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幸福の政治経済学: 人々の幸せを促進するものは何か 単行本 – 2005/1/1
- 本の長さ294ページ
- 言語日本語
- 出版社ダイヤモンド社
- 発売日2005/1/1
- ISBN-10447821042X
- ISBN-13978-4478210420
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商品の説明
著者からのコメント
本書は、著者たちと他の研究者による幸福研究のまとめともなっている。これまで、個人そして社会の幸福という問題について、かくも多くの研究がなされてきたのかと、正直言って、私は驚いた。しかし、過去の幸福研究は、社会学的な色彩の濃いものが多く、仮説の提示にとどまっていた。過去の幸福研究を徹底的にサーヴェイしたうえで、それらが提起する仮説を、統計的仮説検定により反証ないし確証するのが、本書のねらいとするところである。
確かに、社会科学は「膨大な仮説の体系」に過ぎないとの批判を浴びせられることが多い。いわゆる記述統計的手法(アンケート調査の円グラフや棒グラフを描いたりすること)を用いての仮説の検証には事欠かない。とはいえ、本書に提示されるような、統計的仮説検定による検証が、数量データの豊富な経済学を別とすれば、社会研究において行なわれた例は少ない。その意味で、本書は、幸福という、あらゆる社会科学にとってレレバントな(看過できない)問題をめぐる諸仮説を、アンケート調査と経済データ、そして政治体制の差異に基づき、丹念に検証してみせたという意味で、「画期的」と評価しても過分ではあるまい。
出版社からのコメント
従来の経済学では「幸福」は非科学的な概念とされてきました。けれど、最近のさまざまな実証研究の結果、所得・失業・インフレといった経済的な諸条件が幸福にどのような影響を与えるかが解明されつつあります。さらに本書では、経済学以外の関連分野(政治学、心理学、社会学など)から得られた幸福研究の成果を統合することで、極めて説得力のある議論を展開しています。
そうした先端的な研究の成果として、金銭的な充実のみが幸福を決めるわけではないこと、より進んだ民主的な政治体制こそが人々の幸福感を高めること等を著者たちは明らかにするのです。
世界中で行われた幸福に関する各種調査データ、さらにはスイスという直接民主主義の最も発達した国におけるデータを縦横に駆使して導かれる結論には強い説得力が感じられます。
市場原理主義の限界が叫ばれる昨今、今後目指すべき方向を考えるためにも、本書の内容は極めて示唆に富んでいます。とくに、日本では戦後60年間で経済的豊かさこそ劇的に向上したものの、人々が自己申告する「幸福感」はほとんど横這いであるという記述には考えさせられます。人々の幸福にとって、経済のみならず質の高い政治がいかに重要であるかが再認識できます。
抜粋
誰もが幸福になりたいと願っている。たぶん、これほど多くの賛同を得られる人生の目標は他にないはずだ。「幸福の追求」は米国独立宣言にも謳われているし、ブータン王国は、「GNP(国民総生産)」ならぬ「GNH(国民総幸福、Gross National Happiness)」を最大化しようと努めている。
奇妙なことに、経済学者はこれまで、「幸福」というテーマに取り組むことを避けてきた。彼らは昔から、幸福など「非科学的」な概念だと考えていたからだ。代わりに彼らがミクロ経済理論の基盤としたのが「効用(utility)」(消費者が商品やサービスから得る満足度のこと)である。これは少しも具体的な内容を持たない概念だが、人間行動をうまく分析するのには役に立つ。だが、ここ数年、状況は変わりつつあり、個人が自ら表明する主観的な幸福を測定することに利点を見出す経済学者が増えつつある。
本書は、幸福について、経済学の視点からどのような研究が行なわれているかを報告するものである。私たちの知る限り、幸福と経済学とのあいだの結びつきを確立する書物は、本書が初めてである。ここでは、効用と幸福という二つの概念がどのように関連しているのかを論じ、所得・失業・インフレといったミクロ経済・マクロ経済の条件が幸福にどのような影響を与えるかを論証していく。
もっとも本書の内容が経済学に限定されていないのは確かだ。むしろ、本書の主目的の一つは、経済学の関連分野(特に心理学、社会学、政治学)から得られた洞察や実証的な結論を統合することである。幸福に関する研究は、学際的な研究が成功した数少ない例の一つと見て差し支えあるまい。
幸福は、往々にして純粋に個人的な問題だと思われている。だが本書は、それが事実に反することを主張する。個々人の幸福は、その人が生活する社会によって大きく左右される。本書の独創性は、ある国の民主化・分権化が進めば進むほど、人々の幸福は増進するという法則を実証的に示した点に見出される。
著者について
ブルーノ・S・フライ(Bruno S. Frey)
1941年スイス生れ。チューリヒ大学実証経済研究所教授。専門は公共経済学。著書『新しい経済政策』(邦訳、ダイヤモンド社)、『国際政治経済学』(邦訳、文眞堂)等。
アロイス・スタッツァー(Alois Stutzer)
1972年スイス生れ。チューリヒ大学実証経済研究所助教授。専門は公共選択、労働経済学。
[監訳者]
佐和隆光(さわ・たかみつ)
1942年生れ。東京大学経済学部卒。スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授等を経て、現在、京都大学経済研究所所長。専門は計量経済学、環境経済学。主な著書に『日本の「構造改革」』『地球温暖化を防ぐ』(以上、岩波新書)、訳書に、ギデンズ『暴走する世界』、ガルブレイス『悪意なき欺瞞』(以上、ダイヤモンド社)等がある。
[訳者]
沢崎冬日(さわさき・ふゆひ)
1967年生れ。翻訳家。主な訳書に、トンプソン『だから顧客が盗まれる』、シラー『投機バブル 根拠なき熱狂』(以上、ダイヤモンド社)、ロバーツ『インビジブルハート』(日本評論社)等がある。
登録情報
- 出版社 : ダイヤモンド社 (2005/1/1)
