ソフトウェア企業の競争戦略(原題:The Business of Software)は、MIT(マサチューセッツ工科大学)スローン経営大学院教授のマイケル A.クスマノによる著書である。
著者はもともと70年代後半から、特に自動車の設計と製造に関する、日本の製造管理と品質管理の技術を研究していた。日本の製造業が急成長し、日米の貿易摩擦が顕在化し始めた時期である。
そんな中、著者は自動車の次に日本が挑戦するのはコンピュータ・ソフトウェアだろうと考え、日本企業が大規模な商業用ソフトウェア・システムをどのように構築しているか、すでに日本人が確立しているハードウェアのスキルに高度化されたソフトウェア・スキルをいかに追加しようとしているか、を研究し始めた。
研究を進めるうち、著者は、ソフトウェアが戦略と管理の面で特別な問題をはらむ独特のビジネスであると認識するに至る。85年のことだという。
本書は、著者の20年近くにわたるソフトウェア業界の研究、数十ものソフトウェア企業や組織へのコンサルタントとしてのかかわり合い、さらには1997年から続けられているMITでの「ソフトウェア・ビジネス」クラスでの教育経験から得られた観察をまとめたものである。
第1章には本書の概要を記してある。ソフトウェア・ビジネスが他のビジネスと異なっている点、技術としてのソフトウェア、日本企業からマイクロソフトに至る研究、欧米企業と日本企業の重要な違いについてまとめ、また、ソフトウェア・ビジネスの典型的な事例として、仏ビジネスオブジェクツと米i2テクノロジーズの2社を紹介している。
第2章では、ソフトウェア企業のとるべき戦略について述べている。製品企業なのかサービス企業なのか、ターゲットは個人か法人か、マスかニッチか、水平的か垂直的か、メインストリームを狙うのかキャズムを回避するのか、マーケットリーダーかフォロワーか補完製品メーカーか、会社にどのような特徴を持たせたいのか、といった問いが投げかけられている。
第3章は、ソフトウェアビジネスの歴史である。過去を研究する事で進むべき方向についての示唆を得られるとしている。1950年代にはハードウェアを販売する事が主目的でソフトウェアは付属品であった。独立したソフトウェア製品のビジネスが登場するのは60年代である。70年代に新しいプラットフォーム「PC」が出現する。「ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)」という次のプラットフォームが90年代に現れる。この歴史を踏まえて、第4章以下で、次のビジネスチャンスがどこにあるのかを問うていく。
第4章では、ソフトウェア開発のベスト・プラクティスと銘打って、ソフトウェア開発を最適管理するにはどのようにしたら良いか考察している。ソフト開発で繰り返し発生している問題と、多くのソフトウェア・ファクトリーを通して試みられている技術の構造化、およびソフトウェア工学分野での取り組みについて紹介しつつ、それが誤った考え方を導くことになったと指摘し、重要になってくるのは繰り返しのプロセスを生み出そうというSEIの概念や、頻繁な同期と周期的な安定化だと結論づけている。
第5章は、ソフトウェア起業家精神についてである。製品開発の視点にとどまらず、とりわけ戦略とビジネスモデルにまで視点を広げ、ソフトウェアのスタートアップ企業を成功裏に設立するために本書の内容がどう当てはまるかを考察している。
第6章は、スタートアップ10社のケーススタディである。筆者が取締役、顧問、コンサルタントとして知るところとなったスタートアップ企業10社について、成功企業、失敗企業、現段階ではまだ何ともいえない企業の3つに分類して述べている。
最後に第7章で、ソフトウェアのスタートアップ企業にとって「理想的」もしくは「ベストの」モデルは何かを一般化することは考慮すべき変数があまりにも多く難しいとしつつも、少なくとも法人向けソフトウェア企業の場合、ビジネスモデルの判断基準は製品企業、サービス企業、ハイブリッド企業のどれを目指すのかという1つに帰結できると結んでいる。
ソフトウェア開発に関する本は、開発手法やプロジェクト管理についてのものはそれこそ掃いて捨てるほどあるのだが、ビジネスという視点から論じているものは驚くほど少ない(大きめの本屋でコンピュータ関連の棚を見てみればわかるだろう)。ソフトウェア企業の競争戦略は、ソフトウェアをビジネスの面から論じた数少ない本であり、かつ、内容としても非常に優れた良書である。
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ソフトウエア企業の競争戦略 単行本 – 2004/12/1
ソフトウエア企業と産業の長年の研究に基づいて、以下のような独自性のある分析を行なっています。
