「一る」って何のことか分かりますか?「一縷(いちる)の望み」と書けば分かるでしょう。こういうのを「交ぜ書き」と言う。「交ぜ書き」と言う珍現象を発生せしめた元凶は昭和21年に内閣訓令・告示として公布された「当用漢字表」で、日本語の平易化と称して当時の内閣が新たに定めた1850字の当用漢字なるもの以外は使うべきでないと告示したために、日本の教育界・出版界を始め一般の人々までこれに従わざるを得なかった。交ぜ書きで仮名にされた漢字は日本人にとって敢えてかな書きにしてまで使用したい漢字だった。換言すれば「交ぜ書き語」とは、現代の日本人にとって、どうしても使い続けたい言葉だったと言える。
「交ぜ書き語」はグロテスクな形ながら、漢字・漢語の生命力を保つ役割を担ってきた。その締め付けが緩められるまでには、実に30数年の歳月を要した。「当用漢字表」が改訂され「常用漢字表」として公示されたのは昭和56年。僅か95字しか追加されなかったが使用の「制限」から「目安」になったことが国策の大転換だった。折角国策の転換があったのにも拘らず、「交ぜ書き」の呪縛から未だに脱していない。
「交ぜ書き」の問題点は交ぜ書きにしても、漢字漢語は決して平易なものとはならず、重要な言葉の意味をすっかり曖昧にしたり、不鮮明にしたりして却って難解なものにしてしまうことである。このような問題児である「交ぜ書き」を一掃する唯一の方法が、表外漢字(常用漢字に指定されていない漢字)も全てかな書きにしないで、そのまま記述しルビを振ることである。昔の子供達は当時全てルビが振られた新聞や立川文庫を読みながら自然に漢字を覚えて行ったのである。
著書では第Ⅱ編で「交ぜ書き」の実際・実情について紹介・検討し、第Ⅲ編は「交ぜ書き小辞典」と称する資料として著者が採集した多数の事例を紹介している。これに目を通すのも一興か。一部の事例にコメントを付けてみた。
遺がい(遺骸)かな書きされた漢字を見ないと分からない/一る(一縷)これも然り/一気か成(一気呵成)迫力全然なし/一しゅう(一蹴)一周のことかと思った/永ごう(永劫)かな書きされた漢字を見ないと分からない/横いつ(横溢)横一線?/外ぼう(外貌)外房?/貫ろく(貫禄)これでは全く貫禄が無い/きつ立(屹立)かな書きされた漢字を見ないと分からない/芸ぎ(芸妓)これも然り/好じ(好餌)これも然り/才気かん発(才気煥発)迫力全然なし/処方せん(処方箋)「箋」は現在常用漢字になっているが、薬局の看板は依然そのまま、これでは「処方してくれない」ことになってしまう/清そ(清楚)趣が台無し/痛よう(痛痒)痛いよう?/落ご(落伍)落語?...きりがないのでこれで終り。
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「完璧」はなぜ「完ぺき」と書くのか―これでいいのか?交ぜ書き語 単行本(ソフトカバー) – 2006/2/10
田部井 文雄
(著)
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「交ぜ書き語」を本来の姿に!
「完ぺき」「謙そん」「親ぼく」「めい福」・・・・・・。新聞やテレビなどで見かけるこのような表記を、このまま
放っておいてよいのか? 本書は、その歴史と現状を踏まえて、日本語と漢字文化の将来のために「交ぜ書き」
を解消することを訴える。約700の「交ぜ書き語」を実在用例とともに示した「交ぜ書き語小辞典」付。
これらは難しい漢字はやさしい「別のことばにかえる」という文部省の指示に従うことのできない文字として、
あえて仮名書きにしてまでも日本人が使用した漢語だったと言えましょう。
換言すれば「交ぜ書き語」とは、現代の日本人にとって、どうしても使い続けたい言葉だったということができ
ます。(本文より)
「完ぺき」「謙そん」「親ぼく」「めい福」・・・・・・。新聞やテレビなどで見かけるこのような表記を、このまま
放っておいてよいのか? 本書は、その歴史と現状を踏まえて、日本語と漢字文化の将来のために「交ぜ書き」
を解消することを訴える。約700の「交ぜ書き語」を実在用例とともに示した「交ぜ書き語小辞典」付。
これらは難しい漢字はやさしい「別のことばにかえる」という文部省の指示に従うことのできない文字として、
あえて仮名書きにしてまでも日本人が使用した漢語だったと言えましょう。
換言すれば「交ぜ書き語」とは、現代の日本人にとって、どうしても使い続けたい言葉だったということができ
ます。(本文より)
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社大修館書店
- 発売日2006/2/10
- ISBN-104469221791
- ISBN-13978-4469221794
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商品の説明
著者について
田部井 文雄
1929(昭和4)年、群馬県生まれ。東京教育大学卒業。同大学院修了。元千葉大学教授。専攻は、漢文学。若いころより、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典や、高校国語教科書の編纂にたずさわる一方で、『唐詩三百首詳解』(大修館書店)、『中国自然詩の系譜』(大修館書店)、『研究資料・漢文学』全11巻(監修、明治書院)、『陶淵明集全釈』(共著、明治書院)、『大修館四字熟語辞典』(編、大修館書店)などの編著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1929(昭和4)年、群馬県生まれ。東京教育大学卒業。同大学院修了。元千葉大学教授。専攻は、漢文学。若いころより、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典や、高校国語教科書の編纂にたずさわる一方で、『唐詩三百首詳解』(大修館書店)、『中国自然詩の系譜』(大修館書店)、『研究資料・漢文学』全11巻(監修、明治書院)、『陶淵明集全釈』(共著、明治書院)、『大修館四字熟語辞典』(編、大修館書店)などの編著書がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 大修館書店 (2006/2/10)
