社会的選択理論の入門書。
「いったい何を多数決で決めればいいのだろう(p.2)」「多数決は、人々の意思をまとめて集団としての決定を与えるのに、適しているのだろうか(p.3)」といった問に答えようとする。その背後には、「多数決が私たちに強いる動作は、ひどく奇怪で息苦しいものになってはいないか(p.34)」という、多数決(最多数投票)への懐疑がある。
順に「決め方を変えると歴史が変わる」「三択以上の投票で優れている決め方は何か」「二択投票で多数決を正しく使いこなす」「多数の意見を尊重すべきでないとき(pp.7-8)」の四部構成。
特に興味深かった箇所だけでも下のようにたくさんあった。
1 「満場一致が理想」という前提から、それに一番「近い」決め方がボルダルールであることを示す箇所(pp.44-48)。(著者はボルダルールを高く評価しているようだ。)
2 定評のあるロバート議事法について「修正案の作り方に、発言の順番が大きな影響を与える(p.76)」と、その経路依存性を指摘している箇所。
3 いかなるスコアリングルールも、ペア勝者を選ばないことがあることを示すコンドルセの事例(p.99)。(あざやか!)
4 「是認投票をバージョンアップした最新方式(p.112)」であるマジョリティー・ジャッジメントの紹介。
5 「案外と優れた性質を持っている(p.140)」ランダム独裁制の紹介。
6 得票率と議席率のズレの大きくなる小選挙区制の導入によって「公職選挙法が(憲法)第96条を実質的に『改憲』(p.153)」したという説明。
7 安保法制が「憲法違反にあたる」とする憲法学者と、「憲法違反の疑いはない」とする憲法学者の人数から、安保法制が違憲である確率を、ベイズ統計学で求める箇所(pp.157-160)。
8 日本において、よりましな選挙のあり方を採択させるための「最初のステップとして、マスメディアの世論調査のやり方を、本書で扱った決め方のように変える(p.211)」という提言。著者はそのようにして行われた「豊かな内容の世論調査から見えてくる人々の意思のあり方は、現在の選挙制度のもとでの議席配分と、かなり違ったものになるはず」で、「その乖離は選挙制度の改良の必要性を強く指し示すだろう(pp.211-212)」と説く。
『多数決を疑う』と重なる部分は多いし、本書の中でも繰り返しがあるけれど、それを差し引いても超面白い。

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「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する 単行本(ソフトカバー) – 2016/7/1
坂井 豊貴
(著)
----------------------------------------------------------
EU離脱、参院選、都知事選、米大統領選……
経済学が暴く、多数決の致命的な欠陥とは
----------------------------------------------------------
「多数決」と「暴力」は何が違うのか?
自宅に侵入者の群れがやってきて「この家は俺たちのものだと賛成多数
で決まった」とやられたら、それは明らかにおかしいと思うだろう。
ではイラク侵攻のきっかけとなった安保理決議1414はどうか。
「多数決」と「暴力」のあいだに違いを見付けるのは、案外と難しい。
多数決を使うことは、子供の頃いつの間にか教わる。
けれどその正しい使い方は、大人になっても教わることはない。
これはなかなか不思議なことだ。
選挙をはじめ、マンション自治会や、取締役会や、教授会や、その他
諸々の会議では、おそらく多数決がよく使われていると思う。
だがそれでうまく人々の意思を汲み取れているのだろうか。
そもそも「うまく人々の意思を汲み取る」とは、どういうことなのだろう。
きちんと考えるには、かっちりした学問があるとよい。
「決め方」を経済学的に分析する!
本書では、『「決め方」の経済学』というくらいだから、決め方を経済
学的に考える本だ。
経済学では、人々が何を欲しているか、どのような生産ができるかと
いった情報を、まとめあげて1つの資源配分を与える関数として、市場
をとらえる。
それと同じように、人々の意思を情報としてまとめあげて、1つの集団
的決定を与える関数として、決め方をとらえる。
ただし本書を読むには、経済学はもちろん数学の知識は一切いらない。
ごく一部を除き、計算としては小学2年生レベルの足し算と掛け算がた
まに出てくる程度である。
もしあなたが、選挙や日常の会合で、意思決定がどうもうまくできてい
ない、人々の大意とズレる結果をよく選ぶ、と感じることがあるならば、
その理由が本書のなかに見つけられると思う。
EU離脱、参院選、都知事選、米大統領選……
経済学が暴く、多数決の致命的な欠陥とは
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「多数決」と「暴力」は何が違うのか?