・ 激しい市場変化に、スピーディに対応して、ソフトウエアを開発するために、マイクロソフトは、『同期安定化プロセス』という開発システムを構築した。これは、品質重視の「日本型モノ作り」とは異なり、「ほどほどの品質」ではあるが、“ハッカー的創造性”を発揮して開発することが重要なソフトウエア産業では、非常に強い競争優位となる。逆に言えば、日本企業がソフトウエア産業で競争力がないのは、この産業の競争構造に適合できていないためである。
・ このメリットは、「モジュール型モノ作り」によって達成される。マイクロソフトなどアメリカ企業は、それをいち早く理解し、実践している。
・ 同様に、ソフトウエア産業では、創造力のある起業家が重要なプレーヤーとなるが、それを生み出す気質をアメリカ人は備え、それを伸ばす風土がアメリカにはある。それは、ソフトウエアを“ビジネス”として捉える気質である。日本やヨーロッパは、それを欠いている。
・ ソフトウエア製品企業として誕生しても、激しい競争を勝ち抜くためには、自社の経営資源を鑑み、場合によってはサービス企業やハイブリッド企業として、競争環境に適応していく必要がある。
その他、ハイテク・ベンチャーの“キャズム”克服策など、市場の徹底分析と深い洞察に基づいて、ソフトウエア産業としては初めての競争戦略論と言えると存じます。日本にとっても非常に重要なソフトウエア産業で、日本企業の競争力強化の一助になるかとも存じます。
・ 激しい市場変化に、スピーディに対応して、ソフトウエアを開発するために、マイクロソフトは、『同期安定化プロセス』という開発システムを構築した。これは、品質重視の「日本型モノ作り」とは異なり、「ほどほどの品質」ではあるが、“ハッカー的創造性”を発揮して開発することが重要なソフトウエア産業では、非常に強い競争優位となる。逆に言えば、日本企業がソフトウエア産業で競争力がないのは、この産業の競争構造に適合できていないためである。
・ このメリットは、「モジュール型モノ作り」によって達成される。マイクロソフトなどアメリカ企業は、それをいち早く理解し、実践している。
・ 同様に、ソフトウエア産業では、創造力のある起業家が重要なプレーヤーとなるが、それを生み出す気質をアメリカ人は備え、それを伸ばす風土がアメリカにはある。それは、ソフトウエアを“ビジネス”として捉える気質である。日本やヨーロッパは、それを欠いている。
・ ソフトウエア製品企業として誕生しても、激しい競争を勝ち抜くためには、自社の経営資源を鑑み、場合によってはサービス企業やハイブリッド企業として、競争環境に適応していく必要がある。
その他、ハイテク・ベンチャーの“キャズム”克服策など、市場の徹底分析と深い洞察に基づいて、ソフトウエア産業としては初めての競争戦略論と言えると存じます。日本にとっても非常に重要なソフトウエア産業で、日本企業の競争力強化の一助になるかとも存じます。
- 本の長さ445ページ
- 言語日本語
- 出版社ダイヤモンド社
- 発売日2004/12/1
- ISBN-104478374813
- ISBN-13978-4478374818
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
ソフトウエア企業の競争戦略
Microsoft社やIBM社を代表とするソフトウエア産業に焦点を当て,競争戦略の現状を横断的に解説する。著者が個人的,あるいは顧問やコンサルタント等として係わった多数のスタートアップ企業についての,経営方針やビジネスの推移の分析が興味深い。ソフト製品のビジネスについての考察では,歴史をひも解きながら収益の源泉がサービスへと移る様を示すとともに,Red Hat社やVA Linux Software社をはじめとするオープンソース企業の動きにも触れ,それら企業が2002~2003年時点では大した利益が出ていない状況を紹介する。
Microsoft社やIBM社を代表とするソフトウエア産業に焦点を当て,競争戦略の現状を横断的に解説する。著者が個人的,あるいは顧問やコンサルタント等として係わった多数のスタートアップ企業についての,経営方針やビジネスの推移の分析が興味深い。ソフト製品のビジネスについての考察では,歴史をひも解きながら収益の源泉がサービスへと移る様を示すとともに,Red Hat社やVA Linux Software社をはじめとするオープンソース企業の動きにも触れ,それら企業が2002~2003年時点では大した利益が出ていない状況を紹介する。
(日経Linux 2005/04/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
-- 日経BP企画
出版社からのコメント
