数学、物理学、経済学、社会学と学問を横断した天才、小室直樹が経済学の巨匠を解説した書物。
本そのものの正当な評価を他のレビュアーがしてくれいるので、別の視点で書き記す(比較優位!)。
経済思想史での巨匠といえば、アダム・スミス、リカード、マルクス、ケインズ…となるのは当然だが、ちょっと目立たないことにすごいことが書いてある。
マックス・ウェーバーの項目で「日本はまだ近代資本主義ではない」という驚きの社会分析を行っている。
ウェーバー以前は近代資本主義の成立は、経済発展などいわゆる物質的な豊かさが条件となると考えられていた。
ウェーバーは近代資本主義の成立を、一見無縁なプロテスタントの禁欲が必須とみなし、物質ではなく「資本主義の精神」こそが条件とした。「資本主義の精神」とは以下の3つであり、その全てが日本にはまだ無いと小室博士は指摘する。
1.労動そのものを目的とし、救済の手段として尊重する精神
2.目的合理的な精神
3.利子・利潤を倫理的に正当化する精神
別の書物(危機の構造)ではこう指摘する。
日本は近代資本主義のエートス(変わりにくい心の習慣)を持たないまま経済的な発展をした。
この捻れが、危機の構造をより深刻にしている。
これが小室博士の理論の骨格である。
マックス・ウェーバーと小室博士に従えば、資本主義の精神こそが近代資本主義の必要条件であり、これを欠く日本は近代資本主義ではない。少なくとも、欧米とは全く違ったバリエーションである。
「日本と欧米は違うから、同じでなくともよい」
こういう声も聞こえそうだ。
たしかにそうだが、2017年の現在出ている問題も根本は日本が近代化していないことにあると私(評者)は考える。
2017年現在に小室理論を応用してみよう。大手企業のデータ偽装事件や長時間低賃金/ブラック企業問題として症状が出ている。働き方改革を叫び特定の経営者を糾弾するだけでは表層に絆創膏を貼っただけだ。行うべきは、最深部「資本主義の精神のインストール」→病「労働と労働力の分離/機能集団と共同体の分離」→炎症の改善「働き方改革/ブラック企業の市場からの締め出し」という順なのだ。
問題は、通常は意識出来ない最深部ある。
日本はまだ近代化していない。
だからよく見て、よく考えよう。
日本を良くしよう。近代化しよう。
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経済学をめぐる巨匠たち (Kei BOOKS) 単行本 – 2003/12/19
小室 直樹
(著)
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小室直樹の経済思想史。小室節を楽しみながら、経済学の学説がすっと頭に入ってくる。これであなたも経済学通!
- 本の長さ316ページ
- 言語日本語
- 出版社ダイヤモンド社
- 発売日2003/12/19
- ISBN-104478210454
- ISBN-13978-4478210451
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
経済学を生み出した思想とは何か-。アダム・スミスから川島武宜まで、知っておきたい経済学の思想を、小室直樹が解き明かす。普通の学者では論じきれない鋭い分析で、経済学の本質をあぶり出す。これであなたも経済学の達人!
登録情報
- 出版社 : ダイヤモンド社 (2003/12/19)
- 発売日 : 2003/12/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 316ページ
- ISBN-10 : 4478210454
- ISBN-13 : 978-4478210451
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- - 299位経済思想・経済学説 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年12月7日に日本でレビュー済み
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2010年12月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
経済学は誤解し易い学問です。
この本と経済学の教科書を一冊併用して読めば経済学を概ね理解できると思います。
表面上の理論や計算式などに惑わされ木を見て森を見ずになりやすいのです。
経済は深く複雑です。ケインズ理論の一説だけを見て経済を語っても却って本質を見失うだけです。
だからこそ、経済学は体系としての経済学、思想としての経済学を学ぶ必要があります。
その為の最良の手段は経済学の歴史を学ぶことです。
なぜなら、それは経済学の思想構築の過程であり、そして経済学の実験の歴史だからです。
経済学は自然科学のように気軽に実験は出来ません。実験対象は国家そのものですから気軽に出来ませんし、時間もかかります。
ですから、過去の経済問題を理論的に分析するとどうなるのか?理論を実践した結果実際どうなったのか?資本主義は今までどのような問題が発生しどのように解決してきたのか?というということを『歴史から学ぶ必要がある』わけです。
この本はそのをザックリ語ってくれています。
思考と口調には独特の癖がありますがそれは受け入れましょう、本を読むときは筆者に反発してはいけません。