自宅に侵入者の群れがやってきて「この家は俺たちのものだと賛成多数
で決まった」とやられたら、それは明らかにおかしいと思うだろう。
ではイラク侵攻のきっかけとなった安保理決議1414はどうか。
「多数決」と「暴力」のあいだに違いを見付けるのは、案外と難しい。
多数決を使うことは、子供の頃いつの間にか教わる。
けれどその正しい使い方は、大人になっても教わることはない。
これはなかなか不思議なことだ。
選挙をはじめ、マンション自治会や、取締役会や、教授会や、その他
諸々の会議では、おそらく多数決がよく使われていると思う。
だがそれでうまく人々の意思を汲み取れているのだろうか。
そもそも「うまく人々の意思を汲み取る」とは、どういうことなのだろう。
きちんと考えるには、かっちりした学問があるとよい。
「決め方」を経済学的に分析する!
本書では、『「決め方」の経済学』というくらいだから、決め方を経済
学的に考える本だ。
経済学では、人々が何を欲しているか、どのような生産ができるかと
いった情報を、まとめあげて1つの資源配分を与える関数として、市場
をとらえる。
それと同じように、人々の意思を情報としてまとめあげて、1つの集団
的決定を与える関数として、決め方をとらえる。
ただし本書を読むには、経済学はもちろん数学の知識は一切いらない。
ごく一部を除き、計算としては小学2年生レベルの足し算と掛け算がた
まに出てくる程度である。
もしあなたが、選挙や日常の会合で、意思決定がどうもうまくできてい
ない、人々の大意とズレる結果をよく選ぶ、と感じることがあるならば、
その理由が本書のなかに見つけられると思う。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社ダイヤモンド社
- 発売日2016/7/1
- 寸法13.2 x 1.7 x 18.8 cm
- ISBN-104478064873
- ISBN-13978-4478064870
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商品の説明
出版社からのコメント
目次抜粋
第1部 決め方を変えると結果が変わる
第1章 民意は選挙結果からはわからない
第2章 「民主的な」決め方を考える――ボルダルール
第3章 一騎打ちで選択肢を競わせる――総当たり戦
第4章 決め方が変わると歴史が変わる
第2部 三択以上の投票で優れている決め方は何か
第5章 決め方を精査する――ペア勝者とペア敗者
第6章 ベストな配点を考える――スコアリングルール
第7章 「絶対評価」で決めるとどうなるか――是認投票
第3部 二択投票で多数決を正しく使いこなす
第8章 多数決で正しい判断ができる確率――陪審定理
第9章 多数決と暴力は何が違うのか
第10章 国会は多数決を正しく使えているのか?
第11章 法廷の「決め方」を分析する
第4部 多数の意見を尊重すべきでないとき
第12章 費用分担をフェアに決める
第13章 「決闘への満場一致」は尊重すべきか
第14章 個人の自由と満場一致はときに対立する
第1部 決め方を変えると結果が変わる
第1章 民意は選挙結果からはわからない
第2章 「民主的な」決め方を考える――ボルダルール
第3章 一騎打ちで選択肢を競わせる――総当たり戦
第4章 決め方が変わると歴史が変わる
第2部 三択以上の投票で優れている決め方は何か
第5章 決め方を精査する――ペア勝者とペア敗者
第6章 ベストな配点を考える――スコアリングルール
第7章 「絶対評価」で決めるとどうなるか――是認投票
第3部 二択投票で多数決を正しく使いこなす
第8章 多数決で正しい判断ができる確率――陪審定理
第9章 多数決と暴力は何が違うのか
第10章 国会は多数決を正しく使えているのか?
第11章 法廷の「決め方」を分析する
第4部 多数の意見を尊重すべきでないとき
第12章 費用分担をフェアに決める
第13章 「決闘への満場一致」は尊重すべきか
第14章 個人の自由と満場一致はときに対立する
著者について
坂井豊貴(さかい・とよたか)
1975年生まれ。慶應義塾大学経済学部教授。ロチェスター大学Ph.D.(Economics)。横浜市立大学、横浜国立大学、慶應義塾大学の准教授を経て、2014年に38歳で現職。人々の意思をよりよく反映させる選挙方式、物を高く売るオークション方式、人と組織を上手く結ぶマッチング方式といった制度設計の研究で、多くの国際業績をあげる。著書には『マーケットデザイン入門』(ミネルヴァ書房)、『社会的選択理論への招待』(日本評論社)といった定番テキスト、および一般書の『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『多数決を疑う』(岩波新書、新書大賞2016 4位)などがある。2015年義塾賞。
1975年生まれ。慶應義塾大学経済学部教授。ロチェスター大学Ph.D.(Economics)。横浜市立大学、横浜国立大学、慶應義塾大学の准教授を経て、2014年に38歳で現職。人々の意思をよりよく反映させる選挙方式、物を高く売るオークション方式、人と組織を上手く結ぶマッチング方式といった制度設計の研究で、多くの国際業績をあげる。著書には『マーケットデザイン入門』(ミネルヴァ書房)、『社会的選択理論への招待』(日本評論社)といった定番テキスト、および一般書の『マーケットデザイン』(ちくま新書)、『多数決を疑う』(岩波新書、新書大賞2016 4位)などがある。2015年義塾賞。
登録情報
- 出版社 : ダイヤモンド社 (2016/7/1)
- 発売日 : 2016/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 224ページ
- ISBN-10 : 4478064873
- ISBN-13 : 978-4478064870
- 寸法 : 13.2 x 1.7 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 258,506位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 157位プロジェクトマネジメント (本)
- - 348位キャリアデザインの資格・就職
- - 456位プレゼンテーション
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

慶應義塾大学経済学部教授。ロチェスター大学Ph.D.(経済学)。横浜市立大学、横浜国立大学、慶應義塾大学で准教授を経て、2014年に38歳で着任。投票制度・オークション方式・暗号通貨のインセンティブ設計を研究。(株)デューデリ&ディール・不動産オークション技術顧問、東京経済研究センター理事(財産管理運用担当)、読売新聞読書委員などを併任。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年12月13日に日本でレビュー済み
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今の日本の選挙は基本的に多数決が多いが、1人しか選べないことに疑問を覚える方々も多いのではないだろうか?