MITスローン経営大学院(通称MITスローンスクール)のマイケル・クスマノ教授の“The Business of Software”(2004年3月発行)の翻訳書です。同社のアマゾンでの書評は好評です。クスマノ教授は、日本の自動車産業などを長く研究された後、ハイテク企業の研究に移りました。特に、マイクロソフトについては深く同社に入りこみ、“Microsoft Secrets”として発表し、世界的に話題を呼びました。邦訳は、『マイクロソフト・シークレット─勝ち続ける驚異の経営』(日本経済新聞社)です。
本書は、上記のような長年にわたるハイテク企業(特にソフトウエア企業)の研究の集大成と言えます。この分野では競争力がないと言われる日本企業にとっては、示唆に富んだ戦略本と言えると思います。
本書は、上記のような長年にわたるハイテク企業(特にソフトウエア企業)の研究の集大成と言えます。この分野では競争力がないと言われる日本企業にとっては、示唆に富んだ戦略本と言えると思います。
著者について
マイケル A.クスマノ Michael A. Cusumano
MIT(マサチューセツツ工科大学)スローン・スクール・マネジネメント教授。ソフトウエア開発やソフトウエア企業の経営論の権威。主にハイテク産業で世界の主要企業のコンサルタントや取締役なども務める。1954年生まれ。ハーバード大学博士号。主な著書(邦訳)に、『食うか食われるか マイクロソフトVSネットスケープ』(毎日新聞社、2002年)、『マイクロソフト・シークレット─勝ち続ける経営の脅威』(日本経済新聞社、1996年)、『日本のソフトウェア戦略』(三田出版会、1993年) 、Platform Leadership: How Intel, Microsoft, and Cisco Drive Industry Innovation(Annabelle Gawer との共著、Harvard Business School Press、2002)などがある。
サイコム・インターナショナルCICOM International
1996年設立のビジネスパーソン研修会社。本社は東京麹町。グローバル組織のリーダー育成を目的として英語で海外MBAスタイルの講座を提供するCICOM Schoolと、技術系ビジネスリーダー育成を目的としてMIT(マサチューセッツ工科大学)スローンスクールとの提携によるエグゼクティブMOTプログラムを運営する。また、約80社から社内マネジメント研修の開発と実施も受託している。特に、言語の異なるグローバル規模でのマネジメント研修の提供に強みを持つ。
MIT(マサチューセツツ工科大学)スローン・スクール・マネジネメント教授。ソフトウエア開発やソフトウエア企業の経営論の権威。主にハイテク産業で世界の主要企業のコンサルタントや取締役なども務める。1954年生まれ。ハーバード大学博士号。主な著書(邦訳)に、『食うか食われるか マイクロソフトVSネットスケープ』(毎日新聞社、2002年)、『マイクロソフト・シークレット─勝ち続ける経営の脅威』(日本経済新聞社、1996年)、『日本のソフトウェア戦略』(三田出版会、1993年) 、Platform Leadership: How Intel, Microsoft, and Cisco Drive Industry Innovation(Annabelle Gawer との共著、Harvard Business School Press、2002)などがある。
サイコム・インターナショナルCICOM International
1996年設立のビジネスパーソン研修会社。本社は東京麹町。グローバル組織のリーダー育成を目的として英語で海外MBAスタイルの講座を提供するCICOM Schoolと、技術系ビジネスリーダー育成を目的としてMIT(マサチューセッツ工科大学)スローンスクールとの提携によるエグゼクティブMOTプログラムを運営する。また、約80社から社内マネジメント研修の開発と実施も受託している。特に、言語の異なるグローバル規模でのマネジメント研修の提供に強みを持つ。
登録情報
- 出版社 : ダイヤモンド社 (2004/12/1)
- 発売日 : 2004/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 445ページ
- ISBN-10 : 4478374813
- ISBN-13 : 978-4478374818
- Amazon 売れ筋ランキング: - 481,167位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 292位情報・コンピュータ産業
- カスタマーレビュー:
著者について
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2010年4月18日に日本でレビュー済み