- 発売日 : 2005/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 294ページ
- ISBN-10 : 447821042X
- ISBN-13 : 978-4478210420
- Amazon 売れ筋ランキング: - 109,400位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 703位経済学 (本)
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著者について
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トップレビュー
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ただしその目標とするところはいずれも”効率性”という一点にあったと思います。
この作品は、そういった政治経済学に対して「幸福を実現する」という目標を置き、そこに向かうには
どうすればよいのかという一石を投じています。
GDBとか貿易収支といった生産量やお金の量を追求してきた経済学が確固たる成果をあげてきたことは事実ですが、
世の中が複雑かつ多様になった現在、豊かに便利になったからといってそれだけで”幸せ”を感じられるわけではありません。
本書は所得、失業、インフレ、といった既存の経済学のパラメータを元に、何が人の幸福に影響するかということを
アンケートなどを用いて広範囲に慎重に検証しています。何か答えを出しているわけではありませんが、
これまでの政治経済学とは検証のゴールが異なっているわけです。
検証結果によると失業率や身近な地域(村とか町といったレベル)の直接民主制が幸福と大きな相関を示すようですが、
私自身の感覚とも合っており説得力が感じられます。
非常に主観的な幸福という感情に対して、どのように実際の施策を実行していくかは今後の課題ですが、
こうしたアイデアが学問の世界で真剣に取り組まれていることに未来に対して少し安心感を覚えました。
・ 高齢者は期待や野心が低い。
・ 高齢者は、達成可能な現実的な内容に合わせて目標が改められる。
・ 高齢者は、長い時間をかけて、自分が置かれた状況に適応している。
・ 高齢者は、人生におけるマイナスな出来事を減少させるすべを身に着けている。
女性は男性に比べ、極端にプラスな感情と極端にマイナスな感情の双方を体験している。「非常に幸福である」と答える傾向も、「非常に不幸である」と答える傾向も、男性より女性の方が強い。
多くの調査によって、知性と主観的幸福の間の負の相関関係は否定されている。教育はその人の収入と高い相関関係があるが、幸福感とはほとんど関連性がない。
神を信じることと幸福の間には、正の相関関係がある。
失業率が1%上昇した場合、インフレ率を1.7%引き下げれば、その影響を相殺できる。
左翼思想の人は、インフレよりも失業に多くの関心がある。逆に、右翼思想の人は、失業率が上昇するより、インフレ率が上昇した場合に、より大きな幸福感の低下を感じる。
1793年〜1978年の間に、国家レベルで行われた住民投票は世界全体で約500件だが、そのうちの約6割(300件)はスイスで行われている。2番目に多いのはオーストラリアで、約8%(40件)である。
アメリカに関する経済研究
・ 直接民主制では、政府の歳出・歳入は共に減少する。
・ 特定多数決を必要とする住民投票制度があると、1人当たりの債務がかなり低下する。
・ 人々は、直接民主制のある地域での生活や労働に魅力を感じるので、その地域の地価は上昇する。
・ 常民投票が可能な状況では、教育に対する公的支出が増大する。
スイスに関する経済研究
・ 同じスイス国内でも、直接民主制の水準が高い周ほど、有権者の選好に密接に適応する政治が行われる。
・ 公的支出の伸びが、政治家や官僚の利害よりも、市民がその目的のために税金を納めたくなる気になるかという要因に左右される。
・ 直接民主制の水準が高いほど、公共的供給のコストが下がる。
・ 代議制民主制よりも、直接民主制の方が納税意欲が高まる。
・ 市民の直接的な政治参加の水準が高い州では、そうでない州よりも、平均所得が高い。
最終的に人々の幸福感は、経済・社会の本質的な質にかかっている。経済状態は人々の幸福に大きな影響を及ぼすが、長期的に見て経済以上に重要なのは、政治体制である。
官僚は、経済統計などから人々の幸福感を増大する要因を把握できる。しかし、このような手法によって幸福感を最大化させるのは間違いである。むしろ、幸福の増大を約束するよう憲法のルールを変える方が好ましい。
所得は、幸福感に大きな影響を与える。しかし、1人当たりの所得が1万ドルまでは幸福感は上昇するが、1万ドル以上になると、主観的幸福感にはあまり関係なくなる。
幸福は、経済・社会がどのように組織されているかに決定的に左右される。公的な意思決定に直接参加する可能性が増せば、幸福の増大に大きく貢献する。
加えて、主観的幸福とある種の規範性が相反するケースにどう対処すべきかという問題もあるように思われる。人間は、長期的な利益よりも、短期的な利益の確保に流されがちであり、幸福指標もそのような人間の行動傾向を示すこともあり得るだろう。とはいえ、主観的幸福を基準とするアプローチについては、基準そのものが社会経済の本質的な「質」を表しており、また、本書の最後に指摘されているように、それが人間行動への影響を通じて、生産性や消費水準にも影響を与え得ることも無視し得ない。
本書から得られる重要な知見として、失業による不幸ということが挙げられる。失業の不効用は、新古典派経済学者が指摘するような所得の低下という結果からよりも、失業プロセスそのものによってもたらされる要素が大きい。このことは、適切な経済・社会政策(金融政策を含む)は何かということを考える上で重要である。人間は、保険制度のみによって失業の不幸から救われるわけではなく、むしろ経済成長性を確保し、社会の活性化をもたらすような仕組みを検討していくことがより重要であるということになろうか。