また12-15まで日本の学者を紹介してますが、それほど重要ではないのでトリビア程度で読み飛ばしていいと思います。
唯一の問題は、雑誌連載の内容を編集して作られたため、内容に重複があったり論理の順序が逆になってることが多くそれがテンポを悪くしています。まあ重複してたら『それほど重要なんだな』と軽く読み飛ばすくらいでいいと思います。
この本と経済学の教科書を一冊併用して読めば経済学を理解できると思いますが、一般の方が経済学を学びたいと思われたらまずはこの本を読むことをお勧めします。
経済学が何のための学問でどのように考えているのかを知ることが何よりも重要だと思うからです。
この本と経済学の教科書を一冊併用して読めば経済学を概ね理解できると思います。
表面上の理論や計算式などに惑わされ木を見て森を見ずになりやすいのです。
経済は深く複雑です。ケインズ理論の一説だけを見て経済を語っても却って本質を見失うだけです。
だからこそ、経済学は体系としての経済学、思想としての経済学を学ぶ必要があります。
その為の最良の手段は経済学の歴史を学ぶことです。
なぜなら、それは経済学の思想構築の過程であり、そして経済学の実験の歴史だからです。
経済学は自然科学のように気軽に実験は出来ません。実験対象は国家そのものですから気軽に出来ませんし、時間もかかります。
ですから、過去の経済問題を理論的に分析するとどうなるのか?理論を実践した結果実際どうなったのか?資本主義は今までどのような問題が発生しどのように解決してきたのか?というということを『歴史から学ぶ必要がある』わけです。
この本はそのをザックリ語ってくれています。
思考と口調には独特の癖がありますがそれは受け入れましょう、本を読むときは筆者に反発してはいけません。
また12-15まで日本の学者を紹介してますが、それほど重要ではないのでトリビア程度で読み飛ばしていいと思います。
唯一の問題は、雑誌連載の内容を編集して作られたため、内容に重複があったり論理の順序が逆になってることが多くそれがテンポを悪くしています。まあ重複してたら『それほど重要なんだな』と軽く読み飛ばすくらいでいいと思います。
この本と経済学の教科書を一冊併用して読めば経済学を理解できると思いますが、一般の方が経済学を学びたいと思われたらまずはこの本を読むことをお勧めします。
経済学が何のための学問でどのように考えているのかを知ることが何よりも重要だと思うからです。
2014年7月23日に日本でレビュー済み
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大学に進学して何を学ぼうか迷っている人は、コレを読んで参考にしましょう。
2017年11月9日に日本でレビュー済み
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副島隆彦、宮台真司、橋爪大三郎の師匠・小室直樹の経済学入門。むかし光文社から新書で出た「国民のための」ケインズ入門はなかなか良かったが、もっと分かりやすくできるのではないかとも感じた。今回も同様の読後感。
歴史的な順序は無視して、ローザンヌ学派&ヒックスの一般均衡論(=数理科学になった経済学)からスミス&マンデヴィル&ベンサムの18世紀英国自由主義思想(=自然言語による、思想としての経済学。サミュエルソンが言うところの『文章経済学』)へとさかのぼり、「好況(=セイの法則成立時)の経済学つまり王道(古典派)」の批判者=異端としてのケインズ、マルクス、シュンペーターの学説紹介へと至る、という構成で書けばもっと良くなったと思う。異端者が生誕順ではなく上記のような順で書かれる理由は、ケインズが「不況から好況へ(不況対策論)」、マルクスが「好況から不況へ(恐慌必然論)」、シュンペーターが「(以上のような)景気の波を一歩引いて見た経済史全体」を考察したからだ。
(追記)森嶋通夫についての章で、「アロー&ドゥブローがセイ法則を前提とした一般均衡の存在証明をし、ケインズがセイ法則が成立していないと一般均衡も不成立だと証明し、両者は矛盾する」というような記述があったが、べつに矛盾しないでしょう。もちろん言いたいことはわかる。著者が言いたかったのは「一般均衡は成立し、かつ、成立しない」というのはアンチノミー(二律背反)で、その矛盾を解消するるために、セイ法則という条件の成否が見いだされるということなんだろうけど、理学部数学科卒の著者なんだから、ここはもうちょっと厳密に記述してほしい。冒頭の「セイ法則を前提とした」に「暗黙に」とでも付け加えればギリギリセーフになるという感じか。
歴史的な順序は無視して、ローザンヌ学派&ヒックスの一般均衡論(=数理科学になった経済学)からスミス&マンデヴィル&ベンサムの18世紀英国自由主義思想(=自然言語による、思想としての経済学。サミュエルソンが言うところの『文章経済学』)へとさかのぼり、「好況(=セイの法則成立時)の経済学つまり王道(古典派)」の批判者=異端としてのケインズ、マルクス、シュンペーターの学説紹介へと至る、という構成で書けばもっと良くなったと思う。異端者が生誕順ではなく上記のような順で書かれる理由は、ケインズが「不況から好況へ(不況対策論)」、マルクスが「好況から不況へ(恐慌必然論)」、シュンペーターが「(以上のような)景気の波を一歩引いて見た経済史全体」を考察したからだ。