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2005年2月14日に日本でレビュー済み
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約450ページにわたって、ソフトウエア企業の戦略から方法論、そして精神論に至るまで、事例を中心に事細かに解説されています。著者自身がMITの教授であると同時に、コンサルタントや取締役として活躍されていることもあり、1つ1つの事例(ケーススタディ)が非常に示唆に富んでおり、説得力があるものになっています。
ソフトウエア企業の経営者だけでなく、ソフトウエア企業に何らかの形で携わっている方全てにお勧めできます。
ただ読みやすさという観点から言いますと、難しいと言うほどではありませんが、入門書のように気軽に読めるものでもありません。ある程度腰を落ち着けて読む必要があると思います。最も、それだけ内容が濃いとも言えます。
あと日本語訳に関して多少誤植があったことが残念です。
ソフトウエア企業の経営者だけでなく、ソフトウエア企業に何らかの形で携わっている方全てにお勧めできます。
ただ読みやすさという観点から言いますと、難しいと言うほどではありませんが、入門書のように気軽に読めるものでもありません。ある程度腰を落ち着けて読む必要があると思います。最も、それだけ内容が濃いとも言えます。
あと日本語訳に関して多少誤植があったことが残念です。
2005年1月11日に日本でレビュー済み
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米MITのビジネス・スクール、スローン・スクール・オブ・マネジメントのクスマノ教授が、数十年に渡るソフトウェア業界の分析、社外取締役としての経営参画などの知見を踏まえて、文字通り、ソフトウェア業界、ソフトウェア産業に特化した包括的な企業戦略理論を集大成した。貴重な一冊である。
本書のスコープは、産業構造から、経営戦略、製造プロセス、マーケティングと、ソフトウェア業界のビジネス全体に渡るものとなっている。
これまでは、経営戦略論にせよ、製造プロセス-品質管理手法、マーケティングのどれひとつとっても、モノ関連の業界をベースとして構築された理論体系を、ソフトウェア産業の場合には云々ということで、ぴったりとフィットしないけれど、何とか押し込める。そんなやり方をとらざるを得なかった。この一冊からは、そういうやり方も変わることだろう。
ソフトウェア産業のプレイヤー、あり方が製品企業、サービス企業、ハイブリッド・ソリューション企業と分類される。起業から成長それぞれのフェーズにおいて、どの分類のビジネスを行うかによって、成功の鍵も、戦略も異なるという視点が提示されている。さらに、起業段階における現実的な選択肢は、製品とサービスの双方を有するハイブリッド・ソリューション企業としてのあり方であると踏み込んだ提起も行っている。
また、相当の紙数をソフトウェア開発のベスト・プラクティスに割かれており、具体的な開発手法の指針も示される。いわゆる戦略論だけの本とも、ビジネスモデルだけの本とも異なる価値がこの一冊にある。
ソフトウェアで起業する人も、エスタブリッシュトな企業の経営者も従業員も、ユーザ企業も学生さんも。それぞれに読んで得るところが大きいに違いない。
英語版が刊行されたのが2004年の2月。これだけの踏み込んだ内容を一年以内で訳出された翻訳関係者の力を評価したい。
本書のスコープは、産業構造から、経営戦略、製造プロセス、マーケティングと、ソフトウェア業界のビジネス全体に渡るものとなっている。
これまでは、経営戦略論にせよ、製造プロセス-品質管理手法、マーケティングのどれひとつとっても、モノ関連の業界をベースとして構築された理論体系を、ソフトウェア産業の場合には云々ということで、ぴったりとフィットしないけれど、何とか押し込める。そんなやり方をとらざるを得なかった。この一冊からは、そういうやり方も変わることだろう。
ソフトウェア産業のプレイヤー、あり方が製品企業、サービス企業、ハイブリッド・ソリューション企業と分類される。起業から成長それぞれのフェーズにおいて、どの分類のビジネスを行うかによって、成功の鍵も、戦略も異なるという視点が提示されている。さらに、起業段階における現実的な選択肢は、製品とサービスの双方を有するハイブリッド・ソリューション企業としてのあり方であると踏み込んだ提起も行っている。
また、相当の紙数をソフトウェア開発のベスト・プラクティスに割かれており、具体的な開発手法の指針も示される。いわゆる戦略論だけの本とも、ビジネスモデルだけの本とも異なる価値がこの一冊にある。
