチの時にお助けマンとして人格が入れ替わるという、二重人格では既に手垢にまみれた設定も、最近使われていないことから新鮮とすら感じてしまう。作品の比較は常に同時代で行われるのでこれは当然か。いや、考えてみると三重人格という設定がありそうでない。多重人格の場合とんでもない数の人格を保有しているほうが多いからか。
内政についてはここから話が始まる、というところでいきなり腰を折られたのでこの時点では評価できない。キャラの戦力的成長に関しては正直まだ実力の一端というよりむしろ敗北とそれに続くお助けマンの登場の流れだったのでこれからと言ったところが。
なんにせよここから主人公がどちらに向かって成長していきそれが周りにどのように影響していくか、それに対しての興味は尽きない。主人公はまだ12歳だ。とりあえず今の時点ではっきりしたのはそのことだけだろう。
誤解を恐れずにジャンルの指摘をするならば、この巻は大人の階段の物語である。
性的に体験することだけがそれを指すのではないということは日本のラノベ界に対して強く言いたい。むしろそんなものは一部に過ぎず、それを経験したからと言って登れるとは限らない。それが大人の階段である。
むしろそうしたいわゆるテンプレと呼ばれる固定観念は物語の成長を阻害しているといえるだろう。人間的成長などというよくわからん表現が横行するのも防ぎようのないことなのか。そこには詩がない。あまりに具体的すぎるのだ、人間的成長という言葉。
当たり前のことだが、大人の階段とは子供が大人になる階段のことを指す。当たり前だが性交をしたら大人の階段を登るわけではない。無論そこから学ぶこともたくさんあるわけだが。しかし学ばない人も多いのだ。これも当たり前だが。
それは例えば自分の過ちを認めること。もっと具体的に言えば罪滅ぼしをすること。自らの過ちを認めてそれを正すことによって、人は初めて大人の階段を登ることとなる。それができなければ、95歳になってもその人は子供なのだ。
このジャンルがラノベに極めて少ないのは悲しいことだ。
もっと子供が大人になるために学ぶ話がラノベに増えてほしいと思う。
この作品は間違いなく、そういう作品である。
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