(追記)森嶋通夫についての章で、「アロー&ドゥブローがセイ法則を前提とした一般均衡の存在証明をし、ケインズがセイ法則が成立していないと一般均衡も不成立だと証明し、両者は矛盾する」というような記述があったが、べつに矛盾しないでしょう。もちろん言いたいことはわかる。著者が言いたかったのは「一般均衡は成立し、かつ、成立しない」というのはアンチノミー(二律背反)で、その矛盾を解消するるために、セイ法則という条件の成否が見いだされるということなんだろうけど、理学部数学科卒の著者なんだから、ここはもうちょっと厳密に記述してほしい。冒頭の「セイ法則を前提とした」に「暗黙に」とでも付け加えればギリギリセーフになるという感じか。
2022年12月11日に日本でレビュー済み
小室さんは本書の中で、「ノーベル賞に最も近い日本人」として森嶋道夫の業績を概説している。その中で「余談になるが、森嶋教授の授業の遣り方は教育者として真に独創的であった。阪大の大学院では私(=小室)と他に一人、特に良くできる大学院生だけを選び出して他の学生とは違った特別学級を作って特訓する事になった。理由は、こうして別に教育した方が効果的であるからだと言われた。・・・」(p254)
これに対応する記述が森嶋教授の著書『終わりよければすべてよし』にある。「小室は私の阪大時代の大学院の学生であった。能力のある人で、絶大な努力家で、将来名をなす人だと私は思っていた。しかし思想的には、大違いの人であることを意識していた。・・・彼は政治好きの奇人である。・・・小室が政界に出て行かなかったのは、ちょっと不思議である」(p99,100)。
これに対応する記述が森嶋教授の著書『終わりよければすべてよし』にある。「小室は私の阪大時代の大学院の学生であった。能力のある人で、絶大な努力家で、将来名をなす人だと私は思っていた。しかし思想的には、大違いの人であることを意識していた。・・・彼は政治好きの奇人である。・・・小室が政界に出て行かなかったのは、ちょっと不思議である」(p99,100)。
2013年12月9日に日本でレビュー済み
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近代経済学を導いた巨匠たちによって、経済の繁栄がもたらされているのだということが教えてもらえました。
2010年7月11日に日本でレビュー済み
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恥ずかしながら経済学というのが近代資本主義のみを研究した学問であることすら
知らなかった私ですが、経済学がどのような学問であり、この学問が興って以来の
大まかな流れは掴むことができた。小室直樹の本は何度も読んで内容を腑に落とし
込まなければ簡単に消化できるものではない。また、再読再々読にも耐え得る内容
のものである。無学な私のようなものでも興味深く最後まで読み通すことが出来、
まさに国民啓蒙化、小室直樹先生と呼ばせて頂きたいくらいである。
日本の資本主義は実は本来の近代資本主義とはかけ離れたものであることを知った。
私的所有の概念が実はキリスト教から起ったというのは驚くべきことである。
知らなかった私ですが、経済学がどのような学問であり、この学問が興って以来の
大まかな流れは掴むことができた。小室直樹の本は何度も読んで内容を腑に落とし
込まなければ簡単に消化できるものではない。また、再読再々読にも耐え得る内容
のものである。無学な私のようなものでも興味深く最後まで読み通すことが出来、
まさに国民啓蒙化、小室直樹先生と呼ばせて頂きたいくらいである。
日本の資本主義は実は本来の近代資本主義とはかけ離れたものであることを知った。
私的所有の概念が実はキリスト教から起ったというのは驚くべきことである。
2008年10月18日に日本でレビュー済み
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私は自然科学の分野の研究者で、経済に関してはまったくの素人です。
アメリカそしてヨーロッパと海外での生活を10年以上しているうちに
今日の世界情勢について非常に興味を持つようになりました。
世界情勢を語るにおいて「経済」というのものは「宗教」とならんで不可欠なものだと思います。門外漢の私がまず手にしたのが小室氏の
経済学のエッセンス―日本経済破局の論理 (講談社プラスアルファ文庫) と本書でした。
絶妙な小室節で綴られた「経済学のエッセンス」において、経済へのイントロ(究極に簡素化された経済モデル)を学びつつ、「経済学」への興味を更に一層そそられた後、本書において本物の経済学への入門を学べます。
古典派から始まり、ケインズの出現、サミュエルソンの功績、そして近代資本主義の発展の起源を突き詰めたヴェーバーの大偉業など、実にわかりやすく教えてくれます。本書を読んだ今、サミュエルソンの 経済学 (上) が読みたくて仕方がありません。
アメリカそしてヨーロッパと海外での生活を10年以上しているうちに
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世界情勢を語るにおいて「経済」というのものは「宗教」とならんで不可欠なものだと思います。門外漢の私がまず手にしたのが小室氏の
経済学のエッセンス―日本経済破局の論理 (講談社プラスアルファ文庫) と本書でした。
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