ソフトウェアで起業する人も、エスタブリッシュトな企業の経営者も従業員も、ユーザ企業も学生さんも。それぞれに読んで得るところが大きいに違いない。
英語版が刊行されたのが2004年の2月。これだけの踏み込んだ内容を一年以内で訳出された翻訳関係者の力を評価したい。
2005年7月17日に日本でレビュー済み
ソフトウェアをビジネスとする企業が取るべき戦略について米国の事例研究を元に語っている。
開発プロセスのベスト・プラクティスについてもマイクロソフト、IBMやSEIを例に取り上げていて、
非常に参考にできる。
ページ数が多く、読み応えがあることがいい点でもあり、一気に読めないため難点でもある。
(そのため評価を下げました。再度読むと評価はひとつ上がるかもしれません。)
自社の置かれている立場により、参考にできる度合いが異なると思うが、多くの日本の
ソフトウェア企業に欠けている戦略面の視点が得られるのでは。
開発プロセスのベスト・プラクティスについてもマイクロソフト、IBMやSEIを例に取り上げていて、
非常に参考にできる。
ページ数が多く、読み応えがあることがいい点でもあり、一気に読めないため難点でもある。
(そのため評価を下げました。再度読むと評価はひとつ上がるかもしれません。)
自社の置かれている立場により、参考にできる度合いが異なると思うが、多くの日本の
ソフトウェア企業に欠けている戦略面の視点が得られるのでは。
2005年2月14日に日本でレビュー済み
大きく3つでしょうか。
1つは、製品開発型の企業、サービスを提供する企業、その両方を提供する企業にわけて、その戦略(市場、企業の方向はどうあるべきか、競争戦略、資源の蓄積など)等を歴史を振り返りながら、分析しています。また、各タイプの企業が、今後どうあるべきか、の意見が述べられています。
2つめは、本職のソフトウエア開発を成功させるには、どのような組織で開発手法を取ればよいのか、をマイクロソフトやネットスケープ、IBM、日本企業の例等を引き、分析してあります。
3つめは、ソフトウエアのベンチャー企業が成功するためには?というものです。筆者がかかわった企業の事例が10個ほど詳細に解説され、その中で、筆者達の考えた成功のためのチェックリストがどれだけ有効化を検証し、また、成功要因を探ります。
その他、海外へのアウトソーシングの話題等もあります。日本企業の開発手法や、これまでの戦略について、触れられているところが多かったです。
個人的には、マイクロソフト等のソフトウエア開発の様子が、リアルに描かれていて、参考になりました。
経営等の前提知識は、あった方が良いですが、なくても楽しく読めます。SEさんにも、参考になるところが多々あるのでは、ないでしょうか。
1つは、製品開発型の企業、サービスを提供する企業、その両方を提供する企業にわけて、その戦略(市場、企業の方向はどうあるべきか、競争戦略、資源の蓄積など)等を歴史を振り返りながら、分析しています。また、各タイプの企業が、今後どうあるべきか、の意見が述べられています。
2つめは、本職のソフトウエア開発を成功させるには、どのような組織で開発手法を取ればよいのか、をマイクロソフトやネットスケープ、IBM、日本企業の例等を引き、分析してあります。
3つめは、ソフトウエアのベンチャー企業が成功するためには?というものです。筆者がかかわった企業の事例が10個ほど詳細に解説され、その中で、筆者達の考えた成功のためのチェックリストがどれだけ有効化を検証し、また、成功要因を探ります。
その他、海外へのアウトソーシングの話題等もあります。日本企業の開発手法や、これまでの戦略について、触れられているところが多かったです。
個人的には、マイクロソフト等のソフトウエア開発の様子が、リアルに描かれていて、参考になりました。
経営等の前提知識は、あった方が良いですが、なくても楽しく読めます。SEさんにも、参考になるところが多々あるのでは、ないでしょうか。
2004年12月3日に日本でレビュー済み
原書を読みましたが、真の意味で「示唆に富んだ本」と言えると思います。
マイクロソフトがなぜここまで勝ち得たか、ネットスケープは何を誤ったか、多くの工業製品で競争力のある日本企業であるのに、なぜソフトウェアではダメなのか、読んで納得の行く内容です。
ただ、実は、この本がもっとも為になるのは、ソフト企業の起業家や、起業家を目指すプログラマーの方でしょう。米国では、そういう人が日本よりも多いので、彼らが生き残るための戦略がたっぷり書かれている後半は、米国で、よりニーズが高いように思われます。
しかし、こうしたニーズも、少しずつ日本でも生まれているはず。そうでないと、ソフトの世界はこれからも米国企業に牛耳られ続けるのではないでしょうか。というようなことを読みながら思いました。
若きプログラマーにこそ読んで欲しい。
翻訳が発行されたことが喜ばしい!
