この本は素晴らしい。確かに本文中にスキナーを引用しないのは重罪だと思う。しかし、行動分析の手法を実に自然にビジネスの文脈に持ち込んでいる点で、読者にはありがたい。それだけではなく、若者が一分間マネージャーの企業を訪ねて、3人の社員に3つの秘訣を学び、最後に一分間マネージャーと質問のやり取りをするという物語として描かれているため、ワクワクしながら読み進めることができる。
内容は極めてシンプル。「目標設定」、「称賛」、「叱責」のみ。しかし、これだけ身に付ければ、最低限のマネージメントは出来るように感じる。ビジネスの文脈だけでなく、子育てや学校教育でも応用できる内容だと思う。特に叱責は、感情的に行うものではなく、事実を伝え、納得してもらってから、行動は避難したが人間としては認めているというステップを踏んで行われる。本書が出版された1983年以降、「叱り方」に関する本は数多くあるが、未だかつてそれをたった13ページで説明したものはあっただろうか…
最終的にはこの三点がフローチャートの形にまとめられる。このフローチャートは現在コーチングの手法として言われているものに少なからず影響を与えている気がする。コーチングでは、クライアントに本当の意味での気づきや変化を促すには、時にコーチは厳しいことを毅然と伝えなくてはならないと言われることがあるが、これは本書で言われている叱責とは全く違う。一分間マネージャーはあくまでクライアント、部下の主体性と人間としての尊厳を認めている。
本書を読めば行動主義に基づくアプローチがいかに人間味に欠けるものでは「なく」、クライアントを尊重したアプローチであるかが分かる。
おまけに、訳者のあとがきが素晴らしい。スキナーに触れているのはもちろんのこと、著者のケネス・ブランチャード博士が感受性訓練（Tグループ）の手法をチーム・ビルディングに応用したアメリカ国立トレーニング研究所の学徒の一人であり、後にポール・ハーシー博士と共に状況論的リーダーシップ論を普及させた人物であると紹介されている。
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