この本はその疑問が正当であることを丁寧に解説してくれます。(かといって選挙制度を変えられるわけではありませんが…)
多数決が成り立つには1)決める対象に共通の目標がある、2)有権者の判断が正しい確率は0・5以上3)有権者は各自で判断するの3つの条件が必要。(よく「民意を問う」とぶち上げますが、そんなわけないですよね。少なくとも上記条件は日本の選挙には当てはまっていませんね。)
これらがそろわない場合にはどのような「決め方」があるのか?
同じ条件下でもなぜ「決め方」によって結果が異なってくるのか?
ではどのような「決め方」がふさわしいのか?
読み始めは難しい本なのかなと身構えましたが、事例がとにかくわかり易くあっという間に読み終えました。
パズルゲームなどがお好きな方には面白い本なのではないでしょうか?
最後に(著者の専門外ではあるのかもしれませんが)どうやったら投票率が上がるかにも触れてくれれば完璧だったなと思い、星四つとしました。
この本はその疑問が正当であることを丁寧に解説してくれます。(かといって選挙制度を変えられるわけではありませんが…)
多数決が成り立つには1)決める対象に共通の目標がある、2)有権者の判断が正しい確率は0・5以上3)有権者は各自で判断するの3つの条件が必要。(よく「民意を問う」とぶち上げますが、そんなわけないですよね。少なくとも上記条件は日本の選挙には当てはまっていませんね。)
これらがそろわない場合にはどのような「決め方」があるのか?
同じ条件下でもなぜ「決め方」によって結果が異なってくるのか?
ではどのような「決め方」がふさわしいのか?
読み始めは難しい本なのかなと身構えましたが、事例がとにかくわかり易くあっという間に読み終えました。
パズルゲームなどがお好きな方には面白い本なのではないでしょうか?
最後に(著者の専門外ではあるのかもしれませんが)どうやったら投票率が上がるかにも触れてくれれば完璧だったなと思い、星四つとしました。
2017年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
公平な決め方を装い、「みんなの意見」を誘導できることが理解できる。本書を読んだ学級委員長は、学級会でこっそり実践してクラスを支配してみよう。
担任の先生は委員長をたしなめ、ボルダルールで決める方向に導いてあげてほしい。
担任の先生は委員長をたしなめ、ボルダルールで決める方向に導いてあげてほしい。
2017年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
友人のリコメンドもあり購入したが、もっと早く読みたかった。職場における多数決による決議や決定にどうしようもない不満を抱えていたものの、それを止める理論的な基礎もないので、流されるまま来た。この本に書かれている内容に即して、多数決ではない決定法の採用を試みたいと考えている。ただ皆に読んで貰うには少し難しいかもしれない。十分面白いのだけれど。
2017年3月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
実例が多く取り上げられていて、説得力がある。これと「岩波新書」の二冊を読んでおけば、強力な教養を手に入れることが出来ます。
2016年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書の姉妹書にあたる『多数決を疑う』も読んだが、当然ながら内容的に共通する部分が多い。
『多数決を疑う』は新書ながら理論的背景等にも言及しているのに対して、本書はむやみに深掘りすることなく浅く広く社会的選択理論を紹介しつつ、読み物としての面白さを追求している印象がある。
この点、やや物足りなさを感じなくもないが、これを専門分野として研究するわけではないので、この程度で十分と感じる。
『多数決を疑う』は新書ながら理論的背景等にも言及しているのに対して、本書はむやみに深掘りすることなく浅く広く社会的選択理論を紹介しつつ、読み物としての面白さを追求している印象がある。
この点、やや物足りなさを感じなくもないが、これを専門分野として研究するわけではないので、この程度で十分と感じる。
2016年9月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多数決とは何かについて知ることなく選挙に参加するのは危険だと改めて気付かせてくれる論考。憲法の役割についても、民主主義の暴走を止める意味もある、と理解出来た。子供に読ませたい本だ。