マイクロソフトがなぜここまで勝ち得たか、ネットスケープは何を誤ったか、多くの工業製品で競争力のある日本企業であるのに、なぜソフトウェアではダメなのか、読んで納得の行く内容です。
ただ、実は、この本がもっとも為になるのは、ソフト企業の起業家や、起業家を目指すプログラマーの方でしょう。米国では、そういう人が日本よりも多いので、彼らが生き残るための戦略がたっぷり書かれている後半は、米国で、よりニーズが高いように思われます。
しかし、こうしたニーズも、少しずつ日本でも生まれているはず。そうでないと、ソフトの世界はこれからも米国企業に牛耳られ続けるのではないでしょうか。というようなことを読みながら思いました。
若きプログラマーにこそ読んで欲しい。
翻訳が発行されたことが喜ばしい!
2005年1月6日に日本でレビュー済み
良書である。
20年以上にわたってソフトウェア開発およびその開発技術の研究に従事した筆者の経験からみても本書は実証的で説得力がある。
これまでの経験の中で見出してきたソフトウェア開発に関する自分の信念や知見と同じ記述が随所にあり、これらが間違っていなかったことが本書によって確信できたことが何よりもうれしい。
また日本のソフトウェア産業の実力を欧米インドと比較して客観的かつ正確に評価していることも好感が持てる。
日本のソフト産業を一方的に輸入超過で国際競争力がないなどと自虐的に批評することで満足している日本のソフトウェア産業の関係者にこそ本書を読んでもらいたい。
とくに第4章ではソフトウェア開発のベストプラクティスとしてマイクロソフトの同期安定化プロセスの有効性を分かりやすく紹介している。同時に従来のソフトウェアファクトリのよい点も示すなど慎重な記述にも学術的な客観性があって卒がない。
どんな開発手法にも限界がある。同期安定化プロセスを採用しているマイクロソフトが、なぜ組み込み系分野で日本のTRONと連携する戦略をとったか?
またICカード分野でWfSC(Windows for Smart Card)からマイクロソフトがなぜ撤退したか?
本書では触れられていないが、
この理由はこれらの分野がハードと分離が困難であり、good enough(ほどほどの品質)ソフトウェアでは成功した同期安定化プロセスではこれらのソフトウェアで必要な品質を実現できなかったからではないのか?
これらについてもぜひ著者の見解を聞きたくなった。
いずれにしても本書は実践に裏打ちされた有用なアイデアに満ちているだけでなく、高度な内容を平易かつ重厚に解説しており、座右において繰り返し読む価値がある。
ソフトウェアビジネスに携わるものにとっては必読の書である。
20年以上にわたってソフトウェア開発およびその開発技術の研究に従事した筆者の経験からみても本書は実証的で説得力がある。
これまでの経験の中で見出してきたソフトウェア開発に関する自分の信念や知見と同じ記述が随所にあり、これらが間違っていなかったことが本書によって確信できたことが何よりもうれしい。
また日本のソフトウェア産業の実力を欧米インドと比較して客観的かつ正確に評価していることも好感が持てる。
日本のソフト産業を一方的に輸入超過で国際競争力がないなどと自虐的に批評することで満足している日本のソフトウェア産業の関係者にこそ本書を読んでもらいたい。
とくに第4章ではソフトウェア開発のベストプラクティスとしてマイクロソフトの同期安定化プロセスの有効性を分かりやすく紹介している。同時に従来のソフトウェアファクトリのよい点も示すなど慎重な記述にも学術的な客観性があって卒がない。
どんな開発手法にも限界がある。同期安定化プロセスを採用しているマイクロソフトが、なぜ組み込み系分野で日本のTRONと連携する戦略をとったか?
またICカード分野でWfSC(Windows for Smart Card)からマイクロソフトがなぜ撤退したか?
本書では触れられていないが、
この理由はこれらの分野がハードと分離が困難であり、good enough(ほどほどの品質)ソフトウェアでは成功した同期安定化プロセスではこれらのソフトウェアで必要な品質を実現できなかったからではないのか?
これらについてもぜひ著者の見解を聞きたくなった。
いずれにしても本書は実践に裏打ちされた有用なアイデアに満ちているだけでなく、高度な内容を平易かつ重厚に解説しており、座右において繰り返し読む価値がある。
ソフトウェアビジネスに携わるものにとっては必読の書である。