- 発売日 : 2006/2/10
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 160ページ
- ISBN-10 : 4469221791
- ISBN-13 : 978-4469221794
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,006,129位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2024年4月5日に日本でレビュー済み
漢字かなの「交ぜ書き」表記に違和感を感じていた為、前から気になってはいたが時々忘れるせいで最近漸く借りた一冊。
交ぜ書き語の成立の経緯と実際の使用例について平易な言葉で述べられている。
本書によると、戦後の国語をより容易にする風潮に於いて使用できる漢字を国が制限したのが「常用漢字表」、「当用漢字表」及び「人名用漢字表」であり、言い換えのきかない言葉を表記するに及んで登場したのが「交ぜ書き語」とのことである。
登場の経緯から「交ぜ書き語」の使用には同情的でありつつもわ「奇形」とか「グロテスク」と批判するのはまあ良い。
だが、「交ぜ書き語」をそれで全て説明出来るかといえば、おそらく違う。
例えば、教育・出版界界隈から始まって今や地方行政まで汚染した「子ども」表記については、本書では一切触れられていないのである。
「交ぜ書き語」という日本語への冒瀆を憂うならば、あの言葉と込められた底意への批判は絶対に外してはならず、言葉とは裏腹に著者の腰砕けを見て取ったのは果たして私だけであろうか。
また、著者は「あとがき」で新聞記事の傾向を見て交ぜ書き語の減少を喜んでいるが、それから約二十年経った今、果たして本当に減っただろうか、私にはどうしても糠喜びにしか思えないのである。
著者の問題意識には賛同出来たし、巻末の交ぜ書き語事典は己自身の語彙力の無さを痛感した点で良かったのだが、上記の理由により、どうしてもあのような低い評価にならざるを得なかった・・・どうか赦されよ。
交ぜ書き語の成立の経緯と実際の使用例について平易な言葉で述べられている。
本書によると、戦後の国語をより容易にする風潮に於いて使用できる漢字を国が制限したのが「常用漢字表」、「当用漢字表」及び「人名用漢字表」であり、言い換えのきかない言葉を表記するに及んで登場したのが「交ぜ書き語」とのことである。
登場の経緯から「交ぜ書き語」の使用には同情的でありつつもわ「奇形」とか「グロテスク」と批判するのはまあ良い。
だが、「交ぜ書き語」をそれで全て説明出来るかといえば、おそらく違う。
例えば、教育・出版界界隈から始まって今や地方行政まで汚染した「子ども」表記については、本書では一切触れられていないのである。
「交ぜ書き語」という日本語への冒瀆を憂うならば、あの言葉と込められた底意への批判は絶対に外してはならず、言葉とは裏腹に著者の腰砕けを見て取ったのは果たして私だけであろうか。
また、著者は「あとがき」で新聞記事の傾向を見て交ぜ書き語の減少を喜んでいるが、それから約二十年経った今、果たして本当に減っただろうか、私にはどうしても糠喜びにしか思えないのである。
著者の問題意識には賛同出来たし、巻末の交ぜ書き語事典は己自身の語彙力の無さを痛感した点で良かったのだが、上記の理由により、どうしてもあのような低い評価にならざるを得なかった・・・どうか赦されよ。
2009年7月24日に日本でレビュー済み
「交ぜ書き語」というんですか。
漢字と平仮名が、不自然に交じり合った単語をよく眼にします。
これまで「平凡な日本人には、太刀打ちできない難しい字が混じっているからか・・・」と思っていましたが、そうではないらしい。
田部井先生は、「交ぜ書き語」を『「羽織袴にハイヒール」「チャイナドレスに丁髷」の異様な風体にたとえたとしたら、言い過ぎになりましょうか』と書いておられるが、いやいや、
3章「交ぜ書き語小事典」を見ると、その異様な風体は一目りょう然。
あ然、ぼう然。 こん倒しそうです。
小事典では、「一る」〈朝日02・10・27〉というように、出典が明らかにされている。
「え〜本当に使っちゃったの?」と笑わずにはいられない。
四字熟語辞典を編纂された先生ならではのち密な仕事に喝さい!
まもなく政権がが解しそうだ。
漢字と平仮名が、不自然に交じり合った単語をよく眼にします。
これまで「平凡な日本人には、太刀打ちできない難しい字が混じっているからか・・・」と思っていましたが、そうではないらしい。
田部井先生は、「交ぜ書き語」を『「羽織袴にハイヒール」「チャイナドレスに丁髷」の異様な風体にたとえたとしたら、言い過ぎになりましょうか』と書いておられるが、いやいや、
3章「交ぜ書き語小事典」を見ると、その異様な風体は一目りょう然。
あ然、ぼう然。 こん倒しそうです。
小事典では、「一る」〈朝日02・10・27〉というように、出典が明らかにされている。
「え〜本当に使っちゃったの?」と笑わずにはいられない。
四字熟語辞典を編纂された先生ならではのち密な仕事に喝さい!
まもなく政権がが解しそうだ。